有価証券報告書-第15期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
(1) 会社の経営の基本方針
①当グループの原点
日本では明治時代以降に信託制度が導入され、1922年には「信託法」、「信託業法」が制定されました。これらにより、信託制度が確立され、本格的な発展期を迎えることとなりました。
1924年には「信託業法」に基づく日本最初の信託会社として三井信託株式会社が設立されております。1925年には住友信託株式会社が設立され、1962年には中央信託銀行株式会社が設立されております。これら信託会社・信託銀行が当グループの中核子会社たる三井住友信託銀行株式会社の母体となっており、「信託」が当グループの原点となっております。
当グループは、「信託」の受託者精神に立脚し、「信託」の力で各時代におけるお客さまのニーズや社会の要請に応じて、新たな価値創出に「挑戦」し、日本の発展に貢献する「開拓」の姿勢を、創業以来貫いてまいりました。
例えば、戦後の高度成長期には、重厚長大産業向けの設備投資資金ニーズに応える「貸付信託」を中心に、日本の経済成長を支えてきました。
1960年代からは、企業年金の制度設計・資産運用・資産管理を三位一体で提供する「年金信託」の受託者として、勤労者の充実した老後の生活を支援しております。
2000年以降は、「信託法」、「信託業法」の改正を契機に、時代に合った新たな商品・サービスの提供を通じて、社会課題に向き合っております。
当グループはまさに「信託」を原点とし、「信託」とともにその歴史を歩んでおり、今後もさらなる飛躍に向けて歩みを進めてまいります。
(三井住友信託銀行株式会社の主な変遷)

(三井住友信託銀行株式会社の信託財産残高推移)

(※)2012年3月期以前の信託財産残高については、三井住友信託銀行株式会社統合前の各社の信託財産残高を合算して算出しております。
②当グループの基本方針
当グループは、目指す企業グループ像を明確にするため、次のとおり存在意義(パーパス)、経営理念(ミッション)、目指す姿(ビジョン)、行動規範(バリュー)を定めております。
託された未来をひらく
~信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる~
全てのステークホルダーのWell-being向上に貢献してまいります。
・高度な専門性と総合力を駆使して、お客さまにとってトータルなソリューションを迅速に提供してまいります。・信託の受託者精神に立脚した高い自己規律に基づく健全な経営を実践し、社会からの揺るぎない信頼を確立
してまいります。
・信託グループならではの多彩な機能を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出し、株主の期待
に応えてまいります。
・個々人の多様性と創造性が、組織の付加価値として存分に活かされ、働くことに夢と誇りとやりがいを持てる
職場を提供してまいります。
当グループは、信託の受託者精神に立脚し、高度な専門性と総合力を駆使して、銀行機能、資産運用・管理機能、不動産機能を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出する、本邦最大かつ最高のステイタスを誇る
信託グループとして、グローバルに飛躍してまいります。
当グループの役職員は、パーパスを実践するため、以下の6つの行動規範を遵守してまいります。
お客さま本位の徹底 -信義誠実-
私たちは、最善至高の信義誠実と信用を重んじ確実を旨とする精神をもって、お客さまの安心と満足のために
行動してまいります。
社会への貢献 -奉仕開拓-
私たちは、奉仕と創意工夫による開拓の精神をもって、社会に貢献してまいります。
組織能力の発揮 -信頼創造-
私たちは、信託への熱意を共有する多様な人材の切磋琢磨と弛まぬ自己変革で、相互信頼と創造性にあふれる組織の力を発揮してまいります。
個の確立 -自助自律-
私たちは、自助自律の精神と高い当事者意識をもって、責務を全うしてまいります。
法令等の厳格な遵守
私たちは、あらゆる法令やルールを厳格に遵守し、社会規範にもとることのない企業活動を推進してまいります。
反社会的勢力への毅然とした対応
私たちは、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力に対して、毅然とした姿勢を貫いてまいります。
(2) 金融経済環境
当連結会計年度の金融経済環境を概観しますと、海外では、米国経済は堅調に推移したものの、関税政策の影響などで雇用の減速が明確となりました。欧州経済は利下げや財政支出の拡大に支えられ、底堅く推移した一方、中国経済は不動産市場の低迷が長期化し、内需も低調な状況が続きました。国内経済は、実質賃金の減少基調や米国の関税引き上げの影響から、回復の力強さを欠く展開となりました。2026年3月には、中東情勢の悪化とホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けて原油価格が急騰し、世界的にスタグフレーションリスクが高まりました。
金融市場では、10年国債利回りは、日本銀行の利上げ姿勢や財政悪化懸念、中東情勢を背景とした金利上昇圧力を受け、2026年3月末には2.3%台まで上昇しました。ドル円レートは、2025年9月までは概ね140円台で推移しましたが、10月以降は国内の拡張的な財政政策を受けて円安が進み、2026年3月には160円前後となりました。日経平均株価は、米国の関税政策を巡る不透明感が和らぐにつれて上昇基調を示し、2026年2月には50,000円台後半を付けたものの、中東情勢の悪化を契機に軟調な展開へと転じました。
(3) 事業の経過
当グループは、「託された未来をひらく」というパーパスのもと、環境や社会の変化に応じた価値創出に取り組んできました。
2025年度は、2023年度より開始した中期経営計画の総仕上げと新中期経営計画への橋渡しの期間として、以下2点を重点テーマとして掲げ、当グループの社会的使命である「資金・資産・資本の好循環」の実現に向けた取り組みに注力してまいりました。その結果、業績は堅調に推移し、金利上昇等の環境変化や株式市場の追い風も相まって、PBRや時価総額、純利益等の経営指標は、2030年のありたい姿(※1)として掲げる目標水準に概ね到達いたしました。
(※1)2030年のありたい姿:
(定量)ROE:中長期10%以上、純利益:3,000億円以上、AUF:800兆円、PBR:早期に1倍以上(時価総額3兆円以上)
