有価証券報告書-第57期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
1) コーポレート・ガバナンスの内容
① コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
当社は、経営の基本方針に沿った事業活動を適切に実行し、経営の公正性を確保するため、コーポレート・ガバナンス体制の強化を経営の重要事項の一つと考え、健全かつ透明性の高いコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。
当社のコーポレート・ガバナンス体制の特徴は、以下のとおり4点です。
・指名委員会等設置会社制度を採用(執行と監督の分離)
・監査委員会と報酬委員会の全委員、指名委員会の委員の過半数を社外取締役で構成し、各委員会の議長は社外取締役から選任
・すべての社外取締役が当社の「独立性を有する取締役の要件」を充足
・すべての社外取締役が各分野において高い専門性を保有
② 当該体制を採用する理由と体制強化の歩み
当社は、事業内容を事業環境の変化に迅速に対応させるためには、業務執行の機動性が極めて重要であると考えています。また、それぞれの専門分野における知見を有した社外取締役が、独立した立場から、適宜当社の業務執行の適法性および妥当性についての監督を行うことのできるガバナンス体制は、経営の透明性の向上につながると考えています。これらの考えから、取締役会が高い監督機能を有し、かつ三委員会が実効的なガバナンスの重要な役割を担う「指名委員会等設置会社」制度を採用しています。
さらに、取締役会の内部機関である三委員会(指名・監査・報酬)では、監査委員会と報酬委員会の全委員、指名委員会の委員の過半数を社外取締役で構成し、各委員会の議長を社外取締役から選任することによって、取締役会による監督機能を業務執行と切り離し、株主との利益相反を回避する体制を構築しています。また、すべての社外取締役が指名委員会において定めた客観的かつ具体的な「独立性を有する取締役の要件」を満たしています。
[体制強化の歩み]
1997年6月 諮問委員会を設置
1998年6月 執行役員制度の導入
1999年6月 社外取締役制度の導入
2003年6月 委員会等設置会社へ移行
2006年5月 会社法施行に伴い委員会設置会社へ移行
2015年5月 改正会社法施行に伴い指名委員会等設置会社へ名称変更
③ コーポレート・ガバナンス体制図
本有価証券報告書提出日現在におけるコーポレート・ガバナンス体制の模式図は、以下のとおりです。
※ 業務執行体制は「3) 業務執行に関わる事項 ③ オリックスグループの内部統制システム」を
ご参照ください。
2) 会社の機関の内容
① 取締役会に関わる事項
取締役会は業務執行の決定のうち、法令、定款の定めるところにより執行役に委任することができない事項および取締役会規則に定める重要な事項にかかる業務執行の決定を行います。主として、資本政策、資金政策、人事戦略の基本方針を踏まえた経営計画および内部統制システムの基本方針について決定し、それらについて定期的にチェックする機能を果たしています。取締役会が決定するこれらの事項を除き、取締役会は業務執行の決定を代表執行役に委任し、意思決定と業務執行の効率化、迅速化を図っています。また、取締役会は執行役および各委員会からその職務の執行状況について報告を受けます。当連結会計年度における取締役会は合計9回開催されました。これらの取締役会における取締役の出席率は96%でした。
<取締役会の構成、規模に関する考え方>取締役会は、社外取締役も含め、多様な知識や経験をもつ取締役で構成し、効果的・効率的な議論を妨げない適切な員数を維持する方針です。
(構成員)
社内取締役 井上 亮(議長)、入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、鈴木 喜輝、スタン・コヤナギ
社外取締役 安田 隆二、竹中 平蔵、マイケル・クスマノ、秋山 咲恵、渡辺 博史、関根 愛子
② 三委員会に関わる事項
監査委員会と報酬委員会の全委員、指名委員会の委員の過半数を社外取締役で構成し、各委員会の議長は社外取締役から選任しています。
(a) 指名委員会
指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任および解任に関する議案の内容を決定します。取締役の選任および解任は、株主総会決議によって行われます。また、会社法に基づく権限ではありませんが、指名委員会は取締役会で決議される執行役の選任および解任に関する議案を審議するものとしています。
なお、指名委員会では、取締役会が全体としての知識・経験・能力のバランスや多様性が確保された構成となるよう、取締役候補者を決定するに際して、下記のとおり基準を定め、指名委員会における取締役候補者の選任を適切に行うことができるようにしています。また、執行役の選任において、指名委員会では、執行役候補者の個々の経験や知見を確認し、社内に限らず、当社の新たな事業展開や業況に応じ適切に業務執行できる人材であることを審議し、取締役会に上程しています。
取締役候補者選任基準
(社内取締役)
・オリックスグループの業務に関し、高度の専門知識を有する者
・かつ、経営判断能力および経営執行能力に優れている者
(社外取締役)
・企業経営者として豊富な経験を有する者
・もしくは、経済、経営、法律、会計等の企業経営に関わる専門的な知識を有する者
・もしくは、広く政治、社会、文化、学術等、企業経営を取り巻く事象に深い知見を有する者
(b) 監査委員会
監査委員会は、取締役および執行役の職務の執行を監査し、監査報告を作成します。また、株主総会に提出する会計監査人の選任および解任ならびに再任しないことに関する議案の内容を決定します。
(監査体制に関する事項については、「(3) 監査の状況 1) 監査に関する事項」をご参照ください。)
(c) 報酬委員会
報酬委員会は、取締役および執行役の個人別の報酬等の内容にかかる決定に関する方針、およびそれらの個人別の報酬等の内容を決定します。
3) 業務執行に関わる事項
① 執行役
当社は、指名委員会等設置会社制度を選択し、法令により執行役に委任することができる事項の業務執行の決定については、一部事項を除き、基本的に代表執行役に委任することを取締役会で決議しており、意思決定と業務執行の効率化、迅速化を図っています。
代表執行役は、各種社内規程の定めるところにより重要な業務執行の決定を、エグゼクティブ・コミッティまたは投・融資委員会等の審議を経て行います。執行役は、取締役会の決定、代表執行役による業務執行の決定および各種社内規程に従って業務を執行します。なお、グループ執行役員は、取締役会の決議によりグループ会社の取締役、執行役または執行役員の中から選任されます。執行役およびグループ執行役員については、「(2) 役員の状況 1) 役員一覧 ② 執行役の状況」をご参照ください。
② 業務執行に関わる機関
執行役による重要な意思決定、モニタリングおよび議論、情報共有は、次の機関において行われています。
(a) エグゼクティブ・コミッティ
当社のCEO、COO、CFOであるトップマネジメント(以下、「トップマネジメント」)および執行役等で構成され、主に経営上の政策など経営に係る重要事項を審議します。また、審議された案件・事項の内容、重要性等を考慮し、必要に応じて取締役会に報告します。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮(議長)
専務執行役 入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、伏谷 清、鈴木 喜輝
常務執行役 スタン・コヤナギ、三上 康章
執行役 矢野 人磨呂、坪井 靖博、影浦 智子
※ 議長の指名によりその他関係者が出席することがあります。
(b) 投・融資委員会
トップマネジメントおよび投融資担当の執行役で構成され、主として一定金額以上の投資・融資に関する案件を審議します。また、審議された案件の内容、重要性等を考慮し、必要に応じてエグゼクティブ・コミッティで審議し、取締役会に報告します。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮(委員長)
専務執行役 入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、伏谷 清、鈴木 喜輝
常務執行役 スタン・コヤナギ、三上 康章
執行役 矢野 人磨呂、坪井 靖博、影浦 智子
※ 案件等を担当する部門の執行役またはグループ執行役員等が委員会に出席して案件説明等を行います。
(c) グループ執行役員会
執行役およびグループ執行役員で構成され、オリックスグループ全体の業務執行に関わる重要な情報を共有します。
<構成員>すべての執行役およびすべてのグループ執行役員
※ 情報共有等を主な目的とした機関のため、機関の長は定めていません。
(d) 月例戦略会議
