有価証券報告書-第156期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものであります。
(1) 経営方針
ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献することを経営理念に掲げ、生活利便の向上に役立つ商品・サービスを開発してまいりました。
今後も、社会インフラの一員として社会の課題に正面から向き合い、お客様、社会のニーズに応える「新たな物流のエコシステム」を創出することで、豊かな社会の創造に持続的に貢献してまいります。また、生産性の向上を図るなど効率化を推進し、収益力の強化に努めることで、安定した経営を目指してまいります。
(2) 経営環境、経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
今後の経済情勢については、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い大幅に悪化しており、国内でも緊急事態宣言の発令、解除を繰り返すなど、内外経済環境の回復が見通せない状況にあります。
一方、物流業界においては、コロナ禍においてソーシャルディスタンスの確保、「密」の回避という新たな生活様式が定着したことにより、量的増大のみならず、これまでEC化率が比較的低かった品目(食料品、衣料品、化粧品等)でEC利用が促進されたことや、置き配を含む非対面受取がさらに求められる等、質的にも顧客ニーズが大きく変容しております。また、消費行動において、従来の店舗での購入から通販による購入を選好するトレンドが強まることにより、その上流領域である法人向け(BtoB)物流においても、店舗以外の流通チャネルの拡充ならびに、店舗在庫においても非対面チャネルでの受注・納品へのシフトが加速しております。
このような状況下、ヤマトグループでは、コロナ禍により一層加速した「全産業のEC化」に対応し、生活様式の変化と新たな時代に求められるサプライチェーンの変革に向け、お客様や社会のニーズに総合的な価値提供を行うため、2021年1月にヤマトグループ中期経営計画「Oneヤマト2023」(以下、「Oneヤマト2023」)を策定しました。「Oneヤマト2023」では、ラストマイルの配送の強み、多くの法人顧客との接点を起点として、グループ一丸で幅広い顧客のサプライチェーンの下流から中・上流まで入り込むことを掲げ、これらを通じて顧客・社会のニーズ変化に「Oneヤマト」で向き合い、「物流」領域を徹底的に強化することを基本方針と定めました。また、2020年1月に策定した、ヤマトグループの中長期的なグランドデザインである、経営構造改革プラン『YAMATO NEXT100』(以下『YAMATO NEXT100』)で示した13の経営課題に取り組む中で、3つの事業構造改革および3つの基盤構造改革をより具体化し、9つの重点施策を策定しました。消費行動の変化により、サプライチェーン下流でラストマイル小口配送ニーズが高まるだけでなく、中・上流の流通構造にも変化がもたらされる中で、ラストマイルに強みを持つヤマトグループがその強みをより磨き上げつつ、下流から中・上流に遡った新たなサプライチェーンを一体的に提供することにより、最終消費者の生活をより便利にし、法人のお客様の業績・企業価値向上に資する存在となることを目指して参ります。
なお、当該中期経営計画の最終年度となる2024年3月期において、連結営業収益2兆円、連結営業利益1,200億円(連結営業利益率6.0%)、ROE10.0%の達成を目標としております。
①9つの重点施策
ⅰ.データ分析に基づく経営資源の最適配置
データ基盤整備とアルゴリズム開発の高度化で、各地域の需要と業務量予測の精度を向上し、個人、法人ともに変化、多様化するお客様のニーズに応えるグループ経営資源の最適配置を進めます。
幹線を含む輸送工程の最適化と標準化に加え、各拠点の人員・車両の適正配置、作業のオペレーション改革や自動化・デジタル化で、第一線がお客様に向き合う時間と接点、および集配対応力を拡大し、ネットワーク全体の生産性を向上させます。
ⅱ.グループインフラの強靭化
[1]拠点の再配置と機能拡充による価値提供の強化と、生産性の向上
営業倉庫約110拠点、ベース(仕分けターミナル)77拠点、宅急便センター約3,700拠点など、グループ各社が全国に保有する拠点をネットワーク上に再配置し、さらに各拠点の機能を統合、増強します。