(定性)①フィデューシャリーとしてステークホルダーから信頼される存在、②将来世代も包摂する全ての人のWell-being向上に 貢献、③資金・資産・資本の好循環を促す社会インフラ
1.プライベートアセット戦略等の成長領域への注力
当グループでは、持続的な企業価値向上の実現に向け、好循環による利益成長を基軸として、適切な経費戦略と資本政策を一体的に推進してまいりました。
重点テーマの一つであるプライベートアセット戦略については、インフラや再生可能エネルギー等のリアルアセット分野を中心とした事業者の長期資金ニーズと投資家の運用ニーズの双方に対して、直接ソリューションを提供することができる当グループの強みを活かした好循環の創出に注力してまいりました。
三井住友信託銀行株式会社では、個人のお客さまの期待や投資選好に応える投資機会を提供するため、プライベートアセットを組み入れた実績配当型合同運用指定金銭信託や外国籍投資信託等の新たな投資商品の展開を進めております。
また、機関投資家のお客さま向けには、国内のインフラ領域を専門に投資助言を行うジャパン・エクステンシブ・インフラストラクチャー株式会社において、国内総合型インフラファンドの第二号を組成いたしました。本ファンドには、金融法人に加え新たに企業年金基金にも参画いただき、国内のインフラ投資ファンドとしては最大級となる総額1,200億円の募集に向け、取り組みを加速させております。
さらに、グローバルでの事業推進体制の強化に向け、これまでの出資・提携等に加え、三井住友信託銀行株式会社のプライベートアセット領域におけるゲートキーパー機能(※2)を分割し、三井住友トラスト・インベストメント株式会社へ統合いたしました。これにより、海外投資家を含む市場での認知向上を図るとともに、アジア最大級のプライベートアセット運用会社としての地位を確立してまいります。
今後も、お客さまの多様な運用ニーズに応え、安定的かつ良質なリターンを提供できるよう、投資機会の拡大に加え、運用力及びポートフォリオ提案力の強化に取り組んでまいります。
経費戦略においては、AIやITの活用を通じた業務効率化と社員の生産性向上を通じた中長期的なOHRの改善等に取り組んでおります。この取り組みの一環として、データの効率的活用を通じた、業務高度化を推進するため、当グループ独自のRAGプラットフォーム(※3)「Trust BRAiN」を導入いたしました。さらに、ビジネスニーズへの迅速な対応と、堅確かつレジリエンスに優れたITインフラの構築を図るべく、2026年4月に三井住友信託銀行株式会社と三井住友トラスト・システム&サービス株式会社を統合し、システム開発・運営体制の抜本的な見直しを実施いたしました。
資本政策に関しては、政策保有株式の削減や事業売却等を通じた資本創出を進めるとともに、成長領域の強化に向けた戦略的な資本活用を推進しております。
資本創出の面では、北米貨車リース事業の売却に加え、三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社の資本再編に向けた基本合意書を締結いたしました。(※4)
一方、資本活用においては、三井住友信託銀行株式会社が住信SBIネット銀行株式会社(※5)の株式を追加取得し、同行の協働経営パートナーとなった株式会社NTTドコモとの間で資本業務提携を締結いたしました。本提携を通じて、株式会社NTTドコモが有する会員基盤やくらしの接点、住信SBIネット銀行株式会社のテクノロジーによる高い利便性に、信託銀行らしい高度な専門性を融合し、付加価値の高いサービス提供を実現することで、中長期的な成長基盤強化につなげてまいります。
(※2)ゲートキーパー機能:主に、信託契約等に基づく運用業務の一環として、数多くの国内外ファンドから投資家にとって最適な商品を選定し、モニタリングやレポーティング等の機能を提供するもの
(※3)RAG(Retrieval Augmented Generation)プラットフォーム:生成AIに社内データの検索機能を組み合わせ、業務に必要な情報を参照しながら回答や文章生成を行う仕組み
(※4)三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社の経営の自由度を高め、事業領域の拡大を図るために、芙蓉総合リース株式会社及び株式会社横浜フィナンシャルグループとの共同事業化に向けた基本合意
(※5)2026年8月3日、住信SBIネット銀行株式会社は株式会社ドコモSMTBネット銀行に商号変更します。
2.ステークホルダーとの長期信任関係の構築
当グループは、信託会社を起源とする国内唯一の金融グループとして受託者精神に立脚し、お客さま・株主・社会・社員、さらには将来世代も含む全てのステークホルダーとの長期信任関係の構築を、経営の重点テーマとして位置付けております。
信任関係の構築には、短期的な成果の追求のみならず、高い倫理観と自己規律に基づく経営、健全かつ実効性のあるガバナンス、そして信頼と期待に応え続ける企業姿勢が不可欠です。この考えのもと、持続的な成長と企業価値向上を実現していくため、ガバナンスとフィデューシャリーの更なる高度化に取り組んでまいりました。
コーポレートガバナンス高度化については、経営の透明性と実効性を一層高めるため、2025年度において、取締役会における独立社外取締役比率の過半化(61.5%)及び女性取締役比率の向上(23.0%)を行い、監督機能の強化と多様な視点を活かした意思決定体制の構築を進めました。今後も専門性と多様性を高めつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
また、お客さまの期待に応えるサービス品質及び利便性の向上に向けては、デジタル技術の活用と対面・非対面チャネルの融合を推進してまいりました。2025年5月には、HDI-Japanが実施する「クオリティ格付け」及び「Webサポート格付け」において、最高評価の「三つ星」を獲得いたしました。今後もお客さまとのコミュニケーションを一層深め、オンラインを含むサービスの拡充に注力し、長期にわたり安心してご利用いただける金融サービスを提供してまいります。
人的資本強化においては、三井住友信託銀行株式会社の人事制度を刷新し、社員一人ひとりの自律的なキャリア形成を後押しするとともに、自身の意思と専門性に基づく挑戦と成長を促す環境整備を進めております。
また、コンプライアンスの面では、2024年10月に判明した、三井住友信託銀行株式会社の元社員によるインサイダー取引事案の再発防止策を着実に実行するとともに、社員一人ひとりの高い倫理観及びコンプライアンス遵守意識の一層の徹底を図りました。信頼回復に引き続き全力をあげて取り組んでまいります。
