有価証券報告書-第22期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/30 11:04
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業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日)におけるわが国の経済は、国際情勢の不安定さが増す
なかで景気下振れリスクが懸念されたものの、全体では緩やかな回復基調が続きました。当社グループにとって重
要な市場であるEC市場においては、平成27年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は13.8兆
円と前年比7.6%増加し、全ての商取引における、ECによる取引の割合を示す「EC化率」についても前年から0.38
ポイント上昇しております。(経済産業省「平成27年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電
子商取引に関する市場調査)」より抜粋)
このような状況の下、当社グループは、“メールアプリケーションソフトのエイジア”から、“eコマースの売
上UPソリューション(アプリケーションソフトと関連サービスを組み合わせたもの)を世界に提供するエイジ
ア”へ事業領域を拡大し、売上・利益の増大を図るべく、当連結会計年度は、以下の施策に重点的に取り組んでお
ります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
①製品開発の強化
平成29年3月期においては、BtoC型企業向けのマーケティングオートメーションを核としたマーケティングプラットフォームの構築とそのブランディングに経営資源を集中的に配分し、現在の主力製品である「WEBCAS e-mail」のバージョンアップとあわせて製品開発に重点的に取り組んでまいりました。
当連結会計年度においては、下記の通り新製品発売や既存製品のバージョンアップをいたしましたが、個別の大型案件対応のため想定以上にエンジニアリソースを要し、新製品開発業務を一時期中断し案件対応する局面もあったため、売上増加には寄与したものの製品開発という観点では計画に遅れが生じる結果となりました。
(当連結会計年度における新製品・既存製品バージョンアップ)
平成28年6月 マーケティングオートメーション「WEBCAS Auto Relations」を発売
平成28年6月 人工知能テキストマイニング「WEBCAS Sense Analyzer」を発売
平成29年1月 グロウ・ムービージャパンと資本業務提携により動画マーケティング支援サービスを提供開始
平成29年2月 主力製品であるメール配信システム「WEBCAS e-mail」のAPI※1のバージョンアップを発売
平成29年3月 マーケティングオートメーション「WEBCAS Auto Relations」のバージョンアップを発売
なお、当社の主力製品であるメール配信システム「WEBCAS e-mail」は株式会社アイ・ティ・アール発行の市場調査レポート「ITR Market View:マーケティング管理市場2017」において、2015年度メール送信パッケージ市場のベンダー別売上金額シェア1位を獲得いたしました。
②WEBCAS Auto Relations(Ver.1)の販売とコンサルティング力の強化
上述の通り新製品「マーケティングオートメーション WEBCAS Auto Relations」の発売にあわせて、前期より行ってきたブランディング活動の成果である計画比148.2%の新規潜在見込客への営業を中心に販売活動を強化するとともに、マーケティング設計のコンサルティング力の強化に重点的に取り組んでまいりました。
平成28年6月1日より株式会社電通ダイレクトフォースと業務提携を行い販売力とコンサルティング力の向上をはかるとともに、日本マーケティングリテラシー協会が認定している「マーケティング解析士(上級)」を当社が選抜した社員が数名認定を受けております。
また、平成28年10月17日にはダイレクトコミュニケーションに特化したアウトソーシングサービスを提供する株式会社ディーエムエスと業務提携を行い、OEM供給という形態で販売チャネルの拡充に努めました。
加えて、平成28年11月21日には、IoTインテグレーションやEC・オムニチャネルパッケージを提供する株式会社エスキュービズムと、人工知能「AIアナリスト」を通じてWebサイトのコンバージョン※2改善提案サービスを提供する株式会社WACULと、平成28年4月に業務提携を発表したWebサイト構築・運営プラットフォーム「SITE PUBLIS(サイトパブリス)」を提供する株式会社ミックスネットワークの4社で業務提携を行い、ECサイトやWebサイトのコンバージョン※2アップへ向けたトータルソリューションを提供できる体制を構築いたしました。
