有価証券報告書-第40期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「エンドユーザー(消費者)のお困りごとを解決する」という1986年の創業以来のコンセプトのもと、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業における日本発世界標準企業となることを目標としております。具体的には、クライアント企業のお客様(エンドユーザー)の声を直接聞き、適切なニーズを見つけ出すことによりクライアント企業へのロイヤリティを高める、独創的なサービスを創出することに努めており、クライアント企業より高い評価を得てまいりました。近年、当社グループを取り巻く環境は国内外においてめまぐるしく変化しております。このような環境に対して、当社グループは、「人」でしか問題を解決できないBPO事業に特化することにより、様々な高付加価値サービスを創出・提案し新市場の開拓に努めております。
これからも創業時から培ってきたホスピタリティ、経験と実績、そしてクライアント企業の目線でのサービス向上を担い、エンドユーザー(消費者)の感動・感謝を追求した付加価値サービスの提供を通して、BPO事業の世界標準企業を目指し、ステークホルダーと共に繁栄できる企業を目指します。
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、2024年5月10日付けで、2025年3月期から2027年3月期までの3カ年の第8次中期経営計画「成長を繋ぐ~Origin/Next 50」を開示いたしました。2026年10月に迎える創業40周年を当社グループの「過去と未来の結節点」と位置付け、自分たちの「原点」「強み」「将来のビジョン」などを見つめ直す機会とし、これまで継続的に企業として成長してきたことを次の50年に繋げてまいります。
<全体戦略>本計画においては、以下の3つの全体戦略を掲げており、最終年度である2027年3月期においても、引き続きこれらを中心に取り組んでまいります。
成長余力の創出
徹底した受託業務(プロジェクト)別収支管理と低収益プロジェクトからの撤退を含む取捨選択、AI等を活用したDX推進による工数削減と生産性向上により、一人あたりの利益額を3年後に20%増とすることを目指しております。これまでに業務の選択と集中や委託料改定を着実に進めるとともに、2025年10月に新設したDX推進本部を中核として、CTI(高性能電話システム)へのAI機能の実装等によるオペレーションの効率化を一段と加速させております。
サービスプラットフォーム利用型収益モデルの開発
従来のストック型ビジネスモデルを維持・拡大しつつ、人的資本に頼らないフロー型ビジネスモデルの開発に取り組んでおります。各事業セグメントを横断した次世代共通プラットフォームの開発に着手しており、これまでに蓄積されたデータやエージェンティックAIを活用した新たな収益モデルの創出を目指してまいります。
機動的な拠点展開
機動的な拠点展開:大規模BPOセンターの新設や既存拠点の拡充、ロードアシストやホームアシストの駆けつけサービスの出動拠点拡大などの投資を継続しつつ、機動的にサテライト拠点を設置し、受託能力の拡大を進めております。2025年4月に開設した青森BPO三沢ブランチの運営を本格化させるとともに、2026年夏季には800席の受託能力を有する秋田BPO潟上キャンパス(仮称)の稼働開始を予定しております。
<2027年3月期の経営指標と進捗状況>中期経営計画において目標とする経営指標、直近の実績及び2027年3月期の業績予想は、次のとおりであります。
(注)2027年3月期の業績予想は、2026年5月13日公表の「2026年3月期決算短信」に記載の数値であります。
総還元性向は、自己株式取得の実施状況等により変動いたします。
なお、当該中期経営計画は、以下のURLからご覧いただけます。
(当社ウェブサイト)https://www.prestigein.com/IR/policy/plan.html
(3)対処すべき課題
(事業全般)
当社グループを取り巻く経営環境は、引き続き多くの不確実性を抱えて推移しております。国内では、少子高齢化に伴う労働人口の減少が採用難と賃金上昇を招き、物価高と相まって企業経営の重い負担となっております。世界経済においても、米国の通商政策に起因するサプライチェーンの分断リスクが継続する一方、中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー価格の高騰が物流コストを押し上げております。主要各国のインフレ圧力は根強く、円安の進行も加わり、輸入コストの増加が国内企業の収益を圧迫している状況です。国内経済においては「賃金と物価の好循環」の兆しが見られるものの、2026年春闘における高水準の賃上げや原材料費高騰に伴う物価上昇圧力は依然として解消されておりません。加えて、生成AIをはじめとする技術革新が急速に進展しており、BPO事業においてもその活用が競争力を左右する重要なテーマとなっております。当社グループの主要なクライアント業界の状況は、以下のとおりであります。
(自動車業界)
米国の関税政策や世界的な需要変動により生産・販売台数が減少に転じているほか、円安による海外調達コストの上昇も重なり、収益環境は厳しさを増しております。各自動車メーカー及び関連事業者においては抜本的なコスト削減が喫緊の課題となる一方、EV化や自動運転技術の進展、車両の予兆診断・コネクテッド技術を活用した新たなアフターサービスへの需要も急速に拡大しており、アフターサービスやロードサービスを含む周辺業務のアウトソーシングニーズが高まっております。
(損害保険業界)
自然災害の頻発・激甚化が続くなか、自動車保険の収益性改善に向けた取り組みも進められております。一方で、損害査定をはじめとする専門業務を担う人材の高齢化と人手不足が深刻化しており、DXによる業務効率化やBPO活用への機運が一段と高まっております。
(不動産業界)
建築資材や人件費の高騰を背景に分譲マンションの販売価格は上昇を続けており、購入者の負担増加に伴い、購入後の物件管理やアフターサポートの品質に対する関心も高まっております。こうしたなか、デベロッパーにとってカスタマーサポート体制の充実は差別化要素としての重要性を増しており、当社グループへのアウトソーシング需要の拡大に繋がっております。また賃貸市場においても、物価上昇による生活コストの増加を背景に家賃滞納リスクが高まり、オーナー及び管理会社における家賃保証ニーズが拡大しております。これに伴い、入居者審査・督促業務・保証関連オペレーションへの需要も増加しております。