株主還元については、利益成長に応じた累進的配当を継続しております。加えて、資本活用と資本効率向上とのバランスを踏まえた機動的な自己株式取得を実施いたしました。
(4) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当グループを取り巻く経営環境は、金利ある世界への転換、インフレへの対応、人口動態や社会構造の変化に加え、AI技術の進展により、大きな転換期を迎えております。
とりわけ国内社会構造の変化として、公共インフラの老朽化や脱炭素・GX(※6)の進展を背景とした中長期にわたる多額の投資需要が顕在化し、個人分野においては、人生100年時代を背景に、資産形成・管理・承継を通じた中長期的な意思決定の重要性が高まっております。
こうした環境において、当グループは、事業者と投資家のお客さまが直面する複雑な課題に対し、「最適な選択肢の提示」と「意思決定の支援」を通じて、資金・資産・資本の好循環を力強く支える存在であり続けたいと考えております。信託が有する、能力や資産、時間を「転換」する本源的機能を軸に、2035年のありたい姿(※7)として、社会課題の解決と持続的な経済成長の両立を実現する「社会課題解決型ビジネスのリーディングカンパニー」を目指します。
2026年度から開始する中期経営計画は、このありたい姿の実現を見据えた成長を加速させる3年間と位置付け、以下の3つの重点テーマに挑戦してまいります。
(※6)GX(Green Transformation):カーボンニュートラルを目指した社会や経済システムの変革
(※7)2035年のありたい姿(定量):業務純益:1兆円、ROTCE:16%(ROE:12%)
<重点テーマ1>成長戦略~資産運用ビジネスを軸とした信託グループらしいビジネスモデル~
当グループでは、資金・資産・資本の好循環を通じた持続的成長を実現するため、資産運用ビジネスを成長の中核領域と位置づけております。環境変化に伴い顕在化する低報酬化の流れを転換し、当グループならではの競争優位性の確立を目指します。長期・非流動性の資金ニーズと従来型の金融構造とのミスマッチといった課題に果敢に対応し、高付加価値な運用商品・サービスの提供、バランスシート変革による投資機会の創出、個人ビジネスの拡大を通じて成長を実現してまいります。
ファンドラップ等の投資一任型サービスを通じ、グループ一体で多彩なポートフォリオを提供するとともに、アクティブ運用力の高度化や、質の高いプライベートアセットへの投資機会の拡充により、高付加価値な運用サービスの提供を強化してまいります。
また、投融資の知見や目利き力を起点に当グループ自らのバランスシートを活用した投資機会の創出を進めるとともに、インフラや再生可能エネルギー等のリアルアセット分野を中心に、長期性資金を呼び込む「令和版産業金融」を推進いたします。これにより、持続可能な社会の実現に資する投資機会を当グループの成長につなげてまいります。
加えて、三井住友信託銀行株式会社及び住信SBIネット銀行株式会社やUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社を含むグループ各社が、多様なチャネルとサービスを一体的に高度化することで、資産形成・管理の裾野を拡大するとともに、高度な資産運用から承継までを一貫して提供し、お客さまのファイナンシャル・ウェルビーイング(※8)の実現を支えてまいります。
(※8)ファイナンシャル・ウェルビーイング:「安心して健やかに生きていくために、お金についての不安をとりのぞき、お金との健全な向き合い方ができている状態」を指す
<重点テーマ2>資本戦略
政策保有株式の削減を着実に進め、成長投資に充当可能な資本の創出を図るとともに、資産運用ビジネスを始めとする成長領域において、出資・提携や戦略的投資を機動的に行うことで、資本効率の向上と成長の加速を両立してまいります。
資本創出の面では、2029年3月末の純資産対比時価20%未満の達成に向け、政策保有株式の売却ペースをさらに加速させてまいります。
資本活用に向けては、先進の米国や成長著しいアジアなど、グローバルな資産運用領域を中心とした出資・提携等を加速いたします。アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社では、高い経済成長率と継続的な人口増加が見込まれるマレーシアの大手資産運用会社AHAM Asset Management Berhadを連結子会社化し、シナジーの拡大を目指してまいります。
また、株主還元においては、総還元性向は50%以上を目安とするとともに、1株あたり配当金は累進的としつつ、修正純利益(※9)の50%程度を目安に運営してまいります。成長投資と株主還元のバランスを踏まえた規律ある資本配分を通じ、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
(※9)修正純利益:親会社株主に帰属する当期純利益-政策保有株式に係る売却損益(税引き後)
<重点テーマ3>経営基盤高度化
お客さまの最善の利益を追求する受託者精神のもと、デジタル化が進む社会に適合した人材を価値創造の中核に据え、IT・DX基盤及び業務プロセスを一体で強化し、事業拡大や業務量の増大にも対応可能な信頼性と生産性の高い経営基盤を構築してまいります。
社員一人ひとりがAIを駆使し、業務プロセス等を設計する「Human in the Design 」(※10)を前提とした人材育成・人材活用を強化することで、信頼性の高いオペレーションモデルの構築を推進いたします。
また、人的資本投資の強化と新人事制度の定着・高度化を通じて、自律的なキャリア形成と役割・成果に基づく処遇を軸に、戦略領域への配置を進めるとともに、当社が有する幅広い商品・機能を組み合わせて価値を創出する、高付加価値・高生産性の人材ポートフォリオへの転換を進めてまいります。
(※10)Human in the Design :AIの活用にあたり、人が業務プロセスや判断の設計を担い、その結果に対して責任を持つことを前提とする考え方。想定と異なる結果が生じた場合には、人が設計を見直すことにより信頼性を確保する
当グループは、本中期経営計画を通じて、信託の力を進化させ、掲げた戦略を着実に遂行することで、次の成長を実現します。お客さま、社会、そして将来世代から託された未来をひらくことで、全てのステークホルダーのウェルビーイング向上に貢献してまいります。
