有価証券報告書-第13期(2023/04/01-2024/03/31)
(2)戦略
①社会的価値創出に向けたポジティブインパクトの創造
社会的価値は当グループの企業活動が生み出す場合もありますが、多くはステークホルダーからその先のステークホルダーへ影響が連鎖する中で形成されていくと考えています。SDGsの実現に貢献し最終的に経済(豊かさ)、社会(人間)、環境(地域)に対する良い影響(ポジティブインパクトの創造とネガティブインパクトの抑制)につながる活動が、当グループにおける社会課題解決型ビジネスです。 当グループは「信託」の多彩な機能を活用し、「資金・資産・資本の好循環」をキーワードに、個人・企業・投資家それぞれに生じる社会課題に対して付加価値の高い商品・サービスをお客さまに提供します。上記のマテリアリティの特定においても考慮した社会課題等を踏まえ、当グループでは、2030年に実現したい社会や当社の姿を見据え、好循環を促進する3つの重点戦略領域として、「人生100年時代」「ESG/サステナブル経営」「地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)」を設定しています。 社会課題がますます高度化・複雑化するなか、当グループ固有の経営資源や顧客基盤だけでは社会課題を解決することは困難です。さまざまなステークホルダーとの連携やプラットフォームの構築を行い、新たな市場や機会を創出します。また、これらを実現するために、人的資本や設備投資を強化していきます。
②気候変動にかかる戦略
イ.気候変動対応に関する考え方
気候変動は、グローバルな経済・社会の持続性を脅かす最も深刻な環境問題の一つですが、当社のマテリアリティにおいては、「気候変動」を含む「ESG/サステナブル経営」をインパクトマテリアリティとして特定しています。 当グループでは、気候変動問題を優先的に対応する社会課題と位置付けており、この問題の解決には、既存の法制度や生活スタイル、企業活動など複雑な利害関係に向き合いながら、カーボンニュートラル社会への移行(トランジション)を着実に進めることが重要と考えます。「気候変動」に対しては、グループ共通のプリンシプル(行動原則)である「気候変動対応行動指針」のもと、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に認識し、信託グループの多彩なビジネスを通じて、ネガティブな影響の最小化とポジティブな影響の最大化に取り組んでいく方針です。
ロ.気候変動に関するリスクの認識
当グループでは、中長期的な気候変動や異常気象による社会インフラ・自然等の物理的被害(物理的リスク)や気候変動に関連した政策変更・気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等による低炭素社会への急速な移行(移行リスク)を気候変動関連リスクと定義し、自らの事業活動による温室効果ガス(GHG)排出の抑制や、セクターポリシー等に基づく規律ある投融資のリスク管理・モニタリングに努めています。三井住友信託銀行では、移行リスク及び物理的リスクが将来にわたって投融資ポートフォリオに与える影響を把握すべく、シナリオ分析を実施しており、これらをビジネスモデルや戦略の持続可能性に関する確認、及び投融資先のお客さまとの気候変動に関する対話とエンゲージメントのツールと捉え、ポートフォリオ特性を踏まえつつ分析に取り組んでおります。
(ⅰ)移行リスク
移行リスク分析では、2023年度に、海外の事業法人を対象に加え、NGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)の気候変動シナリオごとに、2050年までの信用格付の変動シミュレーションを実施の上、与信関係費用にどのような影響が生じるかを分析しました。分析手法としては、前年同様、全セクターをカバーするセクターレベルのトップダウン方式による分析に加え、移行リスクヒートマップにおいて移行リスクが高いと判定されるセクターについては、個社レベルの財務シミュレーション(ボトムアップ方式)を組み合わせた信用格付シミュレーション分析を実施しました。
結果として、「Current Policy(3.0℃シナリオ)」との比較において、NetZero2050(1.4℃シナリオ)では2050年までの累計ベースで903億円、同様にBelow 2.0(1.6℃シナリオ)では520億円の与信関係費用が増加する試算結果となりました。
(ⅱ)物理的リスク
物理的リスクについては、三井住友信託銀行の与信ポートフォリオは大企業を中心とした事業法人と不動産、プロジェクトなどのアセットファイナンスの比率が高いこと、また、事業法人については入手可能な分析対象資産の位置情報データが限定的であることなどから、住宅ローンや不動産ファイナンス、プロジェクトファイナンスなど、資産の位置情報をもとにした分析が可能なアセットファイナンスを優先してシナリオ分析を実施しております。2023年度においては、ファイナンスを提供する太陽光発電プロジェクトの位置情報をもとに、土砂災害、積雪量の長期的予想モデルを用いて、案件ごとに将来の被災リスクの時系列変化を分析し、信用格付を用いた与信関係費用のシミュレーションを行っています。なお、プロジェクトファイナンスについては、取組期間、返済スケジュールを反映する簡便なモデル化を行った上で、取引期間中に被災する確率を計算する方法を取っています。
分析にあたっては、株式会社ウェザーニューズとの協働により、土砂災害に関しては、NASA(アメリカ航空宇宙局)の土砂災害モデル及びNIES2020(国立環境研究所)の降水量を用いて、2100年までの推計値を算出しています。積雪に関しては、気象研究所大気大循環モデル(MRI-AGCM3.2/NHRCM)を採用し、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベースであるdatabase for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)上の、2℃、4℃シナリオにおける積雪深、積雪層全層の積雪相当水量を用いて、2100年までのリスクを分析しています。与信関係費用の試算においては、被災した際の想定損害率について十分なデータ蓄積がないことから、被災した場合に一定期間稼働が停止するなど効率が低下し、信用格付の低下を通じて発生する与信関係費用を推計しています。
