有価証券報告書-第9期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 16:36
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【項目】
124項目
当行では、以下のとおり中期経営計画を策定し、具体的な対処すべき課題として同計画を推進しています。
<第4期中期経営計画(2021~2023年度)>当行は、2012年4月の発足以降、多様な金融機能を通じ、我が国企業の海外事業展開や資源確保、地球環境保全などの業務に対し、積極的なリスクマネー供給と民間資金動員に取り組んで参りました。2018~2020年度を対象とする第3期中期経営計画では、イノベーションや経済フロンティアに代表される成長分野・新領域への取り組みを含む新たな課題設定の下、3年間で累計5兆9,952億円の出融資保証承諾を実施しました。また、2020年には新型コロナウイルス感染症拡大が我が国企業の海外ビジネスに及ぼす影響に対処するため、「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」に基づく支援を開始し、危機対応に取り組んで参りました。
現在、日本を含む多くの国・地域では、引き続きコロナ禍が経済に大きな影響を及ぼしている状況であり、同時に、ポスト・コロナを見据えた世界的な復興のためには、産業・社会の構造的な変革の必要性が明確になっております。国際社会では、気候変動問題に対処するための円滑なエネルギー移行の実現や、包摂的で持続可能な開発・成長の達成に向けた意欲的な取り組みが急務とされています。また、産業界では、新常態における消費ニーズや地政学リスクの高まりを視野に入れ、グローバル・サプライチェーンの見直し・最適化への動きが続くと同時に、急速なデジタル化・イノベーションの進展に適応するための国際的な連携が模索されています。
当行は、こうした課題に対処するため、今般、2021~2023年度を対象とする第4期中期経営計画を策定いたしました。第4期中期経営計画(2021~2023年度)においては、「国際ビジネスの最前線で、日本そして世界の未来を展きます。」という企業理念の下、今後10年先を見据えたあるべき姿として、「海図なき世界情勢の中で、日本の力で未来を築く『羅針盤』でありたい。」という中長期ビジョンを掲げることといたしました。この中長期ビジョンの下、第4期中期経営計画では、6つの重点取組課題、17の具体的な取組目標を定めております。
なお、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
中長期ビジョン(ありたい姿)
海図なき世界情勢の中で、日本の力で未来を築く「羅針盤」でありたい。

重点
取組課題
取組目標・評価指標
Ⅰ 国際経済社会の持続可能な発展に向けた地球規模の課題への対処
1. 脱炭素社会の実現に向けたエネルギー変革への対応
● 世界の温室効果ガス削減及び我が国の脱炭素化に向けた新たなエコシステムの形成に貢献するため、再生可能エネルギー・省エネルギー、スマートエナジー(蓄電技術等)、グリーン・モビリティ、スマートシティ、水素の製造・輸送利活用推進等に関する事業へのファイナンスを通じ、温室効果ガス削減やグリーンイノベーションの普及を支援
● ホスト国による持続可能なエネルギー移行へのエンゲージメントを図りつつ、環境負荷低減に資する事業の拡大に貢献するため、エネルギー転換、CCUS/カーボンリサイクル、アンモニア・水素混焼等に関する事業へのファイナンスを通じ、世界のエネルギー移行に向けた取り組みを支援
2. 社会的課題の解決に資する事業に対する支援
● 健康・福祉・衛生の向上、雇用創出、持続可能な都市・居住空間の形成など、持続可能な成長に向けたホスト国の社会的課題解決への取り組みに貢献するため、医療環境の整備・拡充(感染症対策、病院・医療機器)、基礎的インフラへのアクセス(上下水道、地方電化・分散型電源、情報通信)、生活環境の整備(都市開発・防災、公共交通)、衛生環境の向上(廃棄物処理・再生利用、海洋プラスチックごみ対策)、食の安全・持続可能な食糧システム(フードバリューチェーン)など、ホスト国の社会的課題の解決に資する事業支援

