有価証券報告書-第12期(2022/04/01-2023/03/31)
(2)【戦略】
①社会的価値創出に向けたポジティブインパクトの創造
社会的価値は当グループの企業活動が生み出す場合もありますが、多くはステークホルダーからその先のステークホルダーへ影響が連鎖する中で形成されていくと考えています。SDGsの実現に貢献し最終的に経済(豊かさ)、社会(人間)、環境(地域)に対する良い影響(ポジティブインパクトの創造とネガティブインパクトの抑制)につながる活動が、当グループにおける社会課題解決型ビジネスです。
当グループは「信託」の多彩な機能を活用し、「資金・資産・資本の好循環」をキーワードに、個人・企業・投資家それぞれに生じる社会課題に対して付加価値の高い商品・サービスをお客さまに提供します。上記のマテリアリティの特定においても考慮した社会課題等を踏まえ、当グループでは、2030年に実現したい社会や当社の姿を見据え、好循環を促進する3つの重点戦略領域として、「人生100年時代」「ESG/サステナブル経営」「地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)」を設定しています。
社会課題がますます高度化・複雑化するなか、当社固有の経営資源や顧客基盤だけでは社会課題を解決することは困難です。さまざまなステークホルダーとの連携やプラットフォームの構築を行い、新たな市場や機会を創出します。また、これらを実現するために、人的資本や設備投資を強化していきます。
②気候変動にかかる戦略
イ.気候変動対応に関する考え方
気候変動は、グローバルな経済・社会の持続性を脅かす最も深刻な環境問題の一つですが、当社のマテリアリティにおいては、「気候変動」を含む「ESG/サステナブル経営」をインパクトマテリアリティとして特定しています。「気候変動」に対しては、グループ共通のプリンシプル(行動原則)である「気候変動対応行動指針」のもと、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に認識し、信託銀行グループの多彩なビジネスを通じて、ネガティブな影響の最小化とポジティブな影響の最大化に取り組んでいく方針です。
具体的には、中長期的な気候変動や異常気象による社会インフラ・自然等の物理的被害(物理的リスク)や気候変動に関連した政策変更・気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等による低炭素社会への急速な移行(移行リスク)を気候変動関連リスクと定義し、自らの事業活動による温室効果ガス(GHG)排出の抑制や、セクターポリシー等に基づく規律ある投融資のリスク管理・モニタリングに努めます。同時に、太陽光発電や風力発電等の利活用を促進する投融資や、地産地消型の再生可能エネルギービジネスの確立などの新たな投資機会を創造し、当グループ自身による投資も呼び水に、個人(家計)・企業・投資家間の資金循環に貢献したいと考えています。
ロ.気候変動に関するリスクの認識
当グループでは、移行リスクおよび物理的リスクが将来にわたって投融資ポートフォリオに与える影響を把握すべく、シナリオ分析を実施してきました。
三井住友信託銀行株式会社では、これをビジネスモデルや戦略の持続可能性に関する確認、および投融資先のお客さまとの気候変動に関する対話とエンゲージメントのツールと捉え、ポートフォリオ特性を踏まえつつ分析に取り組んでおります。
(ⅰ)移行リスク
移行リスクについては、2020年より、炭素関連資産に占める比率が高い電力セクターから分析を開始しました。2021年は、投融資ポートフォリオにおける重要性が高い海運セクターを分析対象に選定、財務シミュレーションによるシナリオ分析を実施し、投融資先のお客さまとの意見交換を行いました。
2022年下期の移行リスク分析では、対象セクターを国内全セクターへ、対象先を国内事業法人全融資先へと拡大し、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)の気候変動シナリオごとに2050年までの信用格付の変動シミュレーションを実施のうえ、与信関係費用にどのような影響が生じるかを分析しました。分析手法としては、全セクターをカバーするセクターレベルのトップダウン方式による分析に加え、気候変動移行リスク・セクターヒートマップにおいて移行リスクが高いと判定されるセクターについては、個社レベルの財務シミュレーション(ボトムアップ方式)を組み合わせた信用格付シミュレーション分析を実施しました。