トップマネジメントおよび各部門の責任者で構成され、各部門の戦略の達成状況や事業環境の変化等を議論します。議題のうち重要性の高いものについては、エグゼクティブ・コミッティまたは投・融資委員会で審議され、必要に応じて取締役会に報告されます。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮
専務執行役 入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、伏谷 清
常務執行役 スタン・コヤナギ
執行役 矢野 人磨呂、影浦 智子
※ 情報共有等を主な目的とした機関のため、機関の長は定めていません。
※ 議題に設定された部門の執行役またはグループ執行役員等が会議に出席して報告等を行います。
(e) 経営情報化委員会
トップマネジメントおよびオリックス・システム株式会社社長で構成され、経営における情報化の基本方針や情報システムに関する重要事項を審議します。システム投資の必要性や優先順位等をトップマネジメントレベルで判断することで、事業戦略との整合性を確保し、事業の成長やリスクの低減に寄与するシステム投資の実現に努めます。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮(委員長)
専務執行役 谷口 祥司
オリックス・システム株式会社 取締役社長 井上 亮
※ 付議事項を担当する部門の執行役またはグループ執行役員等が委員会に出席して案件説明等を行います。
(f) ディスクロージャー・コミッティ
CFOを委員長に経営計画部門、広報・渉外部門、財務部門、経理部門、審査部門、法務部門、コンプライアンス部門、人事・総務部門および監査部門等を管掌する役員で構成され、オリックスグループにおける重要情報の適時適切な情報開示を実現するため、各部門の責任者から未開示の重要情報の報告を受け、その重要情報の適時開示の要否や開示方法など重要情報の開示に関する事項について検討し必要な対応を行います。コーポレート・ガバナンスにおいて重要な役割を占める開示統制を司り、ステークホルダーへの適時適切な情報開示体制の中心的な役割を担います。
<構成員>専務執行役 谷口 祥司(委員長)
常務執行役 スタン・コヤナギ、三上 康章
執行役 矢野 人磨呂、坪井 靖博、影浦 智子
グループ監査部管掌補佐 井戸 洋行
③ オリックスグループの内部統制システム
当社は、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応する効率的な業務執行、ならびにリスク管理、コンプライアンス、グループ会社管理、監査体制などのオリックスグループの適正な業務の執行の確保の観点から、以下のとおり内部統制システムを構築・運用しています。さらに事業環境の変化や事業の拡大、多様化にあわせて、内部統制システムの継続的な改善と向上に積極的に取り組んでいます。
<内部統制システムの概略図>
(a) 意思決定と業務執行の効率化・迅速化
・業務執行の決定を代表執行役(CEO)に委任(CEOがCOOの役割を担う)
・業務執行の決定にかかる審議機関(エグゼクティブ・コミッティ、投・融資委員会、経営情報化委員会)を設置
(b) リスクマネジメント・コンプライアンス体制
<事業部門による統制>・各事業部門は、事業戦略、事業計画に合わせて、重要リスクを決定し、自律的にリスク管理を実行
・コンプライアンスについては、グループ横断的に統一したアプローチに従い、コンプライアンスプログラムの策定・実施を行い、遵守状況を確認
・CEO、CFOおよび内部統制関連部門へ、リスク管理の状況、コンプライアンスの推進状況を報告
<内部統制関連部門(グループ管理部門)による統制>・オリックスグループの全社的なリスクを統括管理する部門を設置
・各内部統制関連部門は、重要リスクのほか各自が統括管理するリスクをグループ横断的に把握し、また事業部門によるリスク管理を支援
・企業理念、役職員倫理規程に基づき、コンプライアンスに関する規程を整備、周知
・社内外に内部通報窓口を設置し、不祥事を未然に防止
・CEO、CFO、監査委員会、取締役会にグループ全体のリスク管理の状況、コンプライアンスの推進状況を報告
・CEO、CFO、執行役の執行責任機関は、グループの経営計画に即したリスク管理、コンプライアンス推進を実施
・事業部門や内部統制関連部門から統制状況について報告を受け、適宜指示
(c) グループ管理体制
・当社が定める規程、当社と子会社との間で締結する経営管理契約または役員等の派遣を通じて、子会社に対し、子会社における重要な業務執行に関わる事項の当社への報告に関する体制を整備
・当社は子会社に対し必要に応じて指導・助言を実施
(d) 内部統制システムの運用
・内部統制システムの基本方針に基づき、事業リスクに対応した事業戦略、コンプライアンス、監査等の各計画を策定
・策定した各計画に基づき業務執行(内部統制システムの運用)を実施
・年に一度、取締役会に運用状況を報告し、取締役会が内部統制システムの有効性を評価
・取締役会は、環境変化・計画に合わせ、必要に応じて内部統制システムの見直しを実施

4) 全社的リスク管理体制
① リスク管理体制の整備の状況
オリックスグループでは、経営戦略に基づいた全社的なリスクの選好および各事業部門の事業戦略を勘案して、経営資源の配賦を行っています。リスクに見合った経営資源の最適な配賦を実現するため、オリックスグループでは、グループの事業に関する様々なリスクの特性をグローバルレベルで適切に把握し、取締役会、監査委員会、エグゼクティブ・コミッティおよび投・融資委員会に適時に報告をする体制を整備しています。取締役会やこれらの執行機関は、事業部門のパフォーマンスとこれらリスクの特性を総合的に評価し、必要な施策を実行しています。このプロセスを通して、バランスシートのコントロールと、成長性のある事業部門により多くの経営資源を配賦することの両方を可能としています。グループ全体のリスクコントロールのためにERM本部を設置し、リスクの集中管理を促すとともに、内部統制関連部門が相互に連携しながら、リスクの分析および管理を実施しています。これらのリスク管理体制は内部統制システムの一部として取締役会で決議され、毎年、その運用状況について検証し、取締役会に報告しています。内部統制システムの決議の概要および運用状況については、4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 3)業務執行に関わる事項 ③オリックスグループの内部統制システムをご参照ください。
② 主なリスク管理
オリックスグループでは、主なリスクを、外部環境に関するリスク(予測不能な事象のリスク)、信用リスク、ビジネスリスク、市場リスク、流動性リスク(資金調達に関するリスク)、コンプライアンスリスク、法的リスク、情報リスク、オペレーショナルリスクと認識し、それぞれの特性に応じたリスク管理を行っています。
(a) 外部環境に関するリスク(予測不能な事象のリスク)
オリックスグループは、外部環境に関するリスクのうち、特に天災等のリスクへの対処をするために、災害リスクマネジメントに関する社内規程を策定し、自然災害やテロリズム、感染症等に対するリスクマネジメントの基本的な考え方、活動内容、リスクマネジメントを組織的に実行していくための枠組みを定めています。
災害発生時や感染症等によりオフィスが閉鎖された際等には、従業員の安否確認システムにより、全従業員の状況を迅速に把握できる体制を確立しています。また、出社困難な状況に備え、リモートワークを可能とするITシステムを導入し、事業運営に支障が生じないような就業環境を整備しています。
また、予測不能な事象が発生した場合に備え、オリックスグループでは、多角的な事業展開による収益構造の多様化、十分な流動性の確保により、健全な財務運営を継続できる体制を整備しています。
(b) 信用リスク管理
与信審査については、十分な担保や保証の取得、業種や与信先の分散を基本方針としています。個別案件の審査時は、与信先の財務内容、キャッシュ・フロー、保全条件、採算性などを総合的に評価しています。
さらに、ポートフォリオの分析を行い、与信制限措置も講じることで、潜在的にリスクの高いマーケットへのエクスポージャーをコントロールしています。
また、破産、民事再生などの法的整理申請先、銀行取引停止処分先、手形不渡り発生先、3ヶ月以上未収先などへの債権を管理債権と認識し、事業部門が審査部門と協力して保全強化と回収を行います。初期督促から差し押さえなどの強制執行に至るまでの回収ノウハウは、審査部門に集約され、個別案件の審査基準やポートフォリオ分析にも反映されています。
(c) ビジネスリスク管理
事業や投資については、新規参入・投資時にシナリオ分析やストレステストなどを行い、実行後も事業計画やオペレーションを定期的にモニタリングし、その時々での事業撤退コストも評価、検証対象としています。
提供する商品、サービスにおいては、品質を維持するための定期的なモニタリングを行うとともに、事業環境の変化や顧客ニーズの多様化に応じて、商品やサービスの内容を見直し、品質の改善を常に図っています。