結果として、推計される与信関係費用額は、4℃シナリオにおいて2100年までの累積で4億円程度にとどまると試算されました。
ハ.気候変動に関する機会の認識
脱炭素社会の実現に向け、社会構造・産業構造が大きく変わり始めるなか、グリーン技術開発や設備投資には巨額の資金が必要となります。政府の試算によると、日本国内だけでも、2030年までに約150兆円の資金需要が発生するといわれています。米国では、インフレ抑制法(通称IRA法)が成立し、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)など気候変動に関連する産業に対して税額控除や補助金を提供し、10年間で3,690億ドルを米国政府が支援する予定です。これに欧州連合(EU)も追随し、グリーンディール産業計画を発表するなど、世界各国がGX(グリーントランスフォーメーション)投資を促進する政策を打ち出しています。
このような莫大な資金需要に応えるためには、官民で資金を出し合うブレンデッドファイナンスが必要不可欠です。当グループはこのような機会を逃すことなく、金融機関としての役割を果たし、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を目指していきます。
<各セクターにおける機会の認識>
(注)1.VPP(バーチャルパワープラント)とは、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供することを指します。
2.需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることを指します。
3.CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、CO2の回収・利用・貯留のことを指します。
4.一般送配電事業者が保有する送配電ネットワークを使用して、工場等に自家用発電設備を保有する需要家が当該発電設備を用いて発電した電気を、別の場所にある当該需要家や当該需要家と密接な関係性を有する者の工場等の需要地に送電する制度を指します。
5.PPA(Power Purchase Agreement)とは、需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を購入する契約を指し、オフサイト・コーポレートPPAとは、需要場所から離れた場所に発電設備を設置し電力小売事業者を経由して需要家に電力供給を行うモデルを指します。
ニ.カーボンニュートラルに向けた移行計画
当グループは、全世界で加速するGHG削減等の社会課題解決に向け、2021年10月にカーボンニュートラル宣言を公表するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて着実に歩みを進めていくために、ネットゼロを目指す銀行間の国際的なイニシアティブであるNZBA(Net-Zero Banking Alliance)に加盟しました。また、グループ会社である三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社は2021年7月、日興アセットマネジメント株式会社は同年11月に、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロを目指す資産運用会社によるグローバルなイニシアティブであるNZAMI(Net-Zero Asset Managers initiative)に加盟し、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロの実現を目指していきます。両社はそれぞれグローバルに資産運用を展開する機関投資家として、投資先企業などのGHG排出量ネットゼロ実現に向けた施策を検討しています。
また、当グループは、2023年10月にカーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しました。信託グループならではの幅広い業務領域をカバーするため、銀行・運用・信託、及び自社グループ(当グループの事業活動に伴うGHG排出)のセグメントごとの特性を踏まえた構成としています。 ガバナンス・基盤の強化を行い、指標・目標を設定するとともに、銀行・運用・信託において、サーベイや専門性・パートナーシップ等の付加価値機能をフル活用し、各ステークホルダーとの対話を通じた経営課題・ニーズの把握や、課題解決に向けた幅広いソリューションを提供していきます。また、自社グループにおいても、エネルギー使用量の削減及び再生可能エネルギーへの転換を促進するとともに、GHG排出量の計測範囲の拡大や、良質なカーボンクレジットの活用検討等に取り組んでいきます。 これらを推進することで、当グループのGHG排出量ネットゼロ達成はもとより、お客さまの脱炭素化に貢献し、脱炭素社会の実現を目指します。移行計画の全体像及び具体的な内容は以下のとおりです。
<カーボンニュートラルに向けた移行計画の全体像>
◆銀行(NZBA)
◆運用(NZAMI)
◆信託
◆自社グループ
(注)2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXヘの挑戦を行い、現在及び未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取り組みを行う企業群と官・学と共に協働する組織です。
なお、当社では、カーボンニュートラルに向けた取組推進のため、以下のガバナンス・基盤を強化していく計画です。
③人的資本にかかる戦略:人事戦略とWell-beingの向上