Ⅱ 産業・社会構造の変革下における我が国産業の国際競争力強化支援
1. 国際的なサプライチェーンの強靭化・再構築への対処
● 我が国企業によるグローバルなサプライチェーンの再編、及び新規市場開拓のための現地サプライチェーン構築に向けた取り組みに貢献するため、我が国企業による海外向け新規設備投資(事業拠点の移設、新設及び増設に係る投資)や現地裾野産業、海外の産業集積地におけるインフラ整備など、我が国企業によるグローバルなサプライチェーン強靭化・再構築を支援
2. デジタル変革等に向けた我が国企業のM&A・技術獲得への支援
● 急速なデジタル変革の進展に対応するため、ビジネスモデルの再構築や先端技術の開発・獲得を行う我が国企業の取り組みを後押しするため、デジタル技術をはじめとする海外の先進的な技術・ノウハウの獲得などに対するファイナンスを通じ、デジタル変革期における我が国企業の国際競争力強化を支援
Ⅲ 質の高いインフラ海外展開に向けた戦略的取り組みの推進
1. 我が国企業の強みを生かした海外インフラ事業への参画に対する支援
● ホスト国における債務持続可能性、プロジェクトのライフサイクルコストに照らした経済性などを確保し、環境・社会面での影響などに配慮した質の高い海外インフラの普及に貢献するため、我が国企業によるコアとなる技術の活用やオペレーション&メンテナンス(O&M)等への継続的関与などによる質の高い海外インフラ展開を支援
2. 多国間連携・国際金融機関等との連携の推進
● 多様な資金の出し手との協調・連携を通じ、世界のインフラニーズに対応していくため、日米豪印を含む多国間連携や国際金融機関等との協調による案件の発掘・形成に向けた取り組みを推進

Ⅳ 経済情勢の変化に即応した政策金融機能の発揮
1.コロナ禍の影響を受けた海外事業に対する機動的対応
● 危機対応業務(危機対応緊急ウインドウに基づく融資)の着実な実施
● 国際金融環境の変化への機動的な対応(適切な与信管理を含む)
2.政策的重要性の高い国・地域に対する戦略的取り組み
● 政策的重要性の高い国・地域における出融資保証案件の組成に向けた戦略的取り組み(多国間連携による取り組みやアフリカ向け事業支援の拡充を含む)
3.中堅・中小企業支援を含む政策金融機関としての業務の着実な実施
● 重要資源の確保や我が国産業の海外展開支援など政策金融の着実な実施
● 地域金融機関をはじめとする民間金融機関との連携強化や情報発信等を通じ、中堅・中小企業の海外進出を支援
4.政策金融としてのリスクテイク機能の強化
● 特別業務の活用等によるリスクテイク機能の強化、及び現地通貨建融資等を活用したファイナンス手法の多様化
● 政策金融機関としての対外交渉力・対外発信力の強化
5.民間資金動員の更なる推進
● 当行の出融資保証業務及び貸付債権の流動化を通じ、民間事業投資及び民間金融機関による融資を含む民間資金の動員を積極的に推進

Ⅴ 外部環境の変化に対応する業務体制の整備
1. ビジネス環境の変化への対応を可能とする業務体制の整備
● ビジネス環境・顧客ニーズの変化、SDGs・気候変動問題への対処、ESG投資に関する世界的潮流等の外部環境を踏まえた業務体制の整備
2. 金利指標改革への適切な対応
● 出融資保証業務における代替金利指標への円滑な移行、システム改修・与信事務プロセスの見直しを含む金利指標改革(LIBOR廃止)への適切な対応
3. ウィズ・コロナ/ポスト・コロナ下における適切かつ効率的な審査・与信管理
● リモート環境の制約下における適切かつ効率的な審査・与信管理の実施
● コロナ禍の長期化や金利指標改革等の国際情勢・社会環境の変化に対応するリスク管理
Ⅵ 新常態に対応する効率的な組織運営
1. 新常態に対応するデジタル環境の整備
● 業務プロセスの迅速な見直し・改善及び電子化、ロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)の効果的活用
● リモートワークの常態化を見据えた情報システムのユーザ利便性向上に向けた機能強化、及び情報システムの安定性・安全性の確保
2. 多様な職員の能力と活力を引き出す人材育成と働き方改革の推進
● 職員の多様性を活力とする組織文化の醸成と自律的なキャリア形成・能力開発の支援
● 職員が活力を持って持続的に働ける環境の向上に向けた取り組み
3. コンプライアンス態勢の実効性強化
● 実効性と効率性を両立したコンプライアンス態勢の整備


