有価証券報告書-第25期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」を企業理念とし、より多くの人が、よい食生活を楽しめるサービスを提供すること、よい食を作る人が、報われ、誇りを持てる仕組みを構築すること、食べる人と作る人とを繋ぐ方法をつねに進化させ、持続可能な社会を実現すること、食における社会課題をビジネスの手法で解決することを通じて、食のこれからをつくり、広げていくことを理念として掲げております。
このような企業理念に基づき、当社グループの社会的価値を高めるとともに、国内宅配事業の事業成長及び収益力強化、また非連続の事業成長に向けた事業領域の拡大を通じ、企業価値・株主価値の増大を図ってまいる所存であります。
(2) 経営環境
当社グループは、独自の栽培、生産基準に基づいた環境負荷の少ない高付加価値の食品・日用品の販売に特化した宅配事業を展開しております。
国内食品宅配市場を取り巻く環境は、多くの食品宅配プレーヤーの新規参入による購入経路の多様化や、配送員等の人手不足を背景とした物流コストの上昇等により年々大きく変容しております。一方、EC(電子商取引)を通じた消費行動の高まりや新型コロナウイルス感染症拡大に伴う宅配需要の高まりの影響により、食品宅配の市場規模は年々拡大傾向で推移しております。また、当社が宅配する安心・安全な高付加価値な食品における市場についても、オーガニック農産物の市場規模は欧米と比べ低水準に留まっているものの、今後、地球環境に対する危機意識の高まりや、環境や社会課題へ配慮したライフスタイルの浸透により、更なる市場の拡大が見込まれると考えております。
上記の市場においての競合環境については、ネットスーパーや各地域の生活協同組合の宅配事業等を事業領域の近しい業態と捉えております。しかしながら、当社グループは高付加価値の食品・日用品の宅配に特化することで取扱い商品の差別化を図っており、また消費者もその違いを理解し、サービスを使い分けていただいていると理解しております。加えて、ECを通じた食品宅配市場は拡大傾向で推移しているものの、食品小売市場における比率は非常に小さく、今後一層の市場拡大を加速させることが重要と考えております。そのため、他業態との関係についても競合という位置付けではなく、ともに食品宅配市場を拡大する関係性であると捉えております。
また、消費者の動向においては、共働き世帯の増加による時短ニーズや、健康志向の高まり、社会的に意義のある消費志向の高まり等、ライフスタイル・価値観の多様化は加速度的に拡大しております。そのため、消費者それぞれに異なる食の社会課題に対し、潜在的ニーズをいち早く捉え、ニーズに即した商品・サービスを迅速に展開することが求められております。
今後、当社サービスでしか出会うことのできない独自性のある商品や食体験等、食に関する新しい価値提案をより強化していく必要があると捉えております。
(3) 経営戦略
上記の経営環境を踏まえ、当社グループは、主要事業である国内B2Cサブスク事業の事業成長及び収益力強化を最優先課題として取り組むことに加え、非連続の事業成長に向けた他社との事業提携、海外B2Cサブスク事業等事業領域の拡大を着実かつスピーディーに実行してまいります。
(国内宅配事業の事業成長・収益力強化)
EC業界を取り巻く環境が年々大きく変容する状況の中、当社グループとしては、主力事業である宅配事業の競争優位の確立を最優先課題とし、「顧客基盤の拡大」や「商品の付加価値向上」等の施策を着実かつスピーディーに実行してまいります。
国内宅配事業の事業成長については、Oisix、大地を守る会、らでぃしゅぼーやの3つのブランドをポートフォリオ化し、それぞれの顧客に対してニーズを満たしたサービスを磨き上げ、定期会員数及び購買単価・頻度の向上により事業成長を目指します。そのため、各ブランドの事業フェーズに沿った事業戦略の実行、及び長年のサブスクリプションサービスの提供により蓄積したマーケティングノウハウの各ブランド間での横展開や経営指標管理の徹底を実行してまいります。
収益力強化については、削減余地の大きい商品原価及び物流費の低減に向けた施策を実行してまいります。商品原価については、製造・加工過程の内製化やプライベートブランド商品の開発加速や、畑で廃棄される予定のふぞろい品等の作物の一括買取等の施策を推進することにより低減を図ってまいります。
物流費については、Oisixブランドにおいて2022年1月に移転をしたORD海老名ステーションについて移転トラブル後のリカバリーを早期完了させ、当初予定していた業務効率化による費用削減を進める予定です。また、中長期的には、各ブランド固有で保持している物流拠点の最適化を行ってまいります。