当グループの掲げるパーパスを実現し、社会課題への取り組みを通じた資金・資産・資本の好循環の促進と市場の創出による成長を図るためには、非財務資本、その中でも人的資本の充実が重要と考えており、当社のマテリアリティにおいては「人的資本」をガバナンス・経営基盤マテリアリティとして特定しています。社員は価値創造の源泉となる重要な資本の一つ(人的資本)であり、社会的価値創出及び経済的価値創出の重要な担い手です。人的資本への投資による社員のWell-beingの向上を通じて、お客さまや社会に対する価値創出が実現し、社会の一人ひとりのWell-being向上に繋がります。その結果として、社会の成長とともに当グループの企業価値も向上し、それが社員一人ひとりの励みや誇り、やりがいといった社員のWell-being向上をもたらす「好循環」を創り上げると考えております。

価値創造の起点となる社員のWell-beingについて、当グループでは「イ.心身ともに健康で、ロ.会社のパーパスに共感しながら、ハ.多様性を認め合う良好な人間関係のもと、ニ.自分の価値や強みを活かして、働く幸せを追求していける状態」と定義し、社員のWell-beingを追求することで人的資本の向上を実現してまいります。

イ.健康経営(心身ともに健康)
当グループでは、社員が健康と幸福を実感し、持続的に能力を発揮することで人的資本の向上を目指しております。そうした心身両面での健康推進を目指した取り組みが評価され、当グループは7年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されております。
(注)プレゼンティーズムとは、出勤しているものの、何らかの健康問題によって業務効率が低下している状態、アブセンティーズムとは、仕事を休業ないし欠勤している状態を指します。
ロ.エンゲージメントの強化(会社のパーパスに共感)
当グループでは、社員が会社のパーパスに共感し、経営課題や社会的使命に取り組むことで、人的資本の向上を目指しております。
(注)1.FINANCIAL WELL-BEINGとは「お金や資産について、不測の事態に対する備えと将来に向けた準備ができて、安心できる状態」を指します。
2.株式交付信託と譲渡制限付株式の利点を組み合わせた社員向け株式報酬制度を指します。
ハ.組織力の強化(多様性を認め合う良好な人間関係)
当グループでは、「個々人の多様性と創造性を経営に生かす」ことを重視しており、多様な属性・背景を有する社員が公正・公平(エクイティ)な支援の下、その多様性と創造性が組織の付加価値となるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの概念そのものを経営理念(ミッション)に掲げ、人的資本の向上を目指しております。
ニ.人材力の強化(自分の価値や強みを発揮)
当グループでは、「人材育成No.1金融グループ」を目標として掲げており、2018年4月に制定した「人材育成方針」に基づき、各社員が未来に向けたありたい姿を自ら考え、実現に向けて自ら行動する「自律的なキャリア型人材」の育成に注力することで、人的資本の向上を目指しております。
①社会的価値創出に向けたポジティブインパクトの創造
社会的価値は当グループの企業活動が生み出す場合もありますが、多くはステークホルダーからその先のステークホルダーへ影響が連鎖する中で形成されていくと考えています。SDGsの実現に貢献し最終的に経済(豊かさ)、社会(人間)、環境(地域)に対する良い影響(ポジティブインパクトの創造とネガティブインパクトの抑制)につながる活動が、当グループにおける社会課題解決型ビジネスです。 当グループは「信託」の多彩な機能を活用し、「資金・資産・資本の好循環」をキーワードに、個人・企業・投資家それぞれに生じる社会課題に対して付加価値の高い商品・サービスをお客さまに提供します。上記のマテリアリティの特定においても考慮した社会課題等を踏まえ、当グループでは、2030年に実現したい社会や当社の姿を見据え、好循環を促進する3つの重点戦略領域として、「人生100年時代」「ESG/サステナブル経営」「地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)」を設定しています。 社会課題がますます高度化・複雑化するなか、当グループ固有の経営資源や顧客基盤だけでは社会課題を解決することは困難です。さまざまなステークホルダーとの連携やプラットフォームの構築を行い、新たな市場や機会を創出します。また、これらを実現するために、人的資本や設備投資を強化していきます。
| 重点戦略領域 | 取り組み |
| 人生100年時代 | ・認知症、高齢者の独居等、超高齢社会における資産管理上の課題へのサポート ・現役世代の資産形成をサポート、個人金融資産の増大に貢献 |
| ESG/サステナブル経営 | ・脱炭素社会への移行等に向けたサステナブルファイナンスへの取り組み |
| 地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン (ネットワーキング) | ・再生エネルギーの導入と地域創生を念頭においた地域課題へのアプローチ ・投資のさまざまなプロセスにおける効率的かつ高付加価値のサービス提供、インベストメントチェーンの発展をサポート |
②気候変動にかかる戦略
イ.気候変動対応に関する考え方
気候変動は、グローバルな経済・社会の持続性を脅かす最も深刻な環境問題の一つですが、当社のマテリアリティにおいては、「気候変動」を含む「ESG/サステナブル経営」をインパクトマテリアリティとして特定しています。 当グループでは、気候変動問題を優先的に対応する社会課題と位置付けており、この問題の解決には、既存の法制度や生活スタイル、企業活動など複雑な利害関係に向き合いながら、カーボンニュートラル社会への移行(トランジション)を着実に進めることが重要と考えます。「気候変動」に対しては、グループ共通のプリンシプル(行動原則)である「気候変動対応行動指針」のもと、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に認識し、信託グループの多彩なビジネスを通じて、ネガティブな影響の最小化とポジティブな影響の最大化に取り組んでいく方針です。
ロ.気候変動に関するリスクの認識