オペレーティング・リースでは、リース物件の残存価額の変動が重要なリスクであり、リース物件の在庫や、市場環境、事業環境のモニタリングを行っています。オペレーティング・リースは、汎用性の高い物件に限定して取り扱っており、市況変化に応じて売却を検討します。
不動産物件の価格変動リスクに対しては、金融危機を始めとしたこれまでの知見を基にマーケットの下落を十分に織り込むことで、リスクの極小化を図っています。
(d) 市場リスク管理
資産、負債の統合管理(ALM)に関してグループ共通の規程を制定し、市場リスクを包括的に把握検証しています。
金利リスクについては、金利変動時の期間損益やバランスシートへの影響、資産や負債の状況、調達環境などの分析を行い総合的に判断しています。また、分析方法は状況に応じて見直しを行っています。
為替リスクについては、外貨建ての営業取引や海外投資に伴う為替の変動リスクに対して、原則として同通貨での借入、為替予約および通貨スワップを利用してヘッジしています。ヘッジされていない外貨建て資産、海外子会社の利益剰余金等については、VaR(バリューアットリスク)などの指標を活用しながらリスク量を定量的に把握し、状況に応じてヘッジ額を調整し適切に管理を行っています。
なお、ヘッジ手段としてデリバティブ取引を利用する際は、社内規程に基づき、相手方の信用リスク等同取引にかかるリスクを適切に管理しています。
(e) 流動性リスク管理(資金調達に関するリスク管理)
流動性リスクを低減するために、調達手法の多様化とともに手元流動性の管理を行っています。手元流動性の管理については、将来のキャッシュ・フローの状況を把握した上で、環境変化時に事業継続に支障の無いよう、ストレス時を想定した流動性リスクを分析し、必要な対応を行っています。
また、事業を行う国や子会社ごとの流動性リスクを把握し、オリックスグループの流動性リスクが各子会社の事業へ与える影響についてもモニタリングしています。モニタリングの状況次第では親子ローンなど必要な対策を講じています。
オリックス銀行およびオリックス生命は、個人向け金融業務を行っており、日本の金融当局の規制を受けているため、他のグループ会社から独立した流動性リスク管理が必要とされています。規制に準じて単独で社内規程を定め、他のグループ会社から切り離した流動性リスクを管理しています。
具体的には、オリックス銀行は、日本の金融規制等に従い、必要な流動性資産の水準や市場性資金調達額などの限度額を定め、現預金のほか、流動性の高い公社債などを保有することで、必要な流動性を確保しています。また、遵守状況の定期的なモニタリングを行うとともに、将来おこりうる資金繰りの逼迫度を複数の段階で想定し、段階に応じた流動性リスク管理を行っています。
オリックス生命は、保険事故の発生などに対するストレステストを行い、責任準備金の残高に対して一定割合以上に現預金、有価証券などの流動性の高い資産を保有することや、満期保有目的債券の保有額に上限を定めることで、必要な流動性を確保しています。
(f) コンプライアンスリスクの管理
オリックスグループはコンプライアンスを経営上の最重要課題の一つと位置づけており、適切なコンプライアンス体制を構築し、高い倫理観をもってコンプライアンスを実践する企業文化の醸成に努め、誠実かつ公正で透明性の高い企業活動を遂行します。
コンプライアンス部門では、グループレベルの重要リスクを低減するためにオリックスグループの各部門にコンプライアンス年間計画を策定・実施させ、オリックスグループの事業にかかるコンプライアンスリスクを監視し、リスクの回避、低減、予防を実践します。
コンプライアンスの企業文化を支えるプログラムを実践することにより、コンプライアンスリスクの顕在化を予防・抑制し、オリックスグループの健全な事業、運営を実現します。
オリックスグループのコンプライアンスに関する最上位原則である役職員倫理規程(Principles of Conduct )に則って、各種規程の制定・周知活動等を行うことで、役職員のコンプライアンス意識の向上を図っています。
また、内部統制システムの一環として、オリックスグループの役職員が利用できる内部通報窓口およびグループ外の取引先等の社外の方が利用できる外部通報窓口を設置し、オリックスグループ内外におけるコンプライアンスリスクへの未然防止に向けた体制を整備しています。
(g) 法的リスクの管理
オリックスグループでは、法令遵守のために必要な社内規程を制定するほか、改正法令の施行に適切に対応するために、各事業に適用される法令を把握し、法改正に伴い必要な対応を対象部門に指示する等、必要な措置を講じています。
各種取引における法的リスクについては、審査部門、法務部門、コンプライアンス部門が関与し、リスクの回避、低減、予防を図っています。
営業取引等にかかる契約関係書類は、所定の社内規程に従って法務部門が関与し、契約審査を行い決裁を得るプロセスを確立しています。訴訟を提起する場合、または提起された場合にも、法務部門、コンプライアンス部門、審査部門が関与し解決へ導きます。また、オリックスグループの商標権を侵害するような商標出願が行われていないかモニタリングをする等、訴訟を未然に防ぐ取組を行う他、侵害が発見された場合には直ちに必要な措置を講じています。
(h) 情報リスクの管理
オリックスグループでは、情報および情報システムの利用に関する役職員等の情報の適切な取扱いや情報セキュリティ管理体制、基本方針、管理基準等について定めた社内規程を制定しています。また、サイバー攻撃対策として情報システムの脆弱性管理策やネットワーク防御等の技術的施策も実施しています。
オリックスグループの情報セキュリティ部門では、社内システムの保守・運用管理、情報セキュリティインシデント発生時の対応体制の構築などにより、サイバー攻撃および情報セキュリティの毀損を含むシステム障害が発生するリスクの軽減を図っています。また、個人情報を保護するための管理体制、基本方針等セキュリティの管理体制、基本方針、管理基準、教育および監査等に関する社内規程を制定しています。
(i) オペレーショナルリスクの管理
オリックスグループでは、業務執行の内部プロセスを明確にするため、社内規程を整備し、周知、教育を行っています。また、法令等遵守のために、財務報告にかかる内部統制の構築とその評価に注力しています。
オリックスグループは多様な人材を安定的に確保するために、各国・地域の労働市場および市場慣行、報酬水準、法規制、職務内容や業務特性に応じた人事制度を構築することで多様な働き方を尊重し、すべての役職員がそれぞれの能力、専門性を最大限に発揮できる職場環境の整備を行っています。
監査部門では、年度内部監査計画に基づき、オリックスグループの重要なオペレーショナルリスクについても焦点をあててモニタリングを行っています。これらのモニタリングを通じて、グループ経営に影響を与える事象発生の抑止に努めるとともに、これらのリスク管理機能の強化を図っています。
③ 個別事業のリスク管理
オリックスグループは、金融サービス事業をはじめとする幅広く分散した事業ポートフォリオを保有しているため、個別事業の特性にあわせ、網羅性と透明性を確保したモニタリングとリスク管理を行っています。
(a) 法人金融サービス事業部門
法人金融サービス事業部門の主なリスクは、法的リスクと信用リスクです。
法人金融サービス事業部門では様々な商材、サービスを取り扱っていることから、関連の法令や規則、会計基準などの制定や、改正、変更が行われた場合、取り扱っている商品やサービスに悪影響を及ぼし、手数料収入が減少する可能性があります。このようなリスクを低減するため、法令変更等に関する情報について、適時に法務部門との連携および事業部門における情報収集等を行うとともに、必要に応じて営業戦略の見直しを行っています。
与信案件については、与信先の業績、保全、回収状況について、事業部門では一定額以上の残高のある先を、審査部門では大口与信先を定期的に確認します。
特定の業種や業界について現状や見通しの分析を行い、与信先に与える影響を分析するとともに、今後の当該業種・業界に対する取組についての判断を行います。
管理債権については、特に不動産を担保とする取組に対しては、他の不動産関連部門のネットワークを生かして売却先やテナントの斡旋を行うなど様々な対応策を講じます。
(b) メンテナンスリース事業部門
メンテナンスリース事業部門の主なリスクは、ビジネスリスクと信用リスクです。
オペレーティング・リース物件の市場価値の変動リスクに対しては、市場環境の動向を常に把握し、保有物件価値の変動のモニタリングや、新規に投資する案件における残存価額の見積もり額の調整を行います。
オペレーティング・リースに付帯する各種サービスの提供にあたっては、サービス提供に伴うコストの変動リスクがあります。サービス策定時の前提と実績の検証、今後の見込みをモニタリングし、適切なコスト管理を行っています。