(事業ドメインの拡大)
国内において蓄積した宅配事業のノウハウを展開し、香港や上海(Oisix)、アメリカ(Purple Carrot)等、海外B2Cサブスク事業の定着・成長を図ります。
国内B2Bサブスク事業においては、既存の保育園給食向けの食材卸事業のさらなる拡大を目指してまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上の課題
当社グループが認識している優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。
(お客さまの“食”に対する価値提案強化)
共働き世帯の増加による時短ニーズや、健康意識の高まり、社会的に意義のある消費志向の高まり等、ライフスタイル・価値観の多様化が加速度的に拡大しており、消費者それぞれに異なる食の社会課題に対し、潜在的ニーズをいち早く捉え、ニーズに即した商品・サービスを迅速に展開することが求められております。
今後、当社サービスでしか出会うことの出来ない独自性のある商品や体験等、食に関する新しい価値提案をより強化していく必要があると捉えております。
(持続可能な食の未来を実現するための取り組み強化)
世界的な温室効果ガスの排出量増加、気候変動に起因する作物の生産効率低下、食品廃棄量の増加等、食に関する様々な社会課題が顕在化している状況を踏まえ、当社は、持続可能な未来の食の実現に向け、フードテック等の技術活用等、課題解決に繋がる取り組みを一層推進していく必要があると考えております。
当社のサブスクリプションサービスでは、日々変化する畑の収穫状況と、お客さまごとに異なる商品ニーズを、独自のデータ解析によりマッチングさせたオリジナルのサブスクリプションボックスを提案しております。これは、畑と食卓双方のフードロス削減に繋がっており、今後さらなるデータ精度の向上を目指してまいります。
生産面においても、子会社であるFuture Food Fund を通じて独自のアグリテック(農業技術)ノウハウを持つスタートアップ企業に出資しており、当社の取引生産者を含む国内農業の経営・生産効率を高める取り組みを行っております。また、当社が販売しているミールキット「Kit Oisix」では、使用するカット野菜に規格外の農産物を活用している点や、必要量の食材がセットされていることから食卓での廃棄量が少ない点等、畑と食卓の双方のフードロスを低減できる仕組みとなっております。
さらなるビジネスモデルの改善や、フードテックの活用により、持続可能な食の未来の実現に繋がる取り組みを強化してまいります。
(気候変動への対応:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示)
当社グループは、気候変動への対応は重要な課題ととらえ、金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に2022年より賛同し、その提言を踏まえ、気候変動への取り組みを進めるとともに、情報開示の高度化を進めています。
<ガバナンス>気候変動に関連するリスク・機会に関しては、経営企画部門が検討し、代表取締役社長が参加する執行役員会において議論をしています。また、今回実施したシナリオの分析にもとづく気候変動に関連するリスク・機会及び環境に関するグループ会社共通の目指す姿である“サステナブルリテール(持続可能型小売業)”の実現に向けた活動の進捗は、適宜役員会や取締役会に報告し、監督が適切に図られる体制をとっています。
また、自然災害リスクを検討するリスク管理委員会では、四半期に1回執行役員会に定例報告を行い、リスク案件について議論し、承認を受けています。リスク管理委員会が対応した特記すべき事項については、取締役会に報告を行っています。
<戦略>当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念のもと、食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決することで、持続可能な社会の実現を目指しています。
主要セグメントである国内宅配事業「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」をはじめ、「とくし丸」「Purple Carrot」等子会社も含めたあらゆる事業を通じ、食の社会課題を解決することを事業成長の糧としています。
気候変動は、食に関する社会課題の中でも世界的に年々大きなリスクとなっており、私たちにとっても農作物の生育状況の変化、自然災害の甚大化による調達、配達物流への影響等のリスクがあります。
