有価証券報告書-第107期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の期首より、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外連結子会社及び在外持分法適用会社においてIFRS第17号「保険契約」を適用しており、前連結会計年度に係る経営成績等は当該会計基準を遡及適用した後の数値となっております。また、連結主要指標における前連結会計年度に係る対前年増減率は記載しておりません。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期の世界経済は、米国において、雇用者数の増加や個人消費の拡大等を背景に景気は堅調に推移しましたが、欧州では、物価高の影響等により景気に弱さが見られました。また、わが国経済は、原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、経済活動の再開による内需の回復等により景気は緩やかに回復しました。
当社は、中期経営計画(2022-2025)に基づいて、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社による経営管理のもと、「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」を目指し、5つの基本方針に基づく「重点施策」に取り組みました。
このような中、当連結会計年度の経営成績は次のとおりとなりました。
経常収益は、保険引受収益が2兆8,807億円、資産運用収益が3,379億円、その他経常収益が327億円となった結果、3兆2,514億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が2兆3,851億円、資産運用費用が554億円、営業費及び一般管理費が4,544億円、その他経常費用が226億円となった結果、2兆9,177億円となりました。
以上の結果、経常利益は前連結会計年度に比べ1,455億円増加し、3,337億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,247億円増加し、2,746億円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(三井住友海上火災保険株式会社)
経常収益は、保険引受収益が1兆7,991億円、資産運用収益が2,524億円、その他経常収益が64億円となった結果、2兆580億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆5,502億円、資産運用費用が387億円、営業費及び一般管理費が2,488億円、その他経常費用が58億円となった結果、1兆8,437億円となりました。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ730億円増加し、2,143億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ598億円増加し、1,677億円となりました。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
海外保険子会社セグメントについては、正味収入保険料は前連結会計年度に比べ2,913億円増加し、1兆1,305億円となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,552億円となり、出資持分考慮後の当期純利益(セグメント利益)は前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,513億円となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ1兆2,889億円増加し、9兆8,662億円となりました。
当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べ43.3ポイント上昇し、698.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ534億円増加し、2,312億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ619億円増加し、1,070億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ395億円増加し、△2,193億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より1,682億円増加し、1兆2,512億円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
損害保険業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、本項に記載した予想、予測、見込み、見通し、方針、予定等の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には不確実性が内在しており、将来生じる実際の結果とは大きく異なる可能性があります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
[連結主要指標]
正味収入保険料は、当社において火災保険や自動車損害賠償責任保険で減収したものの、海外事業において欧州をはじめアジアや米州でも増収したことや為替影響もあり、前連結会計年度に比べ2,848億円増加し、2兆7,538億円となりました。
経常利益は、国内損害保険事業で国内の自然災害や自動車事故の増加により発生保険金(正味支払保険金と支払備金繰入額の合計)が増加したものの、資産運用損益が増加したことなどにより増益となり、また海外事業においても増益となったことにより、前連結会計年度に比べ1,455億円増加し、3,337億円となりました。
経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,247億円増加し、2,746億円となりました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
2 元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
c 正味支払保険金
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
運用資産及び有価証券の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
b 有価証券
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(三井住友海上火災保険株式会社)
当社(単体)の経営成績は次のとおりとなりました。
[当社(単体)の主要指標]
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 正味損害率=(正味支払保険金+損害調査費)÷正味収入保険料
3 正味事業費率=(諸手数料及び集金費+保険引受に係る営業費及び一般管理費)÷正味収入保険料
保険引受の概況は次のとおりであります。
正味収入保険料は、火災保険や自動車損害賠償責任保険で減収したことなどにより前事業年度に比べ65億円減少し、1兆6,233億円となりました。一方、正味支払保険金は、自動車保険で増加したことなどにより前事業年度に比べ55億円増加し、9,501億円となりました。以上により、正味損害率は65.6%と、前事業年度に比べ1.3ポイント上昇しました。また、保険引受に係る営業費及び一般管理費が増加したことなどにより、正味事業費率は32.7%と、前事業年度に比べ0.2ポイント上昇しました。
これらに収入積立保険料、満期返戻金、支払備金繰入額、責任準備金戻入額などを加減した保険引受利益は、責任準備金戻入額が増加したことなどにより、前事業年度に比べ366億円増加し、207億円となりました。
資産運用の概況は次のとおりであります。
利息及び配当金収入が前事業年度に比べ197億円増加し1,547億円となったことなどから、積立型保険の満期返戻金などに充当する運用益を控除した残額の資産運用収益は、前事業年度に比べ263億円増加し、2,524億円となりました。一方、資産運用費用は、有価証券売却損が115億円減少したことなどにより前事業年度に比べ133億円減少し、387億円となりました。
これらの結果、経常利益は前事業年度に比べ730億円増加し、2,143億円となりました。当期純利益は、前事業年度に比べ598億円増加し、1,677億円となりました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 正味支払保険金
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 正味損害率は正味支払保険金に損害調査費を加えて算出しております。
