有価証券報告書-第16期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 16:52
【資料】
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【項目】
141項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、有価証券提出日現在(2021年6月25日)において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めております。近年、国内外の製薬会社はその生命線である新薬の創出のため、自社の研究所以外に大学等との共同研究による効率的な創薬研究の活性化、グローバルでの企業統合、買収等により、開発候補品の充実を目指しています。また、新薬開発における投資効率を最大化するためには実質的な特許期間、すなわち後発品出現までの期間を最大化する必要がありますが、そのために国際共同治験を活用し、主要市場国における早期・同時発売を図ることは避けられない状況となっております。このような状況に対応していくため、当社グループでも経営施策を機動的かつ柔軟に展開していくことが要求されております。
当社グループでは、特定の領域、受託業務、治験段階に注力し、大手製薬会社と同等の立場で医薬品開発を実行・支援できる知識・技術・経験を有するCROを「CDO(Contract Development Organization)」と称しております。当社グループは前述した製薬会社の要求に応えるため、主要事業のCRO事業において、主に治験の主たる段階であるフェーズⅡ、フェーズⅢにおけるモニタリング業務並びにこれに付随する品質管理業務及びコンサルティング業務に特化したCDOを目指し事業展開を行うことで、同業他社との差別化を図っております。
また、近年増加しているがん領域及び中枢神経系領域疾患の開発品目に対応するため、人材採用、教育研修及び組織改変により受託体制の強化を図っております。今後も、増加する国際共同治験に対応するため、子会社を含めた人材採用、教育研修及び組織改変により受託体制の強化を図ってまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元バランスの最適化を図ることを重要施策と位置付け、安定的な利益還元の源泉となる1株当たり当期純利益(注)を目標とする経営指標にしております。
(注)1株当たり当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益を発行済株式数で除した数値であり、株主価値を形成する重要な指標です。株式の評価指標の一つであるPER(株価収益率)の計算根拠の一つでもあり、株価収益率が一定水準に収束すると、1株当たり当期純利益の向上は株価水準の向上に結び付き、結果として株主価値の向上に寄与するものとなります。
(3)経営環境及び経営戦略の現状と見通し
国内におきましては、当社グループが属するCRO業界の市場規模は引き続き成長を続けております。当社グループといたしましては、これらの状況を踏まえて、今後も主に治験の主たる段階であるフェーズⅡ、Ⅲにおけるモニタリング業務並びにこれに付随する品質管理業務及びコンサルティング業務に注力し、適正な受託費で信頼性の高いデータの収集能力を有するCROとして、顧客への期待に応えていく所存であります。
そのためには、モニタリング業務の中心となる優秀なCRAの確保及び育成は必要不可欠となっております。CRAの人材確保にあたっては、即戦力となる優秀な中途採用者の積極的な獲得及びCRAの適性を有する新卒者、未経験者の採用を進めるとともに、採用したCRAに対して、入社時には相当の研修期間を設け、また、入社後も継続的に研修を実施することにより、モニタリング業務の品質の向上を常に図っております。
また、新薬の開発においては、国際共同治験を利用したグローバルな開発が増加しており、日本を含むアジア、米国及び欧州で国際共同治験を実施できる体制を整えることで、中長期的なCRO事業の拡大に努めていく方針です。現在、米国、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス、オランダ、ポーランド、チェコ、ルーマニア、ハンガリー、中国、韓国、台湾、シンガポール等に現地法人を有しており、今後は、現地法人の機能をさらに強化することで、国際共同治験に対応できる体制作りを進めてまいります。
さらに、当社グループは、CRO事業で取り組む医薬品開発業務の下流に位置する製造販売後の市場において、医薬品販売支援を行う育薬事業を展開しており、企業・医師主導の臨床研究、販売企画など複数の案件を受託しております。製造販売承認後の医薬品の価値を維持、増大させる活動を「育薬」と呼び、医薬品のライフサイクルマネジメントとして重要視されるようになってきています。また、臨床研究に係わる不祥事が多発したことから、臨床研究の透明化と適切な実施が求められ、2018年4月より臨床研究法が施行されています。このような背景のもと、臨床研究を中心としてアウトソーシングニーズが増加しており、医薬品販売支援業界の市場規模は拡大傾向にあります。当社グループの育薬事業では、CRO事業で得たノウハウを活かし、より専門性の求められる業務を受託し、高い品質のサービスを提供することで、同業他社との差別化を図ってまいります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループにおきましては、継続的な売上高及び利益の拡大、それを支える内部管理体制の充実を図るため、以下の課題を柱として取り組み、成長を期してまいります。
