有価証券報告書-第48期(平成26年10月1日-平成27年9月30日)

【提出】
2015/12/24 10:12
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【項目】
128項目

対処すべき課題

(1) 当面の対処すべき課題の内容等
わが国では、第48期中において自然災害が多発したことによって甚大な被害が発生しました。第49期では当社グループは前期に引き続き全国的防災・減災、及びインフラの老朽化対策を中心に事業に取組みます。また、海外では事業領域の拡大とグループシナジーを追求します。第49期は当社グループの「中計2013」の最終事業年度になります。3年ビジョンとして掲げた目標「グループ総合技術で信頼される企業」、「持続的成長を維持する安定経営企業」、「多様な能力と経験豊富な人材が活躍する企業」、「事業執行の改革を進める企業」の実現に向けて、事業推進戦略に沿った事業に取り組みます。
第49期は第48期の成果を踏まえ、以下の課題に取り組んでまいります。
① 受注の確保
国内では公共事業投資が横ばいの状況下の受注拡大が課題になっています。構造、道路、ITS、情報、環境あるいは地質、地盤などグループの基幹事業の技術と価格の競争力向上が必須の条件です。その上で港湾、河川防災、電気通信、まちづくり・建築、エネルギー等の新領域の事業分野で国や地方自治体における顧客の多様化やPPP/PFIの民間事業の拡大を進めます。これにより、受注を拡大します。
海外では、すでに長大橋梁のトップコンサルタントとして確立した地位を維持するとともに、このブランドを活かして鉄道分野を含めた陸上運輸インフラ全般に事業展開を進めます。また、シンガポール、ベトナムに加え、インドネシアに新たに海外現地法人を設立し、NKCとの業務連携を一層強化して受注拡大を図ります。顧客の多様化も不可欠です。わが国のODA予算の縮小リスクも視野に世界銀行やアジア開発銀行の案件、BOTもしくはPPP型の民間案件の受注を目指します。
② 品質の向上
当社グループの業務成果については第48期も引き続き顧客から高い評価を得ることができました。これは業務マネジメントの継続的見直し及び顧客対応力強化により成果品質の維持・向上が進んだ結果です。第49期も引き続きこの取組みを継続します。加えて、第49期は稼動する事業領域が確実に拡がります。このため、特に新事業領域では成果品質の水準向上に注力します。
一方で、第48期ではミスや事故等の業務リスクへの対応では一部課題も見られました。調査・設計段階の予防的業務リスク対応の強化が基本ですが、近年、高まっている施工段階の事後的業務リスクへの対応力を強化してまいります。
③ 事業開拓
海外部門に加わった鉄道事業は近い将来、基幹事業を目指す事業領域であります。第49期はインドや東南アジアの鉄道事業に挑戦するとともに橋梁事業とのシナジーを追求いたします。東南アジアでは現地企業と連携したエコ・サニテーション事業、電力や水の供給とセットに工業団地開発及び運営等を行う地域開発のPPP事業、情報・ITS技術を活用した観光情報提供事業に取り組みます。国内ではPPP/PFI民間事業を拡大いたします。
④ 社員の活力向上
「中計2013」では「多様な能力と経験の人材が活躍する企業」を目指し、これまで様々な施策を実行しています。第48期においては人材確保と教育・研修制度の充実及び第47期に引き続き待遇改善に取組みました。第49期では、第48期からグループ全体で取組んでいる「女性の活躍」、「介護支援」、「長時間労働の解消」、「高齢者の活躍」をテーマにした労働環境の改善を具体的な施策にして、実行に移します。
今後、現下の経営環境の下で目標達成の重要さを経営者並びに当社グループ社員全員が強く認識しております。経営者並びに当社グループ社員全員は各々担うべきことを自ら認識し、連携し、それを達成することによって市場開拓、技術開発及び生産性の向上を実現してまいります。
株主の皆様におかれましては、今後とも何とぞ格別のご理解とご支援を賜りますようお願い申しあげます。
(2) 会社の支配に関する基本方針
① 基本方針の内容
当社は、金融商品取引所に株式を上場している者として、市場における当社株式等の自由な取引を尊重し、特定の者による当社株式等の大規模買付行為であっても、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資するものである限り、これを一概に否定するものではありません。また、最終的には株式等の大規模買付提案に応じるかどうかは株主の皆様の決定に委ねられるべきだと考えています。但し、株式等の大規模買付提案の中には、たとえばステークホルダーとの良好な関係を保ち続けることができない可能性があるなど、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を損なうおそれのあるものや、当社グループの価値を十分に反映しているとは言えないもの、あるいは株主の皆様が最終的な決定をされるために必要な情報が十分に提供されないものもありえます。
そのような提案に対して、当社取締役会は、株主の皆様から負託された者の責務として、株主の皆様のために、必要な時間や情報の確保、株式等の大規模買付提案者との交渉などを行う必要があると考えています。
② 取り組みの内容
イ.基本方針の実現に資する特別な取り組み