運用資産、有価証券、利回り及び海外投融資の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
b 有価証券
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 利回り
運用資産利回り(インカム利回り)
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 収入金額は、損益計算書における「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。
3 平均運用額は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、買入金銭債権については日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
資産運用利回り(実現利回り)
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 資産運用損益(実現ベース)は、損益計算書における「資産運用収益」及び「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額であります。
3 平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、買入金銭債権については日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
4 資産運用利回り(実現利回り)にその他有価証券の評価差額等を加味した時価ベースの利回り(時価総合利回り)は以下のとおりであります。
なお、資産運用損益等(時価ベース)は、資産運用損益(実現ベース)にその他有価証券に係る評価差額(税効果控除前の金額による。)の当期増減額及び繰延ヘッジ損益(税効果控除前の金額による。)の当期増減額を加減算した金額であります。
また、平均運用額(時価ベース)は、平均運用額(取得原価ベース)にその他有価証券に係る前期末評価差額(税効果控除前の金額による。)及び金銭の信託に係る前期末評価損益を加減算した金額であります。
d 海外投融資
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 金銭の信託として運用しているものを含めて表示しております。
3 「海外投融資利回り」のうち「運用資産利回り(インカム利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 運用資産利回り(インカム利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
4 「海外投融資利回り」のうち「資産運用利回り(実現利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 資産運用利回り(実現利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
5 前事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国公社債及び外国株式を除く外国証券329,084百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国公社債を除く外国証券108,916百万円であります。
当事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国公社債及び外国株式を除く外国証券476,853百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国公社債を除く外国証券101,916百万円であります。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
海外事業につきましては、海外自然災害リスク管理を強化するとともに、海外事業の利益拡大や安定化に向けた取組みを進めました。
MS Amlinにおいては、米国のハリケーンなど自然災害リスクの引受けを削減しつつそれ以外のリスクの引受けを拡大するとともに、市場環境を踏まえて保険料の引上げを行ったことにより、収益が拡大しました。また、アジア市場においては、プラットフォーマーと連携しデジタル技術を活用したリテール市場の開拓や、MS First Capital Insurance Limitedの高いアンダーライティング力など各拠点の強みを活かした企業マーケットの開拓に引き続き努めたことにより、収益が順調に拡大しました。
事業投資については、米国保険市場におけるプレゼンス拡大を目指して買収したMS Transverseを通じて、成長する米国のMGA市場を捕捉する取組みを開始しました。
海外保険子会社セグメントの経営成績は次のとおりとなりました。
[海外保険子会社の主要指標]
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 セグメント利益は出資持分考慮後の当期純利益に相当する金額であります。
正味収入保険料は、新規の引受けや保険料率の引上げにより大きく増収した欧州をはじめアジアや米州でも増収したことや、為替影響もあり、前連結会計年度に比べ2,913億円増加し、1兆1,305億円となりました。
経常利益は、保険料増収、ポートフォリオの収益性向上、自然災害に係る発生保険金(正味支払保険金と支払備金繰入額の合計)の減少などにより保険引受収支(除く保険金融収支)が改善したことを主因に、前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,552億円となりました。
出資持分考慮後の当期純利益(セグメント利益)は前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,513億円となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ1兆2,889億円増加し、9兆8,662億円となりました。主な総資産の内訳は、有価証券が6兆6,328億円(前連結会計年度末比9,962億円増加)、現金及び預貯金が1兆4,605億円(同2,215億円増加)であります。
当社のソルベンシー・マージン比率の状況は、以下のとおりであります。
保険会社は、保険金支払等に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生や、資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。この「通常の予測を超える危険」を示す「リスクの合計額」(以下の各表の(B))に対する「資本金・準備金等の支払余力」(すなわちソルベンシー・マージン総額:以下の各表の(A))の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「ソルベンシー・マージン比率」(以下の各表の(C))であります。
ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。
イ 単体ソルベンシー・マージン比率
(注)「単体ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条及び第87条並びに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出された比率であります。
保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券の評価差額が増加したことを主因に、単体ソルベンシー・マージン総額が前事業年度末に比べて7,282億円増加したことなどにより、単体ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて6.8ポイント上昇し、691.1%となりました。
ロ 連結ソルベンシー・マージン比率
(注)「連結ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条の2及び第88条並びに平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出された比率であります。
