有価証券報告書-第28期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/25 15:17
【資料】
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【項目】
154項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」を企業理念とし、より多くの人が、よい食生活を楽しめるサービスを提供すること、よい食を作る人が、報われ、誇りを持てる仕組みを構築すること、食べる人と作る人とを繋ぐ方法をつねに進化させ、持続可能な社会の実現すること、食における社会課題をビジネスの手法で解決することを通じて、食のこれからをつくり、広げていくことを理念として掲げております。
このような企業理念に基づき、当社グループの社会的価値を高めるとともに、BtoCサブスク事業を中心としての事業成長および収益力強化、また非連続の事業成長に向けた事業領域の拡大を通じ、企業価値・株主価値の増大を図ってまいります。
(2) 経営環境
当社グループはBtoCサブスク事業、BtoBサブスク事業といった食を中心とした事業領域を主軸に展開しております。
BtoCサブスク事業を取り巻く食品宅配業界の事業環境は今後も堅調に成長することが見込まれている一方で、国内食品宅配市場における当社の市場占有率は数%程度と見込んでおり、国内市場においても今後の成長余地は充分にあると捉えております。当社は付加価値が高い商品を生み出す契約生産者とのダイレクトネットワークの調達網や、「Kit Oisix」を初めにしたお客さまニーズに沿った商品・サービスの開発スキルなどのアセットを保有しており、国内食品宅配市場において、「スペシャリティ」×「サブスクリプション」の領域にて高い参入障壁を築いていると捉えております。今後は、共働き増加による時短ニーズや健康意識の高まり、社会課題への意識の高まりなど、食の領域においても多様化する消費者のニーズに即した商品、サービスづくりを今後より強化していく必要があると捉えております。
BtoBサブスク事業においては、国内給食市場は、約5兆円と非常に大きく安定的に推移しております一方で、原材料価格の高騰や最低賃金の引き上げ、慢性的な人員不足が継続しており、給食業者の業績悪化や破綻も顕在化しています。今後は、BtoCサブスク事業で培ったノウハウやアセットを給食事業に展開することで、調理時間や食材・人件費の削減を実現させる「タイパ(タイムパフォーマンス)モデル」を構築し、収益性の向上を図りながら事業成長をさせていきます。
(3) 経営戦略
上記の経営環境を踏まえ、当社グループは、BtoCサブスク事業の事業成長および収益力強化を最優先課題として取り組むことに加え、シダックス株式会社と一緒になったことにより事業規模が大きく拡大したBtoBサブスク事業や非連続の事業成長に向けた他社との事業提携の強化、海外での食品宅配や店舗・卸事業など事業領域の拡大を着実かつスピーディーに実行してまいります。
(BtoCサブスク事業の事業成長・収益力強化 )
BtoCサブスク事業の事業成長については、主力事業のOisixを中心に自分自身では実現できない食に対する「プレミアム」ニーズ、時間や精神的な余裕がない方への「時短」ニーズ、双方を満たす「プレミアム時短」の価値強化に取り組んでまいります。調味料を含めた食材とレシピが届くミールキット「Kit Oisix」に加え、共働き世帯の増加により、さらに高まった「時短」ニーズを満たす「デリOisix」や、乳幼児のお子様のいるご家庭向けの「ベビー&キッズコース」など特定のセグメントに対して5万人以上の定期会員が利用するサービスの立ち上げを図ってまいります。
収益力強化については、削減余地の大きい商品原価及び物流費の低減に向けた施策を実行してまいります。特に商品原価については、製造・加工過程の内製化比率の拡大や自社製造商品の売上比率増による効率化、従来は非可食部として扱われていた食材の有効活用等の施策を推進することにより低減を図ってまいります。
(BtoBサブスク事業の事業成長・収益力強化)
BtoBサブスク事業の事業成長については、新規契約施設の増加とM&Aを活用した事業規模の拡大を中心に取り組んでまいります。新規契約施設の増加では、高齢者施設、社員食堂、保育園などに重点領域を絞り、リソースを集中的に投下した営業活動を進めてまいります。また、M&Aでは規模拡大にとどまらず、グループ会社と協業していくことでさらなるサービスやプロダクトの多様化・差別化を実現させ、高付加価値なサービス提供を進めてまいります。
収益力強化については、BtoCサブスク事業で培ったミールキット開発ノウハウを活かし、業務用ミールキットを活用することで、省人化する一方、各業態に合わせた高付加価値の実現を推進してまいります。加えて、BtoCサブスク事業で構築した契約生産者とのダイレクトネットワークからの調達網を利用することにより市況に左右されにくく、安定的な調達による収益力強化も図ってまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上の課題
当社グループが認識している優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。
(お客さまの“食”ニーズに対する価値提案強化)
共働き世帯の増加による時短ニーズや、健康意識の高まり、社会的に意義のある消費志向の高まりなど、ライフスタイル・価値観の多様化が加速度的に拡大しており、消費者それぞれに異なる食の社会課題に対し、潜在的ニーズをいち早く捉え、ニーズに即した商品・サービスを迅速に展開することが求められております。
今後、当社サービスでしか出会うことの出来ない独自性のある商品や体験など、食に関する新しい価値提案をより強化していく必要があると捉えております。
(給食業界の構造的な収益力改善)
国内給食市場は、昨今の人材不足や原材料・人件費による利益圧迫により、食の質の低下が懸念されるなか、給食業者の業績悪化や破綻も顕在化しています。
このような環境下において、当社は、BtoCサブスク事業で培ったノウハウを給食事業に展開することで、省人化かつ高付加価値を両立させる「タイパ給食モデル」の構築・導入を目指しています。また、積極的にM&Aにも取り組み、給食業界においてトップティア入りを目指してまいります。
(持続可能な食の未来を実現するための取組強化)
世界的な温室効果ガスの排出量増加、気候変動に起因する作物の生産効率低下、食品廃棄量の増加など、食に関する様々な社会課題が顕在化している状況を踏まえ、当社は、持続可能な未来の食の実現に向け、フードテックなどの技術活用など、課題解決に繋がる取組を一層推進していく必要があると考えております。
BtoCサブスク事業で展開しているサービスでは、日々変化する畑の収穫状況と、お客さまごとに異なる商品ニーズを、独自のデータ解析によりマッチングさせたオリジナルのサブスクリプションボックスを提案しております。これは、畑と食卓双方のフードロス削減に繋がっており、今後さらなるデータ精度の向上を目指してまいります。
生産面においても、子会社であるFuture Food Fund株式会社を通じて独自のアグリテック(農業技術)ノウハウを持つスタートアップ企業に出資しており、当社の取引生産者を含む国内農業の経営・生産効率を高める取組を行っております。また、当社が販売しているミールキット「Kit Oisix」では、使用するカット野菜に規格外の農産物を活用している点や、必要量の食材がセットされていることから食卓での廃棄量が少ない点など、畑と食卓の双方のフードロスを低減できる仕組みとなっております。
さらなるビジネスモデルの改善や、フードテックの活用により、持続可能な食の未来の実現に繋がる取組を強化してまいります。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループが上記の経営戦略の達成を判断するため重視している経営指標は、売上高、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)、1株当たり当期純利益とそれぞれの成長率であります。また、BtoBサブスク事業及びBtoCサブスク事業の成長性・収益性に関する指標として、両事業の売上高、EBITDAマージンに加え、Oisix会員数(BtoCサブスク事業)や契約施設数(BtoBサブスク事業)等を重視しております。