当グループでは、中長期的な気候変動や異常気象による社会インフラ・自然等の物理的被害(物理的リスク)や気候変動に関連した政策変更・気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等による低炭素社会への急速な移行(移行リスク)を気候変動関連リスクと定義し、自らの事業活動による温室効果ガス(GHG)排出の抑制や、セクターポリシー等に基づく規律ある投融資のリスク管理・モニタリングに努めています。三井住友信託銀行では、移行リスク及び物理的リスクが将来にわたって投融資ポートフォリオに与える影響を把握すべく、シナリオ分析を実施しており、これらをビジネスモデルや戦略の持続可能性に関する確認、及び投融資先のお客さまとの気候変動に関する対話とエンゲージメントのツールと捉え、ポートフォリオ特性を踏まえつつ分析に取り組んでおります。
(ⅰ)移行リスク
移行リスク分析では、2023年度に、海外の事業法人を対象に加え、NGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)の気候変動シナリオごとに、2050年までの信用格付の変動シミュレーションを実施の上、与信関係費用にどのような影響が生じるかを分析しました。分析手法としては、前年同様、全セクターをカバーするセクターレベルのトップダウン方式による分析に加え、移行リスクヒートマップにおいて移行リスクが高いと判定されるセクターについては、個社レベルの財務シミュレーション(ボトムアップ方式)を組み合わせた信用格付シミュレーション分析を実施しました。
結果として、「Current Policy(3.0℃シナリオ)」との比較において、NetZero2050(1.4℃シナリオ)では2050年までの累計ベースで903億円、同様にBelow 2.0(1.6℃シナリオ)では520億円の与信関係費用が増加する試算結果となりました。
(ⅱ)物理的リスク
物理的リスクについては、三井住友信託銀行の与信ポートフォリオは大企業を中心とした事業法人と不動産、プロジェクトなどのアセットファイナンスの比率が高いこと、また、事業法人については入手可能な分析対象資産の位置情報データが限定的であることなどから、住宅ローンや不動産ファイナンス、プロジェクトファイナンスなど、資産の位置情報をもとにした分析が可能なアセットファイナンスを優先してシナリオ分析を実施しております。2023年度においては、ファイナンスを提供する太陽光発電プロジェクトの位置情報をもとに、土砂災害、積雪量の長期的予想モデルを用いて、案件ごとに将来の被災リスクの時系列変化を分析し、信用格付を用いた与信関係費用のシミュレーションを行っています。なお、プロジェクトファイナンスについては、取組期間、返済スケジュールを反映する簡便なモデル化を行った上で、取引期間中に被災する確率を計算する方法を取っています。
分析にあたっては、株式会社ウェザーニューズとの協働により、土砂災害に関しては、NASA(アメリカ航空宇宙局)の土砂災害モデル及びNIES2020(国立環境研究所)の降水量を用いて、2100年までの推計値を算出しています。積雪に関しては、気象研究所大気大循環モデル(MRI-AGCM3.2/NHRCM)を採用し、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベースであるdatabase for Policy Decision making for Future climate change (d4PDF)上の、2℃、4℃シナリオにおける積雪深、積雪層全層の積雪相当水量を用いて、2100年までのリスクを分析しています。与信関係費用の試算においては、被災した際の想定損害率について十分なデータ蓄積がないことから、被災した場合に一定期間稼働が停止するなど効率が低下し、信用格付の低下を通じて発生する与信関係費用を推計しています。
結果として、推計される与信関係費用額は、4℃シナリオにおいて2100年までの累積で4億円程度にとどまると試算されました。
| リスク種別 | セクター | 主な分析結果 |
| 移行リスク (2020年度) | 電力セクター | 電力会社が再生可能エネルギー発電への投資を行わない場合、信用格付が平均2~3ノッチ悪化 |
| 物理的リスク (2020年度) | 住宅ローン | 与信関係費用が2019年比70億円増加 |
| 移行リスク (2021年度) | 海運セクター | 代替燃料シフトによるコスト増、炭素価格の動向など想定シナリオにより財務影響に大きな差異を認識。投融資先のお客さまと意見交換を実施 |
| 移行リスク (2022年度) | 国内全セクター (国内事業法人) | Current Policy(3.0℃シナリオ)と比べ、与信関係費用が2050年までの累計で最大135億円増加するが、財務への影響は軽微 |
| 物理的リスク (2022年度) | 不動産セクター (ノンリコース・ローン) | 信用格付に与える影響は限定的。都心部での被害想定額の推計精緻化や地下のインフラ被害とその影響長期化などの潜在的なリスクについて課題認識 |
| 物理的リスク (2022年度) | 不動産セクター (J-REIT) | 与信関係費用は年間最大0.2億円増加するが、影響は軽微 |
| 移行リスク (2023年度) | 全セクター (国内・海外事業法人) | Current Policy(3.0℃シナリオ)と比べ、与信関係費用が2050年までの累計で最大903億円増加するが、財務への影響は軽微 |
| 物理的リスク (2023年度) | 国内太陽光発電プロジェクト | 2100年までの土砂災害、雪害による累計与信関係費用が4億円程度と財務的影響は軽微。また、リスクの高い案件の地理的分散、付保などの対策の十分性を確認 |
ハ.気候変動に関する機会の認識
脱炭素社会の実現に向け、社会構造・産業構造が大きく変わり始めるなか、グリーン技術開発や設備投資には巨額の資金が必要となります。政府の試算によると、日本国内だけでも、2030年までに約150兆円の資金需要が発生するといわれています。米国では、インフレ抑制法(通称IRA法)が成立し、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)など気候変動に関連する産業に対して税額控除や補助金を提供し、10年間で3,690億ドルを米国政府が支援する予定です。これに欧州連合(EU)も追随し、グリーンディール産業計画を発表するなど、世界各国がGX(グリーントランスフォーメーション)投資を促進する政策を打ち出しています。
