有価証券報告書-第7期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/29 11:09
【資料】
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【項目】
135項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当グループは、目指す企業グループ像を明確にするため、次のとおり経営理念(ミッション)、目指す姿(ビジョン)を定めております。
① 経営理念(ミッション)
・高度な専門性と総合力を駆使して、お客さまにとってトータルなソリューションを迅速に提供してまいります。
・信託の受託者精神に立脚した高い自己規律に基づく健全な経営を実践し、社会からの揺るぎない信頼を確立してまいります。
・信託銀行グループならではの多彩な機能を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出し、株主の期待に応えてまいります。
・個々人の多様性と創造性が、組織の付加価値として存分に活かされ、働くことに夢と誇りとやりがいを持てる職場を提供してまいります。
② 目指す姿(ビジョン)-「The Trust Bank」の実現を目指して-
当グループは、信託の受託者精神に立脚し、高度な専門性と総合力を駆使して、銀行事業、資産運用・管理事業、不動産事業を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出する、本邦最大かつ最高のステイタスを誇る信託銀行グループとして、グローバルに飛躍してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社は、平成30年度のグループ連結ベースでの収益目標を実質業務純益2,800億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,650億円としております。
(3) 金融経済環境
当連結会計年度の国内経済環境を振り返りますと、雇用環境の改善が持続したものの、個人消費は低調に推移しました。一方、海外景気回復により企業の高い利益水準が維持されたことから、総じて緩やかな景気回復が続きました。
海外では、米国において米連邦準備制度理事会(FRB)が3回に亘って政策金利の引き上げを実施し、英国においてはイングランド銀行が10年振りとなる政策金利の引き上げに踏み切った他、欧州中央銀行が資産買取額の減額等、金融緩和政策の変更を発表する等、主要国で金融緩和政策の出口に向けた動きがみられました。今年に入ると、米国で金融引締めペースの加速に対する警戒感が強まったことなどから、米国長期金利の上昇と米国株の乱高下が続きました。国内金融市場では、日本銀行のイールドカーブ・コントロール政策により長期金利は概ね安定した動きを維持しましたが、日経平均株価は、1ドル=110円を超えて円高が進んだことや、3月に米国が貿易における保護主義的な姿勢を打ち出したこともあって、期末まで不安定な動きが続きました。
(4) 中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題
足許、低金利環境が継続し、社会・経済・金融システムのデジタル化が急速に進展する中、当グループは、商品・サービスの更なる拡充、収益構造の多層化を進め、多様な事業ポートフォリオを有する強みを活かし、付加価値の高いトータルソリューション提供力に一層の磨きを掛けてまいります。
引き続き、グループ中期経営計画「第2の創業」の2年目として、施策の具体化・変革のスピードアップを図り、「The Trust Bankへの進化」に向け、ビジネスモデル変革を早期に実現するとともに、自らの強みとする事業領域において、他の金融機関の追随を許さないステージに成長を遂げてまいります。
① トータルソリューション営業モデルの進化
個人のお客さまには、ライフステージ毎の継続的なコンサルティングを通じて、資産形成や相続・承継をサポートするとともに、保険・ローン・不動産等のお客さまのライフイベントに応じた、商品ラインアップの拡充に取り組んでまいります。
法人のお客さまには、資金ニーズへの適切な対応に加え、コーポレートガバナンスの高度化、不動産、年金制度、福利厚生等の経営課題の解決に向けたトータルソリューションの提供や、低金利下での運用ビジネスの推進に注力いたします。
