四半期報告書-第37期第3四半期(2023/10/01-2023/12/31)

【提出】
2024/02/06 9:00
【資料】
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【項目】
38項目

事業等のリスク

当第3四半期連結累計期間において、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更があった事項は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
また、以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」の項目番号に対応したものです。
(8) 超電導リニアによる中央新幹線
当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導磁気浮上式鉄道(以下「超電導リニア」という。)による中央新幹線計画を進めています。
現在この役割を担う東海道新幹線は開業から半世紀以上が経過しており、早急に大動脈輸送を二重系化し、将来の経年劣化や大規模災害に対して抜本的に備える必要があります。このため、その役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提として、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。
このプロジェクトの完遂に向けて、鉄道事業における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。また、工事費全般について、社内に設置した「中央新幹線工事費削減委員会」で検証し、安全を確保した上で徹底的にコストダウンを図るとともに、開業後の運営費の圧縮に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。
当社は、平成19年12月に第一局面としての名古屋市までの推進を、さらには、平成22年4月に大阪市までの営業主体等の指名に同意する意思があることを表明するにあたり、それぞれの時点で考えられる前提条件を置いて検討を行い、路線建設を自己負担で推進しても、健全経営の確保が十分に可能であると判断し、必要な対応を進めることを決定しました。
また、平成19年12月には、全国新幹線鉄道整備法(以下「全幹法」という。)の適用により設備投資の自主性や経営の自由など民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、翌年1月にその旨の回答を得ました。
その後、全幹法の手続きが進み、平成23年5月、国土交通大臣の諮問にかかる審議を行ってきた交通政策審議会が、中央新幹線(東京都・大阪市間)の営業主体等として当社を指名することが適当であること及び整備計画について下表のとおりとすることが適当であることを答申しました。国土交通大臣は、これを踏まえ、同5月、当社の同意を得た上で、当社を東京都・大阪市間の営業主体等に指名しました。続いて、当社の同意を得て、下表の整備計画を決定し、当社に建設の指示を行いました。
【整備計画の内容】
建設線中央新幹線
区間東京都・大阪市
走行方式超電導磁気浮上方式
最高設計速度505キロメートル/時
建設に要する費用の概算額
(車両費を含む。)
90,300億円
その他必要な事項主要な経過地甲府市附近、赤石山脈(南アルプス)
中南部、名古屋市附近、奈良市附近