このような莫大な資金需要に応えるためには、官民で資金を出し合うブレンデッドファイナンスが必要不可欠です。当グループはこのような機会を逃すことなく、金融機関としての役割を果たし、社会的価値創出と経済的価値創出の両立を目指していきます。
<各セクターにおける機会の認識>
| 電力セクター | エネルギー源 | ・再生可能エネルギーの拡大(太陽光発電、風力発電など) ・グリーン水素・アンモニア等に係る非化石のバックアップ電源の実現 ・原子力発電の優位性向上 ・電力系統の増強 |
| 製品サービス・市場 | ・EVや蓄電池の普及・拡大など、脱炭素化の潮流による社会全体での電化拡大と電力需要増加 ・分散リソースの有効活用に資するVPP事業(注1)、デマンドレスポンス(注2)など | |
| 石油・ガスセクター | 資源の効率性 | ・資源循環社会への移行に伴う低環境負荷製品の需要増加やケミカルリサイクル事業の拡大 |
| エネルギー源 | ・再生可能エネルギー(風力発電事業)ほか低炭素エネルギーの需要増加 ・グリーン水素、アンモニア、合成燃料、バイオ燃料などのゼロエミッションエネルギーの供給、サプライチェーン構築 | |
| 製品サービス・市場 | ・お客さまの行動変化によるeモビリティー関連サービス事業拡大、及びカーシェア等の新たなサービス事業拡大 ・CCUS(注3)技術の進展によるCO2排出削減事業の拡大 ・良質なカーボンクレジットの需要拡大 | |
| 不動産セクター | 資源の効率性 | ・資源循環社会への移行に伴う低環境負荷製品の需要増加(低炭素セメント、木造建築、リサイクル建材など |
| エネルギー源 | ・再生可能エネルギー(創エネ、自己託送(注4)、コーポレートPPA(注5)など)の需要増加 ・省エネ・創エネ ・蓄電設備の需要増加 | |
| 製品サービス・市場 | ・建設時の資材運搬等におけるEV関連サービス事業拡大、及びカーシェア等の新たなサービス事業拡大 ・建築物の建設時、運用時、解体時のGHG排出量の可視化・管理に向けたシステム開発・導入の拡大 ・環境不動産の認証制度・評価指標の高度化 | |
| 海運セクター | 資源の効率性 | ・資源循環社会への移行に伴う低環境負荷製品の需要増加(低炭素スチール、リサイクル材など) |
| エネルギー源 | ・グリーン水素・アンモニア、合成燃料、バイオ燃料などのゼロエミッションエネルギーの供給、サプライチェーン構築 ・電気運搬船の商用化・拡大 | |
| 製品サービス・市場 | ・お客さまの行動変化によるゼロエミッション輸送サービスの需要拡大 ・良質なカーボンクレジットの需要拡大 |
(注)1.VPP(バーチャルパワープラント)とは、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供することを指します。
2.需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させることを指します。
3.CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)とは、CO2の回収・利用・貯留のことを指します。
4.一般送配電事業者が保有する送配電ネットワークを使用して、工場等に自家用発電設備を保有する需要家が当該発電設備を用いて発電した電気を、別の場所にある当該需要家や当該需要家と密接な関係性を有する者の工場等の需要地に送電する制度を指します。
5.PPA(Power Purchase Agreement)とは、需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を購入する契約を指し、オフサイト・コーポレートPPAとは、需要場所から離れた場所に発電設備を設置し電力小売事業者を経由して需要家に電力供給を行うモデルを指します。
ニ.カーボンニュートラルに向けた移行計画
当グループは、全世界で加速するGHG削減等の社会課題解決に向け、2021年10月にカーボンニュートラル宣言を公表するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて着実に歩みを進めていくために、ネットゼロを目指す銀行間の国際的なイニシアティブであるNZBA(Net-Zero Banking Alliance)に加盟しました。また、グループ会社である三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社は2021年7月、日興アセットマネジメント株式会社は同年11月に、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロを目指す資産運用会社によるグローバルなイニシアティブであるNZAMI(Net-Zero Asset Managers initiative)に加盟し、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロの実現を目指していきます。両社はそれぞれグローバルに資産運用を展開する機関投資家として、投資先企業などのGHG排出量ネットゼロ実現に向けた施策を検討しています。
また、当グループは、2023年10月にカーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しました。信託グループならではの幅広い業務領域をカバーするため、銀行・運用・信託、及び自社グループ(当グループの事業活動に伴うGHG排出)のセグメントごとの特性を踏まえた構成としています。 ガバナンス・基盤の強化を行い、指標・目標を設定するとともに、銀行・運用・信託において、サーベイや専門性・パートナーシップ等の付加価値機能をフル活用し、各ステークホルダーとの対話を通じた経営課題・ニーズの把握や、課題解決に向けた幅広いソリューションを提供していきます。また、自社グループにおいても、エネルギー使用量の削減及び再生可能エネルギーへの転換を促進するとともに、GHG排出量の計測範囲の拡大や、良質なカーボンクレジットの活用検討等に取り組んでいきます。 これらを推進することで、当グループのGHG排出量ネットゼロ達成はもとより、お客さまの脱炭素化に貢献し、脱炭素社会の実現を目指します。移行計画の全体像及び具体的な内容は以下のとおりです。