(海外事業を展開する企業)
各国のインフレや為替変動リスクの拡大、保護主義的通商政策の広がり等により、海外事業環境の不確実性は増しております。とりわけ現地インフレの進行は、駐在員の生活コスト及び現地スタッフの人件費を押し上げ、海外拠点の運営コストを増大させております。加えて、日中関係をめぐる政治的緊張の高まりは、中国に拠点を置く企業にとって事業継続上のリスク要因となっており、拠点の分散やサプライチェーンの再構築を検討する動きが広がっております。これらを背景に、海外拠点における危機管理体制の整備や多言語オペレーション支援へのニーズが一層高まっております。
このような環境下において、各企業はサプライチェーンの見直しやコスト削減等の事業体制再構築を進めており、コア業務を含めワンストップでアウトソースする機運はこれまで以上に高まっております。したがって、当社グループに対する潜在的な需要は引き続き高水準で推移するものと見込んでおります。一方、物価高騰や賃金上昇に伴う価格転嫁の動きは広がりつつあるものの、急速な価格転嫁はクライアント企業からの理解を得にくいケースも多く、委託料の引上げや業務の効率化・省力化にとどまらない対応が求められております。具体的には、AIを含むDXを活用した新たなビジネスモデルの創出やサービスの付加価値向上が不可欠であり、当社グループとしても、品質のさらなる向上に加え、デジタル技術への投資と開発体制の強化を通じて、既存事業の高度化と新たな価値創造の双方に取り組んでまいります。
(人員の採用と離職防止)
国内では人手不足が慢性化し深刻な社会問題となっているほか、社会全体における賃金水準の引き上げを受け、労務コストの増加が続いております。当社グループは、主力のオペレーション業務を地方のBPO拠点において展開していることから、首都圏と比較して安定的な人員採用を実現しておりますが、旺盛な需要に対してこれまで以上の人員体制の確保が求められております。加えて、当社グループのビジネスモデルは一般的な認知度が低く、この点も採用活動上の課題となっております。離職防止についても採用と並ぶ重点課題であると認識しており、以下の取り組みを推進しております。
①採用活動においては、地方自治体と連携した学校訪問・企業説明会やハローワーク経由の募集に加え、SNS・Web・各種メディアを通じてターゲット層に直接アプローチし、当社グループの魅力訴求を強化しております。また、リファラル採用やジョブリターン制度等のアルムナイ採用も積極的に活用しております。2027年3月期においても、各拠点の特性や地域の採用環境に応じた施策を展開し、人員体制の一層の強化を図ってまいります。
②従業員へのエンゲージメント調査を継続的に実施し、従業員の声を反映した働きやすい環境づくりに取り組んでおります。当連結会計年度に実施した第5回調査では、エンゲージメント向上プロジェクト発足から3年目を迎え、各拠点の取り組みが活性化した結果、指標であるeNPSスコアが同業平均を上回る水準に達しております。今後も、調査結果に基づく拠点別の改善施策の推進や社内コミュニケーションの活性化を通じて、従業員が働きがいを実感できる職場環境の整備に努めてまいります。あわせて、画一的な働き方から柔軟かつ多様な働き方への転換を可能とする人事制度の整備にも取り組んでおります。
③当連結会計年度においては、持続可能な組織成長に向けた人事制度の抜本的改定に着手いたしました。事業規模の拡大に伴い、従業員一人ひとりが自らの役割と成長の道筋を明確に描ける制度の必要性が高まっていたことを踏まえ、全従業員を対象とした職務・役割定義書の導入により会社が期待する役割を明確化し、これと連動する納得感の高い評価制度への刷新を進めております。あわせて、役割と成果に応じた報酬体系の見直しを進めており、特定のポストに就かずとも専門性を高めることが正当に評価される仕組みの構築を目指しております。これらの制度改定は2026年7月より順次施行し、優秀な人材が長く活躍できる環境と、次世代リーダーの計画的な育成・輩出を実現してまいります。
④福利厚生面では、所定休日の追加によるワークライフバランスの向上、従業員持株会の奨励金引き上げ、カフェテリアの改善等、従業員の資産形成と企業成長の連動を目指した施策を2026年4月より順次実施しております。
⑤当社グループの海外子会社ネットワークを活用し、オフショア拠点におけるBPO運用を本格的に開始いたしました。当連結会計年度においては、ベトナム子会社にて日本語対応可能なオペレーターによるチャット対応を複数クライアント企業で展開し、電話対応からチャットへのチャネルシフトを推進しております。その結果、国内拠点の電話応答率が大幅に改善したほか、チャット対応における顧客満足度も高い水準を維持しております。また、国内拠点における研修プログラムを通じた品質教育の徹底により、国内と遜色のない対応品質と生産性を実現しております。2027年3月期においては、対応クライアント企業数のさらなる拡大と人員体制の増強を計画しており、国内の人手不足を補完する重要な戦力としてオフショアBPOの拡充を推進してまいります。あわせて、AIによる同時通訳を活用し海外から日本国内向けオペレーションを提供する等、外国人労働者の活用も積極的に進めてまいります。
(DX推進)
当社グループにおけるDXは、単なるIT化やデジタル技術の導入にとどまらず、業務プロセスや組織文化・風土の根本的変革を通じて新たな価値を創造し、競争優位を確立することを目的としております。
こうした認識のもと、2025年10月にDX推進本部を新設いたしました。本部長にはCEOが就任してトップダウンで全社DX戦略を推進し、本部長代理にはCFOが就任して投資判断や予算面からDX推進を支える体制を整えております。また、社内のIT関連部署及び各事業部門に配置されているIT関連担当者を一つの総合組織に集約し、全社横断で迅速かつ実効性のある取り組みを進めてまいります。
当社グループのDX推進は、業務効率化やコスト削減にとどまらず、顧客体験の向上及び新たなデジタルビジネスの創出を通じた企業価値の向上を目的としております。具体的には、以下の取り組みを進めております。