集配の作業集約による拠点間輸送の削減と各拠点の自動化に加え、フルフィルメント機能を有する新たな拠点の配置などで、ネットワーク上の仕分け能力を最大約1.5倍(2021年3月期比)に向上させます。
[2]輸送機能の最適化、多機能化と、オープンな配送ネットワークの拡充
グループ各社が保有する幹線・ミドルマイル・ラストマイルの輸送機能をネットワーク上に再配置し、輸配送工程のさらなる全体最適化を図ります。また、小~中ロットの多頻度集配に対応する域内ネットワークと独自のTMS(Transport Management System)の開発で、地域ごとの多様なニーズに応える輸送機能を拡充します。
ECを中心に多様な顧客ニーズに対応する「EAZY CREW」など、パートナーとの連携をさらに拡大するため、集配支援ツールの高機能化、EAZY CREW向けポータルサイトの構築、リース車両の提供に加え、安全研修や福利厚生の充実など、パートナーへのサポート体制を拡充します。
[3]業務プロセス改革(BPR)の推進
第一線がお客様にしっかり向き合う時間と接点を創出するため、プロフェッショナルサービス機能本部を中心に、管理・間接業務を標準化、電子化、集約化します。
さらに、共同調達・購買にグループ全体で取り組むことで、第一線の管理・間接業務を約4割(2021年3月期比)削減します。
ⅲ.サプライチェーンをトータルに支援する、ビジネスパートナーへの進化
[1]上流から下流まで、サプライチェーン全体にわたる価値提供の強化
全国の営業倉庫・拠点・幹線・ミドルマイル・ラストマイル、および新たな域内輸送機能のシームレスな結合と、デジタル情報による可視化を通じて、サプライヤー・メーカーから店舗・生活者にいたるサプライチェーンをトータルに支援するビジネスパートナーを目指します。
消費地に近い拠点に商材を一括輸送し、域内の需要に応じた小~中ロットの店舗納品にスピーディーに対応することで、欠品による店舗の販売機会ロス削減や総在庫の偏在を抑制するなど、法人のお客様の売上げの最大化と、サプライチェーンのスリム化、キャッシュフローの改善に貢献します。
クロスボーダー領域では、輸出入するECなどの小口貨物、一般貨物の発注情報、出荷・到着予定情報、通関関連情報など、グローバルサプライチェーン上のすべての情報をデジタル化、可視化し、国内・海外のネットワークをスムーズに結節するとともに、フルフィルメント機能の活用による在庫の最小化やリードタイムの最適化など、高度なソリューションを提供します。
[2]お客様に向き合う法人部門の一体運営
第一線からお客様のニーズをスピーディーに収集、集約し、質の高い提案に結びつけるため、「法人ソリューションコントロールセンター」を新設します。
情報集約からデータ分析、課題抽出に加え、各機能本部が開発するソリューション、サービス、マーケティングを一元的にマネジメントすることで、第一線の営業担当者の提案活動を支援し、法人のお客様に対して常に最適な提案を実現する体制を構築します。
ⅳ.「ECエコシステム」の最適解の創出
加速する 「全産業のEC化」に向け、事業者、運び手、生活者が共にメリットを享受できる持続的な「ECエコシステム」の確立に向けた取組みをさらに強化します。
事業者には、在庫・事務コストを最小化するサプライチェーンの上流における価値提供に加え、ライブコマースなどの新たな販売チャネルの創出や、実店舗のEC化支援など、サポート体制を充実させます。
運び手には、EAZY CREWのネットワークをさらに拡充するとともに、デジタルを活用した集配ツールの充実など、「運ぶ」を効率化する支援を強化します。
買い手となる生活者には、EAZYのリアルタイムトラッキングやダイナミックプライシングの導入、スマホで受け取れる店舗の拡大など、デジタルを活用した新たな顧客体験を提案していきます。
さらに、4,500万人を超えるクロネコメンバーズ会員をはじめとするお客様と、生産者、店舗、あるいは130万社を超えるヤマトビジネスメンバーズ会員をつなぐ仕組みの検討などを通じ、「新たな“運ぶ”」を創り、お客様との一層のエンゲージメント強化を進めます。
ⅴ.資本効率の向上
事業成長とコスト構造の改革を進め、財務戦略との両輪でより資本効率を重視する経営に取り組みます。成長性(営業収益)と収益性(営業利益率)および、財務の健全性(キャッシュ創出状況、保有現預金、自己資本比率の水準)、投資の進捗状況、資本効率等を踏まえ、安定的な配当(株主資本配当率を意識)を基本とした適時適切な資本政策により、株主価値向上を実現します。
