有価証券報告書-第16期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/24 15:41
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167項目
(2) 戦略
当社グループの中期経営計画(2022-2025)では、補償・保障前後における商品・サービスのシームレスな提供や、リスクコンサルティングによるソリューションの提供など、リスクソリューションのプラットフォーマーとして気候変動をはじめとした社会課題の解決に貢献し、社会と共に成長する「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」をめざしております。
また、「地球環境との共生(Planetary Health)」、「安心・安全な社会(Resilience)」、「多様な人々の幸福(Well-being)」の3つをサステナビリティの重点課題(マテリアリティ)として定めております。
社会で解決が求められている様々な課題は、当社グループの事業活動へのリスクとなる一方で、これらの課題解決につながる商品・サービスの提供は、社会との共通価値を創造する新たな事業機会になることから、社会との共通価値を創造するCSV取組を進めております。
① 重点課題「地球環境との共生(Planetary Health)」
a.気候関連のリスクと機会
(a)気候関連のリスク
当社グループは、気象条件の物理的な変化による影響や脱炭素社会への移行を、事業におけるリスクとして捉え、安定的な収益や財務の健全性確保のための取組みを進めております。大規模自然災害発生時にも円滑に保険金をお支払いできる体制を維持・強化するとともに、防災・減災取組を進め、リスクの軽減を図ります。
気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TCFD」という。)では、気候関連のリスクを物理的リスクと移行リスクの2つに分類しており、当社グループはTCFDの枠組に沿ってリスクを特定しております。
物理的リスクは、気候変動の物理的影響に関連したリスクであります。更に、リスクが発生する状態に応じて2種類(「台風等の急性の物理的な事象に起因する急性物理的リスク」、「長期的な気候パターンの変化に起因する慢性物理的リスク」)に分類しております。
移行リスクは、脱炭素経済への移行に関連するリスクであります。リスクをもたらす要因別に、4種類(「気候変動の緩和や適応に対する政策・法規制によるリスク」、「脱炭素社会への移行を支援する技術の革新等によるリスク」、「市場の需要供給の変化によるリスク」、「気候変動への対応に対する社会の評価・評判によるリスク」)に分類しております。
本分類に沿ったリスクは以下のとおりであります。
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[シナリオ分析]
当社グループでは、自然災害被害を補償する保険引受に係る影響(物理的リスク)と、地球温暖化対策の導入による投資に係る影響(移行リスク)について、それぞれシナリオ分析を実施しております。
物理的リスクの分析では、温暖化の進行に伴って勢力等が変化した台風による支払保険金の変動について分析し、支払保険金が増加する可能性があることを確認しております。また、移行リスクの分析では、温暖化対策の進展に応じて投資先企業が追加負担する可能性のあるコストについて分析し、投資先企業が温暖化対策を進めることで追加コストを抑制できる可能性があることを確認しております。
当社グループは、気候変動の緩和と適応への取組みや科学的知見の更新等を踏まえ、今後も継続的なシナリオ分析の見直しと高度化に取り組んでまいります。
(b)気候関連の機会
お客さまや社会のリスクを引き受け、補償を提供することを主要な事業領域としている損害保険業界にとって脱炭素社会への移行は、急激な社会・経済の変化に伴う新たな保険商品・サービスへの需要喚起や、新たな産業の勃興や技術変革に伴う顧客企業の業績向上など、当社グループの成長につながる機会になると考えております。TCFDでは、気候関連の機会を「資源の効率性」、「エネルギー源」、「製品・サービス」、「市場」、「レジリエンス」の5つに分類しております。
本分類に沿った当社グループの事業活動に対する機会は、以下のとおりであります。
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(c)気候関連のリスクと機会を踏まえた当社グループの取組み
・2050年のネットゼロの実現に向け、2023年11月に保険引受先及び投融資先に係る温室効果ガス(以下、「GHG」という。)排出量の削減について、2030年までの中間目標を設定しました。
・2023年5月、サステナビリティに関する保険引受・投融資の方針を変更し、GHG排出量削減計画のない、石炭を主業とする企業のエネルギー採掘や、オイルサンド・ガス採掘に関する新規取引停止を導入しました。
・投資先のGHG排出量削減に向けて、気候変動に対応した対話取組の推進、再生可能エネルギーへの投融資を行っております。加えて、インパクト投資の実行と共にノウハウ構築も進めております。
・2024年3月、対象機器が自然災害等で罹災し、J-クレジット創出量が減少した場合に、減少した販売収益を補償する保険の販売を開始しております。