保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券の評価差額が増加したことを主因に、連結ソルベンシー・マージン総額が前連結会計年度末に比べて9,599億円増加したことなどにより、連結ソルベンシー・マージン比率は前連結会計年度末に比べて43.3ポイント上昇し、698.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、保険料の収入額が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ534億円増加し、2,312億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、債券貸借取引受入担保金による支出が減少したことなどにより前連結会計年度に比べ619億円増加し、1,070億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に社債の償還による支出が増加したことの反動などにより前連結会計年度に比べ395億円増加し、△2,193億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より1,682億円増加し、1兆2,512億円となりました。
資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。
長期的な投資資金等に対しては、主に営業活動から得た資金及び内部留保による自己資金を活用するほか、社債の発行や金融機関からの長期借入による外部からの資金調達を行っております。
また、資金の流動性につきましては、大規模自然災害時に保険金の支払や市場の混乱等により資金繰りが悪化する場合に備え、流動性資産を十分に保有するとともに、資金の流出入の動向を踏まえて資産・負債両面から流動性についての評価を行い、適切な資金繰りを行っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性から、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の事項を会計上の重要な見積りと考えております。
イ 時価の算定方法
資産・負債の一部は時価をもって貸借対照表価額としており、時価の算定は市場価格等に基づいております。一部のデリバティブ取引において市場価格がない場合には、将来キャッシュ・フローの現在価値や取引対象の市場価格、契約期間等の構成要素に基づく合理的な見積りによって算出された価格を時価としております。
ロ 有価証券の減損
保有している有価証券は有価証券市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。将来、有価証券市場が悪化した場合には有価証券評価損が発生する可能性があります。
ハ 固定資産の減損
収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように、減損処理を行っております。資産又は資産グループの回収可能価額は、正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される価額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い金額であることから、固定資産の減損損失の金額は合理的な仮定及び予測に基づく将来キャッシュ・フローの見積りに依存しております。したがって、関連する事業の環境が変化した場合、固定資産の使用方法を変更した場合又は不動産取引相場や賃料相場等が変動した場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。
ニ 繰延税金資産
繰延税金資産の回収可能性の判断に際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合は繰延税金資産が変動する可能性があります。
ホ 貸倒引当金
債権の貸倒れによる損失に備えて、回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。貸付先の財務状況の変化などにより、回収不能となった金額や貸倒引当金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。
ヘ 支払備金
保険契約に基づいて支払義務が発生した、又は発生したと認められる保険金等のうち、まだ支払っていない金額を見積もり、支払備金として積み立てております。損害調査の進展、裁判等の結果、インフレーションや為替の変動などにより保険金等の支払額や支払備金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。
ト 責任準備金等
保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金等を積み立てております。当初想定した環境・条件等が大きく変動し予期せぬ損害の発生が見込まれる場合には、責任準備金等の積み増しが必要になる可能性があります。
チ 退職給付費用及び退職給付債務
退職給付費用及び退職給付債務は、割引率や将来の退職率及び死亡率など、いくつかの前提条件に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件を変更する必要が生じた場合には、将来の退職給付費用及び退職給付債務が変動する可能性があります。
なお、上記のうち「ハ 固定資産の減損」及び「ヘ 支払備金」については、関連する事項を「第5 経理の状況」の「重要な会計上の見積り」に記載しております。
④ 目標とする経営指標等の分析等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標に関し、正味収入保険料は、1兆6,233億円と前事業年度に比べ、0.4%の減収となりました。正味損害率は65.6%と前事業年度に比べ、1.3ポイントの上昇となりました。正味事業費率は32.7%と前事業年度に比べ、0.2ポイントの上昇となりました。保険引受利益は、前事業年度比366億円増加し、207億円のプラスとなりました。引き続き、自動車保険及び火災保険の収支改善、また、事業費構造の変革による収益力強化の取組みを進めてまいります。
⑤ 問題認識と今後の方針について
問題認識と今後の方針は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているとおりであります。
当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度の期首より、国際財務報告基準(IFRS)を適用している在外連結子会社及び在外持分法適用会社においてIFRS第17号「保険契約」を適用しており、前連結会計年度に係る経営成績等は当該会計基準を遡及適用した後の数値となっております。また、連結主要指標における前連結会計年度に係る対前年増減率は記載しておりません。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期の世界経済は、米国において、雇用者数の増加や個人消費の拡大等を背景に景気は堅調に推移しましたが、欧州では、物価高の影響等により景気に弱さが見られました。また、わが国経済は、原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、経済活動の再開による内需の回復等により景気は緩やかに回復しました。
当社は、中期経営計画(2022-2025)に基づいて、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社による経営管理のもと、「未来にわたって、世界のリスク・課題の解決でリーダーシップを発揮するイノベーション企業」を目指し、5つの基本方針に基づく「重点施策」に取り組みました。
基本方針 | 重点施策 |
国内損害保険事業の構造変革 | 自動車保険・新種保険のトップライン拡大、火災保険の収益改善策を強化するとともに、DX推進によるお客さま体験価値の創造や社会課題の解決に資する新商品を開発するなど、新たなマーケットの創出に取り組みました。 [取組内容] ・フリート契約のお客さまが各ドライバーのアルコールチェックの結果や走行データをまとめて記録・管理する業務を支援する「F-ドラアルチェキプラン」の提供を開始しました。 ・代理店による保険の補償前後におけるリスクソリューションの提供を開始し、住宅用太陽光パネル・蓄電池、防災グッズサービス、ドラレコ・ロードマネージャー(専用ドライブレコーダーによる道路損傷箇所の検出サービス)等の提供を開始しました。 ・大規模な自然災害等お客さまからの事故連絡が集中した場合においてもその受付などのお客さま対応を迅速に行えるよう、一定の事故の連絡についてAI音声が自動的に応答するサービスを開始しました。 |
海外事業の収益拡大 | 海外自然災害リスク管理を強化するとともに、海外事業の利益拡大や安定化に向けた取組みを進めました。 [取組内容] ・MS Amlinは、米国のハリケーンなど自然災害リスクの引受けを削減しつつそれ以外のリスクの引受けを拡大するとともに、市場環境を踏まえて保険料の引上げを行ったことにより、収益が拡大しました。 ・アジア市場においては、プラットフォーマーと連携しデジタル技術を活用したリテール市場の開拓や、MS First Capital Insurance Limitedの高いアンダーライティング力など各拠点の強みを活かした企業マーケットの開拓に引き続き努めたことにより、収益が順調に拡大しました。 ・事業投資については、米国保険市場におけるプレゼンス拡大を目指して買収したMS Transverse Insurance Group, LLCを通じて、成長する米国のMGA市場を捕捉する取組みを開始しました。 |