(シナリオ分析)
当社グループは、気候変動の異なるシナリオ下でのリスクと機会を特定するため、TCFDの提言を踏まえ、シナリオ分析を実施しました。
2100年に産業革命前から1.5℃気温が上昇するシナリオ(1.5℃シナリオ)と、4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)における2030年時点での気候変動による影響をリスク・機会それぞれに関して検討しています。そのためにまず、各部署の代表者と具体的なリスクと機会を洗い出し、当社グループ及びバリューチェーン全体への影響を踏まえ、より影響の大きいものを抽出しました。抽出したリスクと機会に対して、定性・定量的な方法で評価を実施し、財務的な影響度を確認しています。
・シナリオ分析による影響度評価(財務影響評価)
前提としている主なシナリオ
a. 抽出されたリスクと2030年時点での影響
財務影響度の金額イメージ(大:10億円以上、中:1~10億円、小:1億円未満)
(移行リスク)
※影響度は、当連結会計年度末現在において取得可能な情報をもとに算定しうる範囲で記載
※定量評価は、2030年時点まで2022年3月期と同様の事業規模拡大が続いていることを前提に評価
b. シナリオ分析を踏まえたリスクへの対応と、対応から生まれる機会
<リスクマネジメント>当社グループはリスクマネジメントのための組織として「リスク管理委員会」を設置しています。管理委員会は社長直轄の組織で委員長と各部署を代表する委員と事務局で構成されています。リスク管理委員会は気候変動によるリスクを含む自然災害リスクについても検討しており、毎月会議を実施し、リスク事例の共有、部署横断的なリスク対応についての議論、各委員の活動報告を行っています。四半期に1回リスク管理委員会から執行役員会に定例報告を行い、各リスク案件について議論し、承認を受けています。
<指標と目標>当社グループは、脱炭素社会実現への貢献と、そこへの移行に伴うリスク・機会への対応として、サステナブルリテール(持続可能型小売業)の実現に向けた取り組みとして“グリーンシフト施策”を定めています。これは環境に関するグループ会社共通の目標です。グリーンシフト施策では、2026年3月までにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目指しています。
◆温室効果ガス排出削減の全社目標
◆温室効果ガス排出量
2019年度(2019年4月~2020年3月)実績
※算定方法:排出量の算定はGHGプロトコールに基づく
※スコープ3の算定方法をより精度の高いものにし、2020・2021年度分を合わせて現在集計中で、2022年度中に開示予定
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループが上記の経営戦略の達成を判断するため重視している経営指標は、売上高、営業利益及びEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)とそれぞれの成長率であります。また、収益性に関する指標として宅配事業における定期購入顧客数等やARPU(月間購入単価)等を重視しております。
(1) 経営方針
当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」を企業理念とし、より多くの人が、よい食生活を楽しめるサービスを提供すること、よい食を作る人が、報われ、誇りを持てる仕組みを構築すること、食べる人と作る人とを繋ぐ方法をつねに進化させ、持続可能な社会を実現すること、食における社会課題をビジネスの手法で解決することを通じて、食のこれからをつくり、広げていくことを理念として掲げております。
このような企業理念に基づき、当社グループの社会的価値を高めるとともに、国内宅配事業の事業成長及び収益力強化、また非連続の事業成長に向けた事業領域の拡大を通じ、企業価値・株主価値の増大を図ってまいる所存であります。
(2) 経営環境
当社グループは、独自の栽培、生産基準に基づいた環境負荷の少ない高付加価値の食品・日用品の販売に特化した宅配事業を展開しております。
国内食品宅配市場を取り巻く環境は、多くの食品宅配プレーヤーの新規参入による購入経路の多様化や、配送員等の人手不足を背景とした物流コストの上昇等により年々大きく変容しております。一方、EC(電子商取引)を通じた消費行動の高まりや新型コロナウイルス感染症拡大に伴う宅配需要の高まりの影響により、食品宅配の市場規模は年々拡大傾向で推移しております。また、当社が宅配する安心・安全な高付加価値な食品における市場についても、オーガニック農産物の市場規模は欧米と比べ低水準に留まっているものの、今後、地球環境に対する危機意識の高まりや、環境や社会課題へ配慮したライフスタイルの浸透により、更なる市場の拡大が見込まれると考えております。
