有価証券報告書-第183期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/29 16:42
【資料】
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【項目】
183項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針、経営戦略等
① 会社の経営の基本方針
当社グループは、「『出逢いをつくり、期待をはこぶ』事業を通して、“あんしん”と“かいてき”と“ときめき”を提供しつづけ、地域とともに歩み、ともに発展します。」という「にしてつグループの企業理念」に基づき、鉄道・バスの運輸業を軸に、地域に密着した多様な事業を展開しています。
② 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、1908年の創業以来、様々な時代の変化を乗り越えながら今日に至りますが、今後のポストコロナ社会における長期的な経営環境につきましては、デジタル化の加速、脱炭素社会の進展、生活スタイルの多様化等、これまで以上に変化のスピードが急激で、不確実性の高い時代が続くものと認識しています。
このような環境下においてもサステナブルな成長を実現するため、これまでの事業モデルの延長ではなく、想定した未来像から遡るバックキャストの手法で、当社グループの存在意義と実現したい社会、ステークホルダーへ提供していたい価値、その達成に向けた基本的な事業戦略等で構成した新長期ビジョン「にしてつグループまち夢ビジョン2035」を策定いたしました。
本長期ビジョンでは、提供していたい価値を実現するための基本スタンスを「濃(こま)やかに、共に、創り支える ~Grow in harmony with you~」とし、「出逢いをつくり、期待をはこぶ」事業の進化と新領域への挑戦を両輪としたビジネスモデルの変革、そして従業員一人ひとりが自己成長やチャレンジを実現しながらいきいきと働き、最大のパフォーマンスを発揮できる環境の整備や、事業の効率性とサステナビリティを意識したポートフォリオの構築等に取り組んでまいります。
※長期ビジョン「まち夢ビジョン2035」の詳細は、当社グループホームページにてご確認ください。
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/ir/management/vison.html
(2) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 今後の経営環境の変化
わが国においては、より一層の生産年齢人口の減少、ICTの進展、消費行動の多様化や、アジアを中心とした新興国の経済成長と市場拡大等、経営環境が絶えず変化していくことが想定されます。
また、当社グループにおいても、「福ビル街区建替プロジェクト」等大型開発プロジェクトの集中的な実施や、事業基盤となる人財の確保等、様々な課題に直面しております。
加えて、コロナ禍を経た社会情勢の変化、ウクライナ情勢等の地政学的リスクの高まりによる原材料価格の上昇や金融資本市場の変動等、先行き不透明な状況が続くものと予想されます。
② 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、2023年3月に、まち夢ビジョン2035の実現に向けた第1ステップとして、第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)を策定いたしました。本計画では、テーマを『サステナブルな成長への挑戦~Challenge for sustainable growth~」とし、5つの重点戦略に基づき、将来に向けた持続可能な公共交通事業の構築、福ビル街区建替プロジェクトの完遂や、ノウハウを活用した固定資産に頼らない事業モデルの基盤構築、新領域事業への挑戦、多様な人財を確保するための待遇の見直し、サステナブルな成長を支える人財力強化等に取り組んでまいります。
なお、各重点戦略における具体的な取り組みは以下のとおりです。
ア. 構造改革の継続と事業基盤の整備・再構築
鉄道事業やバス事業において、運賃改定に向けた検討を進めるとともに、鉄道事業においては駅の運営体制の見直しを進めるほか、バス事業においては福岡市営地下鉄七隈線延伸への対応等、需要に応じた柔軟なダイヤの設定を行ってまいります。
また、事業の基盤となる人財の確保のため、待遇改善等による乗務員等の採用強化と定着率の向上に努めてまいります。
このほか、各事業において運営体制の効率化や構造改革を推進してまいります。
イ.持続可能で活力あるまちづくりの推進