<カーボンニュートラルに向けた移行計画の全体像>

◆銀行(NZBA)
| 時期 | 現在~2050年 | ||
| 戦略 | (ⅰ)エンゲージメント方針 | お客さまへの協業型脱炭素エンゲージメント戦略 | ・お客さまとの継続的なエンゲージメント(対話)を通じて、脱炭素化に向けた課題を把握し、ソリューションを開発・提供することで、お客さまのGHG排出量削減に貢献していきます。 ・電力、石油・ガス、不動産、海運、鉄鋼、自動車等の高排出セクターのお客さまを中心に2023年度末までに50社とのエンゲージメントを実施しており、2025年度までに150社とのエンゲージメントを予定しています。 |
| 地域社会との関わり方 | ・お客さまを通じた脱炭素化に加え、地域社会に対しても、当グループの多彩な機能を提供することで、企業、地域社会の双方向での脱炭素化を加速させていきます。 ・大学をはじめとする研究機関とも、当グループの機能提供や共同研究を通じて、革新的な技術の社会実装を支援します。 | ||
| イニシアティブ・その他ステークホルダーとの関わり方 | ・イニシアティブへの参加・協議を通じて、協働エンゲージメントやルールメイキングについて積極的に関与していきます。 ・困難な社会課題解決のために、お客さま以外のステークホルダーの皆さまとの対話を重視します。 | ||
| (ⅱ)脱炭素ビジネスの推進 | サステナブルファイナンスの拡大 | ・2023年にサステナブルファイナンスの2030年度までの累計取組目標を10兆円から15兆円(インパクトエクイティ2.5兆円を含む)に拡大し、お客さまの脱炭素化、脱炭素社会の実現に向けた資金面での支援を進めています。 | |
| TBFチームによる「技術×政策×金融」 | ・2021年にサステナビリティ推進部内に組成したテクノロジー・ベースド・ファイナンス(TBF)チームにおける「技術への深い知見」に、「政策的観点」や「信託銀行の多彩な機能」を組み合わせることで、社会課題解決を目指します。 | ||
| インパクトエクイティの活用 | ・インパクトエクイティによる社会課題解決に向けた資金提供とともに出資先の技術等を活用したソリューションを提供していきます。 | ||
| セクター戦略 | ・2030年中間削減目標を設定したセクターは、NZBAに基づき、セクター戦略を策定の上、当該セクターの脱炭素化に向けた取り組みを進めていきます。(電力、石油・ガス、不動産、海運セクターは策定済、鉄鋼、自動車セクターは2024年10月までに策定予定) | ||
| ERMコンサルティング | ・2024年4月に世界最大のサステナビリティ専門コンサルティング企業であるERMグループと、「ERM SuMi TRUST コンサルティング株式会社」を設立し、ERMグループのグローバルな知見・技術を活かした、質の高い調査・分析・コンサルティングを提供し、法人のお客さまの脱炭素・トランジションに関する経営課題の解決に貢献していきます。 | ||
| (ⅲ)プロセスの高度化 | 気候変動対応プロセスの運営開始 | ・気候変動移行リスク・セクターヒートマップを基に、GHG排出量削減目標を設定する重要なセクターを特定し、中間削減目標を設定のうえ、セクターポリシー、与信審査及びリスク評価・リスク低減措置に関する各種基準を設定・運営しています。 | |
| 気候変動シナリオ分析の範囲拡大 | ・信用リスクへの影響を把握するために、移行リスク、物理的リスクのシナリオ分析を段階的に拡大しています。2023年度は、海外事業法人の移行リスクと、国内の太陽光発電プロジェクトファイナンスの物理的リスクを分析しました。 | ||
| 指標・目標 | ・投融資ポートフォリオにおけるGHG目標(2030年中間削減目標(セクター別)、2050年ネットゼロ) ・金額目標(サステナブルファイナンス、石炭火力発電所向け融資) | ||
◆運用(NZAMI)
| 時期 | 現在~2050年 | |
| 戦略 | (ⅰ)三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社 | ・気候変動をESGマテリアリティの1項目として特定しており、投資先企業の「気候変動に関するリスクと機会」を踏まえたエンゲージメントやイニシアティブ活動、議決権行使を通じて、脱炭素社会への移行を後押しします。 |
| (ⅱ)日興アセットマネジメント株式会社 | ・アジア企業で数少ない英国スチュワードシップ・コード署名機関として、組織体制、人員両面で、投資におけるESG対応を強化しています。グローバルネットワークを活かした商品提供を推進し、脱炭素社会への移行を後押しします。 | |
| 指標・目標 | GHG目標(2030年中間削減目標、2050年ネットゼロ) | |
◆信託
| 時期 | 現在~2050年 | |
| 戦略 | (ⅰ)投資家ビジネス | ・投資家のお客さま、運用会社、投資先企業に対してコンサルティングやモニタリング、プロダクト等のESG機能の提供を行うことで、ESG投資を推進・強化し、日本経済全体のサステナブルな発展・成長に貢献していきます。 |
| (ⅱ)不動産ビジネス | ・不動産ESGサーベイによる立ち位置の可視化を起点として、環境認証支援や再生可能エネルギーの提供・マッチング等の支援を行い、受託物件はもとより、不動産セクター全体の脱炭素化に貢献していきます。 | |
◆自社グループ
| 時期 | 現在~2030年 | |
| 戦略 | (ⅰ)2030年目標と進捗状況 | ・当グループでは、2030年までのGHG排出量Scope1・2ネットゼロ目標を掲げ、着実に削減を進めています。 |
| (ⅱ)GXリーグ(注)への参画 | ・当グループのGHG排出量Scope1・2の約9割を占める三井住友信託銀行はGXリーグへ参画し、2025年度中間削減目標を設定しました。 | |
| (ⅲ)今後の方針 | ・グループ会社を含めたScope3の計測範囲を拡大し、再生材料や低排出製品を積極的に採用していきます。 ・環境データの信頼性を確保するため、GHG排出量について第三者保証の範囲拡大を検討していきます。 ・自助努力により最大限、排出量の削減に取り組み、削減困難な部分は、良質なカーボンクレジットの活用も検討していきます。 | |