加えて、事業環境の変化、お客様のニーズの変化・多様化に伴い、提供しているサービスがお客様の要求するレベルを下回るリスクに対しては、サービスの質の状況を定量的・定性的に把握し、お客様の要求を満たすことができるサービスの継続的提供、またその質的向上と、事業環境に合わせた改善を行っています。
この他、信用リスクに対しては個別案件の与信審査などを行っています。
(c) 不動産事業部門
不動産事業部門の主なリスクは、ビジネスリスクと市場リスクです。
不動産投資の判断時には、キャッシュ・フローの計画と実績、見込みを比較検証し、投資実行後は投資戦略とスケジュールのモニタリングを行い、当初見込みと乖離しそうな場合には、戦略の再検討も行っています。 また、大規模物件または長期プロジェクトへの投資は一部パートナーとの共同事業にするなどリスクの分散を図っています。
開発・賃貸事業では、開発・保有スケジュール、NOI利回りなどをモニタリングしています。物件の稼働率の向上や売却にあたっては、グループのネットワークも活用しています。
施設運営事業では、各施設の稼働率や利益率などをモニタリングしています。また、マーケット分析を行い、リニューアル投資などによる施設の魅力向上に努めています。サービスの質を高めるために、お客様からのご意見をサービスや施設の改善に反映するとともに、研修による社員教育にも注力しています。
住宅分譲事業(新築・中古)では、市場環境や金利・不動産関連税制等を意識しつつ、個別事業の販売状況・収益性などのモニタリングを行っています。また、請負工事事業では、安全衛生管理に注力しつつ建築資材などの調達コストおよび工期のコントロール等を行っています。
(d) 事業投資事業部門
事業投資事業部門の主なリスクは、ビジネスリスク、市場リスク、およびオペレーショナルリスクです。
環境エネルギー事業では、再生可能エネルギー、省エネルギー、資源リサイクル・廃棄物処理事業などにおいて、適切な設備や技術の導入や専門技術を有するオペレーターとの提携などにより、ビジネスリスクの極小化を行い、事業環境やビジネス内容の変化に応じて体制を整えています。
企業投資事業において投資判断をする際には、与信審査と同様に投資先の財務状況等の分析、キャッシュ・フローの評価を行うとともに、経理部門、法務部門などの管理部門も関与して、多面的に事業性や投資スキームの評価を行います。投資実行後は、当初のシナリオから乖離していないかどうかを個別案件ごとにモニタリングします。バリューアップ中は、キャッシュ・フローを重視するため財務状況等のモニタリングに重きを置き、投資回収の時期が近くなるにつれて、類似業種の市場価格などを参考に事業価値が測定されるため、市場リスクも注視します。事業環境の変化に応じてモニタリングの頻度を上げ、シナリオの妥当性の検証と同時に必要なアクションを講じています。また、グループ収益への影響が大きい投資先については、経営陣の派遣などマネジメントの強化に努めています。
コンセッション事業では、空港などの公共施設において、事業パートナーとの共同事業運営を行っています。かかる事業の主なリスクは、ビジネスリスクやオペレーショナルリスクです。事業の特徴として長期にわたることから事業の不確実性に対し、需要予測等に基づく運営収益のキャッシュ・フローに災害復旧費用、事業撤退コスト等を含めたストレステストなどを実施した上で、事業計画やオペレーションのモニタリングを定期的に、また必要に応じて随時実施しています。また、公共施設の運営に関する専門知識を持った職員の育成に努め、事業パートナーとの運営体制を確立し、ガバナンス強化を図ることで、オペレーショナルリスクの低減に努めています。
サービサー事業では、債権の投資に関し、キャッシュ・フローや担保価値のみならず多面的な要素を検証・分析し、これまで培ったノウハウと専門性を生かしながら投資活動を行っています。投資後も定期的に回収戦略・想定の妥当性を検証し、様々なアクションを講じています。また、監督官庁の監督・指導を遵守した業務マニュアルを定め業務を行うとともに、定期的な内部監査やモニタリングを行うことにより、オペレーショナルリスクの低減にも努めています。
(e) リテール事業部門
生命保険事業の主なリスクは、ビジネスリスクと市場リスクです。
保険引受に関しては、経済情勢や保険事故の発生率等が、保険料設定時の予測に反して変動することにより損失を被るリスクがありますが、引受基準等の見直しや新商品の開発・既存商品の改廃を行うことにより、これらをコントロールしています。また、保険金等の確実な支払や、会社経営の安定を図るための施策の一つとして、再保険を利用しています。再保険の利用にあたっては、移転するリスクの特性や再保険の効果に応じて、出再基準や保有基準などを定めています。なお、再保険会社の選定にあたっては、引受能力や財務内容の健全性等も踏まえて、再保険金等の回収の蓋然性が高い取引となるように留意しています。
資産運用の市場リスクのコントロールにあたっては、一般勘定資産のうち管理対象となる資産に対し、モニタリング項目を定め、リスクの測定・モニタリングを行っています。また、ALMの観点から、責任準備金対応債券の購入により金利変動リスクの抑制に努めています。
投資用不動産ローン、法人向け融資、カードローン事業の主なリスクは、信用リスクです。
投資用不動産ローン(投資用マンション、アパートなど)は、顧客との面談を通じ不動産投資への意思やスタンス、審査資料、返済能力の確認に加え、引合い先となる不動産会社を厳選するとともに、不動産関連のマーケット情報を収集し、不動産からもたらされるキャッシュ・フローや担保価値を勘案し総合的に判断するなど、長年のネットワークやノウハウを生かした審査を行っています。法人向け融資については、個別の与信先の業況、事業計画、資金使途、返済原資、業界動向などを調査した上で与信判断を行い、特定の与信先やグループに対する過度の与信集中を抑制するなどのリスク軽減を図っています。カードローンは、独自に構築した与信モデルを活用し、顧客の属性、過去の返済状況など支払能力に影響を与える要素を分析することによって、信用リスクに見合った金利と融資限度額の条件を決定しています。また、定期的に途上審査を行うことで、常に顧客の信用状態をモニタリングしています。
(f) 海外事業部門
アジア、大洋州、中東の海外現地法人ではリース、融資、自動車リース、投資を中心に事業を展開しており、これらの事業の主なリスクは、信用リスク、ビジネスリスク、市場リスクです。
リース、融資事業に関しては、与信先の業績、保全状況を総合的に評価の上で取組みます。現地法人単位では未収状況やポートフォリオに偏りが生じないかなどの視点から、定期的なモニタリングを行い、必要に応じて是正措置を取ります。自動車リースについては、国ごとに異なるリース税制や中古車市場の性格に応じてリスク管理を行っています。
投資事業においては、国内における事業投資と同様に、実行時の案件評価および実行後のモニタリングを行います。その過程では株主としての権利をもって、または取締役を派遣している場合は、取締役会を通じて投資先の経営に関与することにより、投資先の健全な経営を支援します。
航空機および船舶関連事業のビジネスリスクについては、市場環境、事業環境のモニタリングを行っています。オペレーティング・リースは、原則として、再リース取組の可能性が高く、汎用性の高い物件に限定して取り扱っており、市況変化に応じて売却を検討します。
米国における法人向け融資や有価証券などの投融資事業についての主なリスクは、信用リスク、市場リスクです。
信用リスクについては、投資や融資の実行時に、信用状況、保全状況などを勘案して案件ごとに社内格付を付与し、継続的に信用状況のモニタリングを行っています。注意すべき格付水準となった投資先や融資先については、貸倒引当金の繰入、減損の要否などの管理方針を決定します。
市場リスクについては、信用情報とも照らし合わせながら時価評価をモニタリングし、収益機会の確定や損失軽減のための早期売却などの管理を行っています。
米国のローン・サービシング事業の主なリスクはオペレーショナルリスクです。ローン・サービシング事業では、ファニーメイやフレディマックの公的金融制度によるローンをアレンジし、そのサービシングを行っています。公的金融機関所定の業務手順に則り、業務を履行するために、社内監査などを通じてその業務品質を管理しています。
アセットマネジメント事業の主なリスクは、ビジネスリスクとオペレーショナルリスクです。
ビジネスリスクに対しては、提供する商品、サービスの品質を維持するためのモニタリングを行うとともに、事業環境の変化や顧客ニーズの多様化に応じて、商品やサービスの内容を見直し、品質の改善を常に図っています。
オペレーショナルリスクに対しては、アセットマネジメント事業では、顧客やクライアントのために裁量権を適切に行使しないことにより損害を被る受託者責任リスクについて、業務処理の標準化および業務に関する社内規程の制定を推進し、諸業務の遺漏を防ぎ、業務の効率化を図るとともに、業務の手続、管理者、監督者の権限や責任等を明確にすることで適正なリスク管理体制が確保できるよう取り組んでいます。
① コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
当社は、経営の基本方針に沿った事業活動を適切に実行し、経営の公正性を確保するため、コーポレート・ガバナンス体制の強化を経営の重要事項の一つと考え、健全かつ透明性の高いコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。
当社のコーポレート・ガバナンス体制の特徴は、以下のとおり4点です。
・指名委員会等設置会社制度を採用(執行と監督の分離)
・監査委員会と報酬委員会の全委員、指名委員会の委員の過半数を社外取締役で構成し、各委員会の議長は社外取締役から選任
・すべての社外取締役が当社の「独立性を有する取締役の要件」を充足
・すべての社外取締役が各分野において高い専門性を保有
② 当該体制を採用する理由と体制強化の歩み
当社は、事業内容を事業環境の変化に迅速に対応させるためには、業務執行の機動性が極めて重要であると考えています。また、それぞれの専門分野における知見を有した社外取締役が、独立した立場から、適宜当社の業務執行の適法性および妥当性についての監督を行うことのできるガバナンス体制は、経営の透明性の向上につながると考えています。これらの考えから、取締役会が高い監督機能を有し、かつ三委員会が実効的なガバナンスの重要な役割を担う「指名委員会等設置会社」制度を採用しています。
さらに、取締役会の内部機関である三委員会(指名・監査・報酬)では、監査委員会と報酬委員会の全委員、指名委員会の委員の過半数を社外取締役で構成し、各委員会の議長を社外取締役から選任することによって、取締役会による監督機能を業務執行と切り離し、株主との利益相反を回避する体制を構築しています。また、すべての社外取締役が指名委員会において定めた客観的かつ具体的な「独立性を有する取締役の要件」を満たしています。
[体制強化の歩み]
1997年6月 諮問委員会を設置
1998年6月 執行役員制度の導入
1999年6月 社外取締役制度の導入
2003年6月 委員会等設置会社へ移行
2006年5月 会社法施行に伴い委員会設置会社へ移行
2015年5月 改正会社法施行に伴い指名委員会等設置会社へ名称変更
③ コーポレート・ガバナンス体制図
本有価証券報告書提出日現在におけるコーポレート・ガバナンス体制の模式図は、以下のとおりです。

ご参照ください。
2) 会社の機関の内容
① 取締役会に関わる事項
取締役会は業務執行の決定のうち、法令、定款の定めるところにより執行役に委任することができない事項および取締役会規則に定める重要な事項にかかる業務執行の決定を行います。主として、資本政策、資金政策、人事戦略の基本方針を踏まえた経営計画および内部統制システムの基本方針について決定し、それらについて定期的にチェックする機能を果たしています。取締役会が決定するこれらの事項を除き、取締役会は業務執行の決定を代表執行役に委任し、意思決定と業務執行の効率化、迅速化を図っています。また、取締役会は執行役および各委員会からその職務の執行状況について報告を受けます。当連結会計年度における取締役会は合計9回開催されました。これらの取締役会における取締役の出席率は96%でした。
<取締役会の構成、規模に関する考え方>取締役会は、社外取締役も含め、多様な知識や経験をもつ取締役で構成し、効果的・効率的な議論を妨げない適切な員数を維持する方針です。
(構成員)
社内取締役 井上 亮(議長)、入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、鈴木 喜輝、スタン・コヤナギ
社外取締役 安田 隆二、竹中 平蔵、マイケル・クスマノ、秋山 咲恵、渡辺 博史、関根 愛子
② 三委員会に関わる事項
監査委員会と報酬委員会の全委員、指名委員会の委員の過半数を社外取締役で構成し、各委員会の議長は社外取締役から選任しています。
指名委員会 | 監査委員会 | 報酬委員会 | |
本有価証券報告書提出日における構成委員 | 4名(社外取締役3名) 秋山 咲恵(議長) 安田 隆二 渡辺 博史 井上 亮 | 3名(社外取締役3名) 関根 愛子(議長) 竹中 平蔵 渡辺 博史 | 3名(社外取締役3名) 安田 隆二(議長) マイケル・クスマノ 関根 愛子 |
当連結会計年度 における開催回数 | 合計5回 | 合計8回 | 合計6回 |
(出席率) | (95%) | (96%) | (100%) |
(a) 指名委員会
指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任および解任に関する議案の内容を決定します。取締役の選任および解任は、株主総会決議によって行われます。また、会社法に基づく権限ではありませんが、指名委員会は取締役会で決議される執行役の選任および解任に関する議案を審議するものとしています。
なお、指名委員会では、取締役会が全体としての知識・経験・能力のバランスや多様性が確保された構成となるよう、取締役候補者を決定するに際して、下記のとおり基準を定め、指名委員会における取締役候補者の選任を適切に行うことができるようにしています。また、執行役の選任において、指名委員会では、執行役候補者の個々の経験や知見を確認し、社内に限らず、当社の新たな事業展開や業況に応じ適切に業務執行できる人材であることを審議し、取締役会に上程しています。
取締役候補者選任基準
(社内取締役)
・オリックスグループの業務に関し、高度の専門知識を有する者
・かつ、経営判断能力および経営執行能力に優れている者
(社外取締役)
・企業経営者として豊富な経験を有する者
・もしくは、経済、経営、法律、会計等の企業経営に関わる専門的な知識を有する者
・もしくは、広く政治、社会、文化、学術等、企業経営を取り巻く事象に深い知見を有する者
(b) 監査委員会
監査委員会は、取締役および執行役の職務の執行を監査し、監査報告を作成します。また、株主総会に提出する会計監査人の選任および解任ならびに再任しないことに関する議案の内容を決定します。
(監査体制に関する事項については、「(3) 監査の状況 1) 監査に関する事項」をご参照ください。)
(c) 報酬委員会
報酬委員会は、取締役および執行役の個人別の報酬等の内容にかかる決定に関する方針、およびそれらの個人別の報酬等の内容を決定します。
3) 業務執行に関わる事項
① 執行役
当社は、指名委員会等設置会社制度を選択し、法令により執行役に委任することができる事項の業務執行の決定については、一部事項を除き、基本的に代表執行役に委任することを取締役会で決議しており、意思決定と業務執行の効率化、迅速化を図っています。
代表執行役は、各種社内規程の定めるところにより重要な業務執行の決定を、エグゼクティブ・コミッティまたは投・融資委員会等の審議を経て行います。執行役は、取締役会の決定、代表執行役による業務執行の決定および各種社内規程に従って業務を執行します。なお、グループ執行役員は、取締役会の決議によりグループ会社の取締役、執行役または執行役員の中から選任されます。執行役およびグループ執行役員については、「(2) 役員の状況 1) 役員一覧 ② 執行役の状況」をご参照ください。
② 業務執行に関わる機関
執行役による重要な意思決定、モニタリングおよび議論、情報共有は、次の機関において行われています。
(a) エグゼクティブ・コミッティ
当社のCEO、COO、CFOであるトップマネジメント(以下、「トップマネジメント」)および執行役等で構成され、主に経営上の政策など経営に係る重要事項を審議します。また、審議された案件・事項の内容、重要性等を考慮し、必要に応じて取締役会に報告します。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮(議長)
専務執行役 入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、伏谷 清、鈴木 喜輝
常務執行役 スタン・コヤナギ、三上 康章
執行役 矢野 人磨呂、坪井 靖博、影浦 智子
※ 議長の指名によりその他関係者が出席することがあります。
(b) 投・融資委員会
トップマネジメントおよび投融資担当の執行役で構成され、主として一定金額以上の投資・融資に関する案件を審議します。また、審議された案件の内容、重要性等を考慮し、必要に応じてエグゼクティブ・コミッティで審議し、取締役会に報告します。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮(委員長)
専務執行役 入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、伏谷 清、鈴木 喜輝
常務執行役 スタン・コヤナギ、三上 康章
執行役 矢野 人磨呂、坪井 靖博、影浦 智子
※ 案件等を担当する部門の執行役またはグループ執行役員等が委員会に出席して案件説明等を行います。
(c) グループ執行役員会
