有価証券報告書-第136期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/24 14:35
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【項目】
162項目

対処すべき課題

以下の記載における将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当行グループ(当行及び連結子会社等)が判断したものであります。
(1) 企業理念
・地域社会の発展を常に考え行動すること、これが私たちの事業です。
・お客さまとの創造的な関係を深めること、これが私たちの仕事の原点です。
・よき企業人であるためによき市民であること、これが私たちの活動の基本です。
・一人ひとりの顔が見える表情豊かな組織であること、これが私たちの大切にする企業風土です。
(2) 中期経営計画
当行は、2019年4月から2022年3月までの3年間を計画期間とする「2019年中期経営計画 『Innovation 新次元』~価値実現へ向けて~」を展開しております。
<本計画での考え方>当行は、「2013年 中期経営計画 V-プラン ~価値提案銀行への進化~」から「2016年 中期経営計画 Value for Tomorrow ~価値ある提案を明日に向けて~」にわたる6年間において、「価値ある提案」を基本コンセプトに、お客さまへ当行ならではの提案を行いサポートすることで、地域とお客さまとともに成長することを目指してきました。
本計画では、社会情勢の変化を踏まえ、これまで6年間取組んできた「価値ある提案」を礎として、その提案価値を実現することに主眼を置き、提供するサービスの革新により、「価値を実現する金融グループ」への発展を目指し、名称を「Innovation 新次元」としました。
<めざす企業像と基本方針>本計画では、めざす企業像を「金融サービスの革新により、お客さまニーズに応え、価値を実現する地域金融グループ」とし、その達成に向けた2つの基本方針として、「3つの改革による経営プラットフォームの転換」と「ビジネスモデルの進化による高度な価値実現」を掲げています。
<中期経営計画 骨子>
<2つの基本方針とそれぞれの戦略テーマ>○ 3つの改革による経営プラットフォームの転換
私たちの日々の業務における活動の目線やその行動様式(プロセス)、お客さまとの接点(チャネル)、そして企業理念を根本とした行員のモチベーション向上を伴うワークスタイル・キャリア(人材)の3つの変革(Innovation)に取り組み、新たな戦略に実効性を伴わせるための構造改革を行います。
「戦略テーマ」と「具体的な取組み内容」
仕事の質向上をめざしたプロセス改革
○業務改革プロジェクトによる業務削減の進展
「ムダが徹底的に排除され、本来業務に集中できる職場づくり」を目指して設置した業務改革ワーキンググループによるプロジェクトが進展。全職員から意見募集を行った業務削減案件の93%(673件)が完了し、業務のスリム化を着実に実現してまいりました。
○デジタルイノベーショングループの新設
「デジタルトランスフォーメーション」と「オペレーショナル・エクセレンス」の実現を目的としてデジタルイノベーショングループを新設しました。事務レス化や非対面チャネルの拡充を中心とした業務改革に取り組み、デジタル化を加速しています。
お客さま接点拡充のためのチャネル改革
お客さまのライフスタイルの変化にあわせ、デジタルチャネルの拡充と店舗網の再構築を進めております。
デジタルチャネルの拡充として、お客さまとの接点拡大や利便性向上に向けてクラウドファクタリングサービスを導入するとともに、TSUBASAアライアンスにおけるオープンAPI基盤の導入に向けた開発やスマートフォン向けアプリの刷新に向けた開発に着手しました。
また、店舗網の再構築として、5か店の統廃合を実施するとともに、館林地区にて中核店である「フラッグシップ店」と一部業務を軽量化した「サテライト店」を設置しました。店舗網再構築により、行員をコンサルティング業務の強化のために再配置し、お客さまへの価値提案を強化しています。
・2020年 4月 館林地域での「フラッグシップ店」と「サテライト店」による営業態勢導入
・2020年 7月 「群馬銀行クラウドファクタリングpowered by OLTA」を導入
・2020年10月 沖電気工業株式会社とのタッチレスATMの実証実験実施
・2021年 3月 「TSUBASA Fintech共通基盤」、スマートフォン向け新アプリの開発着手
創造力発揮に向けた人材改革
前期に導入した新人事情報システムにより、行員の人事関連事務管理の効率化を実現しました。今後は、同システムを活用したデータ一元化によるタレントマネジメントの実現を進めてまいります。
また、上司と部下のコミュニケーション活性化や上司のマネジメント向上を目的として、上司と部下が定期的に1対1で面談を行う「1on1 ミーティング」を新たに導入しました。

