有価証券報告書-第78期(2023/07/01-2024/06/30)

【提出】
2024/09/27 9:38
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの企業理念は『品質』、すなわち「安全で良質な輸送・サービス」をお客様に提供するとともに、「お客様の期待以上のサービスを創造することにより、豊かな社会の発展に貢献する。」ことを掲げており、財務品質・人的品質(人的資本)・物流品質・営業品質などあらゆる品質の向上を活動の基本としております。
また、祖業である車両輸送事業において確固たる業界のポジションを築くため、既存ビジネスの拡大に加え、周辺事業へのさらなる展開を実行していくとともに新規事業や新サービスを創出し、M&Aも一つの選択肢として、新しい事業領域への展開を推し進めてまいります。持続的な成長・発展を通し、企業価値を増大させ、社会、お客様、株主の皆様から継続的に信頼を得られる企業グループになることを目指してまいります。
(2) 目標とする経営指標
中期経営計画の最終年度となる2027年6月期の目標とする経営指標は以下のとおりとし、その達成に向けて邁進してまいります。
項目目標数値
売上収益1,500億円以上
営業利益100億円以上
営業利益率6.5%以上
ROE14.0%以上
PBR1.0倍以上
PER8.0倍以上

(3) 当社グループが置かれている経営環境について
① 市場環境
当社グループの主たる事業であります国内自動車関連事業は、消費税や自動車取得および保有時などの関係諸税の税制に影響を受けやすい国内自動車販売市場の動向に連動しております。日本国内の新車市場は90年代の700万台をピークに、それ以降は停滞が続き、コロナ禍の混乱を経て近年の新車販売台数は500万台を切る水準で推移しております。さらに人口減少などによる運転免許保有者の減少や自動車の所有形態が変化していくなど、中長期的に見れば市場は減少傾向にあります。
また、物流業界においては中長期的な原油価格の高騰リスクや2021年以降急激に進んだ円安基調に伴う燃料価格上昇基調の環境下に加え、コンプライアンスへの対応、日本国内における労働力不足、特に乗務員の不足への対応、さらには働き方改革関連法および改善基準告示改正に起因する「物流2024年問題」への対応ならびに消費者物価指数の上昇に伴う賃金上昇機運の高まりによる企業のさらなる負担増加など、引き続き厳しい事業環境が続くものと考えております。
② 当社グループの構造と主要なサービスの内容
当社グループは、当社および子会社20社と共同支配企業3社で構成され、国内自動車関連事業、ヒューマンリソース事業、一般貨物事業、海外関連事業を主たる業務としております。
国内自動車関連事業は、主に新車および中古車の輸送、バイクの輸送、レンタル建機の回送、納車前整備点検や大型車整備、リースアップ車や自動車販売会社における下取り車の入札会運営、中古車オークション会場における検査業務を主とする構内作業およびそれらに付随する事業を行っております。ヒューマンリソース事業は、病院や教育施設などにおける自動車の運行管理事業やドライバーおよび倉庫内作業員を中心とした人材派遣事業を行っております。一般貨物事業は、港湾荷役や運輸・倉庫事業に加え、一般消費財等の3PL事業を行っております。海外関連事業は、主として中古車の輸出、中国における新車の輸送を行っております。
グループの統一的な基本方針のもと、取締役会をはじめ各機関、各社が、相互に事業を組み合わせて、自動車流通における総合物流企業・サービスプロバイダーとしてグループシナジー創出と効率化を推し進めております。
③ 競合他社との優位性
当社グループは、それぞれのセグメントで競合企業が存在いたします。国内自動車関連事業の主たる事業である車両輸送事業においては、多数の車両輸送会社が存在いたしますが、長距離の輸送は対応できないことが多く、当社グループが持つ陸上・海上輸送の全国ネットワークが強みを発揮いたします。また、車両輸送では自動車という特殊な荷物を取り扱っており、その輸送機材に供給の制約があるなど、参入障壁は比較的高いものとなっております。ヒューマンリソース事業においては、一般的な派遣事業の割合は少なく、自動車の運行管理やドライバー派遣が主となっており、当社グループとのシナジーがより発揮しやすい構造となっております。また、一般貨物事業においては、参入障壁の高い港湾事業や地域性を活かせる3PL事業を主に事業展開を行っております。海外関連事業においては、中国における車両輸送事業は日本基準の高い輸送品質を強みにしており、中古車輸出事業は地域を集中させ、高い顧客満足度を獲得しております。