執行役およびグループ執行役員で構成され、オリックスグループ全体の業務執行に関わる重要な情報を共有します。
<構成員>すべての執行役およびすべてのグループ執行役員
※ 情報共有等を主な目的とした機関のため、機関の長は定めていません。
(d) 月例戦略会議
トップマネジメントおよび各部門の責任者で構成され、各部門の戦略の達成状況や事業環境の変化等を議論します。議題のうち重要性の高いものについては、エグゼクティブ・コミッティまたは投・融資委員会で審議され、必要に応じて取締役会に報告されます。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮
専務執行役 入江 修二、谷口 祥司、松﨑 悟、伏谷 清
常務執行役 スタン・コヤナギ
執行役 矢野 人磨呂、影浦 智子
※ 情報共有等を主な目的とした機関のため、機関の長は定めていません。
※ 議題に設定された部門の執行役またはグループ執行役員等が会議に出席して報告等を行います。
(e) 経営情報化委員会
トップマネジメントおよびオリックス・システム株式会社社長で構成され、経営における情報化の基本方針や情報システムに関する重要事項を審議します。システム投資の必要性や優先順位等をトップマネジメントレベルで判断することで、事業戦略との整合性を確保し、事業の成長やリスクの低減に寄与するシステム投資の実現に努めます。
<構成員>代表執行役社長 井上 亮(委員長)
専務執行役 谷口 祥司
オリックス・システム株式会社 取締役社長 井上 亮
※ 付議事項を担当する部門の執行役またはグループ執行役員等が委員会に出席して案件説明等を行います。
(f) ディスクロージャー・コミッティ
CFOを委員長に経営計画部門、広報・渉外部門、財務部門、経理部門、審査部門、法務部門、コンプライアンス部門、人事・総務部門および監査部門等を管掌する役員で構成され、オリックスグループにおける重要情報の適時適切な情報開示を実現するため、各部門の責任者から未開示の重要情報の報告を受け、その重要情報の適時開示の要否や開示方法など重要情報の開示に関する事項について検討し必要な対応を行います。コーポレート・ガバナンスにおいて重要な役割を占める開示統制を司り、ステークホルダーへの適時適切な情報開示体制の中心的な役割を担います。
<構成員>専務執行役 谷口 祥司(委員長)
常務執行役 スタン・コヤナギ、三上 康章
執行役 矢野 人磨呂、坪井 靖博、影浦 智子
グループ監査部管掌補佐 井戸 洋行
③ オリックスグループの内部統制システム
当社は、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応する効率的な業務執行、ならびにリスク管理、コンプライアンス、グループ会社管理、監査体制などのオリックスグループの適正な業務の執行の確保の観点から、以下のとおり内部統制システムを構築・運用しています。さらに事業環境の変化や事業の拡大、多様化にあわせて、内部統制システムの継続的な改善と向上に積極的に取り組んでいます。
<内部統制システムの概略図>

(a) 意思決定と業務執行の効率化・迅速化
・業務執行の決定を代表執行役(CEO)に委任(CEOがCOOの役割を担う)
・業務執行の決定にかかる審議機関(エグゼクティブ・コミッティ、投・融資委員会、経営情報化委員会)を設置
(b) リスクマネジメント・コンプライアンス体制
<事業部門による統制>・各事業部門は、事業戦略、事業計画に合わせて、重要リスクを決定し、自律的にリスク管理を実行
・コンプライアンスについては、グループ横断的に統一したアプローチに従い、コンプライアンスプログラムの策定・実施を行い、遵守状況を確認
・CEO、CFOおよび内部統制関連部門へ、リスク管理の状況、コンプライアンスの推進状況を報告
<内部統制関連部門(グループ管理部門)による統制>・オリックスグループの全社的なリスクを統括管理する部門を設置
・各内部統制関連部門は、重要リスクのほか各自が統括管理するリスクをグループ横断的に把握し、また事業部門によるリスク管理を支援
・企業理念、役職員倫理規程に基づき、コンプライアンスに関する規程を整備、周知
・社内外に内部通報窓口を設置し、不祥事を未然に防止
・CEO、CFO、監査委員会、取締役会にグループ全体のリスク管理の状況、コンプライアンスの推進状況を報告
・事業部門や内部統制関連部門から統制状況について報告を受け、適宜指示
(c) グループ管理体制
・当社が定める規程、当社と子会社との間で締結する経営管理契約または役員等の派遣を通じて、子会社に対し、子会社における重要な業務執行に関わる事項の当社への報告に関する体制を整備
・当社は子会社に対し必要に応じて指導・助言を実施
(d) 内部統制システムの運用
・内部統制システムの基本方針に基づき、事業リスクに対応した事業戦略、コンプライアンス、監査等の各計画を策定
・策定した各計画に基づき業務執行(内部統制システムの運用)を実施
・年に一度、取締役会に運用状況を報告し、取締役会が内部統制システムの有効性を評価
・取締役会は、環境変化・計画に合わせ、必要に応じて内部統制システムの見直しを実施

4) 全社的リスク管理体制
① リスク管理体制の整備の状況
オリックスグループでは、経営戦略に基づいた全社的なリスクの選好および各事業部門の事業戦略を勘案して、経営資源の配賦を行っています。リスクに見合った経営資源の最適な配賦を実現するため、オリックスグループでは、グループの事業に関する様々なリスクの特性をグローバルレベルで適切に把握し、取締役会、監査委員会、エグゼクティブ・コミッティおよび投・融資委員会に適時に報告をする体制を整備しています。取締役会やこれらの執行機関は、事業部門のパフォーマンスとこれらリスクの特性を総合的に評価し、必要な施策を実行しています。このプロセスを通して、バランスシートのコントロールと、成長性のある事業部門により多くの経営資源を配賦することの両方を可能としています。グループ全体のリスクコントロールのためにERM本部を設置し、リスクの集中管理を促すとともに、内部統制関連部門が相互に連携しながら、リスクの分析および管理を実施しています。これらのリスク管理体制は内部統制システムの一部として取締役会で決議され、毎年、その運用状況について検証し、取締役会に報告しています。内部統制システムの決議の概要および運用状況については、4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 3)業務執行に関わる事項 ③オリックスグループの内部統制システムをご参照ください。
② 主なリスク管理
オリックスグループでは、主なリスクを、外部環境に関するリスク(予測不能な事象のリスク)、信用リスク、ビジネスリスク、市場リスク、流動性リスク(資金調達に関するリスク)、コンプライアンスリスク、法的リスク、情報リスク、オペレーショナルリスクと認識し、それぞれの特性に応じたリスク管理を行っています。
(a) 外部環境に関するリスク(予測不能な事象のリスク)
オリックスグループは、外部環境に関するリスクのうち、特に天災等のリスクへの対処をするために、災害リスクマネジメントに関する社内規程を策定し、自然災害やテロリズム、感染症等に対するリスクマネジメントの基本的な考え方、活動内容、リスクマネジメントを組織的に実行していくための枠組みを定めています。
災害発生時や感染症等によりオフィスが閉鎖された際等には、従業員の安否確認システムにより、全従業員の状況を迅速に把握できる体制を確立しています。また、出社困難な状況に備え、リモートワークを可能とするITシステムを導入し、事業運営に支障が生じないような就業環境を整備しています。
また、予測不能な事象が発生した場合に備え、オリックスグループでは、多角的な事業展開による収益構造の多様化、十分な流動性の確保により、健全な財務運営を継続できる体制を整備しています。
(b) 信用リスク管理
与信審査については、十分な担保や保証の取得、業種や与信先の分散を基本方針としています。個別案件の審査時は、与信先の財務内容、キャッシュ・フロー、保全条件、採算性などを総合的に評価しています。
さらに、ポートフォリオの分析を行い、与信制限措置も講じることで、潜在的にリスクの高いマーケットへのエクスポージャーをコントロールしています。
また、破産、民事再生などの法的整理申請先、銀行取引停止処分先、手形不渡り発生先、3ヶ月以上未収先などへの債権を管理債権と認識し、事業部門が審査部門と協力して保全強化と回収を行います。初期督促から差し押さえなどの強制執行に至るまでの回収ノウハウは、審査部門に集約され、個別案件の審査基準やポートフォリオ分析にも反映されています。
(c) ビジネスリスク管理
事業や投資については、新規参入・投資時にシナリオ分析やストレステストなどを行い、実行後も事業計画やオペレーションを定期的にモニタリングし、その時々での事業撤退コストも評価、検証対象としています。
提供する商品、サービスにおいては、品質を維持するための定期的なモニタリングを行うとともに、事業環境の変化や顧客ニーズの多様化に応じて、商品やサービスの内容を見直し、品質の改善を常に図っています。