結果としては、移行リスク分析では、「Current Policy(3.0℃シナリオ)」との比較において、「NetZero2050
(1.4℃シナリオ)」では2050年までの累計ベースで92億円、「Delayed Transition(1.6℃シナリオ)」では135億円の与信関係費用が増加する計算となりました。同様に「Below 2.0(1.6℃シナリオ)」では12億円の減少となる計算となりました。
(ⅱ)物理的リスク
物理的リスクについては、急性リスクのシナリオ分析として、2020年に住宅ローン、2022年上期に不動産ノンリコース・ローンに関して、河川洪水による被害を受けた場合のリスクを分析しました。
2022年下期の物理的リスク分析では、不動産投資法人(REIT)を対象先に選定するとともに、急性リスクの対象として従来の河川洪水に高潮を加え、保有物件データを活用して2100年までの気候変動による財務影響分析を行いました。
結果として、物理的リスク分析では、与信関係費用の発生による影響は、500年に1度の確率で発生する災害を全物件が同時に受けたと仮定しても、0.2億円程度と限定的であることがわかりました。
ハ.気候変動に関する機会の認識
脱炭素社会の実現に必要な巨額の資金需要は同時に、低金利環境における機関投資家への魅力的な商品の提供や、人生100年時代における家計・個人の資産形成ニーズに対する投資機会の提供につながります。
当グループは、こうした企業の資金需要に対応することで企業価値の向上をサポートし、その果実を個人(家計)や機関投資家にもたらす「資金・資産・資本の好循環」を実現しながら脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています。この好循環を健全な形で実現していくためには、インパクト評価を積極的に提供していくことで脱炭素等の社会的インパクト創出プロセスを可視化し、設備投資等を行う企業の意思決定やインパクト・マネジメントをサポートするのみならず、資金を供給する投資家に対する説明責任を果たしていくことが重要と考えています。
当グループは、社会の脱炭素化に向けて、投融資機能のみならず、信託銀行グループらしい資産運用・資産管理ビジネスを通じ、新たな市場・新たな投資機会を創出することで、環境的・社会的価値と経済的価値創出の両立を目指すビジネスをインパクトビジネスと定義し、さまざまな取り組みを進めてまいります。
ニ.カーボンニュートラルに向けた移行計画
当グループは、全世界で加速するGHG削減等の社会課題解決に向け、2021年10月にカーボンニュートラル宣言を公表するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて着実に歩みを進めていくために、ネットゼロを目指す銀行間の国際的なイニシアティブであるNZBA(Net-Zero Banking Alliance)に加盟しました。また、グループ会社である三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社は2021年7月、日興アセットマネジメント株式会社は同年11月に、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロを目指す資産運用会社によるグローバルなイニシアティブである NZAMI(Net-Zero Asset Managers initiative)に加盟し、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロの実現を目指していきます。両社はそれぞれグローバルに資産運用を展開する機関投資家として、投資先企業などのGHG排出量ネットゼロ実現に向けた施策を検討しています。
投融資ポートフォリオのGHG排出量については、NZBAの枠組みに即して中間削減目標を策定し、順次公表していきます。2022年10月には、一つ目のセクターの開示として電力セクターの中間削減目標を開示、二つ目の開示として、石油・ガスセクターを2023年2月に開示しました。また、中間削減目標の策定と併せて、削減状況等をモニタリングするリスク管理の枠組みも構築しました。