①国際的な治験業務の体制強化
当社グループはアンメット・メディカル・ニーズが高く、治験難易度の高いがん、中枢神経系、免疫疾患などの特定業務への特化、特定治験段階への特化を推進することによって構築した治験の各業務における多様な知見・技術を欧州、米国など世界各地に展開することで、グローバルでの研究開発に積極的な製薬会社に対して、高品質のCROサービスをグローバルワンストップに提供しております。
2018年4月、当社米国子会社が米国のCROであるAccelovance,Inc.(Linical Accelovance America, Inc.に商号変更済み)を子会社化し、世界最大の市場である米国での当社グループの機能強化を図りました。これにより、日本・アジア、米国、欧州の3極を枢軸とする国際共同治験に対応する体制を一層充実させました。さらに、2019年5月には中国上海に新たに子会社を設立しております。
現在、米国、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス、オランダ、ポーランド、チェコ、ルーマニア、ハンガリー、中国、韓国、台湾、シンガポール等に現地法人を有しており、今後も、これらの国における国際共同治験の実施ニーズに合わせて規模拡大、機能強化を行い、現地法人の国際共同治験に対応できる体制を一層強化してまいります。
一方で、国際共同治験の実施には、参加国における規制当局の考え方、医療保険制度、医療機関の体制、治験に対する患者側の参加姿勢など、様々な環境の違いがあります。当社グループにおいても、各拠点の環境の相互理解に基づく手順やシステムの統合、プロジェクトマネジメントの強化は、喫緊の課題となっております。
②モニタリング業務の品質の向上・維持
当社グループの主要な業務でありますモニタリング業務の品質を向上・維持することは、製薬会社との良好な信頼関係を構築し、経営基盤を安定化するうえで最重要の課題であります。そのため、品質マネジメントシステム、教育研修のさらなる充実化、ITシステム等を活用したモニタリングの効率化などを推進しています。また、日本では品質管理部門や当社独自の組織であるプロジェクト・コミッティーの機能を強化することにより、モニタリング業務、ひいては臨床試験の品質の向上・維持に努めてまいります。なお、プロジェクト・コミッティーとは、受託業務に係る品質を担保するために設置されている社内の組織であり、受託した治験実施計画書に対して事前に当社グループとして特に留意すべき点の確認・指示を行います。また、国際共同治験の増加に伴い、治験実施計画書の日本における実施可能性の検討や代替案の提示など役割範囲が拡大しております。構成メンバーは、臨床試験を主体とする開発業務に精通した経験者及び社外の医師から成り、グローバル化した当社グループの全社的な品質の向上と標準化に貢献するものとなっております。
③医薬品製造販売後支援事業への展開
当社グループは、CRO事業で取り組む医薬品開発業務の下流に位置する発売後の市場において、医薬品製造販売後の支援業務を行う育薬事業を展開しており、臨床研究等の企画、モニタリング業務、監査業務など複数の案件を受託しております。
また、日本では、2018年4月に臨床研究法が施行され、発売後の医薬品に関する臨床研究は、治験とほぼ同様のルールによる規制を受けることになりました。この臨床研究法は、治験と同様に臨床研究においても責任の所在を明確化しデータの信頼性を確保するためのものとなっており、これによって客観性とリソースを確保するためのアウトソーシングニーズが拡大してきております。育薬事業にとっても大きなビジネスチャンスであり、CRO事業で得たノウハウ等を利用することにより、CRO事業同様、育薬事業においても高い品質のサービスを提供できるよう対応してまいります。
④優秀な人材の確保と育成
モニタリング業務の受託を拡大するにあたり、その業務の中心となる優秀なCRAの確保及び育成は必要不可欠であります。また国際共同治験の増加に伴い、これらに特有の業務や、各国間のプロジェクトマネジメント業務が増大いたします。このための人材育成も喫緊の課題であります。
⑤財務基盤の安定化
当社グループは、グローバルに高品質なサービスを提供し続け、製薬会社から信頼を得て業務を継続的に受託することにより高い収益性の確保を目指します。また、予算実績管理及びコスト管理を徹底することにより内部留保の充実を図り、優秀な人材の確保、国際共同治験への体制構築等、将来の事業発展に必要不可欠な成長投資に備えてまいります。
⑥新型コロナウイルスを含む感染症パンデミック下における業務実施体制の整備・運用