当社は、企業価値・株主共同の利益の確保・向上に資するため、平成26年9月期からの3事業年度に関する中期経営計画「長大持続成長プラン2013」を策定いたしました。計画期間中実施する施策の重点は、次の5点であります。
(1) 基幹事業の競争力向上
重点化する公共投資に対するグループ各社の基幹事業の競争力を高める施策がグループの持続成長の最もベースとなります。既に競争力ある分野で着実にシェアを維持拡大するとともに、この既存優位の分野に新たな分野を加えて市場を広げ、また、グループ会社間の連携による事業シナジーを発現させてまいります。
(2) 事業の多様性と総合化が進む市場の拡大
前中期経営計画から活発化した新領域の事業もNKCがグループに加わることにより可能性が大きく広がっております。再生可能エネルギー分野において小水力発電事業に加え地熱発電事業も視野に入れたエネルギー事業の展開、エコプロ事業も事業方式の多様化を迅速に進め安定した採算事業への転換、建築・PPP/PFI分野では学校施設から街づくりへの展開、道路監理経験の蓄積と道路サービスプロバイダ事業への展開、全国的な防災、減災への対応強化のため立ち上げた港湾、河川防災分野の展開、海外での鉄道事業等多くの可能性を秘めた事業を進展させ市場の拡大を図ってまいります。
(3) 震災復興と全国防災・減災への貢献
2013年中期経営計画期間はなお、グループ全体で震災復興に貢献すべき期間であります。PPPやCM等新たな事業手法によるインフラ整備に止まらず、街づくりや交通サービス支援などより生活に近いフィールドで復興に貢献いたします。また、国土強靭化政策が重点化するであろう全国の防災・減災やインフラの長寿命化に対してグループの技術を総合化して対応いたします。
(4) 経営・管理の効率化
NKCのグループ化は企業グループの規模を倍にいたしました。当然ながらグループの力を最大限に発揮するための経営・管理の一層の効率化が求められます。NKCのグループ化の意味はグループシナジーの最大化であり、経営・管理部門においては合理化シナジーの一層の追求が必要となります。内部統制やファイナンスではこれまで一定の進展が得られていますが、財務・会計、人事・労務、管理システムなどさらに効率化を図らなければならないと考えております。
(5) 経営・管理の効率化
近年、建設コンサルタント業界や建設産業全体の深刻な人材不足が問題となっております。当社グループでは事業推進戦略の展開のため必要とする人材がグループ各社基幹事業の人材だけではなく、新領域事業の多様な分野やキャリアの人材も必要となる点で、人材不足への対応はより重要な課題であります。高まる労働市場の流動性に対応した人材確保を進めるとともに、優秀な人材の定着化のための待遇改善や職場環境の魅力化、福利厚生の充実に取り組んでまいります。
以上の中期経営計画を着実に実行することで、当社の持つ経営資源を有効に活用するとともに、様々なステークホルダーとの良好な関係を維持・発展させ、当社及び当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の向上に資することができると考えております。
ロ.不適切な者によって支配されることを防止する取り組み
当社は、基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み(会社法施行規則第118条第3号ロ)の一つとして、当社株式等の大規模買付行為に関する対応策を導入することに関し、平成19年12月21日開催の第40回定時株主総会で承認され、平成22年12月22日開催の第43回定時株主総会及び平成25年12月19日開催の第46回定時株主総会でその継続が承認されています。
当社は、この対応策によって、当社株式等の大規模買付行為を行おうとする者が遵守すべきルールを策定するとともに、一定の場合には当社が対抗措置をとることによって大規模買付行為を行おうとする者に損害が発生する可能性があることを明らかにし、これらを適切に開示することにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に資さない当社株式等の大規模買付行為を行おうとする者に対して、警告を行うものです。
③ 取締役会の判断及びその判断に係る理由
イ.前記②イ.の取り組みは、当社の企業価値を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであるので、前記①の基本方針に沿い、株主の共同の利益を損なうものではなく、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しております。
ロ.前記②ロ.の取り組みについては、大規模買付行為に関する情報提供を求めるとともに、大規模買付行為が当社の企業価値を毀損する場合に対抗措置を発動することを定めるものであり、前記①の基本方針に沿ったものであります。また、株主意思を尊重するため、株主総会の承認を得ており、さらに、取締役会によって恣意的な判断がなされることを防止するために独立委員会を設置しております。取締役会は独立委員会の勧告を最大限に尊重したうえで、対抗措置の発動を決議することとしております。その判断の概要については、適時に株主の皆様に情報開示することとしているため、その運営は透明性をもって行われます。
したがって、当社取締役会は、株主の共同の利益を損なうものではなく、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しております。