有価証券報告書-第66期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 10:40
【資料】
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【項目】
174項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「『人』を軸として、赤ちゃんからお年寄りまで、お客さま一人ひとりに寄り添い、地域に根差し、お客さまの『よく生きる』を一生を通じて支援する」 という企業理念のもと、「自分や自分の家族がしてもらいたいサービスを事業化する」「赤ちゃんからお年寄りまで生涯にわたって、一人ひとりの課題解決や向上意欲を応援する」「年をとればとるほど、生きる意味を深く味わい幸せになるサービスを提供する」ことを通じて、企業価値の向上と、株主の皆様をはじめとする、すべてのステークホルダーへの貢献を追求しています。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
現在、日本は変革期を迎えています。人口動態や国民の年齢構成が大きく変化し、少子高齢化が加速しています。教育事業を行うベネッセにとって、「少子化」は、持続的な成長を考えるうえでの重要課題です。そして、グローバル化や高度なデジタル化が進行する社会は、「答えのない」未来であり、思考力、判断力、表現力を備えた子どもたちを育てることが極めて重要です。大学入試改革における民間英語試験、記述式問題導入の見送りがありましたが、子供たちが未来を生きるために必要な力を育む教育サービスを提供することが、当社にとって大きなテーマであることは引き続き変わりません。また、高齢人口が急速に増加するなかで、医療、福祉、健康などへの対応が社会の喫緊の課題となっています。
加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大により、特にBerlitz Corporationや塾事業、学校向け事業、介護・保育事業などで大きな事業影響が見込まれ、業績回復やその後の事業環境の変化への対応の取り組みが急務です。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2017年11月に、2018年度(2019年3月期)を初年度とする5ヵ年の中期経営計画(「変革と成長 Benesse2022」)を発表しております。「変革と成長 Benesse2022」では、国内の少子高齢化や、教育改革、学びの多様化等外部環境が変化する中、「変革と成長」をスローガンに経営の強化を図り、またM&Aも積極的に活用した既存事業の成長と新たな事業領域の拡大により、さらなる成長を目指しています。
新型コロナウイルス感染症による事業への影響については、感染の収束を見極めつつ、お客様の困りごとにタイムリーに対応しながら、できる限り早い事業の回復に努めてまいります。しかしながら、中長期でみれば、教育や介護の事業の課題は明確かつ不変であり、我々が今まで追求してきた戦略が大きく変わることはないと考えています。
むしろ、これまで以上に、「変革と成長」をスローガンに経営の強化を図り、またM&Aも積極的に活用した既存事業の成長と新たな事業領域の拡大により、業績の回復とさらなる成長を目指していきます。
具体的には、以下の4つの戦略テーマを推進いたします。
1.国内教育事業の業績回復とさらなる成長
・在宅(「進研ゼミ」)・教室・オンラインをつなぐ、お客様本位の学びの実現による事業回復と成長
・学校現場の本質的課題解決の支援と社会人向け事業等の次の成長機会の創出
2.競争力のあるブランドのグローバル展開
・「こどもちゃれんじ」における商品・マーケティングの強化、グローバル連携の強化
・Berlitz Corporationの「コスト構造改革」と「商品・業務プロセス変革」による業績回復
3.介護・保育事業の安定成長
・高品質を維持した地域ドミナント戦略の深耕
・年間10ホーム程度の新規ホームの開設
・「ベネッセメソッド」の進化によりサービス品質の差別化を推進
4.M&A・海外事業開発を中心とした成長戦略推進
・既存事業の競争力の強化
・教育・介護以外の「第3の柱」の創出
・海外事業開発の強化
これらの戦略テーマを推進しつつ、新型コロナウイルスの影響を見極めたうえで、秋に中期経営計画の見直しを行う予定です。
また、当社グループは、資本政策を経営の重要課題と位置付けています。配当については「配当性向35%以上」を目途としています。2019年度の実績は1株当たり年間配当額50円です。また、自己株式については、2020年3月末時点で615万株、213億6千2百万円の自己株式を保有しており、今後も必要に応じて取得する考えです。なお、自己株式は、発行済株式総数の5%程度を目安に保有し、それを超過する部分は原則として毎期消却する方針です。
キャッシュ・フローを重視した経営を行い、財務体質の健全性の維持に努めると同時に、今後の成長が見込める分野でのM&Aを積極的に実施します。また、研究開発や事業基盤の強化のための投資も効果的に行い、中長期的な成長を目指します。
(4) 目標とする経営指標
「変革と成長 Benesse2022」において、2020年度(2021年3月期)には、売上高5,000億円、営業利益350億円、営業利益率7%、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上の数値目標の達成を目指していました。また、最終年度である2022年度(2023年3月期)には、売上高6,000億円、営業利益600億円、営業利益率10%を目指していました。しかしながら新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、Berlitz Corporationの各事業や塾事業などの事業活動を一時停止せざるを得ない状況になり、宣言解除後のサービスのあり方を検討する必要があります。また、学校向け事業では、休校とその後の学校運営の状況の変化も予測が難しいこと、介護事業では、感染予防を徹底するために新規の入居者を緊急性の高い方中心としていること等から、事業回復のスピードが読めないこと等により、2020年度及び2022年度の目標とする各経営指標は見通せない状況となっています。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日2020年6月29日時点において判断したものであります。