| 指標・目標 | GHG目標(2025年度中間削減目標、2030年ネットゼロ) | |
(注)2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据えて、GXヘの挑戦を行い、現在及び未来社会における持続的な成長実現を目指す企業が同様の取り組みを行う企業群と官・学と共に協働する組織です。
なお、当社では、カーボンニュートラルに向けた取組推進のため、以下のガバナンス・基盤を強化していく計画です。
| ガバナンス・基盤 | (ⅰ)ガバナンス体制・リスクアペタイト指標の設定 | ・当グループは取締役会を中心とした監督・執行のガバナンス体制を構築し、リスクアペタイト指標を設定しリスクアペタイトフレームワークを活用してモニタリングを行っています。 |
| (ⅱ)人材育成・サステナビリティ活動 | ・社員の環境意識と脱炭素に係る知見向上を目的とした人材育成プログラムの強化や、社員参加型のサステナビリティ活動を全国の営業店部で展開し、社員への啓発活動に取り組んでいます。 |
③人的資本にかかる戦略:人事戦略とWell-beingの向上
当グループの掲げるパーパスを実現し、社会課題への取り組みを通じた資金・資産・資本の好循環の促進と市場の創出による成長を図るためには、非財務資本、その中でも人的資本の充実が重要と考えており、当社のマテリアリティにおいては「人的資本」をガバナンス・経営基盤マテリアリティとして特定しています。社員は価値創造の源泉となる重要な資本の一つ(人的資本)であり、社会的価値創出及び経済的価値創出の重要な担い手です。人的資本への投資による社員のWell-beingの向上を通じて、お客さまや社会に対する価値創出が実現し、社会の一人ひとりのWell-being向上に繋がります。その結果として、社会の成長とともに当グループの企業価値も向上し、それが社員一人ひとりの励みや誇り、やりがいといった社員のWell-being向上をもたらす「好循環」を創り上げると考えております。

価値創造の起点となる社員のWell-beingについて、当グループでは「イ.心身ともに健康で、ロ.会社のパーパスに共感しながら、ハ.多様性を認め合う良好な人間関係のもと、ニ.自分の価値や強みを活かして、働く幸せを追求していける状態」と定義し、社員のWell-beingを追求することで人的資本の向上を実現してまいります。

イ.健康経営(心身ともに健康)
当グループでは、社員が健康と幸福を実感し、持続的に能力を発揮することで人的資本の向上を目指しております。そうした心身両面での健康推進を目指した取り組みが評価され、当グループは7年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されております。
| (ⅰ)働き方の最適化 | 当グループでは、「多様な働き方とワークライフバランスの実現」に向けて、IT投資強化や業務プロセス改革による生産性向上と時間外労働の削減、また、時差出勤や在宅勤務等、柔軟な働き方推進への取り組みを行っています。三井住友信託銀行株式会社では、勤務間インターバル11時間の導入や計画的な休暇取得を奨励しており、有給休暇取得日数、取得率ともに上昇しております。更なる働き方の最適化に向け、グループでの勤務間インターバル11時間の導入や、三井住友信託銀行株式会社では、有給休暇取得率目標の設定を検討しております。 |
| (ⅱ)健康マネジメント | 当グループでは、心身の健康推進へ、研修などを通じた啓蒙活動を行っているほか、各事業所へ産業医を配置し、きめ細かい健康管理・健康指導を行っております。三井住友信託銀行株式会社では、年1回の健康診断の受診に加え、健康管理システムを導入し、社員ごとの個別指導を行うことで、再検査受診率は上昇しております。また、心の健康では、ストレスチェックやプレゼンティーズム、アブセンティーズム(注)の測定により社員の状態を把握しているほか、カウンセラーの設置や各種セミナーの開催を通じて、心の健康維持に努めております。今後も、社員の健康維持・向上に力を入れ、人生100年時代にふさわしい健康経営の推進を図ってまいります。 |
(注)プレゼンティーズムとは、出勤しているものの、何らかの健康問題によって業務効率が低下している状態、アブセンティーズムとは、仕事を休業ないし欠勤している状態を指します。
ロ.エンゲージメントの強化(会社のパーパスに共感)
当グループでは、社員が会社のパーパスに共感し、経営課題や社会的使命に取り組むことで、人的資本の向上を目指しております。
| (ⅰ)パーパスの浸透 | 当グループでは、全社的なパーパスの浸透に取り組んでおり、三井住友信託銀行株式会社では、パーパスのより一層の浸透を目指し、社長自らがパーパスに込めた思いを全社員に伝える社長キャラバンや、全課長・チーム長を対象とした社長との対話型オンライン講話、次世代の育成を目的とした信託FR(Future Generations Relations)座談会を開催するなど、全社的なパーパス浸透を図っております。 |
| (ⅱ)やりがい・働きがいを生む風土 | 当グループでは、「全社員がやりがいを持って活躍し成長できる機会の提供」に向け、チャレンジと学びを後押しする風土構築とコミュニケーションの活性化に取り組んでおります。当グループは2024年に創業100年を迎えましたが、100周年記念事業でも、関連会社24社から443人(2024年3月末時点)の社員をアンバサダーとして選出し、社員が主導して事業を推進する等、やりがい・働きがいを生む風土の構築を意識しております。三井住友信託銀行株式会社では、店部長自らが講師を務めて自身の経験や学びを伝達する店部長塾を開催している他、1on1コーチング研修を通じたマネジメント層のコミュニケーションスキル向上により、心理的安全が担保された風通しの良い職場環境の構築に努めております。また、社員意識調査やパルスサーベイを導入し、社員の声を経営層やマネジメント層で把握しながら、更なる向上に努めております。結果、満足度は大きく上昇している一方で、活性度は横ばいとなっており、今後は社員の行動の後押しを更に強化してまいります。 |