オペレーティング・リースでは、リース物件の残存価額の変動が重要なリスクであり、リース物件の在庫や、市場環境、事業環境のモニタリングを行っています。オペレーティング・リースは、汎用性の高い物件に限定して取り扱っており、市況変化に応じて売却を検討します。
不動産物件の価格変動リスクに対しては、金融危機を始めとしたこれまでの知見を基にマーケットの下落を十分に織り込むことで、リスクの極小化を図っています。
(d) 市場リスク管理
資産、負債の統合管理(ALM)に関してグループ共通の規程を制定し、市場リスクを包括的に把握検証しています。
金利リスクについては、金利変動時の期間損益やバランスシートへの影響、資産や負債の状況、調達環境などの分析を行い総合的に判断しています。また、分析方法は状況に応じて見直しを行っています。
為替リスクについては、外貨建ての営業取引や海外投資に伴う為替の変動リスクに対して、原則として同通貨での借入、為替予約および通貨スワップを利用してヘッジしています。ヘッジされていない外貨建て資産、海外子会社の利益剰余金等については、VaR(バリューアットリスク)などの指標を活用しながらリスク量を定量的に把握し、状況に応じてヘッジ額を調整し適切に管理を行っています。
なお、ヘッジ手段としてデリバティブ取引を利用する際は、社内規程に基づき、相手方の信用リスク等同取引にかかるリスクを適切に管理しています。
(e) 流動性リスク管理(資金調達に関するリスク管理)
流動性リスクを低減するために、調達手法の多様化とともに手元流動性の管理を行っています。手元流動性の管理については、将来のキャッシュ・フローの状況を把握した上で、環境変化時に事業継続に支障の無いよう、ストレス時を想定した流動性リスクを分析し、必要な対応を行っています。
また、事業を行う国や子会社ごとの流動性リスクを把握し、オリックスグループの流動性リスクが各子会社の事業へ与える影響についてもモニタリングしています。モニタリングの状況次第では親子ローンなど必要な対策を講じています。
オリックス銀行およびオリックス生命は、個人向け金融業務を行っており、日本の金融当局の規制を受けているため、他のグループ会社から独立した流動性リスク管理が必要とされています。規制に準じて単独で社内規程を定め、他のグループ会社から切り離した流動性リスクを管理しています。
具体的には、オリックス銀行は、日本の金融規制等に従い、必要な流動性資産の水準や市場性資金調達額などの限度額を定め、現預金のほか、流動性の高い公社債などを保有することで、必要な流動性を確保しています。また、遵守状況の定期的なモニタリングを行うとともに、将来おこりうる資金繰りの逼迫度を複数の段階で想定し、段階に応じた流動性リスク管理を行っています。
オリックス生命は、保険事故の発生などに対するストレステストを行い、責任準備金の残高に対して一定割合以上に現預金、有価証券などの流動性の高い資産を保有することや、満期保有目的債券の保有額に上限を定めることで、必要な流動性を確保しています。
(f) コンプライアンスリスクの管理
オリックスグループはコンプライアンスを経営上の最重要課題の一つと位置づけており、適切なコンプライアンス体制を構築し、高い倫理観をもってコンプライアンスを実践する企業文化の醸成に努め、誠実かつ公正で透明性の高い企業活動を遂行します。
コンプライアンス部門では、グループレベルの重要リスクを低減するためにオリックスグループの各部門にコンプライアンス年間計画を策定・実施させ、オリックスグループの事業にかかるコンプライアンスリスクを監視し、リスクの回避、低減、予防を実践します。
コンプライアンスの企業文化を支えるプログラムを実践することにより、コンプライアンスリスクの顕在化を予防・抑制し、オリックスグループの健全な事業、運営を実現します。
オリックスグループのコンプライアンスに関する最上位原則である役職員倫理規程(Principles of Conduct )に則って、各種規程の制定・周知活動等を行うことで、役職員のコンプライアンス意識の向上を図っています。
また、内部統制システムの一環として、オリックスグループの役職員が利用できる内部通報窓口およびグループ外の取引先等の社外の方が利用できる外部通報窓口を設置し、オリックスグループ内外におけるコンプライアンスリスクへの未然防止に向けた体制を整備しています。
(g) 法的リスクの管理
オリックスグループでは、法令遵守のために必要な社内規程を制定するほか、改正法令の施行に適切に対応するために、各事業に適用される法令を把握し、法改正に伴い必要な対応を対象部門に指示する等、必要な措置を講じています。
各種取引における法的リスクについては、審査部門、法務部門、コンプライアンス部門が関与し、リスクの回避、低減、予防を図っています。
営業取引等にかかる契約関係書類は、所定の社内規程に従って法務部門が関与し、契約審査を行い決裁を得るプロセスを確立しています。訴訟を提起する場合、または提起された場合にも、法務部門、コンプライアンス部門、審査部門が関与し解決へ導きます。また、オリックスグループの商標権を侵害するような商標出願が行われていないかモニタリングをする等、訴訟を未然に防ぐ取組を行う他、侵害が発見された場合には直ちに必要な措置を講じています。
(h) 情報リスクの管理
オリックスグループでは、情報および情報システムの利用に関する役職員等の情報の適切な取扱いや情報セキュリティ管理体制、基本方針、管理基準等について定めた社内規程を制定しています。また、サイバー攻撃対策として情報システムの脆弱性管理策やネットワーク防御等の技術的施策も実施しています。
オリックスグループの情報セキュリティ部門では、社内システムの保守・運用管理、情報セキュリティインシデント発生時の対応体制の構築などにより、サイバー攻撃および情報セキュリティの毀損を含むシステム障害が発生するリスクの軽減を図っています。また、個人情報を保護するための管理体制、基本方針等セキュリティの管理体制、基本方針、管理基準、教育および監査等に関する社内規程を制定しています。
(i) オペレーショナルリスクの管理
オリックスグループでは、業務執行の内部プロセスを明確にするため、社内規程を整備し、周知、教育を行っています。また、法令等遵守のために、財務報告にかかる内部統制の構築とその評価に注力しています。
オリックスグループは多様な人材を安定的に確保するために、各国・地域の労働市場および市場慣行、報酬水準、法規制、職務内容や業務特性に応じた人事制度を構築することで多様な働き方を尊重し、すべての役職員がそれぞれの能力、専門性を最大限に発揮できる職場環境の整備を行っています。
監査部門では、年度内部監査計画に基づき、オリックスグループの重要なオペレーショナルリスクについても焦点をあててモニタリングを行っています。これらのモニタリングを通じて、グループ経営に影響を与える事象発生の抑止に努めるとともに、これらのリスク管理機能の強化を図っています。
③ 個別事業のリスク管理
オリックスグループは、金融サービス事業をはじめとする幅広く分散した事業ポートフォリオを保有しているため、個別事業の特性にあわせ、網羅性と透明性を確保したモニタリングとリスク管理を行っています。
(a) 法人金融サービス事業部門
法人金融サービス事業部門の主なリスクは、法的リスクと信用リスクです。
法人金融サービス事業部門では様々な商材、サービスを取り扱っていることから、関連の法令や規則、会計基準などの制定や、改正、変更が行われた場合、取り扱っている商品やサービスに悪影響を及ぼし、手数料収入が減少する可能性があります。このようなリスクを低減するため、法令変更等に関する情報について、適時に法務部門との連携および事業部門における情報収集等を行うとともに、必要に応じて営業戦略の見直しを行っています。
与信案件については、与信先の業績、保全、回収状況について、事業部門では一定額以上の残高のある先を、審査部門では大口与信先を定期的に確認します。
特定の業種や業界について現状や見通しの分析を行い、与信先に与える影響を分析するとともに、今後の当該業種・業界に対する取組についての判断を行います。
管理債権については、特に不動産を担保とする取組に対しては、他の不動産関連部門のネットワークを生かして売却先やテナントの斡旋を行うなど様々な対応策を講じます。
(b) メンテナンスリース事業部門
メンテナンスリース事業部門の主なリスクは、ビジネスリスクと信用リスクです。
オペレーティング・リース物件の市場価値の変動リスクに対しては、市場環境の動向を常に把握し、保有物件価値の変動のモニタリングや、新規に投資する案件における残存価額の見積もり額の調整を行います。
オペレーティング・リースに付帯する各種サービスの提供にあたっては、サービス提供に伴うコストの変動リスクがあります。サービス策定時の前提と実績の検証、今後の見込みをモニタリングし、適切なコスト管理を行っています。