(4) 対処すべき課題
当社グループは次の課題に取り組み、力強い成長戦略を実現してまいります。
① 車両輸送事業改革の推進
事業基盤再構築の一環として行った車両輸送会社の地域ブロック化により、グループが保有する地域毎の輸送能力を見極め、既存の輸送戦力を最大活用できる最適な配置を進めるとともに、輸送デジタル化による計画的な配車の実現等により輸送効率を向上させてまいります。また、顧客や地域の特性に応じた営業体制・輸送体制の構築に加えて、コスト管理の徹底を図るとともに、請求・支払料金体系の包括的な見直しを進め、収益向上につなげてまいります。
さらに、「物流の2024年問題」への対応を推進し、法令順守に努めるとともに、総労働時間の短縮を推進するため、業務の効率化および自動化、デジタル化によるシステムの活用によって負荷軽減に努めてまいります。業務プロセスをシンプルにすることや、輸送機材の荷扱いや中古車オークション会場における自動車探しなどを分業やアウトソースすることによって、業務量の削減と平準化を図り、労働環境や諸条件の改善を進め、自動車流通業界ダントツの魅力ある会社、働きがいのある職場をつくり上げることで、乗務員や整備士の定着、従業員エンゲージメントや従業員満足度の向上を促進してまいります。
② 国内自動車周辺事業の拡大
車両輸送に依存しない事業ポートフォリオを構築するため、名義変更や登録代行、納車前整備点検、中古車入札会の運営や中古車オークション会場における検査業務などの自動車周辺事業を構築して、新規事業や新サービスを創出してまいります。また、M&Aによってレンタル建機の回送、中古車オークション会場や入札会会場における構内事業や大型中古車販売店内におけるカークリーニング事業への本格参入など新しい領域への事業展開を進め、事業基盤をより強固なものとしてまいります。
③ ヒューマンリソース事業の拡大
ヒューマンリソース事業におきましては、戦略的な営業活動および営業体制の強化により、少子高齢化や需要の多様化などによる、様々な法人のアウトソース需要を獲得し、また地方都市への展開などを行っております。
MaaS(Mobility As a Service)分野におきましても、企業内で社用車のシェアリング(ライドシェア)することによる専属ドライバーの需要が高まっていることから、さらなる契約獲得に向けて活動を行っております。さらに従来の「ドライバー」を軸とした人材・サービスの提供に加えて、空港への人材・サービスの提供も行っており、今後はさらに新たな分野への人材・サービスの提供を検討してまいります。
また、新規事業として2023年3月からドライバー専門の求人ポータルサイト「運転ドットコム」 を立ち上げ、ドライバーを採用したい物流企業と新たな職場で働きたいドライバーをマッチングできる新しいプラットフォームとしての地位を確立し、物流業界における人手不足の解消に貢献してまいります。
④ 一般貨物事業の拡大
一般貨物事業におきましては、港湾荷役事業と運輸・倉庫事業ともに既存顧客の要望に的確に応えるとともに、新規顧客の獲得に努めることで事業の拡大を進めております。運輸・倉庫事業では、顧客の物流センター・倉庫の3PL事業に注力しております。港湾荷役事業におきましては、グリーン化・カーボンニュートラルの流れの中で、バイオマス発電所向けの燃料荷役を受託しており、順調に推移しております。また、グループ内のインフラやリソースを最大活用して、お客様への新たな価値を提案できるような協業を推進し、グループシナジーの創出を進めてまいります。
⑤ 海外関連事業の拡大
自動車関連事業で長年培ってきた当社グループのサービス技術、ノウハウを海外の成長市場で展開しております。中国におきましては、2004年に陸友物流(北京)有限公司を設立して進出以来、事業を拡大し収益を上げており、2021年7月1日に出資持分を追加取得し、連結子会社化いたしました。今後は中国における中古車輸送や新興EVメーカーへの参入の検討および中国から日本へ輸入される電気自動車の複合物流の構築を検討してまいります。
また、ASEAN諸国におきましては、マレーシア向けに中古車輸出を手掛けている株式会社ワールドウインドウズの売上が大幅に伸長していることから、引き続きお客様からの要望に応えられる体制を整備するとともに、さらなるシェア拡大に加え、新たなサービスの開発や他の地域への展開を検討してまいります。