具体的には、ROE10%以上(2024年3月期)、配当性向30%以上、総還元性向50%以上(2021年3月期~2024年3月期までの累計)を目指します。
ⅵ.「運創業」を支える人事戦略の推進
第一線の社員一人ひとりの役割を明確化し、評価できる制度、事業本部、機能本部でグループをリードする専門人材が育成され、高いパフォーマンスを発揮できる制度へと、人事制度を刷新します。
また、社員が学び、成長するための教育専門組織「クロネコアカデミー」を新設し、組織力の向上を図ります。
さらにデジタル教育プログラムを充実し、経営層を含む全社員のデジタルリテラシーの底上げと、デジタル人材の早期育成を図ります。
ⅶ.経営体制の刷新とガバナンスの強化
2021年4月1日、ヤマト運輸とグループ会社7社を統合し、2部門(リテール部門・法人部門)を構成する4つの事業本部(リテール事業、法人事業、グローバルSCM事業、EC事業)と、4つの機能本部(輸送機能、デジタル機能、プラットフォーム機能、プロフェッショナルサービス機能)、およびコーポレートからなる経営体制に移行いたしました。純粋持株会社は存続するものの、統合後のヤマト運輸を中核会社とし、意思決定のスピードを重視したガバナンスを構築します。
ⅷ.データ戦略、イノベーション戦略の推進
基幹システムの刷新に加え、データ活用のさらなる高度化に向け、引き続きデジタルデータの整備と、デジタル基盤の強化を進めます。最新テクノロジーを活用したデータ取得の仕組みや、クラウド技術を中心とした「Yamato Digital Platform」の拡充を通じ、9つの重点施策をデジタル面から支えます。
また、2020年4月に創設した「KURONEKO Innovation Fund」をはじめ、スタートアップの発掘と連携、新規事業創出に向けたスタートアップへの投資など、オープンイノベーションをさらに強力に推進します。
ⅸ.サステナブル経営の強化
「YAMATO NEXT100」で掲げたビジョンの実現と注力すべき社会課題の解決に向け、環境と社会を組み込んだ経営を実行するため、マテリアリティ(重要課題)ごとに2024年3月期の中期目標を策定しました。
各施策を事業活動の中で遂行することにより、社会と事業の持続可能な発展を目指します。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ヤマトグループを取り巻く事業環境は、お客様のニーズの多様化、地域の過疎化、労働人口の縮小、気候変動など大きく変化しています。さらに新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に消費行動や生活様式が変化し、それに対応するため全産業のEC化が加速しています。このような事業環境の中、ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、2021年4月1日より、グループ各社の経営資源を結集した新しいヤマト運輸を中核とするグループ経営体制に移行し、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「Oneヤマト2023」をスタートさせました。流通構造の変化に対応するサプライチェーンの変革に向けて、個人、法人、地域のお客様、そして社会のニーズに総合的な価値提供を目指す「Oneヤマト2023」に基づき、以下の取組みを加速させていきます。
① グループ全体の生産性向上
労働人口の減少をはじめとした事業環境の変化を踏まえ、より高い生産性を実現することが喫緊の課題です。「Oneヤマト2023」では、最重要施策として、データ分析に基づく経営に取り組みます。各地域の需要と業務量予測の精度向上により、個人、法人ともに変化、多様化するお客様のニーズに応えるグループ経営資源の最適配置を進めます。全国に保有する営業倉庫、仕分けターミナル、宅急便センターなどの拠点をネットワーク上に適正に配置し直し、グループ各社がそれぞれ行ってきた幹線輸送の集約や拠点間輸送の削減、および各拠点への適正な人員と車両の配置で、物流ネットワーク全体の生産性を向上させます。また、作業のオペレーション改革や自動化、デジタル化による配送工程の最適化と標準化を通じて、第一線の社員がお客様に向き合う時間と集配対応力を拡大するとともに安全や品質の向上を実現します。