○ビジネスモデルの進化による高度な価値実現
これまで培ってきた「価値ある提案」を引き継ぎつつ、従来からの金融サービスの延長ではなく、個々のお客さまの真のニーズに応えられる質の高いコンサルティングを実践することで、お客さまにとって最良な「価値実現」を追求するとともに、収益構造の抜本的な転換(新次元)を目指します。
「戦略テーマ」と「具体的な取組み内容」
感染症の影響を受けたお客さまの支援と地域産業の育成・活性化
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済環境の急速な変化を受け、昨年2月に開設した全店相談窓口の設置を継続し、資金繰り支援を中心としたお客さま支援に全行をあげて取り組みました。金融支援だけでなく、本業支援や役職員とも一体となった様々な支援策に取り組んだほか、成長支援に向けて海外拠点拡充によるお客さまの海外進出・取引支援態勢の強化にも取り組みました。
また、地域産業の育成・活性化に向けて群馬県や県内大学等と新たな連携協定を締結し産学官金が一体となって新たな産業の創出・育成にも注力しました。
・2020年 4月 新型コロナウイルスに関する資金繰り相談窓口の開設継続(2020年2月~)
ゴールデンウィーク期間中の休日相談窓口開設
・2020年 5月 当行役職員による飲食店応援企画「テイクアウト商品購入」の実施
・2020年 6月 当行と役職員による温泉地応援企画「温泉応援団」の実施
・2020年12月 ホーチミン駐在員事務所開設
・2021年 2月 香港駐在員事務所開設
・2021年 3月 群馬県やしののめ信用金庫、県内教育研究機関等※と「ぐんま次世代産業創出・
育成に関する連携協定」を締結
※群馬大学、前橋工科大学、群馬工業高等専門学校、株式会社リバネス
的確なコンサルティングによるお客さまの成長支援
当行は「先導的人材マッチング事業」の間接補助事業者として採択され、人材紹介業務を通じた経営課題の解決支援に対する取組みを本格的に稼働しました。同事業は、内閣府が地域金融機関の負担する人材マッチング事業関連費用を補助金の支給で支援するものであり、実施期間中に6案件が採用されました。
また、事業性評価に基づいた経営課題解決支援やコロナ関連資金の実行による支援を通じて、お客さまのサポートに全力で取り組みました。
お客さまの資産を安定的に増やしていく取組みの充実
資産形成や資産承継、相続に関するお客様のニーズに適切に対応していくため、ライフサポート部を新設しました。資産形成アドバイザーや資産承継アドバイザーの増員を行うことで預かり金融資産の取組み強化や相続関連業務の強化を図ったほか、お客さま目線に立ったワンストップで横断的なソリューション提案を行うプライベートバンキングアドバイザーを新設し、ウェルスマネジメント業務の深掘りを図りました。