また、個人・法人の別を問わず、中長期的視点に立った有利で多様な運用先を求めるお客さまには、当グループの機能を横断的に活用し、経済の有望分野や成長分野への最適な投資機会を提供してまいります。とくに、本年10月を目途として三井住友信託銀行の運用事業と三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社との統合により誕生する運用会社は、独立性・透明性を向上させるとともに、国民的ブランド力を持った、グローバルトップ20に入る資産運用会社を目指してまいります。加えて、資産管理の分野でも、日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社と資産管理サービス信託銀行株式会社の経営統合を通じ、各種のスケールメリットを追求し、証券管理機能をより一層強化いたします。
更に、信託や不動産機能を活用した地域金融機関とのアライアンスや、地域創生への貢献に資する活動も加速させ、お客さまと当グループのWIN-WINな関係を構築し、シナジーの発揮に注力してまいります。
このような活動を通じ、信託・財産管理分野における、本邦NO.1のステイタスを盤石なものとしていく所存です。
② 持続的成長を支える新事業・新業務の創出へのチャレンジ
今後も、金融機関を取巻く事業環境は厳しいと思われますが、そうした環境下においても、当グループの持続的成長を実現するため、従来以上に、新たな事業や業務の創出にチャレンジしてまいります。そのために、新分野や注力領域における取組体制の整備を進め、競争優位なビジネス領域に資源を投入するとともに、適切なリスクテイクを行い、より高採算の資産への入替えを進めてまいります。
③ デジタル戦略の加速
社会におけるデジタル化が加速する中、当グループにおいても、先端技術を積極的に取り入れ、お客さまの利便性向上や新たな顧客価値の創造に積極的に取り組むとともに、RPA(ロボットによる業務自動化)等の技術を活用した業務効率化に取り組んでまいります。
④ 競争力の源泉となる基盤強化
グループ関係会社が、各社毎に既存のソリューション機能の強化に取り組む一方で、統一された経営戦略の下で、グループ内の機能の相互補完や、経営資源の共有化を進め、人員・IT投資額等のグループベースでのコントロールを強化してまいります。
また、人材については、当グループにおける競争力の源泉であるとともに、ビジネスモデル変革の最大のエンジンと位置付け、従来以上に、専門性・総合力・創造力を高める取り組みを推進し、トータルソリューションを提供できる人材の育成に努めてまいります。
加えて、生産性向上と総労働時間削減を両立させる「働き方改革」と「健康増進経営」に向けた取り組みを、当グループの持続的成長の実現に向けた重要課題と位置付け、引き続き、多様な人材が能力を存分に発揮できる態勢構築に注力し、社員ひとりひとりの活躍を推進してまいります。
⑤ 財務基盤の強化及びリスク管理・コンプライアンス態勢の高度化
バーゼルⅢ等、国際的な金融規制強化の趨勢を踏まえ、財務基盤の強化・拡充を継続すべく、保有株式の計画的な削減を着実に進めてまいります。また、お客さまの資金ニーズに確りと対応しつつ、与信ポートフォリオの収益性改善に継続的に取り組んでまいります。あわせて、個人のお客さま向けの店舗の改革や拠点費用をはじめとする各種固定費の見直し等の経費削減と採算性向上に向けた活動を推進してまいります。
リスク管理面では、中期経営計画で掲げた利益計画の達成に向け、適切なリスクテイクを進めるとともに、環境の変化に機動的に対応すべく、予兆管理の高度化に努め、海外拠点における現地規制を含めた、国際的な金融規制に的確に対応してまいります。
また、コンプライアンス面では、信頼を重んじる金融機関として、情報管理の徹底や、反社会的勢力との取引排除、顧客保護等管理の強化に取り組むとともに、グローバルに展開する業務への対応態勢を強化してまいります。
⑥ 経営インフラの高度化
当グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指し、引き続きコーポレートガバナンスの高度化に努めてまいります。
具体的には、取締役会や社外取締役が過半数を占める法定の委員会(指名委員会、報酬委員会、及び監査委員会)の運営を高度化し、監督・牽制力の強化と迅速な業務執行を実現する意思決定のスピードアップに引き続き取り組むとともに、専門的知見を有する外部委員を中心としたリスク委員会等の活用を通じて、当グループのビジネスモデルの健全性及び信頼性、並びに経営の透明性を一層高めてまいります。
また、当グループでは、専業信託銀行グループとしての多彩な専門機能を発揮し、お客さま、株主の皆さま、及び社会からの信頼・安心感を確立するために、利益相反管理委員会を通じた外部有識者の知見の更なる活用に取り組む等、利益相反管理を強化し、フィデューシャリー・デューティーの高度化に一層努めてまいります。