今般の世界的な新型コロナウイルス感染拡大にあたり、当社グループでは医療機関、製薬会社、従業員の安全を確保した上で事業を継続するために、感染予防を徹底するとともに、リモートでの業務実施体制の整備・運用を進めましたが、医療機関への訪問規制などにより受託業務を実施できない又は進捗が遅延し、業務に影響を受けました。現在、各国の規制当局やCRO団体等は、これまで治験業務で必要とされていた医療機関へ訪問しての作業についてリモートでの実施が可能となるような規制の変更や指針の策定を進めており、当社でもこれらに対応することで徐々に業績への影響を軽減しております。今後は、このような各国における規制の変更に対応し、新型コロナウイルスを含む感染症パンデミック下における業務実施体制を迅速に整備・運用することが課題となります。
(5)次期の見通し
①概要
米国におきましては、治験業務に関してリモートでの治験実施を可能とする制度対応が取られるなど新型コロナウイルス感染症流行下における治験環境は他国と比べて良好で、受注した業務を実施し売上を計上できる環境にあります。また、米国内のワクチン接種が進捗し、他国と比べていち早い経済活動の回復が見込まれるなか、製薬会社が新型コロナウイルス感染症収束後を見越し、一時凍結等していた研究開発投資を再始動するなど、足元の新規案件の引き合いは大きく増加しており、次期の売上に貢献する新規受注を順調に獲得しております。このような状況を反映し、米国においては次期第2四半期より新型コロナウイルス感染症の影響を勘案することなく順調に業績が推移するものと見込んでおります。
欧州地域におきましては、欧州各国でのワクチン接種の進捗に伴い、米国同様に製薬会社が新型コロナウイルス感染症収束後を見越して一時凍結等していた研究開発投資を再始動するなど、足元で新規案件の引き合いが増加しており、欧州発の日亜欧試験を獲得するなど次期の売上に貢献する新規受注の獲得が増加しております。しかしながら、次期上半期においては、新型コロナ感染症の影響による一部治験実施の制約が残る可能性が高く、ワクチン接種が進捗し経済活動の回復が見込まれる第3四半期以降の業績正常化を見込んでおります。
日本・アジア地域におきましては、次期上半期は、当期の新型コロナ感染症拡大による低調な受注環境の影響が残る一方、足元では製薬会社が新型コロナウイルス感染症収束後を見越して一時凍結等していた研究開発投資を再始動しており、直近で日亜米欧のグローバル試験で受注内定を受けた他、新規案件の引き合いが増加しております。しかしながら、ワクチン接種の進捗等の影響を十分に考慮する必要があることから第4四半期からの業績回復を見込んでおります。
以上の当社グループの展開地域の状況に基づき、次期(2022年3月期)の業績見通しにつきましては、売上高は10,700百万円(前期比4.1%増)、営業利益683百万円(前期比50.6%増)を見込んでおります。
②受注残高の推移
当社グループにおいて受託する業務では、1年から3年程度の主な実施期間において、症例数や対象疾患に起因する治験の難易度などにより受託総額が決定します。この実施期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生します。
受注残高は、既に契約を締結済みの受託業務の受注金額の残高であります。これは、今後1年から5年程度の契約期間で発生する売上高を示しており、当社グループの今後の業績予想の根拠となる指標であります。
下表のとおり、2020年3月期末の受注残高に比べ2021年3月31日時点の受注残高は3.5%減少しておりますが、製薬会社はワクチン接種の開始による新型コロナウイルス感染症収束後を見越し、一時凍結等していた研究開発投資を再始動するなど、足元の新規案件の引き合いは大きく増加しており、欧州発の日亜欧試験を獲得するなど今後の売上に貢献する新規受注の獲得が増加しております。さらに、直近では日亜米欧の大型案件の受注内定を受け契約締結作業を進めており、実質的な受注残高は200億円を超える水準となっております。
受注残高の減少の要因としましては、欧州の既存案件で新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により治験期間の終了時期の前倒しが決定し契約変更の完了により受注残高が減少したことや、米国で顧客による開発案件の優先順位の見直しがあり、契約のキャンセルがあったこと等によるものです。なお、キャンセルのあった米国の顧客との間ではこれに代替する開発案件の提案依頼を受けており、契約に向けて協議中であります。
表.受注残高の推移
(単位:百万円)
2019年
3月期末
2020年
3月期末
(A)
2021年
3月期末
(B)
増減率%
(B-A)/A
受注残高16,28219,90019,196△3.5
内訳中外製薬3,5793,2273,3513.8
エーザイ3,3503,8022,926△23.0
小野薬品工業2,4761,328841△36.7
その他6,87611,54112,0774.6

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