有価証券報告書-第138期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 14:03
【資料】
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【項目】
176項目
(1)経営方針
当行は、1932年5月の創業以来、基本姿勢である「地域社会の発展に貢献する」ならびに「健全経営に徹する」の2つを経営理念として堅持し続けております。
また、2011年3月に発生した東日本大震災の影響により取り巻く経営環境が大きく変化したことから、2013年4月の中期経営計画策定と同時に今後10年間の長期ビジョンとして「地域の牽引役として圧倒的な存在感を示すとともに、トップクオリティバンクとしての地位を確立する」を新たに設定しております。これにより、当行が黒子役から地域の主体的牽引役に変革して圧倒的な存在感を示すとともに接遇力等のソフト面を充実・強化することでクオリティーNo.1の地位を確立することを目指しております。

(2)経営環境
①国内の金融経済環境
2019年度の国内経済については、年度前半は企業収益が総じて高水準を維持し、個人消費も雇用・所得環境の改善を背景に改善するなど緩やかに拡大する展開となりました。一方で、年度後半にかけては、消費増税と天候不順の影響で個人消費が落ち込んだほか、企業の設備投資が減少し、輸出も不振が続きました。加えて、新型コロナウイルスの影響から経済活動に大きな下押し圧力がかかるなど力強さを欠く展開となりました。
金融市場においては、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の継続により、長短金利の水準は概ねゼロ%程度で推移しました。当年度末における短期金利(無担保コール翌日物)は▲0.070%、長期金利(新発10年国債)は0.005%となりました。
金融機関を取り巻く環境につきましては、マイナス金利政策の影響により資金収益の低下が続いていることに加え、デジタル化の更なる進展に伴う異業種の金融業務への参入拡大により競争が激化するなど、厳しい状況が続いております。一方、昨年には金融庁が地域金融機関の業務範囲の見直しを行い、地域活性化を目的とした事業を行う会社への議決権保有制限(5%ルール)が緩和されたほか、銀行業高度化等会社として認可される地域商社への100%出資が認められました。これにより、地域金融機関にとっては、地域企業の生産性向上や地域活性化に資するビジネス領域での営業を拡大することが可能となりました。
②岩手県の社会・経済環境について
当行が主たる営業基盤とする岩手県の状況については、社会構造的な課題である人口減少・少子高齢化に歯止めがかからず、県外への転出者の8割を15~24歳までが占めるなど特に進学や就職時期の若者の県外流出が増加傾向にあります。また、後継者不在などを理由にした廃業件数が高止まりしており、保有技術や雇用機会の喪失への対応が喫緊の課題となっております。
当行が目指す姿は営業基盤である地域との「共存共栄」であり、地域のお取引先企業や個人のお客さまが抱えるさまざまな課題に対して、事業性理解の取組みや円滑な資金供給、コンサルティング、利便性の高い金融サービスの提供など金融仲介機能を持続的に発揮し、その課題解決を図ることで当行と地域の共通の価値を創造していきたいと考えております。また、当行は地域の主体的牽引役に相応しい金融機関であり続けるために自らの経営体質の強化と新たな事業領域の創出にも取り組んでまいります。
③中期経営計画の概要
当行では長期ビジョンを完遂するとともに、新たな未来に向けた準備期間と位置付ける中期経営計画(以下、「中計」といいます)「いわぎんフロンティアプラン ~ To the Next ~」を2019年4月からスタートしております。「To the Next」には、地域の課題解決に向けたさまざまな取組みを進めることにより、地域と当行の次の世代を切り拓いていくという想いが込められております。
中計のテーマは「地域の未来を共に創るCSVの実践」です。CSVは、「Creating Shared Value」の略であり、「共通価値の創造」を意味しております。社会のニーズや課題の解決に取り組むことで社会的価値を創造し、同時に、経済的価値も創造されるという考え方です。これを岩手銀行版CSVとして言い換えますと、「お客さまとの関係性強化に努め、地域の課題に正面から向き合い、その解決に取り組んでいくことで、お互いの社会的価値と経済的価値を高めていく」ということになります。中計ではこのテーマを具現化することによって、当行の目指すべき姿である地域との「共存共栄」を実現していく考えであります。
中計の計画期間は2019年4月から2023年3月までの4年間としております。そのうえで、前半の2年間は、前中計から進めている経営体質強化プロジェクトにおけるBPRや店舗再編、また営業体制の見直しを含む収益構造の改革と体制の再構築を進めるほか、地域経済を活性化するための新たな事業領域の創出やデジタル戦略を前倒しで進めてまいります。そのうえで後半の2年間は、今後も予想されるさまざまな環境の変化に対応しつつ、前半2年間での収益構造の改革や事業領域の創出といった施策の効果を本格的な収益や成果に結び付けていく期間と位置付けております。
※BPR(Business Process Re-engineering ビジネスプロセス・リエンジニアリング)。企業活動の目標(売上、収益率など)を達成するために、既存の業務内容や業務フロー、組織構造などを全面的に見直し、再設計すること