上記の市場においての競合環境については、ネットスーパーや各地域の生活協同組合の宅配事業等を事業領域の近しい業態と捉えております。しかしながら、当社グループは高付加価値の食品・日用品の宅配に特化することで取扱い商品の差別化を図っており、また消費者もその違いを理解し、サービスを使い分けていただいていると理解しております。加えて、ECを通じた食品宅配市場は拡大傾向で推移しているものの、食品小売市場における比率は非常に小さく、今後一層の市場拡大を加速させることが重要と考えております。そのため、他業態との関係についても競合という位置付けではなく、ともに食品宅配市場を拡大する関係性であると捉えております。
また、消費者の動向においては、共働き世帯の増加による時短ニーズや、健康志向の高まり、社会的に意義のある消費志向の高まり等、ライフスタイル・価値観の多様化は加速度的に拡大しております。そのため、消費者それぞれに異なる食の社会課題に対し、潜在的ニーズをいち早く捉え、ニーズに即した商品・サービスを迅速に展開することが求められております。
今後、当社サービスでしか出会うことのできない独自性のある商品や食体験等、食に関する新しい価値提案をより強化していく必要があると捉えております。
(3) 経営戦略
上記の経営環境を踏まえ、当社グループは、主要事業である国内B2Cサブスク事業の事業成長及び収益力強化を最優先課題として取り組むことに加え、非連続の事業成長に向けた他社との事業提携、海外B2Cサブスク事業等事業領域の拡大を着実かつスピーディーに実行してまいります。
(国内宅配事業の事業成長・収益力強化)
EC業界を取り巻く環境が年々大きく変容する状況の中、当社グループとしては、主力事業である宅配事業の競争優位の確立を最優先課題とし、「顧客基盤の拡大」や「商品の付加価値向上」等の施策を着実かつスピーディーに実行してまいります。
国内宅配事業の事業成長については、Oisix、大地を守る会、らでぃしゅぼーやの3つのブランドをポートフォリオ化し、それぞれの顧客に対してニーズを満たしたサービスを磨き上げ、定期会員数及び購買単価・頻度の向上により事業成長を目指します。そのため、各ブランドの事業フェーズに沿った事業戦略の実行、及び長年のサブスクリプションサービスの提供により蓄積したマーケティングノウハウの各ブランド間での横展開や経営指標管理の徹底を実行してまいります。
収益力強化については、削減余地の大きい商品原価及び物流費の低減に向けた施策を実行してまいります。商品原価については、製造・加工過程の内製化やプライベートブランド商品の開発加速や、畑で廃棄される予定のふぞろい品等の作物の一括買取等の施策を推進することにより低減を図ってまいります。
物流費については、Oisixブランドにおいて2022年1月に移転をしたORD海老名ステーションについて移転トラブル後のリカバリーを早期完了させ、当初予定していた業務効率化による費用削減を進める予定です。また、中長期的には、各ブランド固有で保持している物流拠点の最適化を行ってまいります。
(事業ドメインの拡大)
国内において蓄積した宅配事業のノウハウを展開し、香港や上海(Oisix)、アメリカ(Purple Carrot)等、海外B2Cサブスク事業の定着・成長を図ります。
国内B2Bサブスク事業においては、既存の保育園給食向けの食材卸事業のさらなる拡大を目指してまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上の課題
当社グループが認識している優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。
(お客さまの“食”に対する価値提案強化)
共働き世帯の増加による時短ニーズや、健康意識の高まり、社会的に意義のある消費志向の高まり等、ライフスタイル・価値観の多様化が加速度的に拡大しており、消費者それぞれに異なる食の社会課題に対し、潜在的ニーズをいち早く捉え、ニーズに即した商品・サービスを迅速に展開することが求められております。
今後、当社サービスでしか出会うことの出来ない独自性のある商品や体験等、食に関する新しい価値提案をより強化していく必要があると捉えております。
(持続可能な食の未来を実現するための取り組み強化)
