有価証券報告書-第22期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 9:41
【資料】
PDFをみる
【項目】
124項目

対処すべき課題

(1)グループ経営方針、経営環境、経営戦略等
当社グループは、「ビジネスの未来をデジタルで創る、ビジネスの未来をユーザーと創る。」をグループビジョンとし、顧客企業のインターネットを通じたマーケティング活動(デジタルマーケティング)を支援し、顧客企業が消費者に対して、質の高い体験を提供することで企業価値を高めることを支援しております。当社グループは、ユーザー体験(UX)デザイン領域においてNo.1ブランドになることを目指して、既成概念にとらわれない提案力、創造性の高いクリエイティブ力、先端的な技術力を強みとした独自性の高いサービスを提供し続けることを方針としております。
当社グループのビジネスモデルの中心は、顧客企業にサービスを提供するソリューションビジネスです。ソリューションビジネスは知識集約型、労働集約型の双方の側面を持っておりますが、当社では、特に大規模かつ難易度の高いプロジェクトにおけるサービスの設計や企画、プロジェクトマネジメントといった知識集約型の高付加価値領域のサービスに注力しております。
現在、消費者の情報収集はテレビや新聞等の媒体からインターネットへシフトしてきており、デジタル(ICT)技術を活用した広告宣伝や販促活動を行うデジタルマーケティングのニーズは急速に拡大しております。また、デジタル技術を用いて企業のビジネスモデルやビジネスプロセスを変革する「デジタルトランスフォーメーション」に取り組む企業も増加しており、ユーザー体験(UX)デザインを強みとする当社領域に対する注目は増しております。一方、市場拡大に伴い、戦略コンサルティング企業、広告代理店、SIベンダー等がデジタルマーケティング領域に参入するなど、当社をとりまく競争環境は激化しております。また、デジタル技術の導入が顧客企業の経営に大きな影響を与えるようになった結果、システム間の高度な連携、複数ベンダーが参加するプロジェクトなど、プロジェクトの運営が高度化しております。このような事業環境の中、当社は、ビジネス開発、システム開発、デザイン等のすべてのプロセスをユーザー体験から導出する独自のアプローチによるプロジェクトの事例、サービスの質によって、競合企業に対して競争優位を確保しております。
高付加価値型ソリューションサービスの競争優位は人材が中心となり、当社グループの成長は人材に強く依存しております。当社グループでは、業界の先駆者としての知名度に加え、先進事例へのチャレンジや、大規模かつ世間の耳目を集めるプロジェクト事例等を通じ、当社ブランドや業界内でのプレゼンス向上を行い、優秀な人材の獲得に繋げています。
一方、インターネット業界は人材の流動性が高く、当社人材の流出リスクも高く、人材だけで中長期にわたる成長を維持することは困難になってきております。当社グループでは、知識集約型のサービスの他、過度に人材の質に依存しない資本集約型サービスや、人材確保が比較的容易な領域における労働集約型サービス等の複数のビジネスモデルを企業グループ内に保持することが中長期的な成長に必要不可欠と考え、プロダクトやサービス開発を積極的に行うとともに、外部企業との提携、M&Aにも積極的に取り組んでいく方針です。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響から世界経済は急速に悪化しており、日本国内においても社会経済活動の停滞を受け、企業収益の大幅な悪化がみられる等、経済環境は大変厳しい状況にあります。特にサービス業を中心にマーケティング活動を縮小する企業の増加が懸念され、当社グループが提供するサービスの需要が一時的に低下することが想定されます。他方、企業のテレワーク化、学習コミュニケーションのオンライン化、ECによる購買増、フードデリバリーサービスの急速拡大等、外出をしないことを前提とした新しい生活様式が急速に広まり、それに対応し、独自の顧客基盤とECシステムを整備し、消費者に商品を直接に販売する”Direct to Consumer”(D2C)やデジタル技術を用いて製品やサービス、ビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)へ取り組む企業が増加してきており、顧客企業のデジタルマーケティングの支援を行う当社グループの社会的役割は一層増していると考えられます。
当社グループは、経済環境の更なる下振れリスクを含め、市場環境を注視しながら、企業のデジタル化を支援するサービスのより一層の拡充をはかるとともに、テレワークを中心とする働き方を推進し、今後の事業運営に取り組んでまいります。
(2)目標とする経営指標
主な成長性・収益性の指標として、売上高及び売上総利益率、営業利益率を重視しております。なお、当社は中長期的な成長を目指して新サービスの開発、M&A等の投資を積極的に行う方針であり、短期的には営業利益率が低下することがあります。
(3)優先的に対処すべき課題
当社グループは、短期的な業績の向上、中長期的な企業価値の向上を遂げるため、以下の主要課題に取り組んでまいります。
① 人材採用と育成
当社収益は人材の質と量に大きく依存しております。デジタルマーケティング業界へ参入する企業が増え、競争環境が激化するに従い、人材の確保は困難になってきております。当社グループは、先進的な事例や実績等の情報発信を通じた広報活動の強化により、業界内外におけるプレゼンスを向上することで優秀な人材の採用に努めるとともに、教育やモチベーションマネジメントおよび働き方改革の推進による職場環境の改善等の施策により、離職率の低減と人材の質の向上を目指してまいります。
② 総合的なデザイン力の強化
当社グループは、デジタル技術を活用した新たな顧客体験を創出し、顧客企業と消費者の間の感情的な結びつきを強固にすることを目指しております。その実現のためには、ウェブサイトやアプリケーションのようなデジタル領域のデザインに留まらず店舗等のリアル領域でのデザイン力の強化が必要となってきます。当社グループは、外部人材の活用や他社との協業を通じて、総合的なデザイン力の強化を進めてまいります。
③ プロジェクト収益性の強化
プロジェクトの大型化、基幹システムとの連携等、デジタルマーケティング関連のプロジェクト業務は高度化しており、工期遅延、コスト超過等が発生するリスクは高まっております。当社グループは、受注から納品までの業務プロセスの継続的な整備・運用、従業員教育によるプロジェクトマネジメントの強化を行うと共に、戦略的パートナーシップを締結するアライアンスパートナーの選定、関係強化等を通じ、購買マネジメントの強化を進めてまいります。
④ 収益の安定化
当社グループは、受託サービスにおいて顧客企業の検収が特定月に集中することから売上及び利益に大幅な季節変動が発生する傾向にあります。季節変動を伴わない継続的サービスの強化、適切なアウトソーシング、営業・制作人員の柔軟な配置による固定費の適正化等を通じて、収益の安定化に取り組んでまいります。
⑤ さらなる成長基盤の確保
現在、当社グループの事業は、主に大企業を対象としたプロジェクト型の受託サービスが中心になっております。さらなる成長基盤の確保のために、サービスの汎用化、SaaS等の資本集約ビジネスへの投資等を通じて、さらなる成長基盤の確保に取り組んでまいります。
⑥ NTTデータグループとの協業強化
当社グループは、中長期的な企業価値向上のため、当社グループが持つ顧客体験設計のノウハウと、NTTデータグループが持つシステム構築力を融合することにより、新たなサービスの創出、新規顧客の開拓および大口顧客の取引拡大を通じて両社の協業を強化してまいります。
⑦ 従業員の健康、安全の確保
当社グループは、新型コロナウイルスの感染拡大に対するために、従業員の安全確保を最優先とするために、2020年3月よりテレワーク中心の勤務形態に移行しております。一方、テレワークにおける労務管理、メンタルケア等、勤務形態の変更により新たな課題も生じております。当社は、引き続き従業員の安全確保を最優先とし、勤務体系の変更により生じる新たな労務課題の解決を行ってまいります。