④中期経営計画の進捗状況
中計においては、収益性指標として「連結当期純利益」、効率性指標として「OHR」、経営の安全性指標として「連結自己資本比率」、また地域が抱える課題解決に積極的に取り組みCSVの実現を図るための挑戦的指標として「M&A・事業承継支援先数」の4項目を主要計数目標として設定しております。
中計1年目である2019年度におきましては、連結当期純利益は期末の株価が下落したことにより保有株式の減損損失を計上したことなどから目標未達となりましたが、OHR、連結自己資本比率およびM&A・事業承継支援先数につきましては、目標を達成しました。
指標算出方法2019年度
目標
2019年度
実績
2022年度
(中計最終年度)
目標
連結当期純利益財務諸表上の数値40億円37億円50億円
OHR経費(除く臨時処理分)÷コア業務粗利益81.4%76.8%70%台
連結自己資本比率自己資本の額÷リスクアセット等の額12%前半12.1%10%以上
M&A・事業承継支援先数M&Aまたは事業承継の支援を行っている先数600先618先2,400先
※計画期間累計

(3)対処すべき課題
当行では中計の時間軸においては前半の2年間が特にも重要と認識しており、後半の2年間で施策の効果を収益や成果に結びつけるため次の分野の取組みを特に強化しております。
① 収益構造の改革・体制の再構築
当行では2017年10月から、「経営体質強化プロジェクト」として本部および営業店のBPR、店舗再編を中心とした経営体質の強化に向けた取組みを進めております。本部および営業店のBPRは業務内容に応じて人員を適正化させ、人員の再配置を行うものです。また、店舗再編はプロジェクト期間(2017年10月から2023年3月まで)において対象店舗を20ヵ店として支店内支店方式を中心とした形態で統合・縮小する計画です。加えて、同プロジェクトではコスト構造改革についてもあわせて進めております。
BPRや店舗再編、コスト構造改革など本プロジェクトが目指すところは、業務の効率性と生産性を向上させて営業人員を創出することによってお客さまとの接点を増やし、収益力を強化する、同時にコスト構造の最適化を図り、将来的にいかなる環境にあっても地域を支え得る経営体質の構築です。本プロジェクトは中計でも中核をなすものであり、営業人員の創出によって営業力を強化することにより、低金利環境の継続などで想定される収益の落ち込みを最大限抑制するとともに、コスト構造を見直しすることによって、中計最終年度で目標とする利益を確保する計画としております。