世界的な温室効果ガスの排出量増加、気候変動に起因する作物の生産効率低下、食品廃棄量の増加等、食に関する様々な社会課題が顕在化している状況を踏まえ、当社は、持続可能な未来の食の実現に向け、フードテック等の技術活用等、課題解決に繋がる取り組みを一層推進していく必要があると考えております。
当社のサブスクリプションサービスでは、日々変化する畑の収穫状況と、お客さまごとに異なる商品ニーズを、独自のデータ解析によりマッチングさせたオリジナルのサブスクリプションボックスを提案しております。これは、畑と食卓双方のフードロス削減に繋がっており、今後さらなるデータ精度の向上を目指してまいります。
生産面においても、子会社であるFuture Food Fund を通じて独自のアグリテック(農業技術)ノウハウを持つスタートアップ企業に出資しており、当社の取引生産者を含む国内農業の経営・生産効率を高める取り組みを行っております。また、当社が販売しているミールキット「Kit Oisix」では、使用するカット野菜に規格外の農産物を活用している点や、必要量の食材がセットされていることから食卓での廃棄量が少ない点等、畑と食卓の双方のフードロスを低減できる仕組みとなっております。
さらなるビジネスモデルの改善や、フードテックの活用により、持続可能な食の未来の実現に繋がる取り組みを強化してまいります。
(気候変動への対応:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示)
当社グループは、気候変動への対応は重要な課題ととらえ、金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に2022年より賛同し、その提言を踏まえ、気候変動への取り組みを進めるとともに、情報開示の高度化を進めています。
<ガバナンス>気候変動に関連するリスク・機会に関しては、経営企画部門が検討し、代表取締役社長が参加する執行役員会において議論をしています。また、今回実施したシナリオの分析にもとづく気候変動に関連するリスク・機会及び環境に関するグループ会社共通の目指す姿である“サステナブルリテール(持続可能型小売業)”の実現に向けた活動の進捗は、適宜役員会や取締役会に報告し、監督が適切に図られる体制をとっています。
また、自然災害リスクを検討するリスク管理委員会では、四半期に1回執行役員会に定例報告を行い、リスク案件について議論し、承認を受けています。リスク管理委員会が対応した特記すべき事項については、取締役会に報告を行っています。
<戦略>当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念のもと、食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決することで、持続可能な社会の実現を目指しています。
主要セグメントである国内宅配事業「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」をはじめ、「とくし丸」「Purple Carrot」等子会社も含めたあらゆる事業を通じ、食の社会課題を解決することを事業成長の糧としています。
気候変動は、食に関する社会課題の中でも世界的に年々大きなリスクとなっており、私たちにとっても農作物の生育状況の変化、自然災害の甚大化による調達、配達物流への影響等のリスクがあります。
(シナリオ分析)
当社グループは、気候変動の異なるシナリオ下でのリスクと機会を特定するため、TCFDの提言を踏まえ、シナリオ分析を実施しました。
2100年に産業革命前から1.5℃気温が上昇するシナリオ(1.5℃シナリオ)と、4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)における2030年時点での気候変動による影響をリスク・機会それぞれに関して検討しています。そのためにまず、各部署の代表者と具体的なリスクと機会を洗い出し、当社グループ及びバリューチェーン全体への影響を踏まえ、より影響の大きいものを抽出しました。抽出したリスクと機会に対して、定性・定量的な方法で評価を実施し、財務的な影響度を確認しています。
・シナリオ分析による影響度評価(財務影響評価)
前提としている主なシナリオ
シナリオ | 主に参照したシナリオ |
1.5℃シナリオ | SSP1-1.9シナリオ(IPCC,2021) Net Zero Emissions by 2050シナリオ(IEA,2021) |
4℃シナリオ | SSP5-8.5(IPCC,2021) Stated Policyシナリオ(IEA,2021) |