多様な移動手段を組み合わせた経路検索や乗車券の予約・購入等ができる次世代移動サービス「MaaS(マース)」の取り組みとして、国・自治体および他事業者と共働し、スマートフォン向けサービス「my route(マイルート)」を活用し、シームレスなモビリティサービスの提供に努めるなど、持続可能な交通ネットワーク実現に取り組んでまいります。
また、「福ビル街区建替プロジェクト」において、2025年度の開業に向けて引き続き新築工事やテナント誘致等を推進するほか、天神(天神一丁目15・16番街区、天神二丁目駅前街区)における地権者共働の開発プロジェクト等を推進してまいります。
さらに、雑餉隈~下大利駅間連続立体交差事業において、沿線自治体や地域と連携し、駅商業施設や高架下の活用を図るなど、沿線主要拠点の開発プロジェクトを推進するほか、新駅「桜並木駅」の開業準備を進めてまいります。
このほか、ホテル事業や旅行事業において、自治体等と連携し、観光促進に積極的に取り組むほか、鉄道事業においてタッチ決済・QRコードの導入による決済手段の拡大を図るなど、国内外の観光・MICE需要獲得に取り組んでまいります。
ウ. 成長事業の拡充と新たな稼ぐ力の創出
住宅事業では、首都圏等域外でのマンション供給を強化するほか、福岡エリアにおいては、分譲マンションの販売や新規物件の開発を推進してまいります。
ホテル事業では、「ソラリアホテル台北西門」の開業準備を進めるほか、国内外への新規出店を進めてまいります。
国際物流事業では、海外現地法人のM&Aや既存法人の支店開設によるネットワークの拡充を進めるほか、取扱重点品目の営業強化を図ってまいります。
また、関東における新たな拠点として「関東ロジスティクスセンター」を開設するなど、ロジスティクス事業の拡大を図ってまいります。
そのほか、「再生可能エネルギー電源開発事業」において、当社グループの施設への太陽光発電導入を進めるなど、エネルギー領域における事業拡大に努めてまいります。
エ. サステナブル経営の強化
国が掲げる「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた取り組みとして、TCFDシナリオ分析に基づくロードマップの策定や具体策への取り組みを進めてまいります。
鉄道事業では、省エネ車両への順次代替を推進するほか、バス事業においては、「レトロフィット電気バス」の導入を進めてまいります。
国際物流事業では、環境負荷の少ない輸送手段の活用を進めるとともに、CO2排出量の算出ツールを活用し、CO2排出量の見える化を進めてまいります。
そのほか、各事業において、資源の有効活用や循環活用に取り組んでまいります。
また、事業拡大を見据えた多様な人財の確保を図っていくほか、自己啓発支援やタレントマネジメント等の導入を行うなど、サステナブルな成長を支える人財力強化に努めてまいります。
オ. 安全あんしんの追求
鉄道事業では、西鉄福岡(天神)駅のホームドア整備を進めるほか、西鉄久留米駅および高宮駅周辺の耐震補強工事を進めてまいります。
バス事業では、乗務員の改善基準告示見直しへの対応として、乗務員の長時間労働是正を図るほか、乗務員の健康に起因する事故防止対策に努めてまいります。
※ 第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)の詳細は、当社グループホームページにてご確認ください。
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/ir/management/managementplan.html
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上のため、収益力を高めると共に、経営の効率化を図ってまいります。達成状況を判断するための客観的な指標として、収益力の成長性を示す「連結事業利益」、「連結EBITDA」、財務健全性を示す「NET有利子負債/EBITDA倍率」、資産効率を示す「ROA」、資本効率を示す「ROE」を採用しております。
第16次中期経営計画(2023年度~2025年度)における経営数値目標(連結)は次のとおりです。
2026年3月期計画
連結事業利益(注)1250億円
連結EBITDA (注)2500億円
NET有利子負債/EBITDA倍率6.8倍
ROA(総資産事業利益率) (注)33.5%
ROE(自己資本当期純利益率)7.0%

(注)1 連結事業利益=連結営業利益+事業投資に伴う受取配当金・持分法投資損益等
2 連結EBITDA=連結事業利益+減価償却費+のれん償却費(営業費)
3 総資産は鉄道の受託工事前受金相当額を除いて算出しています。