このほか、これまでプロジェクトファイナンスのみが対象であった石炭火力発電所向け融資の2040年度の残高ゼロ目標について、コーポレート融資(新設・拡張)も対象として拡大しました。こうした活動を加速し、投融資ポートフォリオのGHG排出量のネットゼロ達成を目指します。
自社グループのGHG排出量については、2030年までにネットゼロにすることを目標に、対応を進めています。まずは、グループのGHG排出量の多くを占める電力使用による排出量の削減に向けて、コーポレートPPA(需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を長期に購入する契約)への切り替えを進めています。また、営業車について内燃車から低排出車への切り替えを進めていくなど、電力使用以外のGHG排出量についても削減を進めていきます。三井住友信託銀行株式会社の国内拠点においては、上記対応や非化石証書の活用により2022年8月に100%再生エネルギー化を達成しています。
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社、日興アセットマネジメント株式会社の運用ポートフォリオの2050年GHG排出量ネットゼロ化に向けては、それぞれがNZAMIの枠組みに沿って、2030年までの中間削減目標を策定し、開示しました。ネットゼロ及び中間削減目標達成に向けて、国際イニシアティブとも連携しながらエンゲージメント活動に取り組んでまいります。
③人的資本にかかる戦略:人事戦略とWell-beingの向上
当グループの掲げるパーパスを実現し、社会課題への取り組みを通じた資金・資産・資本の好循環の促進と市場の創出による成長を図るためには、非財務資本、その中でも人的資本の充実が重要と考えており、当社のマテリアリティにおいては「人的資本」をガバナンス・経営基盤マテリアリティとして特定しています。社員は価値創造の源泉となる重要な資本の一つ(人的資本)であり、社会的価値創出及び経済的価値創出の重要な担い手です。人的資本への投資による社員のWell-beingの向上を通じて、お客さまや社会に対する価値創出が実現し、社会の一人ひとりのWell-being向上につながります。その結果として、社会の成長とともに当グループの企業価値も向上し、それが社員一人ひとりの励みや誇り、やりがいといった社員のWell-being向上をもたらす「好循環」を創り上げると考えております。

価値創造の起点となる社員のWell-beingについて、当グループでは「イ.心身ともに健康で、ロ.会社のパーパスに共感しながら、ハ.多様性を認め合う良好な人間関係のもと、ニ.自分の価値や強みを活かして、働く幸せを追求していける状態」と定義し、社員のWell-beingを追求することで人的資本の向上を実現してまいります。

イ.健康経営(心身ともに健康)
当グループでは、社員が健康と幸福を実感し、持続的に能力を発揮することで人的資本の向上を目指しております。そうした心身両面での健康推進を目指した取り組みが評価され、当社は6年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されております。
ロ.エンゲージメントの強化(会社のパーパスに共感)
当グループでは、社員が会社のパーパスに共感し、経営課題や社会的使命に取り組むことで、人的資本の向上を目指しております。
(注)1.FINANCIAL WELL-BEINGとは「お金や資産について、不測の事態に対する備えと将来に向けた準備ができて、安心できる状態」を指します。
2.株式交付信託と譲渡制限付株式の利点を組み合わせた社員向け株式報酬制度を指します。
ハ.組織力の強化(多様性を認め合う良好な人間関係)
当グループでは、「個々人の多様性と創造性を経営に生かす」ことを重視しており、多様な属性・背景を有する社員が公正・公平(エクイティ)な支援の下、その多様性と創造性が組織の付加価値となるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの概念そのものを経営理念(ミッション)に掲げ、人的資本の向上を目指しております。
ニ.人材力の強化(自分の価値や強みを発揮)