a. 抽出されたリスクと2030年時点での影響
財務影響度の金額イメージ(大:10億円以上、中:1~10億円、小:1億円未満)
(移行リスク)
分類 | 時間軸 | 財務影響領域 | 可能性のある事業インパクト | 影響度 | |
1.5℃ | 4℃ | ||||
政策と法 | |||||
炭素税の導入 | 中~長期 | コスト | ‐農作物・水産品・畜産品等の原材料・仕入れコストが上昇する。 ‐工場及び物流・配送のエネルギーコストが上昇する。 | 大 | 小 |
プラスチック規制の強化 | 中~長期 | コスト | ‐プラスチック規制が強化されることで、包装材における代替素材の開発・導入が求められコストが上昇する。 | 中 | 小 |
その他環境規制の導入・強化 | 短期 | コスト/資産 | ‐環境関連規制強化への対応による設備投資の増加や、食品安全基準等の見直しへの対応コストが上昇する。 | 中 | 小 |
業界/市場 | |||||
消費者の環境志向の変化 | 中~長期 | 収益 | ‐環境への取り組みや非財務情報の開示が不十分な場合、消費者からの支持が低下し、ブランド力の下落や顧客離れによる減収が発生する。 | 大 | 小 |
エネルギー需給の変化 | 中期 | コスト | ‐化石燃料を用いたエネルギー調達コストが上昇し、原材料・仕入れの生産コストやガソリン車(現車両)の利用による配送コストが上昇する。 ‐再エネ調達需要の高まりにより、再エネ対応切り替え設備の稼働価格が上昇する。 | 小 | 小 |
投資家の評判変化 | 中~長期 | 資本 | ‐気候変動への取り組みや非財務情報の開示が不十分な場合、投資家からの企業評価が低下する。 | 小 | 小 |
テクノロジー | |||||
農・水産業における生産イノベーション | 中~長期 | コスト/資産 | ‐農・水産業がスマート農業等脱炭素モデルに移行するために最新設備等を導入することでコスト負担が上昇する | 大 | 小 |
物流・配送におけるイノベーション | 中期 | コスト/資産 | ‐配送車両の電気自動車へ置き換えに伴い、コスト負担が上昇する。 | 大 | 小 |
急性 | |||||
異常気象の激甚化 | 短~長期 | コスト | ‐集中豪雨や台風によって生産地域の浸水被害や、物流網の混乱が発生し、商品の調達ができなくなる。 | 中 | 中 |
慢性 | |||||
調達・供給体制への影響 | 長期 | コスト/収益 | ‐気候変動による直接的・間接的な収穫量の低下により、調達必要量の確保が難しくなる。 ‐需給バランスの調整が難しくなり、欠品や廃棄処理の増加が懸念される。‐高温により農作業効率が低下し収穫量が減少する。 | 小 | 大 |
品質への影響 | 長期 | コスト/収益 | ‐当社グループが設定する水準の品質確保が難しくなる。 ‐顧客への配送時に、冷凍食品を中心に品質担保が困難になる。 | 小 | 大 |
コスト構造への影響 | 長期 | コスト | ‐原材料・資材等の仕入れコストが高騰する ‐人材不足や操業可能設備不足等からコスト負担が上昇する。 | 小 | 大 |
消費者の食ニーズ全般の変化 | 長期 | 収益 | ‐消費者の生活における気候変動への適応負担が増加し、食費支出そのものが減少する。 | 中 | 大 |
※影響度は、当連結会計年度末現在において取得可能な情報をもとに算定しうる範囲で記載
※定量評価は、2030年時点まで2022年3月期と同様の事業規模拡大が続いていることを前提に評価
b. シナリオ分析を踏まえたリスクへの対応と、対応から生まれる機会
分類 | 対応 | 機会 |
炭素税の導入 | ‐カーボンニュートラルの達成 | ‐省エネの積極的な導入によりコスト削減ができる。 ‐カーボンニュートラル達成により、炭素税の負担を減らせる。 |
プラスチック規制の強化 | ‐商品パッケージのさらなるグリーン化 | ‐代替プラスチックの新包装材の先行導入により差異化をはかる。 |
その他環境規制の導入・強化 | ‐食品安全基準の強化 ‐特定フロン排出抑制 | ‐カーボンフットプリント開示規制の強化により、自社の優位性の訴求や、その他環境配慮に対する補助金導入による金銭的なメリットを享受する。 |
消費者の環境志向の変化 | ‐アップサイクル食品の販売推進‐商品パッケージのさらなるグリーン化 | ‐環境志向・ニーズの高まりに的確に対応し、顧客との関係性を構築・向上させることで、ブランド力や既存顧客との関係性が強化されるだけでなく、新たな顧客開拓・既存顧客のロイヤリティ向上へも繋がる。 |