①これまで部門ごとに個別最適で運用されてきた既存システムを全社共通基盤として再構築し、データ活用基盤の整備とデータガバナンスの確立を進めてまいります。
②顧客対応業務においては、CTI(高性能電話システム)にAI機能を実装させ、通話内容のリアルタイム要約、最適なFAQの自動生成、顧客感情分析によるアラート等、AIを活用したオペレーター支援を高度化し、省人化や業務効率の向上と品質の均一化を図ってまいります。
③社内業務においては、コーディング支援、仕様書・報告書の作成、議事録作成、社内問い合わせ対応等のバックオフィス業務にAIを活用し、全社的な効率化を推進してまいります。
④DX人材の不足が深刻な課題であることから、人事部門とDX推進部門が共同で「デジタル人材開発」を制度化し、デジタル人材育成プログラムを体系的に提供してまいります。専門人材の育成に加え、全従業員のデジタルリテラシー向上及び開発者育成を通じて、現場からの改善提案を活発化させるとともに、DXを全従業員が自分事として捉える組織文化の醸成に取り組んでまいります。
⑤当社グループはBPO事業者として多くのクライアント企業の機密情報や個人情報をお預かりしており、情報セキュリティの確保は事業継続の根幹であると認識しております。近年、ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃が高度化・巧妙化し、国内外の企業において深刻な被害が相次いでおります。こうした脅威に対し、ネットワークの監視体制やエンドポイントセキュリティの強化、データバックアップ体制の多重化、従業員へのセキュリティ教育の徹底等、技術面・運用面の双方から対策を講じております。また、万が一のインシデント発生時に備え、初動対応手順の整備や被害の最小化と早期復旧を図る体制を構築しております。今後もセキュリティ対策への継続的な投資を行い、クライアント企業からの信頼に応えてまいります。
これらの取り組みを通じて、コンタクトセンターの枠組みを超えたオンリーワンの付加価値を実現するとともに、持続可能な事業成長を支える基盤を構築してまいります。
(サービス品質の向上)
当社グループは、クライアント企業の課題を解決するとともに、サービスをご利用いただくエンドユーザーの不便やお困りごとを解消することをコンセプトとしてグループ経営理念を掲げております。その実現を支える強みは、コンタクトセンター、フィールド、IT・DXの三位一体によるサービス提供にあります。各BPO拠点においては、応答品質のモニタリング、評価分析、改善活動、報奨制度、品質管理担当者のスキル向上等を通じて、品質向上に向けた体制の充実を図っております。
当連結会計年度においては、ITサポートサービスにおけるメンバーシップ団体であるHDIの国際基準に基づき、当社グループより29名が最高評価である「クオリティ格付け(個人評価)」三つ星を獲得し、その内9名が満点評価を受けました。これは日々の品質向上活動の成果であり、今後も外部評価の活用を通じて品質の客観的検証と継続的改善に取り組んでまいります。あわせて、主要クライアント企業を対象とした満足度調査を実施した結果、営業及びオペレーションに関する評価は総じて高水準を維持しており、特に地方拠点展開によるBCP(事業継続計画)構築については調査開始以来継続して高い評価をいただいております。また、AIやチャット対応の導入をはじめとするDXの取り組みについても、業務効率化やコストパフォーマンス向上への貢献として高く評価されております。一方、単なる業務委託を超えた付加価値提供への期待が一層高まっていることも明らかとなり、これらの結果を踏まえ、サービスの総合的な品質向上と新たな価値創出に引き続き取り組んでまいります。
このほか、品質管理の社内表彰式の開催やスキル認定に加え、全従業員を対象としたITパスポート資格取得推進プロジェクトを開始し、DXの共通言語となるデジタルリテラシーの底上げにも取り組んでおります。また、「人材」「オペレーションプロセス」「IT・DX等のテクノロジー」といった観点における外部評価機関からの評価を社内に取り入れ、継続的な成長に繋げる取り組みを推進しております。
(新たなBPO拠点の開設)
当社グループは、これまで東北・北陸地方を中心にBPO拠点を展開してまいりました。今後も旺盛な需要に応えていくため、長期的には新たな大規模拠点の展開を進め、受託能力の拡大を図る必要があると認識しております。この方針のもと、2024年6月に岩手県一関市において500席規模の「岩手BPOフォートレス」を開設したほか、秋田県潟上市では800席規模の大規模拠点「秋田BPO潟上キャンパス(仮称)」を建設中であり、2026年夏季の開設を予定しております。「富山BPOタウン」においても、隣接地における新たなサテライト拠点の設置を検討しております。一方、資材高騰による建築費の上昇等を踏まえると、大規模拠点の設置には引き続き慎重な判断が求められる状況であるため、中規模のサテライト拠点を機動的に展開することで、当社グループに対するアウトソーシング需要に柔軟に対応してまいります。
(人材活用)
当社グループは2018年に女性活躍推進プロジェクトを立ち上げ、現在はダイバーシティ推進プロジェクトとして運営しております。2026年度までに女性管理職比率50%の達成を目標に、人事制度や人材育成方法の見直しを通じて柔軟かつ多様な働き方を推進しております。この結果、当連結会計年度における当社従業員の女性管理職比率は42.7%(前年度45.2%)となりました。また、上場企業等を対象に実施する「企業の女性活躍度調査」の2026年版「女性が活躍する会社BEST100」(株式会社日経BPより公開)において総合ランキング43位に選出され、特に「管理職登用度」のカテゴリーで高い評価をいただいております。各BPO拠点では、キャリアパスに応じたスキル教育に加え、管理職登用後の従業員を対象とした思考力・リスクマネジメント力・モラルを養う継続的な育成プログラムを構築しており、次世代の幹部候補の輩出に繋げてまいります。あわせて、リスキリングとして公的資格・業界資格の取得促進、ITリテラシー向上を目的としたIT部門による社内研修とスキル認定も進めてまいります。
