訂正有価証券報告書-第13期(平成27年12月1日-平成28年11月30日)

【提出】
2019/02/01 15:06
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【項目】
119項目

対処すべき課題

当社グループは、急速に変化していく資産運用ビジネスの分野において、「最高のプロフェッショナルであり続ける」という企業理念のもと、「クライアントファースト」、「パフォーマンスファースト」、「コンプライアンスファースト」を行動規範とし、豊富な知識と経験によって培われたノウハウを活かし、既存の考え方にとらわれない、時代の流れに応じた柔軟な発想で業務に取り組み、顧客に満足度の高いサービスを提供することを目指しております。その上で、さらなる経営基盤の安定を図り継続的な成長を実現する観点から、自己資金の活用により不動産市況に左右されにくい収益基盤を早期に確立するとともに、中長期的には当社グループの強みを活かせる分野へと事業の対象を広げていく方針であります。
(1)不動産市況に左右されにくい収益体制の構築について
当社グループは、売上総利益及びEPS(1株当たり純利益)を重要な経営指標と捉え、これらを中長期的に成長させていくことを基本的な考え方としております。
当社グループは、投資運用事業において、顧客である機関投資家に対し、私募ファンドの形式で主として不動産又は不動産信託受益権に対する投資機会を提供する資産運用(アセットマネジメント)事業を行っております。一般的に、資産運用会社の規模は、その運用資産の残高で評価されるものであり、また、資産運用の対価として定期的に得られるアセットマネジメントフィー(管理報酬)は、通常は運用資産の額によってその金額が決まるものであるため、資産運用会社にとっては、運用資産残高を積み上げる方向にインセンティブが働く可能性があります。しかしながら、当社グループは、上記の企業理念のもとで、顧客の満足を第一に考える投資サービスの提供を最重要視しており、最も利益の出るタイミングにおいて投資案件の売買を行うことこそが資産運用会社の使命であり、資産運用会社が自らの運用資産残高にこだわるあまり、顧客の投資案件の売却機会を逃すようなことは決してあってはならないと考え行動しております。このため、不動産売買市況の変動等にあわせ、当社グループの運用資産残高も大きく変動しております。
当社は、中長期的に見れば、顧客にとって望ましい行動を繰り返すことにより、顧客からの信頼が増大し、当社グループのブランド力が高まり、ひいては当社グループの成長にもつながるものと考えております。実際に、当社グループの投資方針や、過去にとってきた投資行動、それらに基づく投資実績に対して信頼を得てきたことが、顧客との継続的な取引につながっていると認識しております。したがって、今後も、当社グループは、運用資産残高を経営上の目標指標とせず、顧客の満足を第一に考える投資サービスを提供する方針を維持いたします。
これらの事業特性により、当社グループの投資案件の取得又は売却に係るフィーやセイムボート投資に係る売却益(売却損)等の計上時期に偏りが生じるおそれがあり、当社グループの業績を短期間で区切った場合には、業績変動の振幅が比較的大きくなる可能性があります。また、不動産売買市況の変動等に応じて運用資産残高が減少している時期においては、資産運用の対価として得られる各種フィーが減少し、投資運用事業の業績が縮小いたします。
しかしながら、当社は、安定的に利益を出すことの必要性も強く認識しております。上記の方針を維持しつつ、不動産売買市況に左右されにくい収益基盤を確立するため、当社グループは、投資銀行事業において、自己資金により、中長期的に高い稼働率を見込むことができる優良な賃貸不動産等の取得を積極的に行っており、今後においてもこれを継続してまいります。不動産売買市況と異なり、不動産賃貸市況の変動は比較的小さいため、それらから得られる賃貸収益は当社グループの安定的な収益となっており、既に当社グループの販売費及び一般管理費を一定程度カバー可能な水準に達しております。
なお、自己資金により取得した不動産は、安定収益を享受しつつ、その価値を向上させる施策を行いながら保有いたしますが、好条件の買い手が現れた場合や、より優良な投資案件が発掘された場合等、適切なタイミングにおいては機動的に売却し、保有資産の入替えも図るという観点から、貸借対照表上は「販売用不動産」(流動資産)に計上しております。
(2)当社グループ全体の長期的な成長戦略について
当社グループはこれまでのところ、オルタナティブ投資分野において主として不動産又は不動産信託受益権を対象として投資・運用事業を展開してまいりました。しかし、今後のグループ全体の更なる発展に向けては、これまでの事業領域から、当社グループの強みを活かせる他の分野へと事業の対象を広げていく必要があると認識しております。
これまでに培ってきた当社グループの強みとして、資産のオフバランス化や流動化、証券化手法の知識経験はもとより、不動産投資の目利きやバリューアップの実績、これらの活動を通じて築いた顧客や金融機関等関係各社からの信頼、幅広い営業チャネル等が挙げられます。当社グループは、既に、こういった事業プラットフォームを活用して、再生可能エネルギー関係分野への投資や、ベンチャー企業投資などの投資活動、さらには、事業再生支援やM&Aに係る助言等を含む各種コーポレートアドバイザリーサービスの提供を始めております。このように、当社グループの強みを活かし、より広範な投資対象を捉えた投資運用ビジネスを展開し、さらには、関連するビジネス分野に事業の裾野を広げていくことが、不動産投資分野のみの環境に左右されない、長期的かつ持続的な成長を達成するために必要であると考えております。
(3)優秀な人材の確保と社内育成、流出の防止について
当社グループの顧客に対する投資サービスの提供及び自己資金による投資(自己勘定投資)は、オルタナティブ投資やファイナンスにかかる専門的知識はもとより、豊富な業務経験やノウハウの裏付けがあって初めて実現するものであります。当社グループには、弁護士や公認会計士、不動産鑑定士、一級建築士といった専門性の高い人材や、日本における不動産証券化ビジネスの黎明期から当該分野で活躍してきた経験豊富な人材が多数所属しており、当社グループの業務において中心的な役割を担う優秀な人材の厚みは、現在の当社グループの大きな強みであると考えております。
今後においても、継続的に質の高いサービスの提供及び自己勘定投資による利益成長を実現していくために、十分な経験を積んだ専門性の高い人材を確保する他、未経験であっても有望な若手を採用し、社内において教育を行うことにより、優秀な人材を育成していくことが当社グループの重要な課題であると認識しております。また、当社グループが属する業界は比較的人材の流動性の高い業界ではありますが、従業員のモチベーションを高めるような人事制度や働きやすい職場環境を整備する等、人材の外部流出を最小限に留める工夫も継続して行ってまいります。