資産運用利益の拡大 | 資産運用利益の拡大に向け、新たなリスクテイクと必要な態勢整備等を行って超過リターンの獲得を目指す「αプロジェクト」を開始し、オルタナティブ投資のウエイト拡大や収益期待資産の拡充を進めるとともに、同プロジェクトを支えるグローバルな資産運用体制の強化に取り組みました。 |
新たなビジネスの創造 | 「当社のサステナビリティ」と「社会のサステナビリティ」の同時実現のため、新たなデジタル技術やAIの活用や他社とのアライアンス等の取組みを推進しました。 [取組内容] ・交通事故の発生箇所、道路構造、人流などのデータを組み合わせ、AIを活用して事故発生リスクを評価・可視化するサービス「事故発生リスクAIアセスメント」について、全国の自治体や企業への販売を開始しました。 ・米国のAlarm.com Holdings, Inc.と提携して、住宅IoTプラットフォームを活用した個人向けサービス「MS LifeConnect」の展開をスタートし、本サービスの第一弾として、AIカメラ(防犯カメラ)とスマートフォンを活用しご家族の安全をお客さまご自身で見守るセルフセキュリティサービスの提供を開始しました。 ・宇宙ビジネスに関係する宇宙業界、旅行業界、弁護士業界、医療業界、地方自治体等との協力を通じて、宇宙での滞在や体験を安心して楽しむための補償・サービスの開発を進めました。 |
グループシナジーの発揮 | グループの多様性を活かした連携強化による一層の成長の実現、グローバルベースでのシナジー発揮を目指し、以下の取組みを行いました。 [取組内容] ・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社(以下「あいおいニッセイ同和損保」といいます。)とともに商品・損害サポート・事務などの領域における品質向上・生産性向上を図る「1プラットフォーム戦略」を推進しました。 ・海外拠点との間でそれぞれが持つ商品・サービスや様々な知見を双方向で共有し活用する「TENKAIプロジェクト」を推進しました。 ・当社とあいおいニッセイ同和損保が保有する事故データと複数の協力事業者が有する最先端予測技術等を活用し、精緻な降雹予測を行うソリューションの開発を行い、国内初となる「雹災アラートサービス」の実証実験を開始しました。 |
このような中、当連結会計年度の経営成績は次のとおりとなりました。
経常収益は、保険引受収益が2兆8,807億円、資産運用収益が3,379億円、その他経常収益が327億円となった結果、3兆2,514億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が2兆3,851億円、資産運用費用が554億円、営業費及び一般管理費が4,544億円、その他経常費用が226億円となった結果、2兆9,177億円となりました。
以上の結果、経常利益は前連結会計年度に比べ1,455億円増加し、3,337億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,247億円増加し、2,746億円となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(三井住友海上火災保険株式会社)
経常収益は、保険引受収益が1兆7,991億円、資産運用収益が2,524億円、その他経常収益が64億円となった結果、2兆580億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が1兆5,502億円、資産運用費用が387億円、営業費及び一般管理費が2,488億円、その他経常費用が58億円となった結果、1兆8,437億円となりました。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ730億円増加し、2,143億円となりました。経常利益に特別損益、法人税及び住民税などを加減した当期純利益は、前事業年度に比べ598億円増加し、1,677億円となりました。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
海外保険子会社セグメントについては、正味収入保険料は前連結会計年度に比べ2,913億円増加し、1兆1,305億円となりました。
経常利益は前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,552億円となり、出資持分考慮後の当期純利益(セグメント利益)は前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,513億円となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ1兆2,889億円増加し、9兆8,662億円となりました。
当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べ43.3ポイント上昇し、698.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ534億円増加し、2,312億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ619億円増加し、1,070億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ395億円増加し、△2,193億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より1,682億円増加し、1兆2,512億円となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
損害保険業における業務の特殊性のため、該当する情報がないので記載しておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、本項に記載した予想、予測、見込み、見通し、方針、予定等の将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には不確実性が内在しており、将来生じる実際の結果とは大きく異なる可能性があります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績は次のとおりであります。
[連結主要指標]
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 比較増減 | 増減率 | |
正味収入保険料 (百万円) | 2,469,055 | 2,753,874 | 284,818 | 11.5% |
経常利益 (百万円) | 188,204 | 333,727 | 145,523 | 77.3% |
親会社株主に帰属する当期純利益 (百万円) | 149,875 | 274,645 | 124,769 | 83.2% |
正味収入保険料は、当社において火災保険や自動車損害賠償責任保険で減収したものの、海外事業において欧州をはじめアジアや米州でも増収したことや為替影響もあり、前連結会計年度に比べ2,848億円増加し、2兆7,538億円となりました。
経常利益は、国内損害保険事業で国内の自然災害や自動車事故の増加により発生保険金(正味支払保険金と支払備金繰入額の合計)が増加したものの、資産運用損益が増加したことなどにより増益となり、また海外事業においても増益となったことにより、前連結会計年度に比べ1,455億円増加し、3,337億円となりました。
経常利益に特別損益、法人税及び住民税等などを加減した親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,247億円増加し、2,746億円となりました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
区分 | 前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率 (%) | |
火災 | 630,675 | 23.8 | - | 729,475 | 24.7 | 15.7 |
海上 | 257,592 | 9.7 | - | 267,328 | 9.0 | 3.8 |
傷害 | 218,966 | 8.3 | - | 228,057 | 7.7 | 4.2 |
自動車 | 831,945 | 31.4 | - | 859,776 | 29.1 | 3.3 |
自動車損害賠償責任 | 132,470 | 5.0 | - | 116,361 | 3.9 | △12.2 |
その他 | 578,031 | 21.8 | - | 755,898 | 25.6 | 30.8 |
合計 | 2,649,683 | 100.0 | - | 2,956,898 | 100.0 | 11.6 |