ダイバーシティ推進の一環として、子の看護等休暇の対象範囲拡大、積立有給休暇の導入、不妊治療や婦人科検診等に利用可能なウェルネス休暇の新設等、従業員のライフスタイルに応じた休暇制度の拡充を検討しております。多様な人材が安心して働き続けられる環境を整備することにより、人材の定着と組織力の強化を図ってまいります。
健康経営の取り組みとしては、従業員の健康状態の改善が生産性向上及び人材の確保・定着に繋がるとの考えのもと、定期健康診断の受診率向上、ストレスチェックに基づく職場環境の見直しと業務量調整、ウォーキングやヨガ等の運動イベント開催、健康運動に関する情報提供等を実施しております。また、女性や若年層が多い職場であることを踏まえ、女性特有の健康課題に着目し、全従業員向けのeラーニング実施等、未病対策の取り組みを強化しております。こうした取り組みが評価され、2022年から5年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されました。
(地域貢献)
国内における地方都市の人口減少や地域活性化は、重要な社会課題であると認識しております。当社グループは、地域社会への貢献を重要な基本戦略として位置付け、地域活性化と女性活躍をビジネスの根幹に据えて事業を発展させてまいりました。働きやすい職場環境の構築に向けては、人材育成に関する各種取り組み・制度・研修機会の提供に加え、カフェテリアや企業内保育園といった施設整備も行っております。特に、企業内保育園の設置及び受入体制の拡大は、女性の労働参加において出産・育児による離職を防ぐ効果的な施策であります。当社グループの従業員のみならず、他社に勤務する地域住民にも開放することで、地域全体への間接的な就業環境整備及び子育て支援に寄与しており、今後もその拡大を進めてまいります。
また、各BPO拠点では地域との繋がりを目的とした各種イベントを通じ、従業員による地域貢献活動を推進しております。地域の一員として貢献する実感はモチベーション向上に資するとともに、本業とは異なる活動に取り組むことで新たな刺激を受け、自らの特性や能力を再発見する機会にも繋がるものと考えております。
このほか、地域活性化と女性が活躍できる場の拡充を目的として、秋田・富山のBPO拠点にて女子スポーツチーム「アランマーレ」を運営しております。山形県で活動してきた女子バレーボールチームについては、リーグのライセンス基準への対応を目的として、2026-27シーズンより活動拠点を秋田県へ移転いたします。長年にわたりチームを支えていただいた山形県酒田市につきましては、引き続きマザータウンと位置付け、公式戦の開催やアランマーレジュニアクラブ運営等を通じて地域との絆を大切にしてまいります。スポーツを通じた企業内保育園との交流等、地域に根差した活動を継続し、地域住民の皆様に感動をお届けできるよう取り組んでまいります。今後も、若い世代が安心して地元に戻れる環境と、女性が一層活躍できる場の整備を進めてまいります。
(内部統制全般)
当社グループの従業員数は約6,000名規模に達しており、組織の隅々まで企業文化、法令順守、及び内部統制を浸透させることの重要性が一層高まっていると認識しております。また、中期経営計画のもとで「継続的・安定的な成長」を実現するため、責任と権限を明確化し、果断かつ迅速な意思決定と実行を徹底することが不可欠であると考えております。
こうした認識のもと、2025年4月に副社長をチーフガバナンスオフィサー(CGO)に任命し、グループ全体のガバナンス強化を統括する体制を整備いたしました。さらに、当連結会計年度においては「経営会議」を新設し、当社及びグループ各社の業務運営方針、リスクマネジメント、人材マネジメント、重要プロジェクトの進捗管理等を詳細に議論することで、経営上の意思決定を迅速かつ効果的に行う体制を構築しております。取締役会は、会社法に基づく重要な業務執行の決定及び取締役の監督に加え、時宜を得た経営課題についてより活発な議論を行う会議体と位置付け、経営会議との役割分担を通じてコーポレートガバナンス体制の一層の充実を図っております。
また、経営会議の運営を通じて、構成員である役付執行役員(常務以上)が経営判断に直接関与する機会を増やすことで、次世代経営人材の育成にも繋げてまいります。
コロナ禍後、グローバル事業は回復・拡大基調にあり、これに伴い海外拠点の拡充を進めております。一方で、海外子会社は日本本社との地理的・心理的距離に起因しモニタリングが行き届きにくく、不正リスクが生じやすい傾向があると一般に指摘されております。そのため、国内で海外事業を管轄する子会社内に専任部署を設置してモニタリングを強化するとともに、本社を含めた定期的な会議の開催、情報共有、コミュニケーション機会の拡大、労務管理や現地法令・規制の把握等に努めております。さらに、2026年4月には海外ガバナンス担当の執行役員を配置し、海外子会社に対する統制体制を強化いたしました。加えて、内部監査体制を拡充して現地への往査頻度を高め、現地環境への理解と関係者との信頼関係を構築しながら、監査を通じて改善提案を行うことで、グループ全体のガバナンス強化に寄与してまいります。
当社グループは、2019年4月に持株会社体制へ移行し、経営責任と執行責任を明確化いたしました。2022年2月には、取締役会の諮問機関として「指名報酬委員会」を設置し、取締役及び監査役の指名・報酬に関する手続きの公正性・透明性・客観性の強化を図っております。指名報酬委員会においては、近い将来に見込まれる経営体制のサクセッションプランについて検討を進め、後継者育成の基本方針とスケジュールを策定しております。その一環として、当連結会計年度においても役付執行役員以上からのレポート提出と個別面談を実施し、後継候補者の評価・見極め・絞り込みを行ったほか、新たに幹部職に就任した人材についても面談を実施し、次世代の経営を担う人材の発掘と育成の裾野を広げております。今後もコーポレートガバナンス体制をより一層充実させ、継続的な成長を支える経営基盤を整えることにより、新たな価値創造への挑戦を推進してまいります。
以上の諸施策により経営資源を集中的に投下し、さらなる成長と株主価値の向上に努めてまいります。