当グループでは、「人材育成No.1金融グループ」を掲げており、2018年4月に制定した「人材育成方針」に基づき、各社員が未来に向けたありたい姿を自ら考え、実現に向けて自ら行動する「自律的なキャリア型人材」の育成に注力することで、人的資本の向上を目指しております。
①社会的価値創出に向けたポジティブインパクトの創造
社会的価値は当グループの企業活動が生み出す場合もありますが、多くはステークホルダーからその先のステークホルダーへ影響が連鎖する中で形成されていくと考えています。SDGsの実現に貢献し最終的に経済(豊かさ)、社会(人間)、環境(地域)に対する良い影響(ポジティブインパクトの創造とネガティブインパクトの抑制)につながる活動が、当グループにおける社会課題解決型ビジネスです。
当グループは「信託」の多彩な機能を活用し、「資金・資産・資本の好循環」をキーワードに、個人・企業・投資家それぞれに生じる社会課題に対して付加価値の高い商品・サービスをお客さまに提供します。上記のマテリアリティの特定においても考慮した社会課題等を踏まえ、当グループでは、2030年に実現したい社会や当社の姿を見据え、好循環を促進する3つの重点戦略領域として、「人生100年時代」「ESG/サステナブル経営」「地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)」を設定しています。
社会課題がますます高度化・複雑化するなか、当社固有の経営資源や顧客基盤だけでは社会課題を解決することは困難です。さまざまなステークホルダーとの連携やプラットフォームの構築を行い、新たな市場や機会を創出します。また、これらを実現するために、人的資本や設備投資を強化していきます。
| 重点戦略領域 | 取り組み |
| 人生100年時代 | ・認知症、高齢者の独居等、高齢化社会における資産管理上の課題へのサポート ・現役世代の資産形成をサポート、個人金融資産の増大に貢献 |
| ESG/サステナブル経営 | ・脱炭素社会への移行等に向けたサステナブルファイナンスへの取り組み |
| 地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン (ネットワーキング) | ・再生エネルギーの導入と地域創生を念頭においた地域課題へのアプローチ ・投資のさまざまなプロセスにおける効率的かつ高付加価値のサービス提供、 インベストメントチェーンの発展をサポート |
②気候変動にかかる戦略
イ.気候変動対応に関する考え方
気候変動は、グローバルな経済・社会の持続性を脅かす最も深刻な環境問題の一つですが、当社のマテリアリティにおいては、「気候変動」を含む「ESG/サステナブル経営」をインパクトマテリアリティとして特定しています。「気候変動」に対しては、グループ共通のプリンシプル(行動原則)である「気候変動対応行動指針」のもと、気候変動がもたらすリスクと機会を適切に認識し、信託銀行グループの多彩なビジネスを通じて、ネガティブな影響の最小化とポジティブな影響の最大化に取り組んでいく方針です。
具体的には、中長期的な気候変動や異常気象による社会インフラ・自然等の物理的被害(物理的リスク)や気候変動に関連した政策変更・気候変動に対する金融市場の考え方や社会通念の変化、技術革新等による低炭素社会への急速な移行(移行リスク)を気候変動関連リスクと定義し、自らの事業活動による温室効果ガス(GHG)排出の抑制や、セクターポリシー等に基づく規律ある投融資のリスク管理・モニタリングに努めます。同時に、太陽光発電や風力発電等の利活用を促進する投融資や、地産地消型の再生可能エネルギービジネスの確立などの新たな投資機会を創造し、当グループ自身による投資も呼び水に、個人(家計)・企業・投資家間の資金循環に貢献したいと考えています。
ロ.気候変動に関するリスクの認識
当グループでは、移行リスクおよび物理的リスクが将来にわたって投融資ポートフォリオに与える影響を把握すべく、シナリオ分析を実施してきました。
三井住友信託銀行株式会社では、これをビジネスモデルや戦略の持続可能性に関する確認、および投融資先のお客さまとの気候変動に関する対話とエンゲージメントのツールと捉え、ポートフォリオ特性を踏まえつつ分析に取り組んでおります。
(ⅰ)移行リスク