さらに、管理間接業務についても、業務の標準化、電子化によるBPR(業務プロセス改革)を推進することで、第一線の社員の管理間接業務を削減していきます。
② 法人領域の成長による営業収益の拡大
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした消費行動や生活様式の変化に対応するため、サプライチェーンの変革に向けた法人のお客様の課題はこれまで以上に多様化しています。「Oneヤマト2023」では、この変化を事業成長の機会と捉え、BtoC領域に留まらず、サプライチェーン全体へ価値提供することを目標に掲げました。これはサプライチェーン全体に広がる顧客の経営課題の解決を目指すものであり、従来の事業領域の延長線上ではなく、新たな成長領域と位置付け注力していきます。
この目標の実現に向けて、これまで分散していたグループの営業機能と経営資源をヤマト運輸に集約し、お客様に向き合い寄り添うことができる最適な体制のもとで課題解決に取り組みます。また、営業情報を一元管理する法人ソリューション・コントロールセンターが中心となり、あらゆる法人のお客様に最適な提案を創出し、第一線の営業活動を促進していきます。そして「宅急便」・「EAZY」に加え、小・中ロットの多頻度集配に対応する域内ネットワークを各拠点に有機的に組み合わせ、シームレスにデジタル化、可視化することで、物流の効率化のみならず、店舗やECの運営に係るバックヤード業務の効率化や、販売機会ロスの削減、在庫の最適化など、サプライチェーン全体にわたる価値を提供していきます。
EC事業者様および販売者様、EC利用者様、配送事業者がともに発展できるECエコシステムの最適解の創出に向けては、パートナーとなるEAZY CREWの拡充、お客様とのリアルタイムコミュニケーションを基盤とする「EAZY」の機能向上に加え、大手から小規模のEC事業者様、今後EC領域の強化を目指すメーカー・小売事業者様に対し、調達や在庫移動など上流領域でのソリューションを充実させていきます。
③ 持続的な企業価値向上を実現する戦略の推進
持続的な企業価値向上を実現すべく、「Oneヤマト2023」では、データ戦略とイノベーション戦略の推進、経営体制の刷新とガバナンスの強化、「運創業」を支える人事戦略、資本効率の向上、およびサステナブル経営の強化に取り組んでいきます。
データ戦略については、基幹システムの刷新に加え、データ活用のさらなる高度化に向けて、デジタルデータの整備とデジタル基盤の強化を推進します。また、イノベーション戦略については、「KURONEKO Innovation Fund」をはじめ、スタートアップの発掘と連携、新規事業創出に向けたスタートアップへの投資など、オープンイノベーションを推進します。
新たなグループ経営体制に基づくガバナンスの強化については、経営の監督と執行の分離、経営の透明性の維持、強化など、コーポレート・ガバナンスの強化に継続して取り組むとともに、経営資源を結集したヤマト運輸を中核会社とし、意思決定のスピードを重視したガバナンスを構築していきます。
「運創業」を支える人事戦略については、社員が高いパフォーマンスを発揮できるよう、社員一人ひとりの役割を明確化し評価できる人事制度を構築します。そして、教育専門組織を設置し、組織力の向上と専門人材の育成を図るとともに、デジタル教育プログラムを充実させ、経営層を含めた全社員のデジタルリテラシーの底上げとデジタル人材の早期育成を推進します。また、ヤマトグループ最大の資産である約22万人の社員が、働きがいを持ちイキイキと活躍するとともに、人権や多様性が尊重され、より安心して働くことができる職場環境を整備していきます。
資本効率の向上については、事業成長とコスト構造の改革を進め、財務戦略との両輪で、より資本効率を重視する経営に取り組みます。成長性(営業収益)と収益性(営業利益率)および、財務の健全性(キャッシュ創出状況、保有現預金、自己資本比率の水準)、投資の進捗状況、資本効率等を踏まえ、安定的な配当(株主資本配当率を意識)を基本とした、適時適切な資本政策により、株主価値向上を実現します。
サステナブル経営の強化については、中長期の経営のグランドデザイン「YAMATO NEXT100」で掲げた環境・社会ビジョンの達成に向けて、重要課題に対する2024年3月期までの到達目標と具体的な行動計画を事業活動のなかで遂行することで社会と事業の持続的な発展を目指していきます。