環境変化へ適応する経営体質の強化とサステナビリティの追求
個人のお客さま向けサービスの向上やリスク管理態勢・ガバナンスの高度化に向けた機能強化を図るため組織改定を行いました。また、環境・社会問題が深刻になるなか、SDGs達成に向けた取組みを強化するため、新たに専任組織を設置するとともに温室効果ガス排出量や紙使用量の削減目標を定めました。
・2020年 6月 ローン営業部、資産形成サポート部を統合しライフサポート部を新設
総合企画部にSDGs & ESG統括室を設置
監査部に監査企画グループを設置
・2020年 7月 温室効果ガス排出量削減目標および紙使用量削減目標を設定・公表
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同表明
・2020年10月 リスク統括部にリスクガバナンスグループやオペレーショナルリスク管理グループ
を設置
グループ総合力発揮による多面的なニーズ対応
○幅広い連携・協業と新たな事業領域の拡大
地方銀行が共通して抱えている経営課題に連携・協働して取り組んでいくため、地方銀行10行※による広域連携「TSUBASAアライアンス」に参加しました。各行の共同出資会社にも参画し、AML(Anti-money Laundering)業務の共同化や高度化に向けた連携に着手しました。
また、議決権保有規制の緩和を受け、投資専門子会社「ぐんま地域共創パートナーズ株式会社」を新設するとともに、同社と新たなファンドを組成しました。事業承継課題の顕在化や新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業のお客さまに、資本性資金の供給やハンズオン支援など新たな支援が可能な態勢を構築し、事業領域の拡大・深化を図りました。
※千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行、伊予銀行、北洋銀行、東邦銀行、武蔵野銀行、滋賀銀行、琉球銀行、当行の10行
・2020年12月 TSUBASAアライアンスに参加
ぐんま地域共創パートナーズ株式会社(略称:GRASP)設立
・2021年 1月 TSUBASAアライアンス株式会社に出資
・2021年 3月 ぐんま地域共創ファンドを組成

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「2019年中期経営計画 『Innovation 新次元』~価値実現へ向けて~」で目標とする2022年3月期の経営指標は、以下のとおりであります。
なお、同指標等に係る経営者の視点による分析等は「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」内の「(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載のとおりであります。
目標とする指標(連結)2022年3月期
目標
当期実績
収益性
指 標
親会社株主に帰属する当期純利益
算出方法:当期純利益-非支配株主に帰属する当期純利益
240億円135億円
非金利業務利益
算出方法:役務取引等利益+その他業務利益(債券関係損益を除く)
200億円191億円
RORA
算出方法:親会社株主に帰属する当期純利益÷リスクアセット
0.5%以上0.30%
効率性
指 標
OHR
算出方法:営業経費(除く臨時費用)÷(業務粗利益-債券関係損益)
65%程度64.1%
健全性
指 標
総自己資本比率
算出方法:総自己資本÷リスクアセット
12%台12.74%
⦅長期目標⦆収益性
指 標
ROE
算出方法:親会社株主に帰属する当期純利益÷期首期末平均自己資本
5%以上2.6%

○上記目標の達成に向けた主要な計数または非財務情報
2022年3月期
目標
当期実績
リテール貸出末残 (単体)
算出方法:中小企業貸出末残(地方公社、東京・大阪支店除く)+ 個人貸出末残
4兆7,800億円4兆6,573億円
無担保消費者ローン末残 (単体)
算出方法:無担保消費者ローン末残の合計額
600億円547億円
法人役務収入 (連結)
算出方法:法人向けサービスの手数料収入合計額
42億円29億円
預かり金融資産残高 (連結)
算出方法:投資信託や公共債、生命保険等の預かり金融資産残高
1兆円9,358億円
事業性評価に基づいた課題解決件数 (単体)
算出方法:事業性評価により明らかになったお客さまの課題を解決に導いた件数
1,500件1,312件
事業承継支援先数 (単体)
算出方法:円滑な事業承継に向けて具体的な提案等を行い、実行支援した先数
6,000先5,069先
創業支援先数 (単体)
算出方法:6か月以内の創業を予定もしくは創業5年以内の法人・個人事業者等の支援先数
2,000先1,489先
女性管理職数 (単体)
算出方法:支店長代理以上の職位にある女性職員数 ※2019年3月末比
20%増加22%増加