移行リスクについては、2020年より、炭素関連資産に占める比率が高い電力セクターから分析を開始しました。2021年は、投融資ポートフォリオにおける重要性が高い海運セクターを分析対象に選定、財務シミュレーションによるシナリオ分析を実施し、投融資先のお客さまとの意見交換を行いました。
2022年下期の移行リスク分析では、対象セクターを国内全セクターへ、対象先を国内事業法人全融資先へと拡大し、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)の気候変動シナリオごとに2050年までの信用格付の変動シミュレーションを実施のうえ、与信関係費用にどのような影響が生じるかを分析しました。分析手法としては、全セクターをカバーするセクターレベルのトップダウン方式による分析に加え、気候変動移行リスク・セクターヒートマップにおいて移行リスクが高いと判定されるセクターについては、個社レベルの財務シミュレーション(ボトムアップ方式)を組み合わせた信用格付シミュレーション分析を実施しました。
結果としては、移行リスク分析では、「Current Policy(3.0℃シナリオ)」との比較において、「NetZero2050
(1.4℃シナリオ)」では2050年までの累計ベースで92億円、「Delayed Transition(1.6℃シナリオ)」では135億円の与信関係費用が増加する計算となりました。同様に「Below 2.0(1.6℃シナリオ)」では12億円の減少となる計算となりました。
(ⅱ)物理的リスク
物理的リスクについては、急性リスクのシナリオ分析として、2020年に住宅ローン、2022年上期に不動産ノンリコース・ローンに関して、河川洪水による被害を受けた場合のリスクを分析しました。
2022年下期の物理的リスク分析では、不動産投資法人(REIT)を対象先に選定するとともに、急性リスクの対象として従来の河川洪水に高潮を加え、保有物件データを活用して2100年までの気候変動による財務影響分析を行いました。
結果として、物理的リスク分析では、与信関係費用の発生による影響は、500年に1度の確率で発生する災害を全物件が同時に受けたと仮定しても、0.2億円程度と限定的であることがわかりました。
| リスク種別 | セクター | 主な分析結果 |
| 移行リスク (2020年度) | 電力セクター | 電力会社が再生可能エネルギー発電への投資を行わない場合、信用格付けが平均2~3ノッチ悪化 |
| 物理的リスク (2020年度) | 住宅ローン | 与信関係費用が2019年比70億円増加 |
| 移行リスク (2021年度) | 海運セクター | 代替燃料シフトによるコスト増、炭素価格の動向など想定シナリオにより財務影響に大きな差異を認識。投融資先のお客さまと意見交換を実施 |
| 物理的リスク (2022年度上期) | 不動産セクター (ノンリコース・ローン) | 信用格付に与える影響は限定的。都心部での被害想定額の推計精緻化や地下のインフラ被害とその影響長期化などの潜在的なリスクについて課題認識 |
| 移行リスク (2022年度下期) | 国内全セクター (国内事業法人全融資先) | 与信関係費用の変化による財務影響は軽微。与信関係費用が最大135億円増加 |
| 物理的リスク (2022年度下期) | 不動産セクター (不動産投資法人) | 影響は軽微。与信関係費用は最大0.2億円増加 |
ハ.気候変動に関する機会の認識
脱炭素社会の実現に必要な巨額の資金需要は同時に、低金利環境における機関投資家への魅力的な商品の提供や、人生100年時代における家計・個人の資産形成ニーズに対する投資機会の提供につながります。
当グループは、こうした企業の資金需要に対応することで企業価値の向上をサポートし、その果実を個人(家計)や機関投資家にもたらす「資金・資産・資本の好循環」を実現しながら脱炭素社会の実現に貢献することを目指しています。この好循環を健全な形で実現していくためには、インパクト評価を積極的に提供していくことで脱炭素等の社会的インパクト創出プロセスを可視化し、設備投資等を行う企業の意思決定やインパクト・マネジメントをサポートするのみならず、資金を供給する投資家に対する説明責任を果たしていくことが重要と考えています。