| (ⅲ)Well-beingの推進 | 当グループでは、2021年4月にWell-being担当役員を設置し、日本経済新聞社主催の「Well-being Initiative」等、産官学連携セッションへ参画しながら、社内外でのWell-being推進活動を強化しております。また、FINANCIAL WELL-BEING(注1)への貢献に取り組み、人生100年時代に、お客さま一人ひとりの幸せに資するベストパートナーを目指しております。その価値創出の担い手である社員自身のFINANCIAL WELL-BEING実現に向けて、三井住友信託銀行株式会社では、年金業務・職域業務で培った高品質な投資教育ノウハウを社員に還元し、社員の資産形成支援を強化しています。2022年度には、社員と会社がベクトルを合わせ、中長期的な成長を追求できる仕組みとして、全社員に対して株式報酬(RS信託(注2))を導入しております。 |
(注)1.FINANCIAL WELL-BEINGとは「お金や資産について、不測の事態に対する備えと将来に向けた準備ができて、安心できる状態」を指します。
2.株式交付信託と譲渡制限付株式の利点を組み合わせた社員向け株式報酬制度を指します。
ハ.組織力の強化(多様性を認め合う良好な人間関係)
当グループでは、「個々人の多様性と創造性を経営に生かす」ことを重視しており、多様な属性・背景を有する社員が公正・公平(エクイティ)な支援の下、その多様性と創造性が組織の付加価値となるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの概念そのものを経営理念(ミッション)に掲げ、人的資本の向上を目指しております。
| (ⅰ)女性活躍推進の取り組み | 当グループでは、2030年までに女性役員比率を30%以上にするという経団連の「2030年30%へのチャレンジ」に賛同し、女性管理職比率のKPIを策定しております。また、三井住友信託銀行株式会社では、全社員向け研修のほか、女性リーダー層を対象とする階層別研修、自律的なキャリア形成を支援するためのキャリアデザイン研修を実施しております。2021年度に導入した、役員自らが女性社員のキャリア形成をサポートする「サポーター役員制度」を継続して実施しておりますが、役員が、マネジメントを担う女性社員のメンターを務めることの効果を実感しております。今後も課長登用を見据えた女性リーダー研修の導入など、女性活躍推進への取り組みを強化してまいります。 | ||||||||
| (ⅱ)多様な人材の活躍推進 | 信託グループ特有の広く深いビジネスフィールドを維持しつつ、成長領域を確立するには、多様な経験とスキルを有する人材群の確保が不可欠と考えており、各種施策を推進しております。
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ニ.人材力の強化(自分の価値や強みを発揮)
当グループでは、「人材育成No.1金融グループ」を目標として掲げており、2018年4月に制定した「人材育成方針」に基づき、各社員が未来に向けたありたい姿を自ら考え、実現に向けて自ら行動する「自律的なキャリア型人材」の育成に注力することで、人的資本の向上を目指しております。
| (ⅰ)自律的なキャリア型人材 | 当グループでは、「信託の基礎知識に加え、複数の専門性を掛け合わせ、何を主軸とし、どのような専門性を融合させるかを自分で考え、自分のキャリアを自ら作る人材」を自律的なキャリア型人材と定義し、人材育成に注力しております。今日の社会システムの相互依存関係は一層拡大・複雑化し、各種課題やリスクは複雑に絡み合っており、お客さまや社会の課題解決には多面的な対応が求められます。各社員が有する基礎力にキャリアを通じて積み上げてきた専門性を融合することで生まれる総合力を駆使することで、未来に適合できる人材を創出してまいります。三井住友信託銀行株式会社では、社員自身の自律的なキャリア形成を支援するため、新入社員向けの業務チャレンジ制度(特定の事業・業務への配属を公募)や、入社5年以内に複数業務を経験する「若手育成プログラム」を実施しております。また、業務公募制度も拡充しており、多くの社員が自ら選択した業務に従事しています。2021年度からは社内副業制度を開始し、関心がある業務に副業として週1日従事することで、業務の垣根を超えた人材やノウハウの融合を図り、能力開発やイノベーションを促進しており、そのメニューも年々拡大しております。 | ||||||||
| (ⅱ)人材育成投資の充実 | 当グループでは社員一人ひとりの目指すキャリアの実現のため、「SuMiTRUST University(スミトラスト ユニバーシティ)」と冠した社内大学を展開しております。外部の教育機関等と提携し、役割に応じた階層別の研修や業務スキル等の向上を目的とした研修から、自己啓発まで多くのコンテンツを整備しております。また、2022年度にはラーニングマネジメントシステム「University+(ユニバーシティプラス)」を開始し、通常業務では接点のない社員が集まるネットワークの場を設けることで、社員同士が知識・経験を共有し、刺激し合うことを通じて、新たな価値を創出することを目指しております。また、IT/デジタル分野を中心に、自ら学べるコンテンツを整備しIT/デジタル人材育成に注力したことも、研修受講者数の増加を後押ししています。一方、時流に合わせて、社内知識の習得を主な目的とする集合研修のうち内容が重複していたものを整理し、一部をオンラインコンテンツとしたことで、集合研修の実施時間は減少しております。 | ||||||||
| (ⅲ)専門人材集団 | 三井住友信託銀行株式会社では、人材ポートフォリオの可視化に関するアセスメントを通じ、当グループのビジネスモデルをより力強く推進するために重要な人材群を特定しています。自律的なキャリア形成と業務経験の蓄積、更には人材育成投資の強化を通じて、人材力を強化してまいります。また、経営の継続に対してクリティカルなポストの特定を行い、社員やキャリア採用も含め後継者を管理する取り組みを行っており、攻めと守りの両面から人材を強化していきます。
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