(4) 金融経済環境
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による経済活動の制約を受けて、期初から大幅に悪化しました。5月の緊急事態宣言解除後は持ち直しの動きがみられましたが、11月以降には「第3波」が拡大、年明けから3月にかけて東京都などの都市部に再び緊急事態宣言が出されるなど、持ち直しの動きを弱めるものとなりました。個人消費は、期初大幅に落ち込んだ後、持ち直しましたが、「第3波」拡大による外出自粛の影響などで弱含みました。輸出、生産は、大幅に落ち込みましたが、徐々に持ち直しました。設備投資は先行きの不透明感から弱い動きが続きましたが、年明けには持ち直しの動きがみられました。雇用情勢は感染症の影響により弱い動きとなるなかで、雇用者数等の動きに底堅さもみられました。
県内経済も観光・飲食などのサービス業や製造業を中心に、期初には大きく落ち込みました。6月以降、厳しいながらも個人消費や生産活動を中心に持ち直しの動きがみられましたが、「第3波」の影響により飲食・宿泊業を中心に下押し圧力が強まりました。個人消費は、サービス消費が低水準でしたが、全体としては持ち直しました。住宅投資は減少し、設備投資は弱含み、公共投資は横ばいで推移しました。生産面は、輸送用機械が北米需要の回復に伴って増加しましたが、年明け以降半導体不足の影響で減少しました。雇用情勢は弱い動きが続きました。
金融面では、厳しい経済状況や日本銀行による強力な金融緩和政策を受けて、長期金利の指標である新発10年国債利回りは2月以降若干上昇したものの、ゼロ%程度で推移しました。
(5) 経営環境及び対処すべき課題
わが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部には弱さがみられます。世界経済もワクチン接種の開始などにより、国・地域によっては経済活動の再開がみられるものの厳しい状況が続いています。
こうした感染症の流行を発端とした世界的な経済情勢の変化は、地域経済にも著しい影響を及ぼし続けており、その維持や活性化に向けて地域金融機関としての責務を果たし金融仲介機能を十分に発揮していくことが強く求められています。
感染症の流行は、テレワークやWEBを通じたコミュニケーション、キャッシュレス決済の急速な普及など、数年先の未来を瞬く間に現在に引き寄せ、従来のビジネスモデルやライフスタイルを一変させました。こうした環境変化や低金利環境の長期化など厳しい事業環境の中で、地域金融機関には新たな社会環境に対応した企業組織への転換・変容や新たなビジネス領域へのチャレンジ、そして持続可能なビジネスモデルの構築が急務となっています。また、気候変動などの環境・社会課題が深刻化するなかで、それらの解決に取り組んでいくことも重要な責務となっています。
このような認識のもと、当行では2019年中期経営計画「Innovation新次元~価値実現へ向けて~」の最終年度を迎え、収益構造の抜本的な転換と地域のお客さまを支え続けられる強固な経営体質の構築を目指した取組みを展開しております。
本計画ではプロセス、チャネル、人材の「3つの改革」や「ビジネスモデルの進化」を基本方針に掲げています。感染症の影響により社会・経済環境が一変するなか、これら計画策定時に示した方針や施策の意義は一層明確となっており、各種取組みを更に加速させてまいります。
「3つの改革」では、業務改革プロジェクトを中心としたプロセス改革の実践により、徹底した業務削減とデジタル技術を活用したシンプルな業務プロセスの構築を実現してまいります。チャネル改革でも、統廃合や再配置による店舗チャネルの再構築とアプリや専用サイトなど個人・法人のお客さま向けのデジタルチャネルの刷新に取り組みます。また、人材改革では新たに導入した複線型の人事制度を活用し、コンサルティングやデジタル等の専門人材をはじめ、女性やシニアなど多様な人材が更に活躍できる環境を整備します。
「ビジネスモデルの進化」では、事業承継をはじめとした法人のお客さまの課題解決や成長支援に向けて、ぐんぎんコンサルティング株式会社やぐんま地域共創パートナーズ株式会社をはじめグループ総合力を発揮し、お客さまの価値実現に取り組みます。個人のお客さま向けでも、相続・資産承継や資産形成などのご相談に幅広く対応できるよう、ぐんぎん証券株式会社との連携強化をはじめ、当行およびぐんぎん証券双方の組織・人員体制の強化を進めてまいります。
更には、TSUBASAアライアンスやフィンクロス・パートナーシップなどの連携スキームにより、協働しながら多様な知見を取り入れることで従来からの金融サービスの高度化・深化を図るとともに、地域課題解決やお客さまへの幅広いサポートの実現に向け事業領域の拡大にも取り組んでまいります。また、私たちの事業活動やサービスを通じ地域のお客さまとともに、温室効果ガス排出量の削減や環境負荷の低減にも取り組み、SDGs達成や持続可能な社会の構築にも貢献してまいります。