加えて、事業環境の変化、お客様のニーズの変化・多様化に伴い、提供しているサービスがお客様の要求するレベルを下回るリスクに対しては、サービスの質の状況を定量的・定性的に把握し、お客様の要求を満たすことができるサービスの継続的提供、またその質的向上と、事業環境に合わせた改善を行っています。
この他、信用リスクに対しては個別案件の与信審査などを行っています。
(c) 不動産事業部門
不動産事業部門の主なリスクは、ビジネスリスクと市場リスクです。
不動産投資の判断時には、キャッシュ・フローの計画と実績、見込みを比較検証し、投資実行後は投資戦略とスケジュールのモニタリングを行い、当初見込みと乖離しそうな場合には、戦略の再検討も行っています。 また、大規模物件または長期プロジェクトへの投資は一部パートナーとの共同事業にするなどリスクの分散を図っています。
開発・賃貸事業では、開発・保有スケジュール、NOI利回りなどをモニタリングしています。物件の稼働率の向上や売却にあたっては、グループのネットワークも活用しています。
施設運営事業では、各施設の稼働率や利益率などをモニタリングしています。また、マーケット分析を行い、リニューアル投資などによる施設の魅力向上に努めています。サービスの質を高めるために、お客様からのご意見をサービスや施設の改善に反映するとともに、研修による社員教育にも注力しています。
住宅分譲事業(新築・中古)では、市場環境や金利・不動産関連税制等を意識しつつ、個別事業の販売状況・収益性などのモニタリングを行っています。また、請負工事事業では、安全衛生管理に注力しつつ建築資材などの調達コストおよび工期のコントロール等を行っています。
(d) 事業投資事業部門
事業投資事業部門の主なリスクは、ビジネスリスク、市場リスク、およびオペレーショナルリスクです。
環境エネルギー事業では、再生可能エネルギー、省エネルギー、資源リサイクル・廃棄物処理事業などにおいて、適切な設備や技術の導入や専門技術を有するオペレーターとの提携などにより、ビジネスリスクの極小化を行い、事業環境やビジネス内容の変化に応じて体制を整えています。
企業投資事業において投資判断をする際には、与信審査と同様に投資先の財務状況等の分析、キャッシュ・フローの評価を行うとともに、経理部門、法務部門などの管理部門も関与して、多面的に事業性や投資スキームの評価を行います。投資実行後は、当初のシナリオから乖離していないかどうかを個別案件ごとにモニタリングします。バリューアップ中は、キャッシュ・フローを重視するため財務状況等のモニタリングに重きを置き、投資回収の時期が近くなるにつれて、類似業種の市場価格などを参考に事業価値が測定されるため、市場リスクも注視します。事業環境の変化に応じてモニタリングの頻度を上げ、シナリオの妥当性の検証と同時に必要なアクションを講じています。また、グループ収益への影響が大きい投資先については、経営陣の派遣などマネジメントの強化に努めています。
コンセッション事業では、空港などの公共施設において、事業パートナーとの共同事業運営を行っています。かかる事業の主なリスクは、ビジネスリスクやオペレーショナルリスクです。事業の特徴として長期にわたることから事業の不確実性に対し、需要予測等に基づく運営収益のキャッシュ・フローに災害復旧費用、事業撤退コスト等を含めたストレステストなどを実施した上で、事業計画やオペレーションのモニタリングを定期的に、また必要に応じて随時実施しています。また、公共施設の運営に関する専門知識を持った職員の育成に努め、事業パートナーとの運営体制を確立し、ガバナンス強化を図ることで、オペレーショナルリスクの低減に努めています。
サービサー事業では、債権の投資に関し、キャッシュ・フローや担保価値のみならず多面的な要素を検証・分析し、これまで培ったノウハウと専門性を生かしながら投資活動を行っています。投資後も定期的に回収戦略・想定の妥当性を検証し、様々なアクションを講じています。また、監督官庁の監督・指導を遵守した業務マニュアルを定め業務を行うとともに、定期的な内部監査やモニタリングを行うことにより、オペレーショナルリスクの低減にも努めています。
(e) リテール事業部門
生命保険事業の主なリスクは、ビジネスリスクと市場リスクです。
保険引受に関しては、経済情勢や保険事故の発生率等が、保険料設定時の予測に反して変動することにより損失を被るリスクがありますが、引受基準等の見直しや新商品の開発・既存商品の改廃を行うことにより、これらをコントロールしています。また、保険金等の確実な支払や、会社経営の安定を図るための施策の一つとして、再保険を利用しています。再保険の利用にあたっては、移転するリスクの特性や再保険の効果に応じて、出再基準や保有基準などを定めています。なお、再保険会社の選定にあたっては、引受能力や財務内容の健全性等も踏まえて、再保険金等の回収の蓋然性が高い取引となるように留意しています。
資産運用の市場リスクのコントロールにあたっては、一般勘定資産のうち管理対象となる資産に対し、モニタリング項目を定め、リスクの測定・モニタリングを行っています。また、ALMの観点から、責任準備金対応債券の購入により金利変動リスクの抑制に努めています。
投資用不動産ローン、法人向け融資、カードローン事業の主なリスクは、信用リスクです。
投資用不動産ローン(投資用マンション、アパートなど)は、顧客との面談を通じ不動産投資への意思やスタンス、審査資料、返済能力の確認に加え、引合い先となる不動産会社を厳選するとともに、不動産関連のマーケット情報を収集し、不動産からもたらされるキャッシュ・フローや担保価値を勘案し総合的に判断するなど、長年のネットワークやノウハウを生かした審査を行っています。法人向け融資については、個別の与信先の業況、事業計画、資金使途、返済原資、業界動向などを調査した上で与信判断を行い、特定の与信先やグループに対する過度の与信集中を抑制するなどのリスク軽減を図っています。カードローンは、独自に構築した与信モデルを活用し、顧客の属性、過去の返済状況など支払能力に影響を与える要素を分析することによって、信用リスクに見合った金利と融資限度額の条件を決定しています。また、定期的に途上審査を行うことで、常に顧客の信用状態をモニタリングしています。
(f) 海外事業部門
アジア、大洋州、中東の海外現地法人ではリース、融資、自動車リース、投資を中心に事業を展開しており、これらの事業の主なリスクは、信用リスク、ビジネスリスク、市場リスクです。
リース、融資事業に関しては、与信先の業績、保全状況を総合的に評価の上で取組みます。現地法人単位では未収状況やポートフォリオに偏りが生じないかなどの視点から、定期的なモニタリングを行い、必要に応じて是正措置を取ります。自動車リースについては、国ごとに異なるリース税制や中古車市場の性格に応じてリスク管理を行っています。
投資事業においては、国内における事業投資と同様に、実行時の案件評価および実行後のモニタリングを行います。その過程では株主としての権利をもって、または取締役を派遣している場合は、取締役会を通じて投資先の経営に関与することにより、投資先の健全な経営を支援します。
航空機および船舶関連事業のビジネスリスクについては、市場環境、事業環境のモニタリングを行っています。オペレーティング・リースは、原則として、再リース取組の可能性が高く、汎用性の高い物件に限定して取り扱っており、市況変化に応じて売却を検討します。
米国における法人向け融資や有価証券などの投融資事業についての主なリスクは、信用リスク、市場リスクです。
信用リスクについては、投資や融資の実行時に、信用状況、保全状況などを勘案して案件ごとに社内格付を付与し、継続的に信用状況のモニタリングを行っています。注意すべき格付水準となった投資先や融資先については、貸倒引当金の繰入、減損の要否などの管理方針を決定します。
市場リスクについては、信用情報とも照らし合わせながら時価評価をモニタリングし、収益機会の確定や損失軽減のための早期売却などの管理を行っています。
米国のローン・サービシング事業の主なリスクはオペレーショナルリスクです。ローン・サービシング事業では、ファニーメイやフレディマックの公的金融制度によるローンをアレンジし、そのサービシングを行っています。公的金融機関所定の業務手順に則り、業務を履行するために、社内監査などを通じてその業務品質を管理しています。
アセットマネジメント事業の主なリスクは、ビジネスリスクとオペレーショナルリスクです。
ビジネスリスクに対しては、提供する商品、サービスの品質を維持するためのモニタリングを行うとともに、事業環境の変化や顧客ニーズの多様化に応じて、商品やサービスの内容を見直し、品質の改善を常に図っています。
オペレーショナルリスクに対しては、アセットマネジメント事業では、顧客やクライアントのために裁量権を適切に行使しないことにより損害を被る受託者責任リスクについて、業務処理の標準化および業務に関する社内規程の制定を推進し、諸業務の遺漏を防ぎ、業務の効率化を図るとともに、業務の手続、管理者、監督者の権限や責任等を明確にすることで適正なリスク管理体制が確保できるよう取り組んでいます。