有価証券報告書-第83期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 13:14
【資料】
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【項目】
145項目

対処すべき課題

(1)経営方針
当社は、グループの中核である曳船事業において東京湾全域に亘って、船舶の安全航行をサポートし、海難事故へ即応することにより海上交通効率化ならびに海洋環境保全への貢献といった公共的役割を果たして行きます。
具体的には、浦賀水道・中ノ瀬航路における船舶のエスコート業務、東京湾各港における船舶の離着桟補助業務、LNGバース等での警戒船業務、防災業務、緊急出動・海難救助など、顧客のあらゆる曳船サービスニーズに常時迅速に応えて行きます。
また、総合的なマリンサービス提供会社として、東京湾口の水先艇運航業務や東京湾内の交通船業務、今後成長が見込まれる洋上風力発電向け交通船事業を展開することにより海上での人員の安全確保にも資してまいります。
安全で確実な曳船サービスの遂行を継続的に遂行するため、ハード面では最新テクノロジーを取り入れたタグボート船隊を配備して行きます。ソフト面では高い熟練を誇る乗組員を育成し、海難事故への即応・緊急出動を可能とする陸上サポート体制により365日・24時間のオペレーションを実施し、顧客及び海事関係者の海上の安全の様々なニーズに応えて行きます。
当社グループ会社が行う旅客船事業では、地域貢献型マリン事業を展開しております。すなわち、神奈川県・久里浜港と千葉県・金谷港間を結ぶカーフェリー定期航路事業で地域の水上モビリティを提供して行きます。また、横浜港における観光船事業で市民及び観光客に洋上での利便性と快適性を提供してまいります。
今後ともこうした事業を基軸として、海事関係者、一般顧客及び社会に貢献する企業グループを目指して行きます。
(2)経営環境
新型コロナウイルス感染による日本経済の縮小が曳船事業、グループ会社旅客船事業ともに悪影響を及ぼしています。
当社の主力の曳船事業におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年度に大きく落ち込んだ東京湾への入出港船舶数は回復途上にはあるものの、2021年度中にコロナ以前の水準へ回帰できるかは不透明な状況です。加えて、原油価格上昇が懸念されます。
グループの旅客船事業を取り巻く環境は、たび重なる緊急事態宣言発出の観光業への打撃は大きく、利用客は激減し、その回復には時間を要する事態となっています。
上記の経営方針に基づいた対処すべき課題は、以下のとおりと考えております。
(3)会社の対処すべき課題
上記の経営方針に基づいた対処すべき課題は、以下のとおりと考えています。
当社は従来からの諸施策を確実に実施して行き、曳船事業の再構築、グループ会社の再建、当社が従来から手掛けてきた成長分野での事業開発を積極的に進めて行きます。
曳船事業
① 曳船事業は、減価償却費や船員費用などの固定費の占める割合が高く設備稼働率に収益性が大きく影響されるという特徴があるため、設備稼働率を向上させる。そのため、総売上高の増加を目指すとともに、曳船1隻あたりの売上高の改善も重視し船隊規模を適正化して行く(2020年度には1隻の曳船を減船)。
② 全日本海員組合との曳船運航定員削減交渉を前進させ、定員削減船の隻数を増やすことにより、コスト低減化を実現する。
③ 船員の労働市場が逼迫する中、乗組員の高い技能を維持し安全な曳船サービスを安定的に提供するために、教育訓練を充実させ技能の継承・向上に引き続き取り組む。
④ 継続的な研究開発により環境負荷が低減されかつ作業効率と安全性の高い最新鋭曳船を投入する。電気推進(水素燃料電池併用型)曳船の2022年12月の竣工に向けて開発を進める。
⑤ IT高度化とデジタル化を推進し、陸上及び海上の各業務プロセスの一体的な効率化と質的向上を図る。
⑥ 既存事業のノウハウを活かして国内外における新規事業の開拓に取り組む。特に洋上風力発電向けの交通船(CTV=Crew Transfer Vessel)運航やその他の事業については、各地での商業プロジェクトの開始に向けて事業開発と案件獲得を進めて行く(2021年度は秋田洋上風力発電の建設用に自社運航CTV4隻と当社と地元企業が設立した合弁会社のCTV1隻が投入される)。
⑦ 災害やウイルス感染症拡大などによる緊急事態に常時備え事業継続体制を強化する。
旅客船事業
⑧ 新型コロナウイルスで打撃を受けた旅客船事業のグループ会社2社(横浜港における観光船、久里浜・金谷を結ぶカーフェリー)の再建に取り組んで行く(横浜港の観光船「マリーンシャトル」は2021年2月に廃船)。
今後は、両社ともポストコロナ時代を睨み、観光客のニーズに応じた適正規模で、ローコストでの運航が可能で、かつ環境負荷低減に貢献する船舶へと代替を進めて行く。
(4)社会的責任を意識した経営
当社は、より安全で効率的な曳船サービスを提供して行くために総合的な品質管理システムの運用を強化いたします。また、社会的な責任として環境マネージメントシステムに基づいた企業経営を行ってまいります。これらに加え労働安全や健康に最大限配慮していくことも含め、高いHSEQ基準を確立し充足して行きます。
当社グループとしての内部統制システムは、財務報告の信頼性確保を目的とするのみならず業務の有効化・効率化、リスクマネージメントを組み込んだ体制とし、同時に公正かつ透明な企業行動のためのコンプライアンス体制と一体となるものとして行きます。
ガバナンス強化への対応として、当社グループ全体としての社員教育プログラムの拡充を図って行く必要性があります。
これらの諸施策を実施し、海事関係者、一般顧客及び社会から信頼される企業グループ経営を行うことにより株主の利益に最大限貢献したいと考えております。
(5)目標とする経営指標等
当社グループは、連結ベースでの経営効率の向上ならびに事業競争力の強化に努め、各社がそれぞれ有する経営資源をグループ全体として共有するなど、グループレベルでの収益力の強化を図って行きます。
当社グループの営む曳船事業の業績は、当社のコントロール外による要因(船舶の寄港数等)に左右される度合いが大きく、また、曳船業務の公共的性格(曳船による船舶の安全運航サポート)から具体的な数値指標を設定することは適切ではないとの考えから、中長期ビジョンに数値目標としてKPIを設定しておりません。
当社グループの事業は、減価償却費や船員費用などの固定費の占める割合が高いため、設備稼働率の向上が課題であります。そのため、総売上高が重要であるとともに、適正な船隊規模を確保する観点から船舶一隻当たりの売上高も重視しています。
また、収益性を確保する見地から売上高営業利益率や売上高当期純利益率などの改善を目標としており、運航コスト削減や作業単価改善(曳船事業の場合)のための諸施策を実施して行きます。
さらに、資本効率面でも、余剰資金を新規のプロジェクトや成長分野の事業へ投資することにより総資産利益率、自己資本利益率の改善を目指します。
曳船作業を左右する本船の市場動向の変化を注視して、合理的で効率的な運航を実現させるため適正な船隊整備に努めてまいります。 旅客・観光事業においては、船舶代替に向けて当社グループ全体で培ったノウハウを活用してまいります。