有価証券報告書-第84期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/08/06 12:07
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事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主なリスクは、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
1.主要なリスク
(1)事業戦略上のリスク
① 小売・フィンテック環境に関するリスク
・消費動向の変化
・競合の発生、競争の激化
・EC市場の拡大、決済手段の多様化
・関連税制、関連法律の改正

(影響)
当社グループは小売とフィンテックを一体運営しており、首都圏を中心とした営業店舗および全国各地の営業拠点で事業を展開しています。景気変動、経済状況の変化、人口減少等、個人消費の低迷をもたらす市場の変化をはじめ、競合の発生、EC市場の拡大、シェアリングエコノミーの台頭等により、店舗の入店客数や取扱高が減少することが予想されます。また、キャッシュレス化の推進にともなう決済手段の多様化などテクノロジーの進化や消費者行動の変化等によりクレジットカードの市場シェアが縮小することが予想されます。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。
店舗運営においてはSC・定借化を進め安定的な収益構造を築いてきましたが、テナントとの定期借家契約の中途解約や空き区画の増加による賃料収入の減少のほか、地価の変動による減損損失計上や関連税制の改正による税負担の増加等により、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループの総資産のうち大きな構成を占めるカードの営業債権(割賦売掛金・営業貸付金)については、遅延債権の発生状況や過去の貸倒実績率等に基づき貸倒引当金を計上していますが、経済状況の悪化や関連法律の変更等により支払遅延や未回収債権が増加する恐れがあり、貸倒損失や引当金の急激な増加等により、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。カードキャッシング利息の返還に対しては、これまでの返還実績をもとに将来の返還額を予測し利息返還損失引当金を計上していますが、引当額が将来の返還請求額に対して不十分である場合には追加費用が発生する可能性があります。
(対応策)
ECサイト「マルイウェブチャネル」を中心にネットとリアルの融合を進め、マルイ・モディ店舗においてはアフターデジタルの時代に対応した「デジタル・ネイティブ・ストア」の推進に取り組むことでリアル店舗のECとの共存を実現し施設価値の継続的な向上を図っています。店舗がデジタルの補完的役割も果たすことでお客様との接点を多様化する取組みを強化、さらには年齢・身体的特徴・性別を超えてすべての人に楽しんでいただける商品・サービスを提供する「お客さまのダイバーシティ&インクルージョン」を進めることで、客層と客数の拡大を図っています。
フィンテックではキャッシュレス化の推進を大きな機会としてとらえ、エポスカードのゴールド・プラチナ会員の拡大や家賃保証事業をはじめとする家計シェア最大化戦略によるメインカード化を推進することで、決済手段の多様化に対応しています。また、収入や世代を問わず、すべての人が必要な時に必要なサービスを受けることができるファイナンシャル・インクルージョンの実現をめざし、創業から培ってきた与信ノウハウに基づいたビッグデータを活用し初期与信を行うとともに、「信用はお客さまと共につくるもの」という考えのもと途上与信を行っています。ご利用頻度・ご利用額、ご入金実績に基づきご利用限度額を拡大することにより低水準の貸倒率を実現しています。
② 共創投資に関するリスク
・投資効果の不確実性
・対未上場企業投資における減損のリスク
・投資有価証券の価格変動

(影響)
当社グループでは、無形資産への投資を加速している中で、成長企業への投資を行う「共創投資」を推進しています。「小売」「フィンテック」に共創投資を加えた三位一体の新たなビジネスモデルにより、個々の事業の総和を超えた価値の創出をめざします。投資の実行には、対象企業の財務内容や契約関係等の確認、経営陣との面談を通して詳細な事前審査を行い、十分なリスク検討をしていますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前の調査によっても把握できなかった問題が生じた場合や、投資先の今後の事業成績や事業方針の変更などによっては、期待する成果を得られないことによる減損損失計上の可能性があります。また、当社グループが保有する上場株式については、株式市場の動向により価格変動の影響を受ける可能性があります。
(対応策)
投資先の選定時は、投資先より入手した事業計画をもとに当社独自の計画を作成し、ファイナンシャルリターンだけではなく、当社グループとの協業によって発生する協業リターンも含めた収益性を確認したうえで投資判断を行っています。何より「共創投資」においては、当社グループのクレジットカード事業、小売事業、またそれに係る人材等のリソースを、投資先企業のノウハウやスキル等の無形資産と掛け合わせることによって「共創」を実現し、事業計画の達成や企業としての成長に大きく貢献することで投資リスクの低減とリターンの向上に貢献できるものと考えています。
企業価値向上に向けて、戦略上重要な協業および取引関係の維持発展が認められる場合を除き、原則として政策保有株式を保有しない方針です。2016年2月開催の取締役会において、当社が株式を保有する企業とは、すでに一定の取引関係が構築されていることを確認し、資産効率や株価変動リスクの観点から段階的に保有金額を削減することとしました。
(2)自然災害・感染症等に関するリスク
① 大規模災害に関するリスク
・経済活動の停滞、消費行動の減少
・保有資産の損壊、補修費用の発生
・事業所、システム、社員の被害による事業活動の停止