(1) 経営方針
ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献することを経営理念に掲げ、生活利便の向上に役立つ商品・サービスを開発してまいりました。
今後も、社会インフラの一員として社会の課題に正面から向き合い、お客様、社会のニーズに応える「新たな物流のエコシステム」を創出することで、豊かな社会の創造に持続的に貢献してまいります。また、生産性の向上を図るなど効率化を推進し、収益力の強化に努めることで、安定した経営を目指してまいります。
(2) 経営環境、経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
今後の経済情勢については、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い大幅に悪化しており、国内でも緊急事態宣言の発令、解除を繰り返すなど、内外経済環境の回復が見通せない状況にあります。
一方、物流業界においては、コロナ禍においてソーシャルディスタンスの確保、「密」の回避という新たな生活様式が定着したことにより、量的増大のみならず、これまでEC化率が比較的低かった品目(食料品、衣料品、化粧品等)でEC利用が促進されたことや、置き配を含む非対面受取がさらに求められる等、質的にも顧客ニーズが大きく変容しております。また、消費行動において、従来の店舗での購入から通販による購入を選好するトレンドが強まることにより、その上流領域である法人向け(BtoB)物流においても、店舗以外の流通チャネルの拡充ならびに、店舗在庫においても非対面チャネルでの受注・納品へのシフトが加速しております。
このような状況下、ヤマトグループでは、コロナ禍により一層加速した「全産業のEC化」に対応し、生活様式の変化と新たな時代に求められるサプライチェーンの変革に向け、お客様や社会のニーズに総合的な価値提供を行うため、2021年1月にヤマトグループ中期経営計画「Oneヤマト2023」(以下、「Oneヤマト2023」)を策定しました。「Oneヤマト2023」では、ラストマイルの配送の強み、多くの法人顧客との接点を起点として、グループ一丸で幅広い顧客のサプライチェーンの下流から中・上流まで入り込むことを掲げ、これらを通じて顧客・社会のニーズ変化に「Oneヤマト」で向き合い、「物流」領域を徹底的に強化することを基本方針と定めました。また、2020年1月に策定した、ヤマトグループの中長期的なグランドデザインである、経営構造改革プラン『YAMATO NEXT100』(以下『YAMATO NEXT100』)で示した13の経営課題に取り組む中で、3つの事業構造改革および3つの基盤構造改革をより具体化し、9つの重点施策を策定しました。消費行動の変化により、サプライチェーン下流でラストマイル小口配送ニーズが高まるだけでなく、中・上流の流通構造にも変化がもたらされる中で、ラストマイルに強みを持つヤマトグループがその強みをより磨き上げつつ、下流から中・上流に遡った新たなサプライチェーンを一体的に提供することにより、最終消費者の生活をより便利にし、法人のお客様の業績・企業価値向上に資する存在となることを目指して参ります。
なお、当該中期経営計画の最終年度となる2024年3月期において、連結営業収益2兆円、連結営業利益1,200億円(連結営業利益率6.0%)、ROE10.0%の達成を目標としております。
①9つの重点施策
ⅰ.データ分析に基づく経営資源の最適配置
データ基盤整備とアルゴリズム開発の高度化で、各地域の需要と業務量予測の精度を向上し、個人、法人ともに変化、多様化するお客様のニーズに応えるグループ経営資源の最適配置を進めます。
幹線を含む輸送工程の最適化と標準化に加え、各拠点の人員・車両の適正配置、作業のオペレーション改革や自動化・デジタル化で、第一線がお客様に向き合う時間と接点、および集配対応力を拡大し、ネットワーク全体の生産性を向上させます。
ⅱ.グループインフラの強靭化
[1]拠点の再配置と機能拡充による価値提供の強化と、生産性の向上
営業倉庫約110拠点、ベース(仕分けターミナル)77拠点、宅急便センター約3,700拠点など、グループ各社が全国に保有する拠点をネットワーク上に再配置し、さらに各拠点の機能を統合、増強します。