当グループは、社会の脱炭素化に向けて、投融資機能のみならず、信託銀行グループらしい資産運用・資産管理ビジネスを通じ、新たな市場・新たな投資機会を創出することで、環境的・社会的価値と経済的価値創出の両立を目指すビジネスをインパクトビジネスと定義し、さまざまな取り組みを進めてまいります。
ニ.カーボンニュートラルに向けた移行計画
当グループは、全世界で加速するGHG削減等の社会課題解決に向け、2021年10月にカーボンニュートラル宣言を公表するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて着実に歩みを進めていくために、ネットゼロを目指す銀行間の国際的なイニシアティブであるNZBA(Net-Zero Banking Alliance)に加盟しました。また、グループ会社である三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社は2021年7月、日興アセットマネジメント株式会社は同年11月に、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロを目指す資産運用会社によるグローバルなイニシアティブである NZAMI(Net-Zero Asset Managers initiative)に加盟し、2050年までに投資先企業のGHG排出量ネットゼロの実現を目指していきます。両社はそれぞれグローバルに資産運用を展開する機関投資家として、投資先企業などのGHG排出量ネットゼロ実現に向けた施策を検討しています。
投融資ポートフォリオのGHG排出量については、NZBAの枠組みに即して中間削減目標を策定し、順次公表していきます。2022年10月には、一つ目のセクターの開示として電力セクターの中間削減目標を開示、二つ目の開示として、石油・ガスセクターを2023年2月に開示しました。また、中間削減目標の策定と併せて、削減状況等をモニタリングするリスク管理の枠組みも構築しました。
このほか、これまでプロジェクトファイナンスのみが対象であった石炭火力発電所向け融資の2040年度の残高ゼロ目標について、コーポレート融資(新設・拡張)も対象として拡大しました。こうした活動を加速し、投融資ポートフォリオのGHG排出量のネットゼロ達成を目指します。
自社グループのGHG排出量については、2030年までにネットゼロにすることを目標に、対応を進めています。まずは、グループのGHG排出量の多くを占める電力使用による排出量の削減に向けて、コーポレートPPA(需要家が発電事業者から再生可能エネルギーの電力を長期に購入する契約)への切り替えを進めています。また、営業車について内燃車から低排出車への切り替えを進めていくなど、電力使用以外のGHG排出量についても削減を進めていきます。三井住友信託銀行株式会社の国内拠点においては、上記対応や非化石証書の活用により2022年8月に100%再生エネルギー化を達成しています。
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社、日興アセットマネジメント株式会社の運用ポートフォリオの2050年GHG排出量ネットゼロ化に向けては、それぞれがNZAMIの枠組みに沿って、2030年までの中間削減目標を策定し、開示しました。ネットゼロ及び中間削減目標達成に向けて、国際イニシアティブとも連携しながらエンゲージメント活動に取り組んでまいります。
③人的資本にかかる戦略:人事戦略とWell-beingの向上
当グループの掲げるパーパスを実現し、社会課題への取り組みを通じた資金・資産・資本の好循環の促進と市場の創出による成長を図るためには、非財務資本、その中でも人的資本の充実が重要と考えており、当社のマテリアリティにおいては「人的資本」をガバナンス・経営基盤マテリアリティとして特定しています。社員は価値創造の源泉となる重要な資本の一つ(人的資本)であり、社会的価値創出及び経済的価値創出の重要な担い手です。人的資本への投資による社員のWell-beingの向上を通じて、お客さまや社会に対する価値創出が実現し、社会の一人ひとりのWell-being向上につながります。その結果として、社会の成長とともに当グループの企業価値も向上し、それが社員一人ひとりの励みや誇り、やりがいといった社員のWell-being向上をもたらす「好循環」を創り上げると考えております。