当社グループは、「エンドユーザー(消費者)のお困りごとを解決する」という1986年の創業以来のコンセプトのもと、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業における日本発世界標準企業となることを目標としております。具体的には、クライアント企業のお客様(エンドユーザー)の声を直接聞き、適切なニーズを見つけ出すことによりクライアント企業へのロイヤリティを高める、独創的なサービスを創出することに努めており、クライアント企業より高い評価を得てまいりました。近年、当社グループを取り巻く環境は国内外においてめまぐるしく変化しております。このような環境に対して、当社グループは、「人」でしか問題を解決できないBPO事業に特化することにより、様々な高付加価値サービスを創出・提案し新市場の開拓に努めております。
これからも創業時から培ってきたホスピタリティ、経験と実績、そしてクライアント企業の目線でのサービス向上を担い、エンドユーザー(消費者)の感動・感謝を追求した付加価値サービスの提供を通して、BPO事業の世界標準企業を目指し、ステークホルダーと共に繁栄できる企業を目指します。
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標
当社グループは、2024年5月10日付けで、2025年3月期から2027年3月期までの3カ年の第8次中期経営計画「成長を繋ぐ~Origin/Next 50」を開示いたしました。2026年10月に迎える創業40周年を当社グループの「過去と未来の結節点」と位置付け、自分たちの「原点」「強み」「将来のビジョン」などを見つめ直す機会とし、これまで継続的に企業として成長してきたことを次の50年に繋げてまいります。
<全体戦略>本計画においては、以下の3つの全体戦略を掲げており、最終年度である2027年3月期においても、引き続きこれらを中心に取り組んでまいります。
成長余力の創出
徹底した受託業務(プロジェクト)別収支管理と低収益プロジェクトからの撤退を含む取捨選択、AI等を活用したDX推進による工数削減と生産性向上により、一人あたりの利益額を3年後に20%増とすることを目指しております。これまでに業務の選択と集中や委託料改定を着実に進めるとともに、2025年10月に新設したDX推進本部を中核として、CTI(高性能電話システム)へのAI機能の実装等によるオペレーションの効率化を一段と加速させております。
サービスプラットフォーム利用型収益モデルの開発
従来のストック型ビジネスモデルを維持・拡大しつつ、人的資本に頼らないフロー型ビジネスモデルの開発に取り組んでおります。各事業セグメントを横断した次世代共通プラットフォームの開発に着手しており、これまでに蓄積されたデータやエージェンティックAIを活用した新たな収益モデルの創出を目指してまいります。
機動的な拠点展開
機動的な拠点展開:大規模BPOセンターの新設や既存拠点の拡充、ロードアシストやホームアシストの駆けつけサービスの出動拠点拡大などの投資を継続しつつ、機動的にサテライト拠点を設置し、受託能力の拡大を進めております。2025年4月に開設した青森BPO三沢ブランチの運営を本格化させるとともに、2026年夏季には800席の受託能力を有する秋田BPO潟上キャンパス(仮称)の稼働開始を予定しております。
<2027年3月期の経営指標と進捗状況>中期経営計画において目標とする経営指標、直近の実績及び2027年3月期の業績予想は、次のとおりであります。
| 経営指標 | 中期経営計画目標 (2027年3月期) | 2026年3月期実績 | 2027年3月期業績予想(注) |
| 売上高 | 75,000百万円 | 70,911百万円 | 76,000百万円 |
| 営業利益 | 10,000百万円 | 8,869百万円 | 9,600百万円 |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 6,500百万円 | 5,920百万円 | 5,920百万円 |
| ROE | 15% | 12.5% | - |
| 配当性向 | 60%以上 | 55.4% | 59.2% |
| 総還元性向 | 70%以上 | 80.0% | - |
(注)2027年3月期の業績予想は、2026年5月13日公表の「2026年3月期決算短信」に記載の数値であります。
総還元性向は、自己株式取得の実施状況等により変動いたします。
なお、当該中期経営計画は、以下のURLからご覧いただけます。
(当社ウェブサイト)https://www.prestigein.com/IR/policy/plan.html
(3)対処すべき課題
(事業全般)
当社グループを取り巻く経営環境は、引き続き多くの不確実性を抱えて推移しております。国内では、少子高齢化に伴う労働人口の減少が採用難と賃金上昇を招き、物価高と相まって企業経営の重い負担となっております。世界経済においても、米国の通商政策に起因するサプライチェーンの分断リスクが継続する一方、中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー価格の高騰が物流コストを押し上げております。主要各国のインフレ圧力は根強く、円安の進行も加わり、輸入コストの増加が国内企業の収益を圧迫している状況です。国内経済においては「賃金と物価の好循環」の兆しが見られるものの、2026年春闘における高水準の賃上げや原材料費高騰に伴う物価上昇圧力は依然として解消されておりません。加えて、生成AIをはじめとする技術革新が急速に進展しており、BPO事業においてもその活用が競争力を左右する重要なテーマとなっております。当社グループの主要なクライアント業界の状況は、以下のとおりであります。
(自動車業界)
米国の関税政策や世界的な需要変動により生産・販売台数が減少に転じているほか、円安による海外調達コストの上昇も重なり、収益環境は厳しさを増しております。各自動車メーカー及び関連事業者においては抜本的なコスト削減が喫緊の課題となる一方、EV化や自動運転技術の進展、車両の予兆診断・コネクテッド技術を活用した新たなアフターサービスへの需要も急速に拡大しており、アフターサービスやロードサービスを含む周辺業務のアウトソーシングニーズが高まっております。
(損害保険業界)
自然災害の頻発・激甚化が続くなか、自動車保険の収益性改善に向けた取り組みも進められております。一方で、損害査定をはじめとする専門業務を担う人材の高齢化と人手不足が深刻化しており、DXによる業務効率化やBPO活用への機運が一段と高まっております。
(不動産業界)