集配の作業集約による拠点間輸送の削減と各拠点の自動化に加え、フルフィルメント機能を有する新たな拠点の配置などで、ネットワーク上の仕分け能力を最大約1.5倍(2021年3月期比)に向上させます。
[2]輸送機能の最適化、多機能化と、オープンな配送ネットワークの拡充
グループ各社が保有する幹線・ミドルマイル・ラストマイルの輸送機能をネットワーク上に再配置し、輸配送工程のさらなる全体最適化を図ります。また、小~中ロットの多頻度集配に対応する域内ネットワークと独自のTMS(Transport Management System)の開発で、地域ごとの多様なニーズに応える輸送機能を拡充します。
ECを中心に多様な顧客ニーズに対応する「EAZY CREW」など、パートナーとの連携をさらに拡大するため、集配支援ツールの高機能化、EAZY CREW向けポータルサイトの構築、リース車両の提供に加え、安全研修や福利厚生の充実など、パートナーへのサポート体制を拡充します。
[3]業務プロセス改革(BPR)の推進
第一線がお客様にしっかり向き合う時間と接点を創出するため、プロフェッショナルサービス機能本部を中心に、管理・間接業務を標準化、電子化、集約化します。
さらに、共同調達・購買にグループ全体で取り組むことで、第一線の管理・間接業務を約4割(2021年3月期比)削減します。
ⅲ.サプライチェーンをトータルに支援する、ビジネスパートナーへの進化
[1]上流から下流まで、サプライチェーン全体にわたる価値提供の強化
全国の営業倉庫・拠点・幹線・ミドルマイル・ラストマイル、および新たな域内輸送機能のシームレスな結合と、デジタル情報による可視化を通じて、サプライヤー・メーカーから店舗・生活者にいたるサプライチェーンをトータルに支援するビジネスパートナーを目指します。
消費地に近い拠点に商材を一括輸送し、域内の需要に応じた小~中ロットの店舗納品にスピーディーに対応することで、欠品による店舗の販売機会ロス削減や総在庫の偏在を抑制するなど、法人のお客様の売上げの最大化と、サプライチェーンのスリム化、キャッシュフローの改善に貢献します。
クロスボーダー領域では、輸出入するECなどの小口貨物、一般貨物の発注情報、出荷・到着予定情報、通関関連情報など、グローバルサプライチェーン上のすべての情報をデジタル化、可視化し、国内・海外のネットワークをスムーズに結節するとともに、フルフィルメント機能の活用による在庫の最小化やリードタイムの最適化など、高度なソリューションを提供します。
[2]お客様に向き合う法人部門の一体運営
第一線からお客様のニーズをスピーディーに収集、集約し、質の高い提案に結びつけるため、「法人ソリューションコントロールセンター」を新設します。
情報集約からデータ分析、課題抽出に加え、各機能本部が開発するソリューション、サービス、マーケティングを一元的にマネジメントすることで、第一線の営業担当者の提案活動を支援し、法人のお客様に対して常に最適な提案を実現する体制を構築します。
ⅳ.「ECエコシステム」の最適解の創出
加速する 「全産業のEC化」に向け、事業者、運び手、生活者が共にメリットを享受できる持続的な「ECエコシステム」の確立に向けた取組みをさらに強化します。
事業者には、在庫・事務コストを最小化するサプライチェーンの上流における価値提供に加え、ライブコマースなどの新たな販売チャネルの創出や、実店舗のEC化支援など、サポート体制を充実させます。
運び手には、EAZY CREWのネットワークをさらに拡充するとともに、デジタルを活用した集配ツールの充実など、「運ぶ」を効率化する支援を強化します。
買い手となる生活者には、EAZYのリアルタイムトラッキングやダイナミックプライシングの導入、スマホで受け取れる店舗の拡大など、デジタルを活用した新たな顧客体験を提案していきます。
さらに、4,500万人を超えるクロネコメンバーズ会員をはじめとするお客様と、生産者、店舗、あるいは130万社を超えるヤマトビジネスメンバーズ会員をつなぐ仕組みの検討などを通じ、「新たな“運ぶ”」を創り、お客様との一層のエンゲージメント強化を進めます。
ⅴ.資本効率の向上
事業成長とコスト構造の改革を進め、財務戦略との両輪でより資本効率を重視する経営に取り組みます。成長性(営業収益)と収益性(営業利益率)および、財務の健全性(キャッシュ創出状況、保有現預金、自己資本比率の水準)、投資の進捗状況、資本効率等を踏まえ、安定的な配当(株主資本配当率を意識)を基本とした適時適切な資本政策により、株主価値向上を実現します。
