有価証券報告書-第23期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/20 16:02
【資料】
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【項目】
154項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、事業の創出・育成を目的とした“The Business Producing Company”です。「社会を変える 事業を創る。」ことをミッションに、「挑戦者が一番会いたい人になる。」ことが当社のビジョンです。新しい事業を創るためには、「構想し、戦略を立て、仲間を集め、挑戦する」ことが必要であり、そのプロセス全体において常に「枠を超える。」ことが、最も大切なバリューだと考えております。
ミッションの実現と企業価値向上の両立のために、今後は、当社のコア・ケイパビリティであるビジネスプロデュース事業に経営資源を集中していく方針です。国内・海外の大企業、ベンチャー、政府、投資家等、様々なプレイヤーとの連携、インキュベーション事業で培った知見・スキルの活用等により、ビジネスプロデュース事業を継続成長基盤としてより一層の事業拡大を目指してまいります。
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(2)経営戦略等
当期は中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)の1年目として、以下3点を重点テーマを中心に順調に進展した1年となりました。中計2年目となる来期も、引き続きビジネスプロデュース拡張のための先行投資を行いつつ、掲げた重点テーマの取り組みを着実に達成してまいります。
①ビジネスプロデュース事業の拡張による継続成長基盤化
ビジネスプロデュース事業に経営資源を集中し、サービスライン・陣容・協業・機能の4つの拡張を進めてまいります。
サービスライン拡張:
これまでフォーカスしていた事業創造戦略策定のフェーズから、その戦略を実装するフェーズの支援や、付随する多様な顧客ニーズを支援するための機能(ビジネスプロデュース・インストレーション等)をサービスラインとして拡張してまいります。当期は、「Technology & Amplify」(T&A)というプラクティスを新たに立ち上げました。T&Aはこれまでのビジネスプロデュースに「デジタル」「テクノロジー」という切り口を加え、事業創造支援により実装面の価値を付加することを企図しております。
陣容拡張:
ビジネスプロデューサーの採用・育成を強化し、2025年3月末には115名(2022年3月末時点58名)まで人員を拡大する予定です。当期は、前期末58名から87名に大幅増員しております。
協業拡張:
株式会社電通グループと資本業務提携を行い、相互の強みや提供価値を組み合わせることで、戦略策定から実行支援まで、一気通貫でのソリューションを提供してまいります。また、金融機関と連携し、ソーシャルインパクトボンドの拡大、政府系機関と連携し途上国の社会課題に資する現地・日本のスタートアップ企業の支援を実行します。
機能拡張:
アイペットホールディングス株式会社売却により収穫した資金をビジネスプロデュース事業関連・周辺事業への投資に活用するとともに、インキュベーション事業で培ってきた投資ストラクチャリングの知見やPMIで培った事業経営スキル等をビジネスプロデュース事業の拡大に活用してまいります。
②インキュベーション(ベンチャー投資・事業投資)の適切な収穫
期間損益が重視される株式市場において、ボラティリティが高く、株式市場から評価されにくかったインキュベーション事業については、適切な収穫を進めていく方針です。この方針に基づき、最大のインキュベーション先であるアイペットホールディングス株式会社及び他事業投資先2社を当期に売却いたしました。また、上述のとおり、これまで培ってきた投資育成のケイパビリティは、ビジネスプロデュース事業の機能拡張とそれに伴う収益力の強化に活用してまいります。
③企業価値向上への成長投資と株主還元のバランス
継続的な成長を目指すビジネスプロデュース事業の利益と、インキュベーション事業の収穫により得た原資の使途については、強化したガバナンス体制にて、成長投資と株主還元の最適バランスの観点から、これまで以上に規律(中長期的な企業価値向上)をもって判断してまいります。当期にアイペットホールディングス株式を売却して得た税引き後キャッシュイン約150億円については、成長投資に50億円、株主還元に100億円配分することとしております。成長投資の使途としては、ビジネスプロデュース事業基盤のさらなる強化のための人材投資、インフラ投資、及び一定の社内ハードルレートを前提としたビジネスプロデュース事業関連・周辺事業への投資等を想定しております。株主還元としては、当期末特別配当として20億円配当に加え、2023年5月には上限30億円の自己株式取得を決定しております。今後も引き続き株主還元を着実に実行してまいります。
また、ガバナンス体制の強化は引き続き推進しており、取締役7名のうち4名を社外取締役で構成し、客観性、及び経験・専門性・ジェンダー等の多様性を確保し、モニタリング型取締役会としての機能を果たし、中期経営計画を確実に推進してまいります。
なお、中期経営計画最終年度(2025年3月期)の数値目標として、ビジネスプロデュース事業の売上高60億円、純利益10億円(2022年3月期比で売上高2倍、純利益3倍)を掲げております。また、インキュベーション事業は売上高の多くが株式市場における株式売却によってもたらされることから、現時点において予想を合理的に行うことが困難であるため、計画には含めておりません。保有する投資資産の収穫を進め、含み益を適宜実現していくことで、上記計画値以上の業績を目指してまいります。
(3)経営環境
ビジネスプロデュース事業:
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大による産業構造の変革の機運の高まりを契機に、企業の新規事業・事業創造への関心が高まり、その環境は継続しております。「事業創造」の経営トップアジェンダ化が加速し、日本の経営者の関心事項は、10年前と比較して「新規事業の具体化」への関心が最も向上しております(一般社団法人日本能率協会が毎年発行する“当面する企業経営課題に関する調査”を基に当社集計)。このような課題に対し、当社は10年以上にわたり、「ビジネスプロデュース」という独自のコンセプトで事業創造支援を推進してまいりました。拡大する市場ニーズを最大限取り込み、事業の成長を加速させてまいります。
インキュベーション事業:
ベンチャー投資セグメントにおいては、新規投資を抑制し、既存のポートフォリオの回収を進める方針であります。ポートフォリオの回収は株式市況やIPO動向に伴い振幅することから、見通しを立てにくい状況が続くものと考えております。
(4)優先的に対処すべき課題
①最大の差別性であるビジネスプロデュース事業への投資
ビジネスプロデュース事業へ経営資源を集中し、継続成長基盤化を進めてまいります。
②ビジネスプロデュース事業の差別性をレバレッジ/スケール化する仕組み
ソーシャルインパクトボンド(SIB)ファンドの立ち上げ等、金融機関・政府系機関との協業を推進しております。
③インキュベーション事業の(業績)ボラティリティ低下
ボラティリティ抑制とビジネスプロデュース事業への経営資源集中のため、自己資金投入を抑制し、既存のポートフォリオにつきましては適切な収穫を進めております。
④計画の遂行を実効性をもって後押しするガバナンス体制の構築
2021年6月より取締役会構成を見直し、現在は社外取締役を過半数とする取締役会構成となっております。また、監督と執行の分離のために、モニタリング型の取締役会モデルにシフトしております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、期間業績を表す指標であるセグメント別の売上高、セグメント利益及び、その総和である連結売上高、連結営業利益、及び親会社株主に帰属する当期純利益を重視しております。また、今後の成長の柱であるビジネスプロデュース事業においては、当該事業の売上高・親会社株主に帰属する当期純利益(簡便的に、目標経常利益×税率30%で計算)・人員数・EPSの数値目標を開示しております。