(参考)<第3期中期経営計画(2018~2020年度)に係る経営諮問・評価委員会の評価>各目標の達成度合いを総合した重点取組課題ごとの評価は、社外の有識者及び社外取締役より構成される経営諮問・評価委員会において決定されます。2018年6月に策定した第3期中期経営計画(2018~2020年度)に係る経営諮問・評価委員会の評価は以下のとおりです。
・株式会社国際協力銀行(JBIC)は、2018~2020年度中期経営計画において、日本企業の海外ビジネスを切り開いていくことを目指し、業務分野において「成長分野・新領域」「インフラ海外展開」「環境保全」「M&A」といった分野を特定し、組織としての注力事項を目標設定において明確化した。
・本中期経営計画の期間中には、地政学的な緊張の高まりがビジネスに与える影響の増大に加えて、2020年には新型コロナ感染症拡大の影響により、国際経済が大きく停滞する事態となった。こうした環境変化を克服していくためにも、日本企業にとっては、AIやIoTに代表されるデジタル変革への対応、脱炭素社会の実現やサステイナビリティへの対応が喫緊の課題となっている。
・こうした社会・産業における大きな転換期において、意欲的な目標設定やコロナ禍の影響もあって未達となった取組目標はあるものの、JBICは本中期経営計画において設定した重点取組課題に沿ってプロアクティブな姿勢で取り組み、日本企業の海外ビジネスにおける新たな展開支援といった今後にも繋がる成果をあげたものと評価する。具体的には以下のとおり。
① 「成長分野・新領域」では、イノベーション分野の取り組みとして、北欧バルト地域のスタートアップ企業を投資対象とするファンドを設立し、日本企業との協業機会創出を目指し、AIや次世代モビリティといった分野で投資を行うといった、従来にはない革新的な取り組みにチャレンジをはじめている。また、経済フロンティアの分野においては、コロナ禍の影響が大きいインドにおいて、日系自動車メーカーの裾野産業支援を行ったほか、アフリカにおける環境保全の取り組みとしてモロッコ陸上風力発電事業を支援するなど、ホスト国との共存といった観点で意義の高い取り組みを行った。
② 「インフラ」では、自由で開かれたインド太平洋構想の下、同地域における経済成長や持続可能なインフラ投資を促進すべく、日米豪連携を推進。当該枠組の下、各国にミッションを派遣して案件の発掘・形成に努め、パラオ海底ケーブル事業支援を実現。また、電力以外の社会インフラへの支援を強化し、物流・廃棄物処理といったセクターで支援実績をあげた。
③ 「環境保全」では、ESG投資や脱炭素社会に向けた世界的な潮流や日本政府の政策と連動し、支援メニューの創設・改編などを行うとともに、米国水素ステーション事業や英国における洋上風力発電所向け海底送電事業を支援するなど、日本企業の環境分野における新たなビジネス展開を積極的に支援。
④ 「M&A」では、インドにおける大手製鉄会社M&A、スイス法人のパワーグリッド事業買収等の大型M&A案件を民間金融機関と連携し支援。また、フィジー電力会社M&Aをはじめ、出資を活用した支援も実施。
⑤ 「政策金融の着実な遂行」として、「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」を創設し、コロナ禍で影響を受ける日本企業の海外事業継続支援を通じ、政府機関としてのセーフティネット機能を十分に発揮したほか、特別業務や現地通貨建融資等を活用した支援に取り組んだ。
・組織分野においては、業務分野を支えるべく「業務機能の高度化」、「経営態勢の高度化」、「組織基盤の強靭化」を重点取組課題として設定。業務機能の高度化においては、国際情勢の変化や日本政府の政策に連動し、各種支援メニューの創設・改編など機動的な対応を実施。また、2018年8月の調査部の設置や海外駐在員事務所の新設(トルコ・豪州)を通じ、世界の地経学的動向も見据えた案件形成を行うべく、インテリジェンス機能の強化や海外とのネットワーク強化も取り組んだ。経営態勢の高度化の観点では、経営企画部・業務企画室・総裁室を統合し、企画事項を一元化した上で効率的な情報共有と迅速な意思決定を可能とすべく組織体制を見直しており、コロナ禍への的確な対応もその効果の表れと評価する。また、組織基盤の強靭化においては、働き方改革基本計画に基づき、ハード面・ソフト面の諸施策を着実に実施してきているほか、新たなビジネスに対応する人材育成にも注力している。
・足許では、引き続き世界経済の見通しが不透明である中、コロナ禍で影響を受けた日本企業の海外ビジネス支援やポスト・コロナを見据えたサプライチェーン強靭化・再構築に向けた取り組みは、JBICが引き続き注力すべき分野であり、着実な取り組みに期待する。同時に、脱炭素社会の実現に向けた取り組み、国際経済社会の持続可能な発展を意識した取り組み、デジタル変革への迅速な対応、質の高いインフラの普及など、今日的な課題に対し、世界をリードしていくべく、チャレンジしていくことに期待する。こうした新たな課題への着実な取り組みを進めるために、外部環境や顧客ニーズの変化を踏まえ、業務分野における新たな展開を見据えた体制の整備を進めること、また、効率的な組織運営を可能とするデジタル環境の整備や人的資本の強化を図ることが必要であり、こうした観点からの不断の組織改革を期待する。