なお、新たな中期経営計画の策定にあたり、社会構造の変化やステークホルダーからの期待を踏まえ、「持続可能な社会」「ファイナンシャル・ウェルビーイング」「受託者精神」「人的資本(専門性・多様性)」の4つを、パーパスに基づき取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として、改めて特定しました。
これらのマテリアリティは、2035年のありたい姿の実現に向け、当社が経営として重視する事項を整理したものであり、中期経営計画における各種戦略の起点となるものです。マテリアリティに基づいた信託グループらしいビジネスの推進を通じ、次の100年に向けた豊かな未来づくりに挑戦し続けてまいります。
(マテリアリティの概要)
報告セグメントにおける主な事業内容は、以下のとおりであります。
(個人事業)
お客さまのさまざまなニーズに対し、銀行・信託・不動産の機能を融合させた商品・サービスを、デジタルとリアル双方の強みを活かして提供しています。人生100年時代のファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に向け、お客さまの人生に寄り添い、長期的な視点で資産形成から資産承継までを総合的にデザインすることで、資産をまもり、人生をはぐくみ、未来へつなぐサポートを行います。
(法人事業)
各種ファイナンス、証券代行業務に加え、経営課題解決に向けたコンサルティングを通じて、お客さまの企業価値向上や社会における資金循環の創出に取り組んでいます。他事業やグループ会社・外部提携企業と連携した専門的かつ多彩なソリューションを提供し、経済的価値創出と社会的価値創出を両立することで、お客さまと社会の長期的な成長に貢献しています。
(投資家事業)
多様な投資家のお客さまに対し、意思決定をサポートする高品質なコンサルティングを通じ、資産運用・資産管理サービスを提供しています。また、他事業やグループ会社等の多彩で専門性の高い機能と有機的に連携し、社会課題解決の中で生じる資金需要に着目した新たな価値ある投資機会を創出すること等を通じて、お客さまの経営課題や社会課題の解決に貢献しています。
(不動産事業)
不動産仲介、開発・有効活用・建築・ESG等の各種コンサルティング、アセットマネジメント、不動産カストディ機能等を総合的に発揮することで、お客さまの課題解決に貢献しています。また、不動産の目利き力を駆使した投資機会の創出、フィデューシャリーに拘った堅確な事務を通じた安心・安全の提供により、社会インフラとして不動産市場の成長を力強く後押ししています。
(マーケット事業)
外国為替・金利・デリバティブ等の商品・サービスの提供を通じてお客さまの多様な課題の解決に貢献しています。また、投資業務・ALM業務での市場変動リスクの適切なマネージなど、高度な知見と体制を強みに、安定性と収益性の両立に挑みながら、持続的な付加価値の創出に取り組んでいます。
(運用ビジネス)
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社とアモーヴァ・アセットマネジメント株式会社を中心に、グループ全体でアジア最大級となる資産運用残高を有しています。年金運用で培った質の高い運用ソリューションやグローバルネットワークを活用した多様な商品提供など、グループ各社が持つ多彩な運用機能の提供を通じて、お客さまの長期・継続的な資産運用に貢献しています。
(5) 目標とする経営指標
当グループは、新中期経営計画期間(2026年度から2028年度まで)におけるKPIとして以下を設定しております。2035年のありたい姿の実現を目指し、中長期的に収益力と成長力の両立を図り、ROTCE16%(ROE12%)を安定的に確保するとともに、実質業務純益1兆円規模を視野に入れた事業規模の拡大に向けて、着実に歩んでまいります。
(注)1.ROTCE(Return on Tangible Common Equity):普通株式に係る自己資本からのれん及び無形資産を控除した金額に対する、普通株式に係る親会社株主に帰属する当期純利益からのれん償却額等を控除した利益の比率。のれん及びM&A等により認識された無形資産を控除した自己資本(TCE)が生み出す収益力を示す指標であり、この比率が高いほど、実質的な自己資本を効率的に使って純利益を稼いでいることを示します。
2.実質業務粗利益:当社及び連結子会社の業務粗利益に持分法適用会社の損益(臨時要因を除いた持分割合考慮後の金額)等を反映した社内管理ベースの計数。
3.実質業務純益:経常利益から与信関係費用や株式等関係損益などの臨時的な要因の影響を控除したもので、実質的な銀行(及びグループ)の本業の収益を表す指標。
4.普通株式等Tier1比率:資本金、資本剰余金及び利益剰余金など、自己資本の中でも中核的な資本に対するリスクの割合を表すもの。資本の十分性を示す規制指標であり、この比率が高いほど、リスクに対する備えが厚いことを示します。
5.手数料収益比率:実質業務粗利益に対する各種手数料収益(受託財産に係る信託報酬や不動産仲介手数料、投資信託の販売手数料等)の比率。この比率が高いほど、当グループが注力する手数料ビジネスが粗利益の獲得に貢献していることを示します。
6.経費率(OHR):実質業務粗利益に対する総経費の比率。利益を稼ぐ効率性を示す指標であり、この比率が低いほど、経費を効率的に使って粗利益を稼いでいることを示します。
①当グループの原点
日本では明治時代以降に信託制度が導入され、1922年には「信託法」、「信託業法」が制定されました。これらにより、信託制度が確立され、本格的な発展期を迎えることとなりました。
1924年には「信託業法」に基づく日本最初の信託会社として三井信託株式会社が設立されております。1925年には住友信託株式会社が設立され、1962年には中央信託銀行株式会社が設立されております。これら信託会社・信託銀行が当グループの中核子会社たる三井住友信託銀行株式会社の母体となっており、「信託」が当グループの原点となっております。
当グループは、「信託」の受託者精神に立脚し、「信託」の力で各時代におけるお客さまのニーズや社会の要請に応じて、新たな価値創出に「挑戦」し、日本の発展に貢献する「開拓」の姿勢を、創業以来貫いてまいりました。
例えば、戦後の高度成長期には、重厚長大産業向けの設備投資資金ニーズに応える「貸付信託」を中心に、日本の経済成長を支えてきました。
1960年代からは、企業年金の制度設計・資産運用・資産管理を三位一体で提供する「年金信託」の受託者として、勤労者の充実した老後の生活を支援しております。