(影響)
当社グループは首都圏を中心とした営業店舗および全国各地の営業拠点で事業を展開しています。各営業拠点のある地域において大規模な地震・風水害などの自然災害、テロ行為等が発生した場合、社会インフラ等の寸断により事業活動の停止を余儀なくされ、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。
(対応策)
当社グループでは、社員の安否確認システムの導入、災害対策マニュアルの策定、建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)、火災・防災・水防訓練、必要物資の備蓄などの対策を講じ、各種災害・事故に備えています。震災等発生時には、グループ震災対策本部を設置し、当社グループ各社が連携して事業継続が可能な体制を整えています。
② 気候変動に関するリスク
・台風・豪雨等による店舗・施設の被害
・規制強化にともなう炭素税等の導入

(影響)
台風・豪雨等の水害発生による店舗の被害および炭素税の導入等による費用の増加等、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。
(対応策)
当社グループは気候変動によるリスクへの適切な対応および成長機会の取り込みが重要であると考えています。気候変動への取り組みとTCFDへの対応の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ■ 気候変動への取り組みとTCFDへの対応」において記載しています。
③ 感染症に関するリスク
・経済活動の停滞、消費行動の減少
・感染症拡大による店舗の営業活動の自粛・停止
・社員の感染による事業活動の停止

(影響)
当社グループは首都圏を中心とした営業店舗および全国各地の営業拠点で事業を展開しています。各営業拠点のある地域において感染症が流行した場合や、感染拡大防止策として外出自粛等の措置がとられた場合、店舗の営業休止等、営業活動の制約により、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。また、社員の感染者拡大により事業継続が困難になる可能性があります。新型コロナウイルスの感染拡大による影響の詳細は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 連結業績」において記載しています。
(対応策)
感染症の拡大を防止するため、オフィスでの勤務を主としている社員については可能な限り自宅でのテレワークを推進し、EC等の物流を担当している社員については交替制で運営する等の対応をしています。また、各営業拠点において、アルコール消毒液の設置やマスクの着用、ソーシャルディスタンスの確保等、お客さま・社員の感染予防対策を行っています。
新型コロナウイルスの感染拡大に対しては、お客さま、お取引先さま、社員の健康と安全を最優先に考え感染拡大を防止するため、3月に営業時間短縮と都心店舗の臨時休業を実施し、4月の緊急事態宣言後は食料品売場および一部テナントを除き全店舗を休業としました。新型コロナウイルスの感染拡大への対応の詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 新型コロナウイルス感染症への対応」において記載しています。
(3)企業運営に関するリスク
① 資金調達に関するリスク
・資金調達の制約
・調達金利の上昇

(影響)
当社グループでは、ショッピングクレジットの取扱高の伸長や家賃保証をはじめとしたサービス事業の拡大など、フィンテックの成長が見込まれる中で、営業債権(割賦売掛金・営業貸付金)の増加により、資金需要が拡大していくと予想しています。したがって、これまでに調達した資金の返済・償還への対応に加えて新たな資金が必要となるため、今後徐々に調達額が拡大し、資金調達に関するリスクが高まると考えています。
金融市場に混乱が発生した際には資金調達に制約を受ける可能性があります。また、当社グループの業績が著しく悪化したり信用力が急激に低下した場合には、金融機関からの借入が困難となり社債発行にも支障をきたすなどの状況が想定されます。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの資金繰りに重大な影響が生じる可能性があります。
また、調達金利は市場環境その他の要因により変動するため、その動向によっては調達コストが大きく上昇する可能性があり、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。
(対応策)
当社グループは、負債増加によるリスクを抑制するため、有利子負債は営業債権の9割程度を維持することとしています。
営業活動に必要な資金の調達は、金融機関からの借入などの間接調達、社債やコマーシャル・ペーパーの発行などの直接調達のほか、営業債権の流動化にも取り組み、調達手段の多様化を進めるとともに各調達メニューのバランスを図っています。
毎年の返済・償還額は、その借換時のリスクに対応するため調達年限をコントロールすることにより平準化を図り、その金額に対しては金融機関とのコミットメントライン契約の締結や当座貸越枠の設定などにより流動性を確保し、資金調達の制約を受けた場合においても確実に調達ができる体制を整えています。
また、調達金利については、固定金利の構成を50~60%と一定割合に保つことにより市場金利の変動による調達コストの増加影響を抑制しています。
② 情報セキュリティに関するリスク
・事故・欠陥等によるシステム障害
・外部からの不正侵入、不正アクセス、ウイルス感染
・顧客情報の漏洩