建築資材や人件費の高騰を背景に分譲マンションの販売価格は上昇を続けており、購入者の負担増加に伴い、購入後の物件管理やアフターサポートの品質に対する関心も高まっております。こうしたなか、デベロッパーにとってカスタマーサポート体制の充実は差別化要素としての重要性を増しており、当社グループへのアウトソーシング需要の拡大に繋がっております。また賃貸市場においても、物価上昇による生活コストの増加を背景に家賃滞納リスクが高まり、オーナー及び管理会社における家賃保証ニーズが拡大しております。これに伴い、入居者審査・督促業務・保証関連オペレーションへの需要も増加しております。
(海外事業を展開する企業)
各国のインフレや為替変動リスクの拡大、保護主義的通商政策の広がり等により、海外事業環境の不確実性は増しております。とりわけ現地インフレの進行は、駐在員の生活コスト及び現地スタッフの人件費を押し上げ、海外拠点の運営コストを増大させております。加えて、日中関係をめぐる政治的緊張の高まりは、中国に拠点を置く企業にとって事業継続上のリスク要因となっており、拠点の分散やサプライチェーンの再構築を検討する動きが広がっております。これらを背景に、海外拠点における危機管理体制の整備や多言語オペレーション支援へのニーズが一層高まっております。
このような環境下において、各企業はサプライチェーンの見直しやコスト削減等の事業体制再構築を進めており、コア業務を含めワンストップでアウトソースする機運はこれまで以上に高まっております。したがって、当社グループに対する潜在的な需要は引き続き高水準で推移するものと見込んでおります。一方、物価高騰や賃金上昇に伴う価格転嫁の動きは広がりつつあるものの、急速な価格転嫁はクライアント企業からの理解を得にくいケースも多く、委託料の引上げや業務の効率化・省力化にとどまらない対応が求められております。具体的には、AIを含むDXを活用した新たなビジネスモデルの創出やサービスの付加価値向上が不可欠であり、当社グループとしても、品質のさらなる向上に加え、デジタル技術への投資と開発体制の強化を通じて、既存事業の高度化と新たな価値創造の双方に取り組んでまいります。
(人員の採用と離職防止)
国内では人手不足が慢性化し深刻な社会問題となっているほか、社会全体における賃金水準の引き上げを受け、労務コストの増加が続いております。当社グループは、主力のオペレーション業務を地方のBPO拠点において展開していることから、首都圏と比較して安定的な人員採用を実現しておりますが、旺盛な需要に対してこれまで以上の人員体制の確保が求められております。加えて、当社グループのビジネスモデルは一般的な認知度が低く、この点も採用活動上の課題となっております。離職防止についても採用と並ぶ重点課題であると認識しており、以下の取り組みを推進しております。
①採用活動においては、地方自治体と連携した学校訪問・企業説明会やハローワーク経由の募集に加え、SNS・Web・各種メディアを通じてターゲット層に直接アプローチし、当社グループの魅力訴求を強化しております。また、リファラル採用やジョブリターン制度等のアルムナイ採用も積極的に活用しております。2027年3月期においても、各拠点の特性や地域の採用環境に応じた施策を展開し、人員体制の一層の強化を図ってまいります。
②従業員へのエンゲージメント調査を継続的に実施し、従業員の声を反映した働きやすい環境づくりに取り組んでおります。当連結会計年度に実施した第5回調査では、エンゲージメント向上プロジェクト発足から3年目を迎え、各拠点の取り組みが活性化した結果、指標であるeNPSスコアが同業平均を上回る水準に達しております。今後も、調査結果に基づく拠点別の改善施策の推進や社内コミュニケーションの活性化を通じて、従業員が働きがいを実感できる職場環境の整備に努めてまいります。あわせて、画一的な働き方から柔軟かつ多様な働き方への転換を可能とする人事制度の整備にも取り組んでおります。
③当連結会計年度においては、持続可能な組織成長に向けた人事制度の抜本的改定に着手いたしました。事業規模の拡大に伴い、従業員一人ひとりが自らの役割と成長の道筋を明確に描ける制度の必要性が高まっていたことを踏まえ、全従業員を対象とした職務・役割定義書の導入により会社が期待する役割を明確化し、これと連動する納得感の高い評価制度への刷新を進めております。あわせて、役割と成果に応じた報酬体系の見直しを進めており、特定のポストに就かずとも専門性を高めることが正当に評価される仕組みの構築を目指しております。これらの制度改定は2026年7月より順次施行し、優秀な人材が長く活躍できる環境と、次世代リーダーの計画的な育成・輩出を実現してまいります。
④福利厚生面では、所定休日の追加によるワークライフバランスの向上、従業員持株会の奨励金引き上げ、カフェテリアの改善等、従業員の資産形成と企業成長の連動を目指した施策を2026年4月より順次実施しております。
⑤当社グループの海外子会社ネットワークを活用し、オフショア拠点におけるBPO運用を本格的に開始いたしました。当連結会計年度においては、ベトナム子会社にて日本語対応可能なオペレーターによるチャット対応を複数クライアント企業で展開し、電話対応からチャットへのチャネルシフトを推進しております。その結果、国内拠点の電話応答率が大幅に改善したほか、チャット対応における顧客満足度も高い水準を維持しております。また、国内拠点における研修プログラムを通じた品質教育の徹底により、国内と遜色のない対応品質と生産性を実現しております。2027年3月期においては、対応クライアント企業数のさらなる拡大と人員体制の増強を計画しており、国内の人手不足を補完する重要な戦力としてオフショアBPOの拡充を推進してまいります。あわせて、AIによる同時通訳を活用し海外から日本国内向けオペレーションを提供する等、外国人労働者の活用も積極的に進めてまいります。
(DX推進)
当社グループにおけるDXは、単なるIT化やデジタル技術の導入にとどまらず、業務プロセスや組織文化・風土の根本的変革を通じて新たな価値を創造し、競争優位を確立することを目的としております。
こうした認識のもと、2025年10月にDX推進本部を新設いたしました。本部長にはCEOが就任してトップダウンで全社DX戦略を推進し、本部長代理にはCFOが就任して投資判断や予算面からDX推進を支える体制を整えております。また、社内のIT関連部署及び各事業部門に配置されているIT関連担当者を一つの総合組織に集約し、全社横断で迅速かつ実効性のある取り組みを進めてまいります。