② 新事業・デジタル分野等への積極的投資
地域の活性化につながる新たな事業領域の創出に関しては、2020年4月に事業承継対策、M&A支援などの事業承継支援業務と事業戦略・経営計画策定支援、中核人材紹介などの経営支援業務を行う「いわぎんコンサルティング株式会社」と、お客さまの販路拡大やブランディングに関する支援業務のほか、地域の事業者や自治体との連携により地域活性化に資する地域商社事業を行う「manorda(マノルダ)いわて株式会社」を当行全額出資のもと設立いたしました。
いわぎんコンサルティングについては、当行グループのコンサルティング機能を集約し、専門人材の育成を図ることで、金融仲介機能の強化と高度化を進めていくことを目指します。お取引先企業の抱える多様な経営課題に合わせて、事業承継対策、人材確保、人事労務対策、経営計画策定など、きめの細かいコンサルティングサービスを提供してまいります。
manordaいわてについては、新たな事業領域に進出することで地域活性化と産業創出を促し、持続可能なビジネスモデルを構築するとともに,SDGsやCSV施策に連動したソーシャルインパクト事業に取り組むことで地域の持続可能性を高めていくことを目指します。当面の事業としては、県内の伝統産業に関する情報発信、地域のデザイナーやクリエイターとの協業による地域ブランド品の開発、まちづくり・賑わい創出のほか、岩手の基幹産業である一次産業の活性化などにも取り組む計画です。
また、スマートフォンの定着化などによるライフスタイルの変化やデジタル技術を先取りした異業種の金融業務への参入が相次いでおり、お客さまはより便利かつスピーディーな金融サービスを志向する時代へと移り変わっております。当行では、そのような環境の変化も踏まえ、既存のお客さまはもとより、ご来店を希望されないお客さまの支持も獲得することを目的として、多様なライフスタイルや嗜好などに応じたお客さま志向のインターフェイス(接点)やチャネル、満足度の高いサービスを提供する取組みを進めております。
③ 職員一人ひとりが活躍できる態勢の整備
人材の育成に関しては、当行の将来を担う若手行員の育成と定着化が極めて重要な課題と捉え、若手行員の早期戦力化に向けた研修施策を導入するほか、エンゲージメントの向上を図ることによる定着化の取組みを進めております。また、業務が多様化してきているほか、お客さまのライフプランニングやコンサルティング、フィンテックなどより深い専門知識やノウハウを兼ね備えた人材が必要となってきていることから、専門人材向けのキャリアデザインに関する検討も行っております。
職員一人ひとりが活躍できる環境の整備に関しては、職員が自律的、効率的に労働時間を配分することにより、生産性の向上や労働時間の削減、育児・介護・通院など「仕事と生活の調和」をより一層促進することを目的として2020年4月からフレックスタイム制度を導入しております。また、ペーパーレスの徹底や部門を超えたコミュニケーションの促進といった組織風土の変革などの観点から、職員が席を固定しないフリーアドレスについても導入を進めております。
④ 新型コロナウイルス感染症の影響拡大への対応
当行では新型コロナウイルスにより影響を受けられているお取引先の業況把握を継続的に実施していますが、外出自粛に伴う消費やインバウンド需要の減少、海外からの原材料等の仕入れが途絶えるなど、お取引先の経営に対する影響は日を追うごとに悪化している状況です。また、その影響は飲食業や観光業に限らず、幅広い業種に及んでいます。
新型コロナウイルスの影響を受けられているお取引先の多くが抱えている喫緊の課題は当面の運転資金の確保など資金繰りであることから、当行ではお取引先の資金繰り支援を最優先に対応しています。具体的には、「実質無利子・無担保」の特別資金のほか、プロパー資金による特別融資制度も創設してお取引先の資金ニーズに幅広く対応しているほか、新型コロナウイルスの影響による融資取引の条件変更は手数料を免除しています。
また、本部横断による「地域支援チーム」を設置し、資金繰りだけにとどまらず、販路の維持・回復など複合的な支援も行っているほか、新型コロナウイルスの影響拡大に伴い、事業活動の縮小を余儀なくされ、従業員の雇用など不安を抱えたお取引先を対象として、雇用調整助成金に関する無料のWEB相談会を開催しています。

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