(うち収入積立保険料) | (31,397) | (1.2) | (-) | (23,364) | (0.8) | (△25.6) |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
2 元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
区分 | 前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率 (%) | |
火災 | 500,588 | 20.3 | - | 578,609 | 21.0 | 15.6 |
海上 | 191,815 | 7.8 | - | 202,710 | 7.4 | 5.7 |
傷害 | 186,857 | 7.6 | - | 198,914 | 7.2 | 6.5 |
自動車 | 846,116 | 34.3 | - | 876,896 | 31.9 | 3.6 |
自動車損害賠償責任 | 142,102 | 5.6 | - | 130,287 | 4.7 | △8.3 |
その他 | 601,575 | 24.4 | - | 766,455 | 27.8 | 27.4 |
合計 | 2,469,055 | 100.0 | - | 2,753,874 | 100.0 | 11.5 |
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
c 正味支払保険金
区分 | 前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率 (%) | 金額 (百万円) | 構成比 (%) | 対前年増減(△)率 (%) | |
火災 | 332,876 | 24.3 | - | 287,121 | 20.8 | △13.7 |
海上 | 78,712 | 5.8 | - | 87,730 | 6.3 | 11.5 |
傷害 | 123,630 | 9.0 | - | 101,784 | 7.3 | △17.7 |
自動車 | 471,525 | 34.5 | - | 497,707 | 36.0 | 5.6 |
自動車損害賠償責任 | 99,530 | 7.3 | - | 103,916 | 7.5 | 4.4 |
その他 | 261,020 | 19.1 | - | 305,268 | 22.1 | 17.0 |
合計 | 1,367,296 | 100.0 | - | 1,383,529 | 100.0 | 1.2 |
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
運用資産及び有価証券の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
区分 | 前連結会計年度 (2023年3月31日) | 当連結会計年度 (2024年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
預貯金 | 1,239,036 | 14.4 | 1,460,557 | 14.8 |
買入金銭債権 | 67,979 | 0.8 | 114,204 | 1.2 |
金銭の信託 | 609 | 0.0 | 750 | 0.0 |
有価証券 | 5,636,558 | 65.7 | 6,632,802 | 67.2 |
貸付金 | 383,271 | 4.5 | 371,168 | 3.8 |
土地・建物 | 194,219 | 2.3 | 185,618 | 1.8 |
運用資産計 | 7,521,675 | 87.7 | 8,765,101 | 88.8 |
総資産 | 8,577,350 | 100.0 | 9,866,262 | 100.0 |
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
b 有価証券
区分 | 前連結会計年度 (2023年3月31日) | 当連結会計年度 (2024年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
国債 | 648,477 | 11.5 | 596,724 | 9.0 |
地方債 | 77,611 | 1.4 | 75,469 | 1.1 |
社債 | 538,500 | 9.6 | 530,089 | 8.0 |
株式 | 1,792,283 | 31.8 | 2,605,000 | 39.3 |
外国証券 | 2,457,658 | 43.6 | 2,663,360 | 40.2 |
その他の証券 | 122,027 | 2.1 | 162,157 | 2.4 |
合計 | 5,636,558 | 100.0 | 6,632,802 | 100.0 |
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
イ 国内損害保険事業(三井住友海上火災保険株式会社)
当社(単体)の経営成績は次のとおりとなりました。
[当社(単体)の主要指標]
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 比較増減 | 増減率 | |
正味収入保険料 (百万円) | 1,629,832 | 1,623,307 | △6,525 | △0.4% |
正味損害率 (%) | 64.3 | 65.6 | 1.3 | - |
正味事業費率 (%) | 32.5 | 32.7 | 0.2 | - |
保険引受利益又は保険引受損失(△) (百万円) | △15,937 | 20,709 | 36,646 | - |
経常利益 (百万円) | 141,224 | 214,319 | 73,094 | 51.8% |
当期純利益 (百万円) | 107,899 | 167,777 | 59,878 | 55.5% |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 正味損害率=(正味支払保険金+損害調査費)÷正味収入保険料
3 正味事業費率=(諸手数料及び集金費+保険引受に係る営業費及び一般管理費)÷正味収入保険料
保険引受の概況は次のとおりであります。
正味収入保険料は、火災保険や自動車損害賠償責任保険で減収したことなどにより前事業年度に比べ65億円減少し、1兆6,233億円となりました。一方、正味支払保険金は、自動車保険で増加したことなどにより前事業年度に比べ55億円増加し、9,501億円となりました。以上により、正味損害率は65.6%と、前事業年度に比べ1.3ポイント上昇しました。また、保険引受に係る営業費及び一般管理費が増加したことなどにより、正味事業費率は32.7%と、前事業年度に比べ0.2ポイント上昇しました。
これらに収入積立保険料、満期返戻金、支払備金繰入額、責任準備金戻入額などを加減した保険引受利益は、責任準備金戻入額が増加したことなどにより、前事業年度に比べ366億円増加し、207億円となりました。
資産運用の概況は次のとおりであります。
利息及び配当金収入が前事業年度に比べ197億円増加し1,547億円となったことなどから、積立型保険の満期返戻金などに充当する運用益を控除した残額の資産運用収益は、前事業年度に比べ263億円増加し、2,524億円となりました。一方、資産運用費用は、有価証券売却損が115億円減少したことなどにより前事業年度に比べ133億円減少し、387億円となりました。
これらの結果、経常利益は前事業年度に比べ730億円増加し、2,143億円となりました。当期純利益は、前事業年度に比べ598億円増加し、1,677億円となりました。
保険種目別の状況は次のとおりであります。
a 元受正味保険料(含む収入積立保険料)
区分 | 前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比(%) | 対前年増減(△)率(%) | 金額 (百万円) | 構成比(%) | 対前年増減(△)率(%) | |
火災 | 377,269 | 20.1 | 8.4 | 367,272 | 19.6 | △2.6 |
海上 | 108,808 | 5.8 | 20.1 | 109,858 | 5.9 | 1.0 |
傷害 | 195,908 | 10.4 | 2.2 | 195,713 | 10.5 | △0.1 |
自動車 | 695,445 | 37.0 | △0.1 | 703,894 | 37.6 | 1.2 |
自動車損害賠償責任 | 132,470 | 7.1 | △0.2 | 116,361 | 6.2 | △12.2 |
その他 | 368,989 | 19.6 | 2.6 | 377,812 | 20.2 | 2.4 |
合計 | 1,878,892 | 100.0 | 3.3 | 1,870,912 | 100.0 | △0.4 |
(うち収入積立保険料) | (31,397) | (1.7) | (△17.9) | (23,364) | (1.2) | (△25.6) |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 元受正味保険料(含む収入積立保険料)とは、元受保険料から元受解約返戻金及び元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含む。)