(注) 建設に要する費用の概算額には、山梨リニア実験線既設分及び利子を含みません。
これを受けて当社は、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境影響評価法に基づき、平成23年6月及び8月の計画段階環境配慮書の公表、同9月の環境影響評価方法書の公告、平成25年9月の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)の公告を経て、平成26年3月に沿線7都県の知事から受け取った準備書に対する意見を勘案し、同4月に国土交通大臣に環境影響評価書(以下「評価書」という。)を送付しました。その後、同7月に国土交通大臣から受け取った評価書に対する意見を勘案し、同8月、最終的な評価書を国土交通大臣及び関係自治体の長に送付するとともに、公告しました。
当社は、環境影響評価法の手続きと並行して、全幹法第9条に基づく工事実施計画の認可申請に必要な準備を進め、最終的な評価書の送付と同日に、国土交通大臣に対し、土木構造物を中心とした品川・名古屋間の工事実施計画(その1)の認可申請を行い、平成26年10月に認可を受け、その後工事を開始しました。また、平成28年11月には、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令に基づき、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)に対して、中央新幹線の建設の推進のため、財政投融資を活用した長期借入の申請を行い、平成29年7月までに総額3兆円を借り入れました。
当社としては、経営の自由、投資の自主性を確保し、健全経営と安定配当を堅持しつつ、長期、固定かつ低利の貸付けを受けることにより経営のリスクが低減され、品川・名古屋間開業後連続して、名古屋・大阪間の工事に速やかに着手し、全線開業までの期間を最大8年間前倒すことを目指して、建設を推進します。
その後、平成30年3月には、電気設備等を含む品川・名古屋間の工事実施計画(その2)の認可を受けました。
工事を進めている品川・名古屋間のうち、南アルプストンネル静岡工区においては、静岡県の理解が得られず、トンネル掘削工事に着手できない状態が続いており、2027年の開業は難しい状況となっています。
こうした中、大井川の水資源への影響について、国土交通省の「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」が令和3年12月に取りまとめた「大井川水資源問題に関する中間報告」を踏まえて、地域へのわかりやすい説明、リスク対応とモニタリングの具体化、工事の一定期間、例外的に県外へ流出するトンネル湧水量と同量を大井川に戻す方策の実現等に取り組んでいます。このうち、発電のための取水を抑制し、大井川に還元する方策について、令和5年12月に発電事業者と基本合意書を締結しました。また、南アルプスの環境保全については、有識者会議において議論が進められ、令和5年12月に「リニア中央新幹線静岡工区に関する報告書(令和5年報告)~環境保全に関する検討~」が取りまとめられました。引き続き、地域の理解と協力を得られるよう、双方向のコミュニケーションを大切にしながら、真摯に対応していきます。
また、工事を進める中で、品川駅・名古屋駅の両ターミナル等の個別の工事案件によっては、当初の想定額を超えるものが発生したことにより、工事費の増加を見込むこととなりました。その一方で、新型コロナウイルス感染症の影響で、経営環境が急激に悪化したことから、令和3年4月に、工事に必要な資金計画と健全経営の確保を確認するため、品川・名古屋間全体の工事費の見通しについて、合理的と考えられる要素を盛り込んで精査を進めたところ、総工事費が品川・名古屋間の工事実施計画(その2)時の見込み額5.52兆円を上回り、7.04兆円となる見通しとなりました。工事費増の理由は、難工事への対応、地震対策の充実、発生土の活用先確保等です。
今後も経営に関しては、これまでと同様に健全経営と安定配当を堅持することを優先し、工事費に充てる資金は営業キャッシュ・フローを主体に、不足分について返済可能な借入資金によって賄っていきます。仮に健全経営と安定配当を堅持できないと想定される場合には、工事のペースを調整し、十分に経営体力を回復することで、工事の完遂を目指します。
参考として、工事の完遂に必要な資金の確保を確認するため、現実的に想定しうるペースで収益が回復した場合に、一定の合理的な前提をおいて営業キャッシュ・フローを算出し、これに新規の資金調達約1兆円を加えれば、品川・名古屋間の建設に充当できる資金の累計が、令和10年度中には、算出した総工事費の見通し額7.04兆円を上回ることを確認しました。なお、これは開業の目標時期を新たに設定したものではなく、あくまで参考として、一定の前提の下での資金確保の状況を試算したものです。
その後、令和5年12月に、駅・車両基地の建築工事や設備工事、車両等を工事実施計画(その3)として申請するとともに、これまでに認可を受けた項目について、設計検討及び調査の深度化、協議及び工事の進捗等を踏まえ、工事予算や工事の完了の予定時期等の変更を申請し、認可を受けました。工事実施計画(その3)の認可により、品川・名古屋間の工事に必要な項目について全て認可されました。
認可を受けている品川・名古屋間の工事実施計画の概要は、以下のとおりです。
1.区間 品川・名古屋間
2.駅の位置 品川駅 (併設:東京都港区港南)
神奈川県(仮称)駅 (新設:神奈川県相模原市緑区橋本)
山梨県(仮称)駅 (新設:山梨県甲府市大津町字入田)
長野県(仮称)駅 (新設:長野県飯田市上郷飯沼)
岐阜県(仮称)駅 (新設:岐阜県中津川市千旦林字坂本)
名古屋駅 (併設:愛知県名古屋市中村区名駅)
3.車両基地の位置 関東車両基地(仮称) (新設:神奈川県相模原市緑区鳥屋)
中部総合車両基地(仮称)(新設:岐阜県中津川市千旦林)
4.線路延長 285.6km
(構造物種別)
トンネル:246.6km(約86%)
高 架 橋: 23.6km(約8%)
橋りょう: 11.3km(約4%)
路 盤: 4.1km(約2%)
5.線路の概要 最小曲線半径 8,000m
最急勾配 40‰
軌道中心間隔 5.8m以上
6.工事予算 7兆482億円
7.工事の完了の予定時期 令和9年以降
今後とも、健全経営と安定配当を堅持しつつ、中央新幹線の早期実現を目指して、計画を推進していきます。
なお、中央新幹線(東京都・大阪市間)の建設を進めるにあたっては、例えば、次のようなリスクが考えられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
ⅰ 建設資材の高騰等による工事費の増大
ⅱ 難工事その他による工事遅延・完成時期の遅れ
ⅲ 金利上昇
ⅳ 経済停滞、人口減少による収入減
ⅴ 他輸送機関との競合による収入減
ⅵ 社会全体の物価上昇
ⅶ 訴訟の提起
こうした経費増、収入減を伴うⅰからⅵまでのリスクに対しては、工事のペースを調整し、債務縮減により経営体力回復のための時間調整を行うことにより、健全経営と安定配当を堅持し、計画を完遂します。
なお、ⅶの訴訟については、工事実施計画認可の取消しを国に求める行政訴訟、工事差止め等を求める民事訴訟が提起されています。
≪参考≫ 中央新幹線(東京都・名古屋市間)の路線
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