・2023年9月、衣料品に損害が生じた場合、従来は焼却廃棄されていた衣料品を循環させるために、事業者が負担する追加費用等を補償する業界初の保険「燃やさない保険(衣料品循環費用補償)」の販売を開始しております。
b.自然関連のリスクと機会
自然関連のリスクと機会は、自然関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TNFD」という。)が提唱する評価プロセス「LEAPアプローチ」の考え方に沿って、自然への依存とインパクトを考慮し、特定しました。優先的に分析するべき範囲を検討する「スコーピング」においては、事業規模、自然資本への影響、評価可能性を考慮し、「損害保険事業」、「金融サービス事業」、「デジタル・リスク関連サービス事業」を主な対象としております。
0102010_012.jpg(a)自然関連のリスク
TNFDでは、自然関連のリスクを物理的リスクと移行リスクの2つに分類しております。物理的リスクは、リスクの発生状態に応じて2種類(「台風や病害虫発生等の急激で物理的な事象に起因する急性物理的リスク」、「長期的な変化に起因する慢性物理的リスク」)に分類しております。
移行リスクとは、自然と共生する世界への移行に関連するリスクであり、4種類(「政策・法規制によるリスク」、「技術の革新等によるリスク」、「市場の需要供給の変化によるリスク」、「社会の評価・評判によるリスク」)に分類しております。本分類に沿ったリスクは以下のとおりであります。
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(b)自然関連の機会
ネイチャーポジティブな社会の実現に向け、企業は事業活動において自然に著しくネガティブなインパクトを発生させる場合、その軽減・回避をするための費用負担が発生する可能性があります。当社グループのビジネスモデルである「リスクを見つけ伝える」サービスに始まり、「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」、「経済的な負担を小さくする」商品・サービスは、企業に解決策を提供することとなり、当社グループの機会につながると考えております。
TNFDでは、自然関連の機会を、「製品・サービス」、「市場」、「資源の効率性」、「天然資源の持続可能な利用」、「資本フロー・資金調達」、「評判資本」、「自然の保護・修復・再生」の計7分類としております。
本分類に沿った当社グループの事業活動に対する機会は以下のとおりであります。
0102010_014.png当社グループにおける自然関連の機会を具体的に特定するために、当社グループの保険商品・サービスが対象とする個人や企業の事業活動における自然への依存やインパクトを把握することは重要であると考えております。
保険商品・サービスが対象とする個人や企業の事業活動が自然とどう関わり、自然へのネガティブなインパクトの緩和にどのように貢献できるか、さらなる検討を続け、商品・サービスの開発を進めてまいります。
(c)自然関連のリスクと機会を踏まえた当社グループの取組み
・2008年に発足した企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)の活動を通じて普及啓発や研究を進め、企業全体における取組みの促進を図っております。
・2023年8月には気候関連財務情報と自然関連財務情報を統合したTCFD・TNFDレポートを公表しました。
・2023年9月に当社グループの社員がタスクフォースメンバーを務めるTNFDがTNFD開示提言第1.0版をローンチしました。当社は、TNFDに賛同する組織が参加するTNFDフォーラムメンバーへの支援を行うTNFDコンサルテーション・ジャパンの事務局の一社を担っており、開示提言のローンチに合わせたイベントを開催するなど、日本企業へのTNFDの普及啓発に努めました。
・MS&ADインターリスク総研株式会社では、TNFDに対応した情報開示の支援や、事業活動における自然関連のリスク評価サービスの提供など、ネイチャーポジティブに向けた企業のサポートを行っております。
・2023年2月に当社グループと株式会社三井住友フィナンシャルグループ、農林中央金庫、株式会社日本政策投資銀行の4金融機関グループで、ネイチャーポジティブの実現に向けた金融アライアンスを発足しました。2023年9月にネイチャーポジティブ実現に向けたTNFD対応支援サービスや、ネイチャーポジティブに資するソリューション情報をまとめたカタログの提供を行いました。
・世界銀行(国際復興開発銀行International Bank for Reconstruction and Development)が発行するグリーンボンドの資金使途が当社の目指す「レジリエントでサステナブルな社会の実現」に繋がると考え、2023年10月に投資しました。
・当社グループ傘下の保険会社4社(三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、三井住友海上あいおい生命保険株式会社、三井住友海上プライマリー生命保険株式会社)共同で、2024年3月に森林ファンド「Manulife Forest Climate Fund LP」に投資しました。
② 重点課題「安心・安全な社会(Resilience)」
a.リスクと機会
当社グループは、イノベーションの進展や産業構造の変化などに伴う新しいリスクの発現、感染症の拡大、自然災害や大規模地震、地域産業の衰退などの社会課題を重点課題「安心・安全な社会(Resilience)」と位置づけております。これらは取引先の事業活動におけるリスクにもなり、当社グループにおいても保険金支払の増加や保険料収入の減少につながります。