具体的には、ROE10%以上(2024年3月期)、配当性向30%以上、総還元性向50%以上(2021年3月期~2024年3月期までの累計)を目指します。
ⅵ.「運創業」を支える人事戦略の推進
第一線の社員一人ひとりの役割を明確化し、評価できる制度、事業本部、機能本部でグループをリードする専門人材が育成され、高いパフォーマンスを発揮できる制度へと、人事制度を刷新します。
また、社員が学び、成長するための教育専門組織「クロネコアカデミー」を新設し、組織力の向上を図ります。
さらにデジタル教育プログラムを充実し、経営層を含む全社員のデジタルリテラシーの底上げと、デジタル人材の早期育成を図ります。
ⅶ.経営体制の刷新とガバナンスの強化
2021年4月1日、ヤマト運輸とグループ会社7社を統合し、2部門(リテール部門・法人部門)を構成する4つの事業本部(リテール事業、法人事業、グローバルSCM事業、EC事業)と、4つの機能本部(輸送機能、デジタル機能、プラットフォーム機能、プロフェッショナルサービス機能)、およびコーポレートからなる経営体制に移行いたしました。純粋持株会社は存続するものの、統合後のヤマト運輸を中核会社とし、意思決定のスピードを重視したガバナンスを構築します。
ⅷ.データ戦略、イノベーション戦略の推進
基幹システムの刷新に加え、データ活用のさらなる高度化に向け、引き続きデジタルデータの整備と、デジタル基盤の強化を進めます。最新テクノロジーを活用したデータ取得の仕組みや、クラウド技術を中心とした「Yamato Digital Platform」の拡充を通じ、9つの重点施策をデジタル面から支えます。
また、2020年4月に創設した「KURONEKO Innovation Fund」をはじめ、スタートアップの発掘と連携、新規事業創出に向けたスタートアップへの投資など、オープンイノベーションをさらに強力に推進します。
ⅸ.サステナブル経営の強化
「YAMATO NEXT100」で掲げたビジョンの実現と注力すべき社会課題の解決に向け、環境と社会を組み込んだ経営を実行するため、マテリアリティ(重要課題)ごとに2024年3月期の中期目標を策定しました。
各施策を事業活動の中で遂行することにより、社会と事業の持続可能な発展を目指します。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ヤマトグループを取り巻く事業環境は、お客様のニーズの多様化、地域の過疎化、労働人口の縮小、気候変動など大きく変化しています。さらに新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に消費行動や生活様式が変化し、それに対応するため全産業のEC化が加速しています。このような事業環境の中、ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、2021年4月1日より、グループ各社の経営資源を結集した新しいヤマト運輸を中核とするグループ経営体制に移行し、2024年3月期を最終年度とする中期経営計画「Oneヤマト2023」をスタートさせました。流通構造の変化に対応するサプライチェーンの変革に向けて、個人、法人、地域のお客様、そして社会のニーズに総合的な価値提供を目指す「Oneヤマト2023」に基づき、以下の取組みを加速させていきます。
① グループ全体の生産性向上
労働人口の減少をはじめとした事業環境の変化を踏まえ、より高い生産性を実現することが喫緊の課題です。「Oneヤマト2023」では、最重要施策として、データ分析に基づく経営に取り組みます。各地域の需要と業務量予測の精度向上により、個人、法人ともに変化、多様化するお客様のニーズに応えるグループ経営資源の最適配置を進めます。全国に保有する営業倉庫、仕分けターミナル、宅急便センターなどの拠点をネットワーク上に適正に配置し直し、グループ各社がそれぞれ行ってきた幹線輸送の集約や拠点間輸送の削減、および各拠点への適正な人員と車両の配置で、物流ネットワーク全体の生産性を向上させます。また、作業のオペレーション改革や自動化、デジタル化による配送工程の最適化と標準化を通じて、第一線の社員がお客様に向き合う時間と集配対応力を拡大するとともに安全や品質の向上を実現します。