2000年以降は、「信託法」、「信託業法」の改正を契機に、時代に合った新たな商品・サービスの提供を通じて、社会課題に向き合っております。
当グループはまさに「信託」を原点とし、「信託」とともにその歴史を歩んでおり、今後もさらなる飛躍に向けて歩みを進めてまいります。
(三井住友信託銀行株式会社の主な変遷)

(三井住友信託銀行株式会社の信託財産残高推移)

(※)2012年3月期以前の信託財産残高については、三井住友信託銀行株式会社統合前の各社の信託財産残高を合算して算出しております。
②当グループの基本方針
当グループは、目指す企業グループ像を明確にするため、次のとおり存在意義(パーパス)、経営理念(ミッション)、目指す姿(ビジョン)、行動規範(バリュー)を定めております。
| 存在意義(パーパス) | ||||
託された未来をひらく
~信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる~
| 経営理念(ミッション) | ||||
全てのステークホルダーのWell-being向上に貢献してまいります。
・高度な専門性と総合力を駆使して、お客さまにとってトータルなソリューションを迅速に提供してまいります。・信託の受託者精神に立脚した高い自己規律に基づく健全な経営を実践し、社会からの揺るぎない信頼を確立
してまいります。
・信託グループならではの多彩な機能を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出し、株主の期待
に応えてまいります。
・個々人の多様性と創造性が、組織の付加価値として存分に活かされ、働くことに夢と誇りとやりがいを持てる
職場を提供してまいります。
| 目指す姿(ビジョン) | ||||
当グループは、信託の受託者精神に立脚し、高度な専門性と総合力を駆使して、銀行機能、資産運用・管理機能、不動産機能を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出する、本邦最大かつ最高のステイタスを誇る
信託グループとして、グローバルに飛躍してまいります。
| 行動規範(バリュー) | ||||
当グループの役職員は、パーパスを実践するため、以下の6つの行動規範を遵守してまいります。
お客さま本位の徹底 -信義誠実-
私たちは、最善至高の信義誠実と信用を重んじ確実を旨とする精神をもって、お客さまの安心と満足のために
行動してまいります。
社会への貢献 -奉仕開拓-
私たちは、奉仕と創意工夫による開拓の精神をもって、社会に貢献してまいります。
組織能力の発揮 -信頼創造-
私たちは、信託への熱意を共有する多様な人材の切磋琢磨と弛まぬ自己変革で、相互信頼と創造性にあふれる組織の力を発揮してまいります。
個の確立 -自助自律-
私たちは、自助自律の精神と高い当事者意識をもって、責務を全うしてまいります。
法令等の厳格な遵守
私たちは、あらゆる法令やルールを厳格に遵守し、社会規範にもとることのない企業活動を推進してまいります。
反社会的勢力への毅然とした対応
私たちは、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力に対して、毅然とした姿勢を貫いてまいります。
(2) 金融経済環境
当連結会計年度の金融経済環境を概観しますと、海外では、米国経済は堅調に推移したものの、関税政策の影響などで雇用の減速が明確となりました。欧州経済は利下げや財政支出の拡大に支えられ、底堅く推移した一方、中国経済は不動産市場の低迷が長期化し、内需も低調な状況が続きました。国内経済は、実質賃金の減少基調や米国の関税引き上げの影響から、回復の力強さを欠く展開となりました。2026年3月には、中東情勢の悪化とホルムズ海峡の事実上の封鎖を受けて原油価格が急騰し、世界的にスタグフレーションリスクが高まりました。
金融市場では、10年国債利回りは、日本銀行の利上げ姿勢や財政悪化懸念、中東情勢を背景とした金利上昇圧力を受け、2026年3月末には2.3%台まで上昇しました。ドル円レートは、2025年9月までは概ね140円台で推移しましたが、10月以降は国内の拡張的な財政政策を受けて円安が進み、2026年3月には160円前後となりました。日経平均株価は、米国の関税政策を巡る不透明感が和らぐにつれて上昇基調を示し、2026年2月には50,000円台後半を付けたものの、中東情勢の悪化を契機に軟調な展開へと転じました。
(3) 事業の経過
当グループは、「託された未来をひらく」というパーパスのもと、環境や社会の変化に応じた価値創出に取り組んできました。
2025年度は、2023年度より開始した中期経営計画の総仕上げと新中期経営計画への橋渡しの期間として、以下2点を重点テーマとして掲げ、当グループの社会的使命である「資金・資産・資本の好循環」の実現に向けた取り組みに注力してまいりました。その結果、業績は堅調に推移し、金利上昇等の環境変化や株式市場の追い風も相まって、PBRや時価総額、純利益等の経営指標は、2030年のありたい姿(※1)として掲げる目標水準に概ね到達いたしました。
| (2025年度経営計画の2つのテーマ) 1.プライベートアセット戦略等の成長領域への注力 2.ステークホルダーとの長期信任関係の構築 |
(※1)2030年のありたい姿:
(定量)ROE:中長期10%以上、純利益:3,000億円以上、AUF:800兆円、PBR:早期に1倍以上(時価総額3兆円以上)
(定性)①フィデューシャリーとしてステークホルダーから信頼される存在、②将来世代も包摂する全ての人のWell-being向上に 貢献、③資金・資産・資本の好循環を促す社会インフラ
1.プライベートアセット戦略等の成長領域への注力
当グループでは、持続的な企業価値向上の実現に向け、好循環による利益成長を基軸として、適切な経費戦略と資本政策を一体的に推進してまいりました。
重点テーマの一つであるプライベートアセット戦略については、インフラや再生可能エネルギー等のリアルアセット分野を中心とした事業者の長期資金ニーズと投資家の運用ニーズの双方に対して、直接ソリューションを提供することができる当グループの強みを活かした好循環の創出に注力してまいりました。
三井住友信託銀行株式会社では、個人のお客さまの期待や投資選好に応える投資機会を提供するため、プライベートアセットを組み入れた実績配当型合同運用指定金銭信託や外国籍投資信託等の新たな投資商品の展開を進めております。