一方、増加するサイバーリスクや、新たに発現しているAI、宇宙開発、拡張・仮想現実などでのリスクへの対処は、当社グループ事業における機会でもあると考えております。
b.リスクと機会を踏まえた当社グループの取組み
(a)社会の変革に伴い発現する新たなリスクへの対応
2023年9月、MS&ADインターリスク総研株式会社は、米国インシュアテック企業Coalition, Inc.の先進技術を活用した、中小企業向けサイバーリスク診断サービス「MS&ADサイバーリスクファインダー」をリリースしました。
(b)データ分析やAIを活用した防災・減災
・2022年4月から、災害リスクの事前予測や発災後の被害推定等を可視化することで地域の防災・減災を支援するソリューションサービス「防災ダッシュボード」を自治体向けに提供しております。
・2023年6月、当社グループは、降雹(こうひょう)被害の軽減に向けメール等を通じて社員、代理店、保険契約者等へ降雹を事前に知らせる「雹災(ひょうさい)アラートサービス」の実証実験を開始しました。
・2023年9月、株式会社JX通信社との共同開発により、自然災害発生時の被災建物棟数をリアルタイムで予測する「cmap」アプリに、事件・事故などに関するSNS投稿情報を地図上に表示する機能と、ユーザーが地域で発生した各種リスク情報をアプリに直接投稿できる機能をリリースしました。
・2024年1月、現在及び将来の浸水深や被害額等を算出することができ、高解像度の洪水リスク評価を行うことが可能なSaaS型プラットフォーム「洪水リスクファインダー」をリリースしました。
(c)レジリエントで包摂的な地域社会づくり(地方創生)
・当社グループは、自治体や研究者、地域のNPOと協働し、自然環境を再生して保全する「MS&ADグリーンアースプロジェクト」に取り組んでおり、社員と家族が参加しております。
・自治体と連携して水災時に罹災証明書の発行手続を支援する「被災者生活再建支援サポート」サービスを提供しております。
③ 重点課題「多様な人々の幸福(Well-being)」
a.リスクと機会
当社グループは、高齢化・少子化の進展、人権侵害・多様性の排除、貧困・格差拡大といった社会課題を重点課題「多様な人々の幸福(Well-being)」と位置づけており、これらは、人口減少や少子高齢化の進展による国内損害保険市場の中長期的な成長鈍化や企業価値のき損等、当社グループの事業活動にとってもリスクとなります。
一方、自治体や地域企業、金融機関等と連携した地方創生取組は当社事業における機会になると考えております。また、人権デュー・ディリジェンスの推進・支援や、女性、高齢者、障がい者、LGBTQのお客さまの保険・金融アクセス向上など、課題解決に向けた取組みは、当社グループ事業の中期的な成長実現につながる機会と考えております。
b.リスクと機会を踏まえた当社グループの取組み
(a)健康、長寿社会への対応
・企業の健康経営の支援や健康増進、未病・重症化予防に資する商品・サービスや、人生100年時代における資産寿命の延伸を支援する商品・サービスを提供しております。
・病気の予防・早期発見から健康に関するご相談、重症化・再発予防など、お客さまの健康をトータルでサポートすることを目指すヘルスケアサービス「MSAケア」を提供しております。
・社員の認知症サポーター養成講座の受講をグループ共同で推進しております。
(b)人権尊重の推進
・当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に依拠した、人権尊重のマネジメントシステムである人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、幅広いステークホルダーとの対話をとおして得られた意見を反映しております。
・2021年度に当社グループのバリューチェーンとステークホルダーから人権リスクの発生する接点を整理し、人権尊重取組における重点課題として「公平・公正なお客さま対応」、「取引先・代理店における人権対応の考慮への取組み」、「社員の健康への配慮と差別のない職場環境」を設定しております。重点課題ごとに予防・改善策とモニタリング方法を策定し、取組みを推進しております。
・海外拠点では、国・地域によって抱える課題が異なるため、2022年6月に実施した海外拠点向けアンケート結果をもとに、各国の人権リスク対応状況を確認したうえで、予防・改善策やモニタリング方法を定めて人権尊重取組を推進しております。
・従来から対策を進めている人権リスクに加えて、LGBTQのお客さまへの対応、テクノロジー・AIに関する人権侵害への対応、外部委託先・代理店の人権課題に対する認識度の引上げ・人権尊重取組推進の支援、カスタマー・ハラスメント対策に取り組み、継続的に防止・軽減に努めております。
・2023年7月に外部委託先向けの救済窓口を開設し、順次、バリューチェーン上の利用対象者を拡大してまいります。
(c)社員のエンゲージメント向上
グループの最大の財産は人財であり、グループ社員一人ひとりの能力・スキル・意欲が最大限発揮できるよう、基本戦略の実現に必要なスキルを明確化して、社員の自律的な成長機会を拡充しております。

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