さらに、管理間接業務についても、業務の標準化、電子化によるBPR(業務プロセス改革)を推進することで、第一線の社員の管理間接業務を削減していきます。
② 法人領域の成長による営業収益の拡大
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機とした消費行動や生活様式の変化に対応するため、サプライチェーンの変革に向けた法人のお客様の課題はこれまで以上に多様化しています。「Oneヤマト2023」では、この変化を事業成長の機会と捉え、BtoC領域に留まらず、サプライチェーン全体へ価値提供することを目標に掲げました。これはサプライチェーン全体に広がる顧客の経営課題の解決を目指すものであり、従来の事業領域の延長線上ではなく、新たな成長領域と位置付け注力していきます。
この目標の実現に向けて、これまで分散していたグループの営業機能と経営資源をヤマト運輸に集約し、お客様に向き合い寄り添うことができる最適な体制のもとで課題解決に取り組みます。また、営業情報を一元管理する法人ソリューション・コントロールセンターが中心となり、あらゆる法人のお客様に最適な提案を創出し、第一線の営業活動を促進していきます。そして「宅急便」・「EAZY」に加え、小・中ロットの多頻度集配に対応する域内ネットワークを各拠点に有機的に組み合わせ、シームレスにデジタル化、可視化することで、物流の効率化のみならず、店舗やECの運営に係るバックヤード業務の効率化や、販売機会ロスの削減、在庫の最適化など、サプライチェーン全体にわたる価値を提供していきます。
EC事業者様および販売者様、EC利用者様、配送事業者がともに発展できるECエコシステムの最適解の創出に向けては、パートナーとなるEAZY CREWの拡充、お客様とのリアルタイムコミュニケーションを基盤とする「EAZY」の機能向上に加え、大手から小規模のEC事業者様、今後EC領域の強化を目指すメーカー・小売事業者様に対し、調達や在庫移動など上流領域でのソリューションを充実させていきます。
③ 持続的な企業価値向上を実現する戦略の推進
持続的な企業価値向上を実現すべく、「Oneヤマト2023」では、データ戦略とイノベーション戦略の推進、経営体制の刷新とガバナンスの強化、「運創業」を支える人事戦略、資本効率の向上、およびサステナブル経営の強化に取り組んでいきます。
データ戦略については、基幹システムの刷新に加え、データ活用のさらなる高度化に向けて、デジタルデータの整備とデジタル基盤の強化を推進します。また、イノベーション戦略については、「KURONEKO Innovation Fund」をはじめ、スタートアップの発掘と連携、新規事業創出に向けたスタートアップへの投資など、オープンイノベーションを推進します。
新たなグループ経営体制に基づくガバナンスの強化については、経営の監督と執行の分離、経営の透明性の維持、強化など、コーポレート・ガバナンスの強化に継続して取り組むとともに、経営資源を結集したヤマト運輸を中核会社とし、意思決定のスピードを重視したガバナンスを構築していきます。
「運創業」を支える人事戦略については、社員が高いパフォーマンスを発揮できるよう、社員一人ひとりの役割を明確化し評価できる人事制度を構築します。そして、教育専門組織を設置し、組織力の向上と専門人材の育成を図るとともに、デジタル教育プログラムを充実させ、経営層を含めた全社員のデジタルリテラシーの底上げとデジタル人材の早期育成を推進します。また、ヤマトグループ最大の資産である約22万人の社員が、働きがいを持ちイキイキと活躍するとともに、人権や多様性が尊重され、より安心して働くことができる職場環境を整備していきます。
資本効率の向上については、事業成長とコスト構造の改革を進め、財務戦略との両輪で、より資本効率を重視する経営に取り組みます。成長性(営業収益)と収益性(営業利益率)および、財務の健全性(キャッシュ創出状況、保有現預金、自己資本比率の水準)、投資の進捗状況、資本効率等を踏まえ、安定的な配当(株主資本配当率を意識)を基本とした、適時適切な資本政策により、株主価値向上を実現します。
サステナブル経営の強化については、中長期の経営のグランドデザイン「YAMATO NEXT100」で掲げた環境・社会ビジョンの達成に向けて、重要課題に対する2024年3月期までの到達目標と具体的な行動計画を事業活動のなかで遂行することで社会と事業の持続的な発展を目指していきます。