価値創造の起点となる社員のWell-beingについて、当グループでは「イ.心身ともに健康で、ロ.会社のパーパスに共感しながら、ハ.多様性を認め合う良好な人間関係のもと、ニ.自分の価値や強みを活かして、働く幸せを追求していける状態」と定義し、社員のWell-beingを追求することで人的資本の向上を実現してまいります。

イ.健康経営(心身ともに健康)
当グループでは、社員が健康と幸福を実感し、持続的に能力を発揮することで人的資本の向上を目指しております。そうした心身両面での健康推進を目指した取り組みが評価され、当社は6年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」に認定されております。
| (ⅰ)働き方の最適化 | 当グループでは、「多様な働き方とワークライフバランスの実現」に向けて、社員が安心して働ける職場環境づくりに積極的に取り組んでおります。三井住友信託銀行株式会社では、勤務間インターバル11時間を導入し、時間外労働時間削減に注力しているほか、計画的な休暇取得、少なくとも毎月1日の休暇取得を奨励しており、有給休暇取得日数、取得率ともに上昇しております。更なる働き方の柔軟化に向け、時差出勤や在宅勤務、サテライトオフィス勤務も推進してまいります。 |
| (ⅱ)健康マネジメント | 三井住友信託銀行株式会社では、身体の健康のため、年1回の健康診断の受診に加え、全館禁煙化、乳がん・子宮頸がん検査の対象年齢引き下げ等を実施しております。健康診断の結果、医療機関での対応が必要な社員への個別指導も行っており、再検査受診率は上昇しております。また、心の健康では、ストレスチェックやプレゼンティーズム、アブセンティーズムの測定により社員の状態を把握しているほか、各種セミナーを開催し、心の健康維持に努めております。今後も、保健指導に力を入れ、人生100年時代にふさわしい健康経営の推進を図ってまいります。 |
ロ.エンゲージメントの強化(会社のパーパスに共感)
当グループでは、社員が会社のパーパスに共感し、経営課題や社会的使命に取り組むことで、人的資本の向上を目指しております。
| (ⅰ)パーパスの浸透 | 三井住友信託銀行株式会社では、パーパスのより一層の浸透を目指し、社長自らがパーパスに込めた思いを全社員に伝える社長キャラバンや、全課長・チーム長を対象に社長と双方向コミュニケーションを行うオンライン講話を開催するなど、全社的なパーパス浸透を図っております。 |
| (ⅱ)やりがい・働きがいを生む風土 | 当グループでは、「全社員がやりがいを持って活躍し成長できる機会の提供」に向け、チャレンジと学びを後押しする風土構築とコミュニケーションの活性化に取り組んでおります。三井住友信託銀行株式会社では、店部長自らが講師を務めて自身の経験や学びを伝達する店部長塾を開催している他、1on1コーチング研修を通じたマネジメント層のコミュニケーションスキル向上により、心理的安全が担保された風通しの良い職場環境の構築に努めております。また、社員意識調査やパルスサーベイを導入し、社員の声を経営層やマネジメント層で把握しながら、更なる向上に努めております。 |
| (ⅲ)Well-beingの推進 | 当グループでは、2021年4月にWell-being担当役員を設置し、日本経済新聞社主催の「Well-being Initiative」等、産官学連携セッションへ参画しながら、社内外でのWell-being推進活動を強化しております。また、FINANCIAL WELL-BEING(注1)への貢献に取り組み、人生100年時代に、お客さま一人ひとりの幸せに資するベストパートナーを目指しております。その価値創出の担い手である社員自身のFINANCIAL WELL-BEING実現に向けて、三井住友信託銀行株式会社では、年金業務・職域業務で培った高品質な投資教育ノウハウを社員へ還元し、社員の資産形成支援を強化しています。2022年度には、社員と会社がベクトルを合わせ、中長期的な成長を追求できる仕組みとして、全社員に向けて株式報酬(RS信託(注2))を導入いたしました。 |
(注)1.FINANCIAL WELL-BEINGとは「お金や資産について、不測の事態に対する備えと将来に向けた準備ができて、安心できる状態」を指します。
2.株式交付信託と譲渡制限付株式の利点を組み合わせた社員向け株式報酬制度を指します。