(影響)
i. システム関連
当社グループでは、コンピューターシステムおよび通信ネットワークを多岐にわたり使用しており、ハードウエアやソフトウエアの欠陥等によるシステムエラーやネットワーク障害、外部からの不正アクセス等によるシステム遅延・サービス停止やウェブサイトの改ざん等が引き起こされた場合、当社グループの財務状況および業績が影響を受ける可能性があります。
ii. 個人情報関連
当社グループでは、エポスカードの会員情報をはじめとする多数のお客さまやステークホルダーの皆さまの個人情報を保有しており、万一、顧客情報の漏洩や不正利用等の事態が生じた場合においては、当社グループの社会的な信用の失墜や損害賠償責任が発生するリスクが考えられ、その際は当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(対応策)
i. システム関連
当社グループでは、コンピューターシステムやネットワークの二重化や、システムのリプレイスを定期的に実施するとともに、コンピューターウイルスや不正侵入の防御など、安定稼働に向けた運用を行っています。また、外部コンサルティングによるリスクアセスメントを活用し、より一層の情報セキュリティ強化に向け取り組んでいます。
ii. 個人情報関連
当社グループが保有するお客さま情報をはじめとした情報資産を、不正アクセスやサイバー攻撃などのさまざまな脅威から保護し、グループ全体の情報セキュリティを強化していくことが、経営上の最重要課題と認識し、「グループ情報セキュリティ方針」を定めるとともに、「グループプライバシーポリシー」を設定し、お預かりしたすべての個人情報の適切な管理・保護に努めています。
具体的には、個人情報保護法をはじめとした法令や関連する指針・規範等に基づいて、個人情報に関する安全管理措置を講ずるとともに、個人情報保護マネジメントシステムの実施・運用を通じた継続的な改善により、個人情報保護を適切に維持しています。
また、特に多数の個人情報を取り扱う当社グループ各社においては「プライバシーマーク」の取得を行い、適切な個人情報の取扱いを実践しています。
③ 人材に関するリスク
・経営人材の不足
・人材獲得競争の激化

(影響)
当社グループの成長は、社員一人ひとりの成長や活躍により実現できると考えています。今後、人材獲得競争の激化や既存社員の流出、それに伴う将来の経営人材の不足等が顕在化した場合、事業の進化や継続性に影響を及ぼす可能性があります。
(対応策)
当社グループは、全ての社員が自ら手を挙げてチャレンジできる風土をベースとした、将来の企業価値の源泉となる無形資産としての人材投資を重視しています。公募型の教育・研修プログラムはもとより、対話を通じてグループ経営にとって重要なテーマを考える「グループ横断プロジェクト」や、経営に革新を起こせる人材を育成する「次世代経営者育成プログラム(共創経営塾:CMA)」の開設、さらにスタートアップ企業への出向など、計画的な人材投資により、さまざまな視点から、成長とやりがいを実感できる環境づくりを進めています。
2.リスク管理体制
当社グループは経営上の高リスク分野を管理するために、広報IR委員会、内部統制委員会、情報セキュリティ委員会、安全管理委員会、インサイダー取引防止委員会の5委員会を設置し、スピーディな業務の改善と事故の未然防止を図るとともに、各委員会の統括機能として代表取締役社長を議長とするコンプライアンス推進会議を設置しています。
また、気候変動に関わる基本方針や重要事項等を検討・審議する組織として、代表取締役を委員長とする取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会、その下部組織として関連リスクの管理および委員会が指示した業務を遂行する機関である環境・社会貢献推進分科会を設置しています。
これらの各委員会・分科会の設置・開催のほか、執行役員が参加する定期的なミーティングの開催などを通じて密に連携をとり、リスク情報を共有し、スピーディな意思決定と対応策を実施することで、リスク管理の実効性を高めています。
また、情報資産のセキュリティを確保するための体制・対応方針を含めたグループ情報セキュリティ方針、および、税法の順守、税務リスクの最小化に向けた取り組みなどを明記したグループ税務方針を制定しています。規範・各種方針は実効性を年1回検証するとともに、研修等を通じてグループ社員へ周知を図っています。