<新型コロナウイルス感染症に係る対応>(1)既往案件・債務者に対する適切なモニタリング
2019年度第4四半期から始まった新型コロナウイルス感染症拡大による経済環境の変化や不確実性の高まりに伴い、債務者等の財務状況悪化やプロジェクトの建設遅延・操業への影響等を通じ、債務者等に影響が生じ得るところ、当行与信ポートフォリオの特性を踏まえ、引き続き、与信集中管理や予兆管理等の枠組を活用しつつ、業況や債権回収の見通しにつき適切にモニタリングしていきます。
(2)日本政府の経済対策を踏まえた日本企業の海外事業活動の支援
当行は、2020年1月に日本企業の海外M&Aやグローバル・バリューチェーンの再編等の海外展開支援及び質の高いインフラ整備支援を目的として「質高インフラ環境成長ウインドウ」と「海外展開支援ウインドウ」から構成される「成長投資ファシリティ」を創設しており、また、2020年4月には、同ファシリティに「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」を追加の上、新型コロナウイルス感染症拡大により影響を受けている日本企業の海外における事業活動を支援しています。その後、2021年1月に「成長投資ファシリティ」の「質高インフラ環境成長ウインドウ」と「海外展開支援ウインドウ」を廃止の上、新たに「脱炭素推進ウインドウ」と「サプライチェーン強靱化ウインドウ」から構成される「ポストコロナ成長ファシリティ」を創設している他、2021年6月には、「成長投資ファシリティ」の「新型コロナ危機対応緊急ウインドウ」の実施期限を2021年12月末に延長しています。なお、2020年3月には、新型コロナウイルス感染症の発生により影響を受けた企業を対象に相談窓口を設置しており、当該窓口も通じ、日本企業のニーズに対応しています。

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