更には、子会社の株式会社FUCAのデザイン力とあわせWeb戦略のコミュニケーション戦略からWebデザイン、制作までを一気通貫で対応できる体制を強化しコンサルティング事業全体の成長を図ってまいりました。コンサルティング事業全体については、後述セグメントの業績をご参照ください。
③クラウドサービス(ASP・SaaS)※3の強化
成長のために必要な投資を維持・強化し、事業領域の拡大に伴い発生するリスクに耐えうる収益力を確保するため、アプリケーション事業において、利益率と売上継続性(ストック性)の高いクラウドサービスの販売増強に引き続き注力すべく以下のとおり新サービスのリリースや事業提携の推進を行いました。
(当連結会計年度においてリリースした新サービス)
平成28年4月4日発表 国内No.1CMS※4を提供するミックスネットワークと業務提携
平成28年6月13日発表 国内最長の運営実績を誇る情報セキュリティ会社サイバートラストと
SSL証明書※5の発行において連携サービスを提供開始
平成28年7月4日発表 米国を中心にデータを活用したマーケティング支援サービスで45年以上の歴史を持つ
アクシオムコーポレーションの日本法人であるアクシオムジャパン株式会社の
データコネクトサービス「Acxiom Connect™」と連携サービスを提供開始
平成28年10月12日発表 株式会社セランが提供する、簡単に高精度なリターゲティング※6を実現する
「xross data」と当社主力製品「WEBCAS e-mail」を連携
平成28年10月17日発表 株式会社ディーエムエスへ当社戦略製品「WEBCAS Auto Relations」をOEM供給開始
平成28年11月21日発表 株式会社エスキュービズム、株式会社WACUL、株式会社ミックスネットワークと
当社の4社で包括的な業務提携
また、当連結会計年度におけるクラウドサービスの販売においては、高価格帯レンジのSaaSプランの販売が特に順調に推移いたしました。
これらの取り組みの結果、クラウドサービス全体の売上高は110,435千円増加(前年同期比16.8%増)し、769,616千円となりました。アプリケーション事業全体については、後述セグメントの業績をご参照ください。
(単位:千円)
平成27年3月期
(前々期)
平成28年3月期
(前期)
平成29年3月期
(当期)
クラウドサービス売上高554,088659,181769,616
前期比増減額+52,563+105,093+110,435
前期比増減率+10.5%+19.0%+16.8%

利益につきましては、上記に加えてライセンス販売型の大型案件が計画に対して好調に推移したこと、アプリケーション事業に掛かる仕入外注費を効率化できたこと、クラウドサービスの提供基盤となるサーバー等のインフラ増強投資が効率化できたことなどにより増加いたしました。
これらの取り組みの結果、当連結会計年度においては、売上高1,330,425千円(前年同期比16.1%増)、営業利益287,109千円(前年同期比20.0%増)、経常利益291,841千円(前年同期比20.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益176,859千円(前年同期比9.8%増)となりました。
また、当社は平成28年8月1日に上場市場を東京証券取引所マザーズより東京証券取引所市場第二部に変更いたしました。
セグメントの業績は、次のとおりです。
①アプリケーション事業
主力のメールアプリケーションソフトの分野においては、利益率や売上継続性の高いクラウドサービスの販売強化に努めました。
上述のとおり、当連結会計年度においては新製品「マーケティングオートメーション WEBCAS Auto Relations」と当社初の人工知能分析ツール「テキストマイニングシステム WEBCAS Sense Analyzer」を発売し製品戦略を推進するとともに、関連する各分野の企業とのアライアンスを推進いたしました。
また、平成28年8月22日には当社が提供する「WEBCASシリーズ」の導入企業が3,000社を突破したことを発表いたしました。
これらの取り組みの結果、アプリケーション事業全体の売上高は1,125,151千円(前年同期比16.8%増)、売上高総利益率71.4%(前年同期比△1.6ポイント)となりました。
②コンサルティング事業
当連結会計年度より従来の「サービスソリューション事業」のうち、コンサルティングサービスとデザインサービスを分離し、「コンサルティング事業」といたしました。
主力のメールアプリケーションソフトの販売とあわせて配信するメールのコンテンツがより顧客企業の売上に寄与する内容となるよう配信効果分析から企画・制作までをワンストップで支援するとともに、より上流のマーケティング設計を支援できる体制・ノウハウを構築してまいりました。
また、当社の子会社である株式会社FUCAでは、独自に営業強化をはかり大型案件の受注が順調に推移いたしました。
しかし、平成30年3月期以降を展望し、将来の投資として人員の増強を行った影響で、労務費や負担する販売費及び一般管理費が増加し、若干のセグメント損失を計上しております。
