訂正有価証券報告書-第107期(2020/04/01-2021/03/31)

【提出】
2023/06/15 12:41
【資料】
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【項目】
146項目

研究開発活動

研究開発の基本方針
当社グループは、保有している基盤技術の深耕による既存事業の拡大を図るとともに、マーケットイン型R&Dの実行による次世代中核事業の創製を研究開発の基本方針として、既存事業における次世代製品の開発ならびに新規事業の創出にかかる開発に取り組んでおります。
さらに開発過程で得られた知的財産を経営資源化することを目的として、研究開発活動の推進の強化を行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は470,285千円、国内で出願された特許は6件、国内で登録された特許は2件となり、研究要員は32名であります。なお、当連結会計年度における品目別の研究の目的、主要課題、研究成果は次のとおりであります。
(1)自動車関連資材分野
エンジン用濾材は、用途として主に吸気用、潤滑油用、燃料用フィルターに使用されております。
天然パルプ、コットンリンター、ポリエステルなどの合成繊維を主原料として、空気中のゴミ、他車から排出されるスス、潤滑油中のカーボン粒子、燃料中のゴミ、水分などを取り除き、エンジンに清浄な空気、燃料を供給すること及び潤滑油の性能を維持することができます。当該分野では小型かつ高効率、ダストの高捕捉量を満たすフィルターが求められており、これらニーズに対応するための研究開発を行っております。
当連結会計年度においては、市場の競争力に対応するためと、当社のシェアを確保するためにコストダウンに取り組み、性能とコストを両立させた製品を開発することができました。また、海外を含めた製造拠点での生産品目について、当社製品全体を考慮した最適化に取り組み、進めることができました。今後のさらなる環境規制に対応した製品開発や、難燃性を付与した製品開発についても、引き続き取り組んでまいります。
(2)水処理関連資材分野
① 分離膜用湿式不織布
分離膜用湿式不織布は、主に世界の水処理用分離膜メーカーが製造する逆浸透膜モジュールに分離膜支持体として使用されております。
当商品は、専用の抄紙機及び加工機で製造されたポリエステル繊維100%の湿式不織布であります。耐水強度が高く、平滑性に優れることから水処理用の支持体紙として最適です。用途市場としては、海水淡水化や廃水処理などのインフラ用途をはじめ、工業用、家庭用浄水器など高度な水の需要に対応する分離膜に幅広く使用されており、高い伸び率で成長しております。
当連結会計年度においては、これまでの生産方法にとらわれずに、設備改良をしながら、お客様により一層安定して使用いただける製品開発に取り組んでおり、今後も引き続き注力してまいります。
世界トップシェア維持を確実なものとすべく新規顧客に対して積極的にサンプルワークするとともに、市場の幅広いニーズに対応するためポリエステル繊維以外を原料とした製品開発も進めており、製品ラインナップを充実した市場展開を行うべく引き続き注力してまいります。
② M-fine(エム・ファイン)
M-fine(エム・ファイン)とは、当社が提供するメンブレン(ナノレベルの微細な孔径を有する分離膜)及び水処理などのモジュール・ユニットの総称であります。
当社の事業領域の拡大の一環として、廃水処理に使用されるMBR(膜分離活性汚泥法)用浸漬膜及びユニットの事業化推進に取り組んでおり、品質のさらなる向上や高性能化に向けた開発を継続的に行っております。
また、新たに当社の小型ユニットを活かした「小型廃水処理装置」の開発にも着手し、その用途の一つとして「水も電気もなく排水も出来ない」場所でも水洗トイレや温水洗浄便座が使用できる「独立水循環型快適トイレ」の実証試験を行うなど、事業の川下化に向けた取り組みを行っております。
(3)一般産業用資材分野
電子機器に使用される断熱部材や放熱部材(M-thermo)としてのいわゆるサーマルマネジメント材として使用され始めており、電子機器の過酷な発熱環境下における厳しい要求が強まり高い伸び率が期待されています。また、主に熱プレス用の工程紙として使用される耐熱クッション紙や金属加工工程で発生する粉塵をトラップするためのワイヤーカット用濾紙があります。その他、食品用として加工食品の鮮度保持用の脱酸素剤包材として使用されております。
当連結会計年度においては、特に自動車の電動化による成長が期待されるサーマルマネジメント分野について早期事業化を図るため研究リソースを集中させ、「営業部門」と「研究開発部」が緊密に連携し、次世代市場のニーズを的確かつ迅速に捉える活動を行ってきました。具体的な成果としては、必要な方向を高熱伝導化した絶縁放熱部材や高温まで耐えうる軽量で可とう性がある高密度断熱部材などの様々な差別化技術を開発し、これらの知見の特許化を進めてまいりました。新たに開発した厚さ方向に高熱伝導を有するサーマルマネジメント材は、携帯端末などの民生機器をはじめ、車載用電子機器などへの展開を鋭意検討中であり、東京ビッグサイトで開催された「新機能性材料展」(2020年12月)にこれらの商材を展示し、顧客要求に直結した製品開発を行っております。