有価証券報告書-第62期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/18 16:23
【資料】
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【項目】
128項目

対処すべき課題

この経営方針、経営環境、対処すべき課題等には、将来予測に関する記述が含まれております。こうした記述は、 当社が現時点で入手している情報および合理的であると判断する一定の前提を踏まえた仮定、予期に基づくものであり、既知および未知のリスクや様々な不確定要因を内包するものです。また、当社の実際の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況は、「2 事業等のリスク」などに記載された事項およびその他の要素によって、こうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。
(1) 前中期経営計画の総括
2018年5月18日に発表した中期経営計画「Challenge to 2020」の総括は次の通りであります。
① 定量目標の達成状況
2018年以降、金融や流通分野において改元対応の特需や消費税率改正等の法対応に加え、AIやIoT技術などの先端デジタル技術への投資、「働き方改革」に寄与する業務効率化への取り組み、キャッシュレス決済の拡大などを背景とした企業の強いI T投資意欲に支えられ、当社は着実に業績を拡大してきました。2018年度から2020年度の3カ年で売上高140億円、営業利益23億円、ROE10%以上を達成するという前中期経営計画の目標に対し、2021年3月期において、売上高は162億89百万円、ROEは12.7%となり目標を達成しました。一方、公共向け事業の収益貢献と新規事業の立ち上げが遅れたことなどにより、営業利益は21億86百万円となり目標を達成できませんでした。
② 前中期経営計画の成果
・重点戦略1) 強い事業領域での競争力維持
前中期経営計画期間において、金融機関や自治体向けの債権管理ソリューションをはじめとする当社が優位性を有する事業領域において、お客様のニーズやトレンドおよびその変化に臨機応変に対応し、質の高い商品・サービスを提供し続けることで競争力と収益性を維持し、新規案件の獲得に取り組みました。
基幹事業であるフィナンシャル事業では、地方銀行を中心とする既存顧客のエンゲージメントが向上し、債権管理関連システムでは圧倒的なトップポジションを維持しております。好調な受注を背景に、売上高は順調に拡大したものの、地方銀行の再編や提携の動きが活発化するなど事業環境の変動により収益性はやや低下しました。また、自治体向けBPOサービス(民間委託サービス)では参入企業が増加する中、システムを組み合わせたサービスを提供できる当社の強みを生かし、政令指定都市・中核市からの受注を獲得、複数年契約の案件も増加しました。
・重点戦略2) 戦略商品の販売拡大
前中期経営計画期間において、キャッシュレス決済の推進や消費データの共有・利活用の促進ニーズに対応した決済クラウド「iRITSpay」およびマルチ決済端末「iRITSpay決済ターミナル」や、業務改革やプロセスの自動化ツールとして大きな効果が期待される業務自動化ソリューションRPAを戦略商品として位置付け、事業の拡大を目指しました。
キャッシュレス決済事業は、大手地方銀行・カード会社等を中心に事業拡大を図り、「iRITSpay決済ターミナル」の出荷台数は計画通りに推移しました。一方、RPAについてはNICE社のRPA業務自動化ソリューション「ナイス・アドバンストプロセスオートメーション(NICE Advanced Process Automation)」を導入、提供しましたが、高性能な自動化システムであったことから総務省など一部特定層の採用に留まりました。
・重点戦略3) 新しい市場の開拓
日本のマネー・ローンダリング対策を国際水準に引き上げ、金融セキュリティ対策の評価向上に貢献すべく「NICE Actimize AML/CFTソリューション」の販売を開始し、新たな市場の開拓に取り組みました。また、テーマを絞った戦略的なM&Aなどにより新たな成長機会の獲得を目指しました。
AML(マネー・ローンダリング対策)については、NICE社製品が高機能・高単価のため顧客の導入意欲を十分に喚起出来ず、さらに2019年秋に実施されたFATF第4次対日相互審査のスケジュール遅延、またコロナ渦の影響によりその結果公表が2021年8月頃予定と大幅に後ろ倒しとなったことが重なり、計画の修正を余儀なくされました。
2019年4月に株式会社イーブを買収し開発部門の強化を果たせたものの、事業シナジーを生み出すまでには至らず、十分な結果ではなかったと認識しております。
・重点戦略4) 新技術の獲得・展開
IoTやブロックチェーン、ロボット、AIなど最先端の技術分野に対するタイムリーな研究開発、先行投資を実現することで技術力の向上を目指すとともに、その技術力を基礎とした新たなソリューションを開発・提案することで当社グループの競争力を高め、新たな収益源の獲得に取り組んできました。
前中期経営計画期間では、自動受架電システム「ロボティックコール」の事業拡大に注力し、ノンバンク・大手地方銀行を中心に順調に受注を獲得しました。
③ 前中期経営計画の振り返り
前中期経営計画期間では、地方銀行をはじめとする金融機関からの受注が安定的に拡大し、各地方での事業基盤を軸に自治体や地場企業などの非金融分野への事業参入を実現しました。各分野での営業・開発が高い専門性を有し、顧客ニーズに対し的確に提案・対応ができている点は、当社の強みである「お客様に寄り添うチカラ」と言えます。一方、さらなる成長を実現するために対処すべき課題も顕在化しました。浮き彫りになった課題については、新中期経営計画の中で対応してまいります。
(2) 新中期経営計画
当社は今般、2021年度から2023年度を対象期間とした中期経営計画「NEXT STAGE 2023 - HENCA SINCA SOZO -」を策定しました。これまでの課題を解決し、持続的成長を実現するための取り組みを加速化させる新たなステージと位置付けております。
① 2024年3月期財務目標
新中期経営計画の最終年度である2024年3月期の売上高は210億円、営業利益32億円、ROICおよびROEは13%以上を目標とします。従来の事業について一層の成長を目指すとともに、潜在的なクロスセル機会を顕在化し社内シナジーの実現によって目標達成を目指してまいります。
② 新中期経営計画の基本方針
・重点戦略1) 経営基盤の強化
向こう3年間の成長実現のため、ガバナンス強化、社内インフラの強化、開発体制・品質の強化を推進します。
・重点戦略2) 収益性の向上
全社のROIC目標を13%と設定しROIC経営の導入と全社浸透を図るとともに、低収益事業からの撤退、事業部間シナジーのさらなる追求、成長事業・新規事業育成のための積極投資への取り組みにより収益性の向上を図ります。
・重点戦略3)ESG経営の進化
社長自らがサステイナビリティ推進担当となり、企業価値の持続的な向上と社会貢献を同時に図るべく、当社をあげてその取り組みの深化させてまいります。