当社グループのDX推進は、業務効率化やコスト削減にとどまらず、顧客体験の向上及び新たなデジタルビジネスの創出を通じた企業価値の向上を目的としております。具体的には、以下の取り組みを進めております。
①これまで部門ごとに個別最適で運用されてきた既存システムを全社共通基盤として再構築し、データ活用基盤の整備とデータガバナンスの確立を進めてまいります。
②顧客対応業務においては、CTI(高性能電話システム)にAI機能を実装させ、通話内容のリアルタイム要約、最適なFAQの自動生成、顧客感情分析によるアラート等、AIを活用したオペレーター支援を高度化し、省人化や業務効率の向上と品質の均一化を図ってまいります。
③社内業務においては、コーディング支援、仕様書・報告書の作成、議事録作成、社内問い合わせ対応等のバックオフィス業務にAIを活用し、全社的な効率化を推進してまいります。
④DX人材の不足が深刻な課題であることから、人事部門とDX推進部門が共同で「デジタル人材開発」を制度化し、デジタル人材育成プログラムを体系的に提供してまいります。専門人材の育成に加え、全従業員のデジタルリテラシー向上及び開発者育成を通じて、現場からの改善提案を活発化させるとともに、DXを全従業員が自分事として捉える組織文化の醸成に取り組んでまいります。
⑤当社グループはBPO事業者として多くのクライアント企業の機密情報や個人情報をお預かりしており、情報セキュリティの確保は事業継続の根幹であると認識しております。近年、ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃が高度化・巧妙化し、国内外の企業において深刻な被害が相次いでおります。こうした脅威に対し、ネットワークの監視体制やエンドポイントセキュリティの強化、データバックアップ体制の多重化、従業員へのセキュリティ教育の徹底等、技術面・運用面の双方から対策を講じております。また、万が一のインシデント発生時に備え、初動対応手順の整備や被害の最小化と早期復旧を図る体制を構築しております。今後もセキュリティ対策への継続的な投資を行い、クライアント企業からの信頼に応えてまいります。
これらの取り組みを通じて、コンタクトセンターの枠組みを超えたオンリーワンの付加価値を実現するとともに、持続可能な事業成長を支える基盤を構築してまいります。
(サービス品質の向上)
当社グループは、クライアント企業の課題を解決するとともに、サービスをご利用いただくエンドユーザーの不便やお困りごとを解消することをコンセプトとしてグループ経営理念を掲げております。その実現を支える強みは、コンタクトセンター、フィールド、IT・DXの三位一体によるサービス提供にあります。各BPO拠点においては、応答品質のモニタリング、評価分析、改善活動、報奨制度、品質管理担当者のスキル向上等を通じて、品質向上に向けた体制の充実を図っております。
当連結会計年度においては、ITサポートサービスにおけるメンバーシップ団体であるHDIの国際基準に基づき、当社グループより29名が最高評価である「クオリティ格付け(個人評価)」三つ星を獲得し、その内9名が満点評価を受けました。これは日々の品質向上活動の成果であり、今後も外部評価の活用を通じて品質の客観的検証と継続的改善に取り組んでまいります。あわせて、主要クライアント企業を対象とした満足度調査を実施した結果、営業及びオペレーションに関する評価は総じて高水準を維持しており、特に地方拠点展開によるBCP(事業継続計画)構築については調査開始以来継続して高い評価をいただいております。また、AIやチャット対応の導入をはじめとするDXの取り組みについても、業務効率化やコストパフォーマンス向上への貢献として高く評価されております。一方、単なる業務委託を超えた付加価値提供への期待が一層高まっていることも明らかとなり、これらの結果を踏まえ、サービスの総合的な品質向上と新たな価値創出に引き続き取り組んでまいります。
このほか、品質管理の社内表彰式の開催やスキル認定に加え、全従業員を対象としたITパスポート資格取得推進プロジェクトを開始し、DXの共通言語となるデジタルリテラシーの底上げにも取り組んでおります。また、「人材」「オペレーションプロセス」「IT・DX等のテクノロジー」といった観点における外部評価機関からの評価を社内に取り入れ、継続的な成長に繋げる取り組みを推進しております。
(新たなBPO拠点の開設)
当社グループは、これまで東北・北陸地方を中心にBPO拠点を展開してまいりました。今後も旺盛な需要に応えていくため、長期的には新たな大規模拠点の展開を進め、受託能力の拡大を図る必要があると認識しております。この方針のもと、2024年6月に岩手県一関市において500席規模の「岩手BPOフォートレス」を開設したほか、秋田県潟上市では800席規模の大規模拠点「秋田BPO潟上キャンパス(仮称)」を建設中であり、2026年夏季の開設を予定しております。「富山BPOタウン」においても、隣接地における新たなサテライト拠点の設置を検討しております。一方、資材高騰による建築費の上昇等を踏まえると、大規模拠点の設置には引き続き慎重な判断が求められる状況であるため、中規模のサテライト拠点を機動的に展開することで、当社グループに対するアウトソーシング需要に柔軟に対応してまいります。
(人材活用)
当社グループは2018年に女性活躍推進プロジェクトを立ち上げ、現在はダイバーシティ推進プロジェクトとして運営しております。2026年度までに女性管理職比率50%の達成を目標に、人事制度や人材育成方法の見直しを通じて柔軟かつ多様な働き方を推進しております。この結果、当連結会計年度における当社従業員の女性管理職比率は42.7%(前年度45.2%)となりました。また、上場企業等を対象に実施する「企業の女性活躍度調査」の2026年版「女性が活躍する会社BEST100」(株式会社日経BPより公開)において総合ランキング43位に選出され、特に「管理職登用度」のカテゴリーで高い評価をいただいております。各BPO拠点では、キャリアパスに応じたスキル教育に加え、管理職登用後の従業員を対象とした思考力・リスクマネジメント力・モラルを養う継続的な育成プログラムを構築しており、次世代の幹部候補の輩出に繋げてまいります。あわせて、リスキリングとして公的資格・業界資格の取得促進、ITリテラシー向上を目的としたIT部門による社内研修とスキル認定も進めてまいります。