b 正味収入保険料
区分 | 前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 構成比(%) | 対前年増減(△)率(%) | 金額 (百万円) | 構成比(%) | 対前年増減(△)率(%) | |
火災 | 266,048 | 16.3 | 12.4 | 250,590 | 15.5 | △5.8 |
海上 | 76,070 | 4.7 | 22.0 | 73,466 | 4.5 | △3.4 |
傷害 | 151,856 | 9.3 | 2.1 | 158,616 | 9.8 | 4.5 |
自動車 | 688,505 | 42.3 | △0.0 | 698,382 | 43.0 | 1.4 |
自動車損害賠償責任 | 142,102 | 8.7 | △2.3 | 130,287 | 8.0 | △8.3 |
その他 | 305,248 | 18.7 | 2.6 | 311,963 | 19.2 | 2.2 |
合計 | 1,629,832 | 100.0 | 3.2 | 1,623,307 | 100.0 | △0.4 |
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 正味支払保険金
区分 | 前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
金額 (百万円) | 対前年増減(△)率(%) | 正味損害率(%) | 金額 (百万円) | 対前年増減(△)率(%) | 正味損害率(%) | |
火災 | 199,385 | 38.9 | 77.3 | 173,502 | △13.0 | 72.1 |
海上 | 34,996 | 10.2 | 48.3 | 39,263 | 12.2 | 56.2 |
傷害 | 82,614 | 21.9 | 59.4 | 79,551 | △3.7 | 55.6 |
自動車 | 367,488 | 13.0 | 63.5 | 393,128 | 7.0 | 67.2 |
自動車損害賠償責任 | 99,530 | △7.3 | 78.3 | 103,916 | 4.4 | 89.4 |
その他 | 160,556 | 3.0 | 54.8 | 160,799 | 0.2 | 54.2 |
合計 | 944,572 | 13.6 | 64.3 | 950,161 | 0.6 | 65.6 |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 正味損害率は正味支払保険金に損害調査費を加えて算出しております。
運用資産、有価証券、利回り及び海外投融資の状況は次のとおりであります。
a 運用資産
区分 | 前事業年度 (2023年3月31日) | 当事業年度 (2024年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
預貯金 | 621,810 | 8.9 | 569,605 | 7.2 |
買入金銭債権 | 3,091 | 0.0 | 2,121 | 0.0 |
金銭の信託 | 494 | 0.0 | 570 | 0.0 |
有価証券 | 5,288,584 | 75.5 | 6,266,431 | 79.7 |
貸付金 | 403,552 | 5.8 | 390,765 | 5.0 |
土地・建物 | 186,854 | 2.7 | 178,120 | 2.3 |
運用資産計 | 6,504,387 | 92.9 | 7,407,614 | 94.2 |
総資産 | 7,000,023 | 100.0 | 7,864,388 | 100.0 |
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
b 有価証券
区分 | 前事業年度 (2023年3月31日) | 当事業年度 (2024年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
国債 | 605,721 | 11.4 | 573,288 | 9.2 |
地方債 | 77,611 | 1.5 | 75,469 | 1.2 |
社債 | 534,191 | 10.1 | 526,310 | 8.4 |
株式 | 1,785,604 | 33.8 | 2,600,340 | 41.5 |
外国証券 | 2,166,296 | 41.0 | 2,332,051 | 37.2 |
その他の証券 | 119,158 | 2.2 | 158,970 | 2.5 |
合計 | 5,288,584 | 100.0 | 6,266,431 | 100.0 |
(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
c 利回り
運用資産利回り(インカム利回り)
区分 | 前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
収入金額 (百万円) | 平均運用額 (百万円) | 年利回り (%) | 収入金額 (百万円) | 平均運用額 (百万円) | 年利回り (%) | |
預貯金 | 1,125 | 675,340 | 0.17 | 2,787 | 633,038 | 0.44 |
買入金銭債権 | 86 | 5,524 | 1.57 | 61 | 5,348 | 1.15 |
金銭の信託 | 8 | 378 | 2.22 | 12 | 462 | 2.66 |
有価証券 | 125,062 | 3,984,016 | 3.14 | 143,033 | 3,908,056 | 3.66 |
貸付金 | 2,382 | 403,809 | 0.59 | 2,808 | 396,874 | 0.71 |
土地・建物 | 6,260 | 192,834 | 3.25 | 5,848 | 187,228 | 3.12 |
小計 | 134,926 | 5,261,903 | 2.56 | 154,551 | 5,131,009 | 3.01 |
その他 | 76 | - | - | 226 | - | - |
合計 | 135,003 | - | - | 154,777 | - | - |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 収入金額は、損益計算書における「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。
3 平均運用額は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、買入金銭債権については日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
資産運用利回り(実現利回り)
区分 | 前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
資産運用損益 (実現ベース) (百万円) | 平均運用額 (取得原価 ベース) (百万円) | 年利回り (%) | 資産運用損益 (実現ベース) (百万円) | 平均運用額 (取得原価 ベース) (百万円) | 年利回り (%) | |
預貯金 | 4,495 | 675,340 | 0.67 | 11,969 | 633,038 | 1.89 |
買入金銭債権 | 86 | 5,524 | 1.57 | 61 | 5,348 | 1.15 |
金銭の信託 | 20 | 378 | 5.41 | 76 | 462 | 16.57 |
有価証券 | 188,384 | 3,984,016 | 4.73 | 213,668 | 3,908,056 | 5.47 |
貸付金 | 2,363 | 403,809 | 0.59 | 3,580 | 396,874 | 0.90 |
土地・建物 | 6,260 | 192,834 | 3.25 | 5,848 | 187,228 | 3.12 |
金融派生商品 | △2,294 | - | - | 4,012 | - | - |
その他 | 219 | - | - | △176 | - | - |
合計 | 199,536 | 5,261,903 | 3.79 | 239,039 | 5,131,009 | 4.66 |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 資産運用損益(実現ベース)は、損益計算書における「資産運用収益」及び「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額であります。
3 平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、買入金銭債権については日々の残高(取得原価又は償却原価)の平均に基づいて算出しております。
