有価証券報告書-第93期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 15:31
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【項目】
124項目

業績等の概要

(1) 業績
<当社を取り巻く経営環境>平成28年度は、わが国の電気事業にとって新たな競争のステージへ移行する転換点となった。
昨年4月には、家庭用をはじめとする低圧分野における競争がはじまり、これまで自由化の対象であった高圧・特別高圧の分野とともに、小売全面自由化が開始した。また、本年4月には、ガスの小売全面自由化がはじまり、各エネルギー会社間での地域を越えた競争がより進展することになる。さらに、平成32年4月には、送配電部門の法的分離(別会社化)という大きな節目が控えている。
東北地域においては、東日本大震災からの復旧関連工事が高水準で推移していることなどから、緩やかな景気回復が続いた。大震災から6年が経過し、インフラを中心に復旧・復興には一定の進捗がみられるものの、震災で被害を受けた産業・なりわいの再生は途上であり、被災された方々の生活基盤も完全に回復していないことを踏まえると、復興は未だ道半ばにあると認識している。
このようななかで、当社は、被災地の復興・発展に寄り添いながら、かつてない経営環境の変化にも適切に対応してきた。
<戦略的なマーケティング展開>昨年4月の小売全面自由化以降、全国大で競争が進んでおり、東北6県及び新潟県においても、今後さらなる競争の進展が予想される。このような状況のなか、当社は、コーポレートスローガン「より、そう、ちから。」のもと、販売面において、様々な新サービスを提供してきた。
具体的には、昨年4月より、お客さまのライフスタイルに合わせた各種新料金プランを設定した。また、お客さまの利便性向上につながる会員制ウェブサービス「よりそうeねっと」を開設するとともに、会員向けポイントサービス「よりそうeポイント」を開始した。さらに、カメイ株式会社との間で「LPガス」と「電気」のセットプランの提供を開始することを公表したほか、トヨタ自動車株式会社やイオングループとの提携によるポイントサービス等の充実に向けた取り組みを進めてきた。
また、これまでの供給エリアを越えた事業展開として、昨年4月より、東京ガス株式会社と共同で設立した株式会社シナジアパワーが、北関東を中心とする高圧・特別高圧のお客さまへの電力販売を開始したほか、関東地域において、ご家庭向け料金プラン「よりそう、でんき」による電気の販売を開始した。
当社としては、引き続きお客さまのご要望により沿うサービスを提供することで、当社をお選びいただくことを目指していく。
<競争力ある火力電源の形成>火力発電については、原子力発電所が停止しているなか、供給力の中心として安定供給に努めるとともに、高い経済性と環境負荷低減を両立した電源構成の実現に向けた取り組みを進めてきた。
具体的には、昨年7月、新仙台火力発電所第3号系列(98万キロワット)の全量が営業運転を開始した。同系列は、世界最高水準の熱効率(60パーセント以上)を達成した最新鋭のプラントである。また、能代火力発電所第3号機(60万キロワット)の建設工事や上越火力発電所第1号機(57.2万キロワット)の建設計画を着実に推進し、コスト競争力の強化に努めてきた。
当社としては、今後とも将来の競争激化に対応できる戦略的な電源構成について検討していく。
<原子力発電所の安全性向上に向けた取り組み>原子力発電については、女川原子力発電所第2号機及び東通原子力発電所第1号機ともに、新規制基準への適合性審査へ的確に対応してきた。あわせて、設備・運用の両面から、新規制基準などを踏まえた安全対策を進めているところである。
安全対策工事については、本年4月の完了を目指し取り組んできたが、全体の工事工程をあらためて評価した結果、女川原子力発電所第2号機については平成30年度後半、東通原子力発電所第1号機については平成31年度の完了を目指して工事を進めていくこととした。
当社としては、引き続き安全確保を最優先に、地域のみなさまのご理解を得ながら、工事完了後、準備が整った段階での再稼働を目指していく。
<再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取り組み>当社は、これまでも、グループ企業とともに、水力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーの導入拡大に取り組んできた。また、太陽光発電や風力発電をはじめ、国の固定価格買取制度のもとで急増する当社送電網への新規電源の接続申し込みについて、公平性を確保しつつ対応に努めてきた。しかしながら、当社送電網への受け入れには容量面の制約があるため、将来的な導入拡大に対応すべく、広域的な需給調整や送電網の整備計画の策定等を行う電力広域的運営推進機関とも連携しながら、当社送電網の整備・拡充に向けて必要な取り組みを進めてきた。
さらには、太陽光発電や風力発電は、気象条件によって出力が変動するという技術的な課題があることから、大容量の蓄電池を活用した出力変動対策の実証事業などに取り組んできた。
当社としては、こうした取り組みにより、電力品質を確保しつつ、再生可能エネルギーのさらなる導入拡大を図っていく。
<決算概要>当連結会計年度の企業グループの収支については、収益面では、当社において、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に基づく再エネ特措法交付金が増加したものの、販売電力量並びに燃料費調整額の減少などにより電灯・電力料が減少したことなどから、売上高(営業収益)は前連結会計年度に比べ1,460億円(7.0%)減の1兆9,495億円、経常収益は前連結会計年度に比べ1,488億円(7.1%)減の1兆9,558億円となった。
一方、費用面では、退職給付債務の算定に用いる割引率の低下などから退職給付費用が増加したものの、燃料価格の低下や円高などにより燃料費が減少したほか、経費全般にわたり効率化の実施に努めたことなどから、経常費用は前連結会計年度に比べ1,008億円(5.2%)減の1兆8,511億円となった。
この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ479億円(31.4%)減の1,047億円となった。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ273億円(28.1%)減の699億円となった。
当連結会計年度におけるセグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は次のとおりである。
[電気事業]
売上高は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に基づく再エネ特措法交付金が増加したものの、販売電力量並びに燃料費調整額の減少などにより電灯・電力料が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ1,259億円(6.8%)減の1兆7,302億円となった。一方、営業費用は、退職給付債務の算定に用いる割引率の低下などから退職給付費用が増加したものの、燃料価格の低下や円高などにより燃料費が減少したほか、経費全般にわたり効率化の実施に努めたことなどから、前連結会計年度に比べ695億円(4.1%)減の1兆6,290億円となった。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ564億円(35.8%)減の1,012億円となった。
[建設業]
売上高は、一般向けの工事が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ18億円(0.6%)減の2,968億円となった。一方、営業費用は、売上高減少に伴い工事原価が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ4億円(0.2%)減の2,802億円となった。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ13億円(7.6%)減の166億円となった。
[その他]
売上高は、ガス事業において減少したことなどから、前連結会計年度に比べ189億円(8.1%)減の2,150億円となった。一方、営業費用は、ガス事業における減少などから、前連結会計年度に比べ181億円(8.3%)減の2,006億円となった。
この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ8億円(5.5%)減の144億円となった。
(2) キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ937億円(25.2%)減の2,781億円の収入となった。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出が減少したものの、投融資の回収による収入が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ58億円(2.3%)増の2,563億円の支出となった。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
社債の償還による支出が減少したことなどから、前連結会計年度に比べ482億円(46.3%)減の559億円の支出となった。
この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に比べ342億円(13.0%)減の2,282億円となった。