ダイバーシティ推進の一環として、子の看護等休暇の対象範囲拡大、積立有給休暇の導入、不妊治療や婦人科検診等に利用可能なウェルネス休暇の新設等、従業員のライフスタイルに応じた休暇制度の拡充を検討しております。多様な人材が安心して働き続けられる環境を整備することにより、人材の定着と組織力の強化を図ってまいります。
健康経営の取り組みとしては、従業員の健康状態の改善が生産性向上及び人材の確保・定着に繋がるとの考えのもと、定期健康診断の受診率向上、ストレスチェックに基づく職場環境の見直しと業務量調整、ウォーキングやヨガ等の運動イベント開催、健康運動に関する情報提供等を実施しております。また、女性や若年層が多い職場であることを踏まえ、女性特有の健康課題に着目し、全従業員向けのeラーニング実施等、未病対策の取り組みを強化しております。こうした取り組みが評価され、2022年から5年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されました。
(地域貢献)
国内における地方都市の人口減少や地域活性化は、重要な社会課題であると認識しております。当社グループは、地域社会への貢献を重要な基本戦略として位置付け、地域活性化と女性活躍をビジネスの根幹に据えて事業を発展させてまいりました。働きやすい職場環境の構築に向けては、人材育成に関する各種取り組み・制度・研修機会の提供に加え、カフェテリアや企業内保育園といった施設整備も行っております。特に、企業内保育園の設置及び受入体制の拡大は、女性の労働参加において出産・育児による離職を防ぐ効果的な施策であります。当社グループの従業員のみならず、他社に勤務する地域住民にも開放することで、地域全体への間接的な就業環境整備及び子育て支援に寄与しており、今後もその拡大を進めてまいります。
また、各BPO拠点では地域との繋がりを目的とした各種イベントを通じ、従業員による地域貢献活動を推進しております。地域の一員として貢献する実感はモチベーション向上に資するとともに、本業とは異なる活動に取り組むことで新たな刺激を受け、自らの特性や能力を再発見する機会にも繋がるものと考えております。
このほか、地域活性化と女性が活躍できる場の拡充を目的として、秋田・富山のBPO拠点にて女子スポーツチーム「アランマーレ」を運営しております。山形県で活動してきた女子バレーボールチームについては、リーグのライセンス基準への対応を目的として、2026-27シーズンより活動拠点を秋田県へ移転いたします。長年にわたりチームを支えていただいた山形県酒田市につきましては、引き続きマザータウンと位置付け、公式戦の開催やアランマーレジュニアクラブ運営等を通じて地域との絆を大切にしてまいります。スポーツを通じた企業内保育園との交流等、地域に根差した活動を継続し、地域住民の皆様に感動をお届けできるよう取り組んでまいります。今後も、若い世代が安心して地元に戻れる環境と、女性が一層活躍できる場の整備を進めてまいります。
(内部統制全般)
当社グループの従業員数は約6,000名規模に達しており、組織の隅々まで企業文化、法令順守、及び内部統制を浸透させることの重要性が一層高まっていると認識しております。また、中期経営計画のもとで「継続的・安定的な成長」を実現するため、責任と権限を明確化し、果断かつ迅速な意思決定と実行を徹底することが不可欠であると考えております。
こうした認識のもと、2025年4月に副社長をチーフガバナンスオフィサー(CGO)に任命し、グループ全体のガバナンス強化を統括する体制を整備いたしました。さらに、当連結会計年度においては「経営会議」を新設し、当社及びグループ各社の業務運営方針、リスクマネジメント、人材マネジメント、重要プロジェクトの進捗管理等を詳細に議論することで、経営上の意思決定を迅速かつ効果的に行う体制を構築しております。取締役会は、会社法に基づく重要な業務執行の決定及び取締役の監督に加え、時宜を得た経営課題についてより活発な議論を行う会議体と位置付け、経営会議との役割分担を通じてコーポレートガバナンス体制の一層の充実を図っております。
また、経営会議の運営を通じて、構成員である役付執行役員(常務以上)が経営判断に直接関与する機会を増やすことで、次世代経営人材の育成にも繋げてまいります。
コロナ禍後、グローバル事業は回復・拡大基調にあり、これに伴い海外拠点の拡充を進めております。一方で、海外子会社は日本本社との地理的・心理的距離に起因しモニタリングが行き届きにくく、不正リスクが生じやすい傾向があると一般に指摘されております。そのため、国内で海外事業を管轄する子会社内に専任部署を設置してモニタリングを強化するとともに、本社を含めた定期的な会議の開催、情報共有、コミュニケーション機会の拡大、労務管理や現地法令・規制の把握等に努めております。さらに、2026年4月には海外ガバナンス担当の執行役員を配置し、海外子会社に対する統制体制を強化いたしました。加えて、内部監査体制を拡充して現地への往査頻度を高め、現地環境への理解と関係者との信頼関係を構築しながら、監査を通じて改善提案を行うことで、グループ全体のガバナンス強化に寄与してまいります。
当社グループは、2019年4月に持株会社体制へ移行し、経営責任と執行責任を明確化いたしました。2022年2月には、取締役会の諮問機関として「指名報酬委員会」を設置し、取締役及び監査役の指名・報酬に関する手続きの公正性・透明性・客観性の強化を図っております。指名報酬委員会においては、近い将来に見込まれる経営体制のサクセッションプランについて検討を進め、後継者育成の基本方針とスケジュールを策定しております。その一環として、当連結会計年度においても役付執行役員以上からのレポート提出と個別面談を実施し、後継候補者の評価・見極め・絞り込みを行ったほか、新たに幹部職に就任した人材についても面談を実施し、次世代の経営を担う人材の発掘と育成の裾野を広げております。今後もコーポレートガバナンス体制をより一層充実させ、継続的な成長を支える経営基盤を整えることにより、新たな価値創造への挑戦を推進してまいります。
以上の諸施策により経営資源を集中的に投下し、さらなる成長と株主価値の向上に努めてまいります。