また、機関投資家のお客さま向けには、国内のインフラ領域を専門に投資助言を行うジャパン・エクステンシブ・インフラストラクチャー株式会社において、国内総合型インフラファンドの第二号を組成いたしました。本ファンドには、金融法人に加え新たに企業年金基金にも参画いただき、国内のインフラ投資ファンドとしては最大級となる総額1,200億円の募集に向け、取り組みを加速させております。
さらに、グローバルでの事業推進体制の強化に向け、これまでの出資・提携等に加え、三井住友信託銀行株式会社のプライベートアセット領域におけるゲートキーパー機能(※2)を分割し、三井住友トラスト・インベストメント株式会社へ統合いたしました。これにより、海外投資家を含む市場での認知向上を図るとともに、アジア最大級のプライベートアセット運用会社としての地位を確立してまいります。
今後も、お客さまの多様な運用ニーズに応え、安定的かつ良質なリターンを提供できるよう、投資機会の拡大に加え、運用力及びポートフォリオ提案力の強化に取り組んでまいります。
経費戦略においては、AIやITの活用を通じた業務効率化と社員の生産性向上を通じた中長期的なOHRの改善等に取り組んでおります。この取り組みの一環として、データの効率的活用を通じた、業務高度化を推進するため、当グループ独自のRAGプラットフォーム(※3)「Trust BRAiN」を導入いたしました。さらに、ビジネスニーズへの迅速な対応と、堅確かつレジリエンスに優れたITインフラの構築を図るべく、2026年4月に三井住友信託銀行株式会社と三井住友トラスト・システム&サービス株式会社を統合し、システム開発・運営体制の抜本的な見直しを実施いたしました。
資本政策に関しては、政策保有株式の削減や事業売却等を通じた資本創出を進めるとともに、成長領域の強化に向けた戦略的な資本活用を推進しております。
資本創出の面では、北米貨車リース事業の売却に加え、三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社の資本再編に向けた基本合意書を締結いたしました。(※4)
一方、資本活用においては、三井住友信託銀行株式会社が住信SBIネット銀行株式会社(※5)の株式を追加取得し、同行の協働経営パートナーとなった株式会社NTTドコモとの間で資本業務提携を締結いたしました。本提携を通じて、株式会社NTTドコモが有する会員基盤やくらしの接点、住信SBIネット銀行株式会社のテクノロジーによる高い利便性に、信託銀行らしい高度な専門性を融合し、付加価値の高いサービス提供を実現することで、中長期的な成長基盤強化につなげてまいります。
(※2)ゲートキーパー機能:主に、信託契約等に基づく運用業務の一環として、数多くの国内外ファンドから投資家にとって最適な商品を選定し、モニタリングやレポーティング等の機能を提供するもの
(※3)RAG(Retrieval Augmented Generation)プラットフォーム:生成AIに社内データの検索機能を組み合わせ、業務に必要な情報を参照しながら回答や文章生成を行う仕組み
(※4)三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社の経営の自由度を高め、事業領域の拡大を図るために、芙蓉総合リース株式会社及び株式会社横浜フィナンシャルグループとの共同事業化に向けた基本合意
(※5)2026年8月3日、住信SBIネット銀行株式会社は株式会社ドコモSMTBネット銀行に商号変更します。
2.ステークホルダーとの長期信任関係の構築
当グループは、信託会社を起源とする国内唯一の金融グループとして受託者精神に立脚し、お客さま・株主・社会・社員、さらには将来世代も含む全てのステークホルダーとの長期信任関係の構築を、経営の重点テーマとして位置付けております。
信任関係の構築には、短期的な成果の追求のみならず、高い倫理観と自己規律に基づく経営、健全かつ実効性のあるガバナンス、そして信頼と期待に応え続ける企業姿勢が不可欠です。この考えのもと、持続的な成長と企業価値向上を実現していくため、ガバナンスとフィデューシャリーの更なる高度化に取り組んでまいりました。
コーポレートガバナンス高度化については、経営の透明性と実効性を一層高めるため、2025年度において、取締役会における独立社外取締役比率の過半化(61.5%)及び女性取締役比率の向上(23.0%)を行い、監督機能の強化と多様な視点を活かした意思決定体制の構築を進めました。今後も専門性と多様性を高めつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。
また、お客さまの期待に応えるサービス品質及び利便性の向上に向けては、デジタル技術の活用と対面・非対面チャネルの融合を推進してまいりました。2025年5月には、HDI-Japanが実施する「クオリティ格付け」及び「Webサポート格付け」において、最高評価の「三つ星」を獲得いたしました。今後もお客さまとのコミュニケーションを一層深め、オンラインを含むサービスの拡充に注力し、長期にわたり安心してご利用いただける金融サービスを提供してまいります。
人的資本強化においては、三井住友信託銀行株式会社の人事制度を刷新し、社員一人ひとりの自律的なキャリア形成を後押しするとともに、自身の意思と専門性に基づく挑戦と成長を促す環境整備を進めております。
また、コンプライアンスの面では、2024年10月に判明した、三井住友信託銀行株式会社の元社員によるインサイダー取引事案の再発防止策を着実に実行するとともに、社員一人ひとりの高い倫理観及びコンプライアンス遵守意識の一層の徹底を図りました。信頼回復に引き続き全力をあげて取り組んでまいります。
株主還元については、利益成長に応じた累進的配当を継続しております。加えて、資本活用と資本効率向上とのバランスを踏まえた機動的な自己株式取得を実施いたしました。
(4) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当グループを取り巻く経営環境は、金利ある世界への転換、インフレへの対応、人口動態や社会構造の変化に加え、AI技術の進展により、大きな転換期を迎えております。
とりわけ国内社会構造の変化として、公共インフラの老朽化や脱炭素・GX(※6)の進展を背景とした中長期にわたる多額の投資需要が顕在化し、個人分野においては、人生100年時代を背景に、資産形成・管理・承継を通じた中長期的な意思決定の重要性が高まっております。