ハ.組織力の強化(多様性を認め合う良好な人間関係)
当グループでは、「個々人の多様性と創造性を経営に生かす」ことを重視しており、多様な属性・背景を有する社員が公正・公平(エクイティ)な支援の下、その多様性と創造性が組織の付加価値となるよう、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの概念そのものを経営理念(ミッション)に掲げ、人的資本の向上を目指しております。
| (ⅰ)女性活躍推進の取組 | 当グループでは、2030年までに女性役員比率を30%以上にするという経団連の「2030年30%へのチャレンジ」に賛同し、女性管理職比率のKPIを策定しております。また、三井住友信託銀行株式会社では、全社員向け研修のほか、女性リーダー層を対象とする階層別研修、自律的なキャリア形成を支援するためのキャリアデザイン研修を実施しております。2021年度には、役員自らが女性社員のキャリア形成をサポートする「サポーター役員制度」を導入し、役員が、マネジメントを担う女性社員のメンターを務めております。 | ||||||||
| (ⅱ)多様な人材の活躍推進 | 信託銀行グループ特有の広く深いビジネスフィールドを維持しつつ、新成長領域を確立するには、多様な経験とスキルを有する人材群の確保が不可欠と考えており、各種施策を推進しております。
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ニ.人材力の強化(自分の価値や強みを発揮)
当グループでは、「人材育成No.1金融グループ」を掲げており、2018年4月に制定した「人材育成方針」に基づき、各社員が未来に向けたありたい姿を自ら考え、実現に向けて自ら行動する「自律的なキャリア型人材」の育成に注力することで、人的資本の向上を目指しております。
| (ⅰ)自律的な キャリア型人材 | 当グループでは、「信託の基礎知識に加え、複数の専門性を掛け合わせ、何を主軸とし、どのような専門性を融合させるかを自分で考え、自分のキャリアを自ら作る人材」を自律的なキャリア型人材と定義し、人材育成に注力しております。今日の社会システムの相互依存関係は一層拡大・複雑化し、各種課題やリスクは複雑に絡み合っており、お客さまや社会の課題解決には多面的な対応が求められます。各社員が有する基礎力にキャリアを通じて積み上げてきた専門性を融合することで生まれる総合力を駆使することで、未来に適合できる人材を創出してまいります。三井住友信託銀行株式会社では、社員自身の自律的なキャリア形成を支援するため、新入社員向けの業務チャレンジ制度(特定の事業・業務への配属を公募)や、入社5年以内に複数事業を経験する「若手育成プログラム」を実施しております。また、業務公募制度も拡充しており、多くの社員が自ら選択した業務に従事しています。2021年度からは社内副業制度を開始し、関心がある業務に副業として週1日従事することで、業務の垣根を超えた人材やノウハウの融合を図り、能力開発やイノベーションを促進しております。 | ||||||||
| (ⅱ)人材育成投資の充実 | 当グループでは社員一人ひとりの目指すキャリアの実現のため、「SuMiTRUST University(スミトラスト ユニバーシティ)」と冠した社内大学を展開しております。外部の教育機関等と提携し、役割に応じた階層別の研修や業務スキル等の向上を目的とした研修から、自己啓発まで多くのコンテンツを整備しております。また、2022年度にはラーニングマネジメントシステム「University+(ユニバーシティプラス)」を開始し、通常業務では接点のない社員が集まるネットワークの場を設けることで、社員同士が知識・経験を共有し、刺激し合うことを通じて、新たな価値を創出することを目指しております。 | ||||||||
| (ⅲ)専門人材集団 | 三井住友信託銀行株式会社では、人材ポートフォリオの可視化に関するアセスメントを通じ、当グループのビジネスモデルをより力強く推進するために重要な人材群を特定しています。自律的なキャリア形成と業務経験の蓄積、更には人材育成投資の強化を通じて、人材力を強化してまいります。
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