エネルギー需給の変化 | ‐省電力化‐オフィス・全物流拠点電力に再生エネルギー導入を推進 | ‐グリーン配送や、省エネ設備の早期導入等によりコスト負担を抑えられる。 |
農・水産業における生産イノベーション | ‐「サステナブルリテール」の強化 | ‐環境負荷が少ない食材の製造等フードテックの活用・開発促進によりニューフードの市場を活性化する。 ‐冷凍食品、加工生産、可食化技術も含めたイノベーティブな生産、安定供給体制を先行して構築し差異化をはかる。 |
物流・配送におけるイノベーション | ‐配送車の省エネルギー配送とEV化の実証実験 | ‐自動運転技術やドローン技術等を用いて、気候変動に影響を受けにくく、顧客の利便性の高い物流・配送体制を先行して構築する。 |
異常気象の激甚化 | ‐「サステナブルリテール」の強化 ‐良質なサプライの拡大‐ローコストオペレーション、マーケティングノウハウ共有による収益力改善 | ‐生産地の多様な地理的ポートフォリオにより、局所的な収穫不良時でも商品の安定供給が図れる。 |
調達・供給体制への影響 | ‐トレーサビリティのデータを有効活用し、需給調整を綿密に実施し、安定供給が図れる。 ‐国内外での収穫可能性の拡大を想定し、安定生産できる栽培、生産方法の確立を後押しする。 | |
品質への影響 | ‐従来の小売流通基準に満たない原材料(B級品)の活用機会を増加させ、顧客にもその価値を理解してもらうことで、新たな訴求要素を確立する。 | |
消費者の食ニーズ全般の変化 | ‐熱中症予防や備蓄可能な食品に対するニーズが高まる。 ‐外出の困難化から宅配そのもののニーズが増加する。 |
<リスクマネジメント>当社グループはリスクマネジメントのための組織として「リスク管理委員会」を設置しています。管理委員会は社長直轄の組織で委員長と各部署を代表する委員と事務局で構成されています。リスク管理委員会は気候変動によるリスクを含む自然災害リスクについても検討しており、毎月会議を実施し、リスク事例の共有、部署横断的なリスク対応についての議論、各委員の活動報告を行っています。四半期に1回リスク管理委員会から執行役員会に定例報告を行い、各リスク案件について議論し、承認を受けています。
<指標と目標>当社グループは、脱炭素社会実現への貢献と、そこへの移行に伴うリスク・機会への対応として、サステナブルリテール(持続可能型小売業)の実現に向けた取り組みとして“グリーンシフト施策”を定めています。これは環境に関するグループ会社共通の目標です。グリーンシフト施策では、2026年3月までにサプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成を目指しています。
◆温室効果ガス排出削減の全社目標
項目 | カーボンニュートラル達成目標 | 実施内容 | |
1 | スコープ1、2 | 2024年3月 | ・省電力化 ・オフィス・全物流拠点電力に再生エネルギー導入を推進 |
2 | スコープ3 | 2026年3月 | ・バイオ炭等、農業生産でのグリーン化の推進 ・商品パッケージのグリーン化 ・食品廃棄物の削減 ・食品残渣のリサイクルの促進 ・配送車の省エネルギー配送とEV化の実証実験 |
◆温室効果ガス排出量
2019年度(2019年4月~2020年3月)実績
項目 | 排出量 |
スコープ1 ※事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス等) | 1,028t-CO2e |
スコープ2 ※他社から供給された電気・熱・上記の使用に伴う間接排出 | 3,885t-CO2e |
自社排出量(スコープ1+2)計 | 4,913t-CO2e |
スコープ3 ※スコープ1、スコープ2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) | 161,582t-CO2e |
サプライチェーン排出量(スコープ1+2+3)計 | 166,495t-CO2e |
※算定方法:排出量の算定はGHGプロトコールに基づく
※スコープ3の算定方法をより精度の高いものにし、2020・2021年度分を合わせて現在集計中で、2022年度中に開示予定
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループが上記の経営戦略の達成を判断するため重視している経営指標は、売上高、営業利益及びEBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)とそれぞれの成長率であります。また、収益性に関する指標として宅配事業における定期購入顧客数等やARPU(月間購入単価)等を重視しております。