こうした環境において、当グループは、事業者と投資家のお客さまが直面する複雑な課題に対し、「最適な選択肢の提示」と「意思決定の支援」を通じて、資金・資産・資本の好循環を力強く支える存在であり続けたいと考えております。信託が有する、能力や資産、時間を「転換」する本源的機能を軸に、2035年のありたい姿(※7)として、社会課題の解決と持続的な経済成長の両立を実現する「社会課題解決型ビジネスのリーディングカンパニー」を目指します。
2026年度から開始する中期経営計画は、このありたい姿の実現を見据えた成長を加速させる3年間と位置付け、以下の3つの重点テーマに挑戦してまいります。
| (中期経営計画における重点テーマ) 1.成長戦略~資産運用ビジネスを軸とした信託グループらしいビジネスモデル~ 2.資本戦略 3.経営基盤高度化 |
(※6)GX(Green Transformation):カーボンニュートラルを目指した社会や経済システムの変革
(※7)2035年のありたい姿(定量):業務純益:1兆円、ROTCE:16%(ROE:12%)
<重点テーマ1>成長戦略~資産運用ビジネスを軸とした信託グループらしいビジネスモデル~
当グループでは、資金・資産・資本の好循環を通じた持続的成長を実現するため、資産運用ビジネスを成長の中核領域と位置づけております。環境変化に伴い顕在化する低報酬化の流れを転換し、当グループならではの競争優位性の確立を目指します。長期・非流動性の資金ニーズと従来型の金融構造とのミスマッチといった課題に果敢に対応し、高付加価値な運用商品・サービスの提供、バランスシート変革による投資機会の創出、個人ビジネスの拡大を通じて成長を実現してまいります。
ファンドラップ等の投資一任型サービスを通じ、グループ一体で多彩なポートフォリオを提供するとともに、アクティブ運用力の高度化や、質の高いプライベートアセットへの投資機会の拡充により、高付加価値な運用サービスの提供を強化してまいります。
また、投融資の知見や目利き力を起点に当グループ自らのバランスシートを活用した投資機会の創出を進めるとともに、インフラや再生可能エネルギー等のリアルアセット分野を中心に、長期性資金を呼び込む「令和版産業金融」を推進いたします。これにより、持続可能な社会の実現に資する投資機会を当グループの成長につなげてまいります。
加えて、三井住友信託銀行株式会社及び住信SBIネット銀行株式会社やUBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント株式会社を含むグループ各社が、多様なチャネルとサービスを一体的に高度化することで、資産形成・管理の裾野を拡大するとともに、高度な資産運用から承継までを一貫して提供し、お客さまのファイナンシャル・ウェルビーイング(※8)の実現を支えてまいります。
(※8)ファイナンシャル・ウェルビーイング:「安心して健やかに生きていくために、お金についての不安をとりのぞき、お金との健全な向き合い方ができている状態」を指す
<重点テーマ2>資本戦略
政策保有株式の削減を着実に進め、成長投資に充当可能な資本の創出を図るとともに、資産運用ビジネスを始めとする成長領域において、出資・提携や戦略的投資を機動的に行うことで、資本効率の向上と成長の加速を両立してまいります。
資本創出の面では、2029年3月末の純資産対比時価20%未満の達成に向け、政策保有株式の売却ペースをさらに加速させてまいります。
資本活用に向けては、先進の米国や成長著しいアジアなど、グローバルな資産運用領域を中心とした出資・提携等を加速いたします。アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社では、高い経済成長率と継続的な人口増加が見込まれるマレーシアの大手資産運用会社AHAM Asset Management Berhadを連結子会社化し、シナジーの拡大を目指してまいります。
また、株主還元においては、総還元性向は50%以上を目安とするとともに、1株あたり配当金は累進的としつつ、修正純利益(※9)の50%程度を目安に運営してまいります。成長投資と株主還元のバランスを踏まえた規律ある資本配分を通じ、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
(※9)修正純利益:親会社株主に帰属する当期純利益-政策保有株式に係る売却損益(税引き後)
<重点テーマ3>経営基盤高度化
お客さまの最善の利益を追求する受託者精神のもと、デジタル化が進む社会に適合した人材を価値創造の中核に据え、IT・DX基盤及び業務プロセスを一体で強化し、事業拡大や業務量の増大にも対応可能な信頼性と生産性の高い経営基盤を構築してまいります。
社員一人ひとりがAIを駆使し、業務プロセス等を設計する「Human in the Design 」(※10)を前提とした人材育成・人材活用を強化することで、信頼性の高いオペレーションモデルの構築を推進いたします。
また、人的資本投資の強化と新人事制度の定着・高度化を通じて、自律的なキャリア形成と役割・成果に基づく処遇を軸に、戦略領域への配置を進めるとともに、当社が有する幅広い商品・機能を組み合わせて価値を創出する、高付加価値・高生産性の人材ポートフォリオへの転換を進めてまいります。
(※10)Human in the Design :AIの活用にあたり、人が業務プロセスや判断の設計を担い、その結果に対して責任を持つことを前提とする考え方。想定と異なる結果が生じた場合には、人が設計を見直すことにより信頼性を確保する
当グループは、本中期経営計画を通じて、信託の力を進化させ、掲げた戦略を着実に遂行することで、次の成長を実現します。お客さま、社会、そして将来世代から託された未来をひらくことで、全てのステークホルダーのウェルビーイング向上に貢献してまいります。
なお、新たな中期経営計画の策定にあたり、社会構造の変化やステークホルダーからの期待を踏まえ、「持続可能な社会」「ファイナンシャル・ウェルビーイング」「受託者精神」「人的資本(専門性・多様性)」の4つを、パーパスに基づき取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として、改めて特定しました。
これらのマテリアリティは、2035年のありたい姿の実現に向け、当社が経営として重視する事項を整理したものであり、中期経営計画における各種戦略の起点となるものです。マテリアリティに基づいた信託グループらしいビジネスの推進を通じ、次の100年に向けた豊かな未来づくりに挑戦し続けてまいります。
(マテリアリティの概要)
| マテリアリティ | 概要 |