これらの取り組みの結果、コンサルティング事業全体の売上高は182,586千円(前年同期比22.9%増)、売上高総利益率17.6%(前年同期比△8.7ポイント)となりました。
③オーダーメイド開発事業
当連結会計年度より従来の「サービスソリューション事業」のうち、受託開発と保守サービスを分離し「オーダーメイド開発事業」といたしました。
当連結会計年度においては、上述の重点施策①「製品開発の強化」を推進するべく社内エンジニアリソースを集中させたため、新規の受注活動を積極的には展開せず、従来の利益率の高い案件を継続していく活動をいたしました。
その結果、オーダーメイド開発事業全体の売上高は22,687千円(前年同期比33.3%減)、売上高総利益率59.8%(前年同期比+37.3ポイント)となりました。
セグメント別売上高及び売上高総利益率
平成28年3月期平成29年3月期
金額・利益率構成比金額・利益率構成比
アプリケーション事業売上高(千円)962,91784.0%1,125,15184.6%
売上高総利益率73.0%-71.4%-
コンサルティング事業売上高(千円)148,62513.0%182,58613.7%
売上高総利益率26.3%-17.6%-
オーダーメイド開発事業売上高(千円)34,0043.0%22,6871.7%
売上高総利益率22.5%-59.8%-
合計売上高(千円)1,145,547100.0%1,330,425100.0%
売上高総利益率65.4%-63.8%-

※1 API
APIとは、「アプリケーションプログラミングインターフェース」の略語で、WEBCAS e-mailの機能を一部公開し、他のソフトウェアと機能を共有できるようにしたものです。例えば大手ソフトウェア開発会社がCRMアプリケーションを開発する場合にメール配信機能だけWEBCAS e-mailの機能を使用したい際に、公開したAPIを開発するCRMアプリケーションに組み込むだけでメール配信機能が開発でき、開発工数の短縮化が可能となります。
※2 コンバージョン
Webサイト上における何かしらの成果のことで、一般的にはWeb上での「会員獲得」「資料請求」や「物品購入」などを意味します。
※3 クラウドサービス(ASP・SaaS)
ソフトウェア提供者(この場合、当社グループ)が管理するサーバー上で稼動しているソフトウェアを、ユーザー企業がインターネット経由でサービスとして利用する形態です。ユーザー企業は、サーバー・ソフトウェアの管理やライセンス費用の負担なく、毎月の使用料を支払うことで、比較的安価な利用が可能となります。
※4 CMS
コンテンツマネジメントシステム(Contents Management System)の略でWebサイトに表示するテキストや画像などのコンテンツを統合・体系的に管理し、Webサイトに訪問したユーザーに合わせて予め設定した条件通りに表示する処理を行うシステムの総称です。
※5 SSL証明書
Secure Sockets Layerの略で、インターネット上での通信を暗号化することでセキュリティの高い状態でデータ通信を行う技術が使用されていることを証明する証明書。第三者によるデータの盗聴や改ざんを防止することができます。
※6 リターゲティング
Webサイトに訪れたユーザーに対して、Web広告やメール等で再訪問を促すアプローチのことです。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度末における現金及び現金同等物残高(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて51,665千円減少し、878,782千円(前連結会計年度末比5.6%減)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な発生要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は、239,210千円(前年同期比28.8%増)となりました。主な資金増加要因は、税金等調整前当期純利益258,761千円によるものであり、主な資金減少要因は、法人税等の支払額94,557千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支払われた資金は、167,557千円(前年同期に投資活動の結果得られた資金84,259千円)となりました。主な資金減少要因は、有形固定資産の取得による支出63,804千円、無形固定資産の取得による支出92,822千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果支払われた資金は、122,710千円(前年同期に財務活動の結果得られた資金20,934千円)となりました。資金増加要因は、自己株式の処分による収入112,328千円であり、資金減少要因は、自己株式の取得による支出198,302千円、配当金の支払額36,736千円によるものであります。