4 資産運用利回り(実現利回り)にその他有価証券の評価差額等を加味した時価ベースの利回り(時価総合利回り)は以下のとおりであります。
なお、資産運用損益等(時価ベース)は、資産運用損益(実現ベース)にその他有価証券に係る評価差額(税効果控除前の金額による。)の当期増減額及び繰延ヘッジ損益(税効果控除前の金額による。)の当期増減額を加減算した金額であります。
また、平均運用額(時価ベース)は、平均運用額(取得原価ベース)にその他有価証券に係る前期末評価差額(税効果控除前の金額による。)及び金銭の信託に係る前期末評価損益を加減算した金額であります。
区分 | 前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | ||||
資産運用 損益等 (時価ベース) (百万円) | 平均運用額 (時価ベース) (百万円) | 年利回り (%) | 資産運用 損益等 (時価ベース) (百万円) | 平均運用額 (時価ベース) (百万円) | 年利回り (%) | |
預貯金 | 4,495 | 675,340 | 0.67 | 11,969 | 633,038 | 1.89 |
買入金銭債権 | 14 | 5,713 | 0.25 | 13 | 5,464 | 0.25 |
金銭の信託 | 20 | 378 | 5.41 | 76 | 503 | 15.24 |
有価証券 | 11,380 | 5,556,741 | 0.20 | 1,120,866 | 5,304,281 | 21.13 |
貸付金 | 2,363 | 403,809 | 0.59 | 3,580 | 396,874 | 0.90 |
土地・建物 | 6,260 | 192,834 | 3.25 | 5,848 | 187,228 | 3.12 |
金融派生商品 | △7,397 | - | - | △1,032 | - | - |
その他 | 219 | - | - | △176 | - | - |
合計 | 17,356 | 6,834,816 | 0.25 | 1,141,145 | 6,527,390 | 17.48 |
d 海外投融資
区分 | 前事業年度 (2023年3月31日) | 当事業年度 (2024年3月31日) | ||
金額(百万円) | 構成比(%) | 金額(百万円) | 構成比(%) | |
外貨建 | ||||
外国公社債 | 232,723 | 10.3 | 232,863 | 9.5 |
外国株式 | 1,473,812 | 65.2 | 1,492,704 | 61.1 |
その他 | 424,406 | 18.7 | 588,252 | 24.1 |
計 | 2,130,943 | 94.2 | 2,313,820 | 94.7 |
円貨建 | ||||
外国公社債 | 21,759 | 1.0 | 27,713 | 1.1 |
その他 | 108,933 | 4.8 | 101,932 | 4.2 |
計 | 130,693 | 5.8 | 129,645 | 5.3 |
合計 | 2,261,636 | 100.0 | 2,443,465 | 100.0 |
海外投融資利回り | ||||
運用資産利回り (インカム利回り) | 2.45% | 2.66% | ||
資産運用利回り (実現利回り) | 1.55% | 2.20% |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 金銭の信託として運用しているものを含めて表示しております。
3 「海外投融資利回り」のうち「運用資産利回り(インカム利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 運用資産利回り(インカム利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
4 「海外投融資利回り」のうち「資産運用利回り(実現利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「c 利回り 資産運用利回り(実現利回り)」と同様の方法により算出したものであります。
なお、海外投融資に係る時価総合利回りは前事業年度1.34%、当事業年度5.27%であります。 |
5 前事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国公社債及び外国株式を除く外国証券329,084百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国公社債を除く外国証券108,916百万円であります。
当事業年度の外貨建「その他」の主なものは、外国公社債及び外国株式を除く外国証券476,853百万円であり、円貨建「その他」の主なものは、外国公社債を除く外国証券101,916百万円であります。
ロ 海外事業(海外保険子会社)
海外事業につきましては、海外自然災害リスク管理を強化するとともに、海外事業の利益拡大や安定化に向けた取組みを進めました。
MS Amlinにおいては、米国のハリケーンなど自然災害リスクの引受けを削減しつつそれ以外のリスクの引受けを拡大するとともに、市場環境を踏まえて保険料の引上げを行ったことにより、収益が拡大しました。また、アジア市場においては、プラットフォーマーと連携しデジタル技術を活用したリテール市場の開拓や、MS First Capital Insurance Limitedの高いアンダーライティング力など各拠点の強みを活かした企業マーケットの開拓に引き続き努めたことにより、収益が順調に拡大しました。
事業投資については、米国保険市場におけるプレゼンス拡大を目指して買収したMS Transverseを通じて、成長する米国のMGA市場を捕捉する取組みを開始しました。
海外保険子会社セグメントの経営成績は次のとおりとなりました。
[海外保険子会社の主要指標]
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 比較増減 | 増減率 | |
正味収入保険料 (百万円) | 839,223 | 1,130,567 | 291,343 | 34.7% |
経常利益 (百万円) | 76,351 | 155,229 | 78,878 | 103.3% |
セグメント利益 (百万円) | 72,519 | 151,358 | 78,838 | 108.7% |
(注)1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。
2 セグメント利益は出資持分考慮後の当期純利益に相当する金額であります。
正味収入保険料は、新規の引受けや保険料率の引上げにより大きく増収した欧州をはじめアジアや米州でも増収したことや、為替影響もあり、前連結会計年度に比べ2,913億円増加し、1兆1,305億円となりました。
経常利益は、保険料増収、ポートフォリオの収益性向上、自然災害に係る発生保険金(正味支払保険金と支払備金繰入額の合計)の減少などにより保険引受収支(除く保険金融収支)が改善したことを主因に、前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,552億円となりました。
出資持分考慮後の当期純利益(セグメント利益)は前連結会計年度に比べ788億円増加し、1,513億円となりました。
当連結会計年度末の財政状態は次のとおりであります。
総資産は前連結会計年度末に比べ1兆2,889億円増加し、9兆8,662億円となりました。主な総資産の内訳は、有価証券が6兆6,328億円(前連結会計年度末比9,962億円増加)、現金及び預貯金が1兆4,605億円(同2,215億円増加)であります。
当社のソルベンシー・マージン比率の状況は、以下のとおりであります。
保険会社は、保険金支払等に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生や、資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。この「通常の予測を超える危険」を示す「リスクの合計額」(以下の各表の(B))に対する「資本金・準備金等の支払余力」(すなわちソルベンシー・マージン総額:以下の各表の(A))の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「ソルベンシー・マージン比率」(以下の各表の(C))であります。
ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。
イ 単体ソルベンシー・マージン比率
前事業年度 (2023年3月31日) (百万円) | 当事業年度 (2024年3月31日) (百万円) | ||||
(A) | 単体ソルベンシー・マージン総額 | 3,405,349 | 4,133,628 | ||
(B) | 単体リスクの合計額 | 995,234 | 1,196,153 | ||
(C) | 単体ソルベンシー・マージン比率 [(A)/ {(B)×1/2} ] ×100 | 684.3 | % | 691.1 | % |