| 持続可能な社会 | 資産や事業の潜在価値を引き出し、長期性資金を投資可能な形に転換することで、脱炭素の進展や社会インフラの高度化などの環境・社会課題の解決に資するインフラ、再生エネルギー等の分野に継続的に資金を循環させ、日本の中長期的成長を支えます。 |
| ファイナンシャル・ ウェルビーイング | お客さま一人ひとりの目的や価値観に寄り添い、最適な選択肢の提示と意思決定の支援を通じて、生涯にわたる資産形成・管理・承継を支えます。 |
| 受託者精神 | 当グループの全ての活動の基盤として、お客さまの最善の利益を追求し、安心して資産や想いを託していただける存在として、未来への期待に基づく信頼に応え続けます。 |
| 人的資本 (専門性・多様性) | 当グループの付加価値創出と生産性向上を担う基盤として、高い専門性と多様なバックグラウンドを有する人的資本の充実を図り、組織全体の価値創造力の高度化を図ります。 |
報告セグメントにおける主な事業内容は、以下のとおりであります。
(個人事業)
お客さまのさまざまなニーズに対し、銀行・信託・不動産の機能を融合させた商品・サービスを、デジタルとリアル双方の強みを活かして提供しています。人生100年時代のファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に向け、お客さまの人生に寄り添い、長期的な視点で資産形成から資産承継までを総合的にデザインすることで、資産をまもり、人生をはぐくみ、未来へつなぐサポートを行います。
(法人事業)
各種ファイナンス、証券代行業務に加え、経営課題解決に向けたコンサルティングを通じて、お客さまの企業価値向上や社会における資金循環の創出に取り組んでいます。他事業やグループ会社・外部提携企業と連携した専門的かつ多彩なソリューションを提供し、経済的価値創出と社会的価値創出を両立することで、お客さまと社会の長期的な成長に貢献しています。
(投資家事業)
多様な投資家のお客さまに対し、意思決定をサポートする高品質なコンサルティングを通じ、資産運用・資産管理サービスを提供しています。また、他事業やグループ会社等の多彩で専門性の高い機能と有機的に連携し、社会課題解決の中で生じる資金需要に着目した新たな価値ある投資機会を創出すること等を通じて、お客さまの経営課題や社会課題の解決に貢献しています。
(不動産事業)
不動産仲介、開発・有効活用・建築・ESG等の各種コンサルティング、アセットマネジメント、不動産カストディ機能等を総合的に発揮することで、お客さまの課題解決に貢献しています。また、不動産の目利き力を駆使した投資機会の創出、フィデューシャリーに拘った堅確な事務を通じた安心・安全の提供により、社会インフラとして不動産市場の成長を力強く後押ししています。
(マーケット事業)
外国為替・金利・デリバティブ等の商品・サービスの提供を通じてお客さまの多様な課題の解決に貢献しています。また、投資業務・ALM業務での市場変動リスクの適切なマネージなど、高度な知見と体制を強みに、安定性と収益性の両立に挑みながら、持続的な付加価値の創出に取り組んでいます。
(運用ビジネス)
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社とアモーヴァ・アセットマネジメント株式会社を中心に、グループ全体でアジア最大級となる資産運用残高を有しています。年金運用で培った質の高い運用ソリューションやグローバルネットワークを活用した多様な商品提供など、グループ各社が持つ多彩な運用機能の提供を通じて、お客さまの長期・継続的な資産運用に貢献しています。
(5) 目標とする経営指標
当グループは、新中期経営計画期間(2026年度から2028年度まで)におけるKPIとして以下を設定しております。2035年のありたい姿の実現を目指し、中長期的に収益力と成長力の両立を図り、ROTCE16%(ROE12%)を安定的に確保するとともに、実質業務純益1兆円規模を視野に入れた事業規模の拡大に向けて、着実に歩んでまいります。
| 2025年度 (実績) | 2026年度 (予想) | 2028年度 (目標) | 2035年度まで (ありたい姿) | |
| ROTCE (自己資本ROE) | 9.9% (9.5%) | 11%台後半 (10%台半ば) | 13%程度 (11%程度) | 16% (12%) |
| 実質業務粗利益 | 9,602億円 | 10,900億円 | 12,350億円 | - |
| 実質業務純益 | 3,474億円 | 4,200億円 | 5,000億円 | 1兆円 |
| 親会社株主純利益 | 3,175億円 | 3,800億円 | 4,100億円 | - |
| 普通株式等Tier1比率 (バーゼルⅢ最終化完全 実施ベース) | 10.3% | 安定的に 10%以上 | 安定的に 10%以上 | 安定的に 10%以上 |
| 手数料収益比率 | 58.5% | 50%台半ば | 50%台半ば | 60% |
| 経費率(OHR) | 63.8% | 60%程度 | 60%未満 | 50%台前半 |
(注)1.ROTCE(Return on Tangible Common Equity):普通株式に係る自己資本からのれん及び無形資産を控除した金額に対する、普通株式に係る親会社株主に帰属する当期純利益からのれん償却額等を控除した利益の比率。のれん及びM&A等により認識された無形資産を控除した自己資本(TCE)が生み出す収益力を示す指標であり、この比率が高いほど、実質的な自己資本を効率的に使って純利益を稼いでいることを示します。
2.実質業務粗利益:当社及び連結子会社の業務粗利益に持分法適用会社の損益(臨時要因を除いた持分割合考慮後の金額)等を反映した社内管理ベースの計数。
3.実質業務純益:経常利益から与信関係費用や株式等関係損益などの臨時的な要因の影響を控除したもので、実質的な銀行(及びグループ)の本業の収益を表す指標。
4.普通株式等Tier1比率:資本金、資本剰余金及び利益剰余金など、自己資本の中でも中核的な資本に対するリスクの割合を表すもの。資本の十分性を示す規制指標であり、この比率が高いほど、リスクに対する備えが厚いことを示します。
5.手数料収益比率:実質業務粗利益に対する各種手数料収益(受託財産に係る信託報酬や不動産仲介手数料、投資信託の販売手数料等)の比率。この比率が高いほど、当グループが注力する手数料ビジネスが粗利益の獲得に貢献していることを示します。
6.経費率(OHR):実質業務粗利益に対する総経費の比率。利益を稼ぐ効率性を示す指標であり、この比率が低いほど、経費を効率的に使って粗利益を稼いでいることを示します。