(注)「単体ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条及び第87条並びに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出された比率であります。
保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券の評価差額が増加したことを主因に、単体ソルベンシー・マージン総額が前事業年度末に比べて7,282億円増加したことなどにより、単体ソルベンシー・マージン比率は前事業年度末に比べて6.8ポイント上昇し、691.1%となりました。
ロ 連結ソルベンシー・マージン比率
前連結会計年度 (2023年3月31日) (百万円) | 当連結会計年度 (2024年3月31日) (百万円) | ||||
(A) | 連結ソルベンシー・マージン総額 | 2,873,804 | 3,833,729 | ||
(B) | 連結リスクの合計額 | 877,042 | 1,097,487 | ||
(C) | 連結ソルベンシー・マージン比率 [(A)/ {(B)×1/2} ] ×100 | 655.3 | % | 698.6 | % |
(注)「連結ソルベンシー・マージン比率」とは、保険業法施行規則第86条の2及び第88条並びに平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出された比率であります。
保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券の評価差額が増加したことを主因に、連結ソルベンシー・マージン総額が前連結会計年度末に比べて9,599億円増加したことなどにより、連結ソルベンシー・マージン比率は前連結会計年度末に比べて43.3ポイント上昇し、698.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) | 当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) | 比較増減 | |
営業活動によるキャッシュ・フロー (百万円) | 177,789 | 231,205 | 53,415 |
投資活動によるキャッシュ・フロー (百万円) | 45,076 | 107,063 | 61,986 |
財務活動によるキャッシュ・フロー (百万円) | △258,882 | △219,309 | 39,572 |
現金及び現金同等物の期末残高 (百万円) | 1,083,001 | 1,251,238 | 168,236 |
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、保険料の収入額が増加したことなどにより前連結会計年度に比べ534億円増加し、2,312億円となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、債券貸借取引受入担保金による支出が減少したことなどにより前連結会計年度に比べ619億円増加し、1,070億円となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に社債の償還による支出が増加したことの反動などにより前連結会計年度に比べ395億円増加し、△2,193億円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より1,682億円増加し、1兆2,512億円となりました。
資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。
長期的な投資資金等に対しては、主に営業活動から得た資金及び内部留保による自己資金を活用するほか、社債の発行や金融機関からの長期借入による外部からの資金調達を行っております。
また、資金の流動性につきましては、大規模自然災害時に保険金の支払や市場の混乱等により資金繰りが悪化する場合に備え、流動性資産を十分に保有するとともに、資金の流出入の動向を踏まえて資産・負債両面から流動性についての評価を行い、適切な資金繰りを行っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表はわが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性から、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の事項を会計上の重要な見積りと考えております。
イ 時価の算定方法
資産・負債の一部は時価をもって貸借対照表価額としており、時価の算定は市場価格等に基づいております。一部のデリバティブ取引において市場価格がない場合には、将来キャッシュ・フローの現在価値や取引対象の市場価格、契約期間等の構成要素に基づく合理的な見積りによって算出された価格を時価としております。
ロ 有価証券の減損
保有している有価証券は有価証券市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。将来、有価証券市場が悪化した場合には有価証券評価損が発生する可能性があります。
ハ 固定資産の減損
収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった固定資産については、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように、減損処理を行っております。資産又は資産グループの回収可能価額は、正味売却価額(資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される価額)と使用価値(資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値)のいずれか高い金額であることから、固定資産の減損損失の金額は合理的な仮定及び予測に基づく将来キャッシュ・フローの見積りに依存しております。したがって、関連する事業の環境が変化した場合、固定資産の使用方法を変更した場合又は不動産取引相場や賃料相場等が変動した場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。
ニ 繰延税金資産
繰延税金資産の回収可能性の判断に際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合は繰延税金資産が変動する可能性があります。
ホ 貸倒引当金
債権の貸倒れによる損失に備えて、回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。貸付先の財務状況の変化などにより、回収不能となった金額や貸倒引当金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。
ヘ 支払備金
保険契約に基づいて支払義務が発生した、又は発生したと認められる保険金等のうち、まだ支払っていない金額を見積もり、支払備金として積み立てております。損害調査の進展、裁判等の結果、インフレーションや為替の変動などにより保険金等の支払額や支払備金の計上額が、当初の見積額から変動する可能性があります。
ト 責任準備金等
保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金等を積み立てております。当初想定した環境・条件等が大きく変動し予期せぬ損害の発生が見込まれる場合には、責任準備金等の積み増しが必要になる可能性があります。
チ 退職給付費用及び退職給付債務
退職給付費用及び退職給付債務は、割引率や将来の退職率及び死亡率など、いくつかの前提条件に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件を変更する必要が生じた場合には、将来の退職給付費用及び退職給付債務が変動する可能性があります。
なお、上記のうち「ハ 固定資産の減損」及び「ヘ 支払備金」については、関連する事項を「第5 経理の状況」の「重要な会計上の見積り」に記載しております。
④ 目標とする経営指標等の分析等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標に関し、正味収入保険料は、1兆6,233億円と前事業年度に比べ、0.4%の減収となりました。正味損害率は65.6%と前事業年度に比べ、1.3ポイントの上昇となりました。正味事業費率は32.7%と前事業年度に比べ、0.2ポイントの上昇となりました。保険引受利益は、前事業年度比366億円増加し、207億円のプラスとなりました。引き続き、自動車保険及び火災保険の収支改善、また、事業費構造の変革による収益力強化の取組みを進めてまいります。
⑤ 問題認識と今後の方針について
問題認識と今後の方針は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しているとおりであります。