訂正有価証券報告書-第13期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2020/04/13 16:03
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対処すべき課題

中小型ディスプレイ市場という成長市場において、競争優位性を維持し、持続的な成長と収益の最大化を図るため、当社グループは以下の事項を最重点施策とし、優先的に取り組んでまいります。
(1) 当社グループの現状の認識
当社グループは、技術力と生産能力の双方を備えた中小型ディスプレイのグローバルリーディングカンパニーとしての地位の確立を目指しております。
これまで当社グループは、持続的な成長と収益の最大化を目指して、顧客要求を超える技術力の一層の強化と生産能力の確保、及びそれらを実現する継続的な研究開発投資と生産ラインへの設備投資等を行ってきました。こうした活動が奏功し、当社グループは中小型ディスプレイ市場において着実に顧客基盤を確立し、会社発足時の統括会社である旧株式会社ジャパンディスプレイの平成25年3月期の連結売上高457,378百万円に対し、平成27年3月期は168%に成長するとともに、営業利益では3期連続の黒字化を達成しました。また、財務基盤の確保も重大な経営目標と認識し、財務体質の健全性(=高い自己資本比率)と財務の機動性や柔軟性(実質無借金)を確保してまいりました。
当社グループは、スマートフォン顧客の旺盛な需要に対応するための新工場建設を平成27年3月に発表しました。更に、車載市場でのビジネス強化や反射型ディスプレイの新たな事業領域開拓等スマートフォン以外の事業育成を図り、営業利益率10%、EBITDA率20%、ROE10%以上を3年後の目標値として、もう一段高い水準への成長を可能とする収益基盤の確立を目指していきます。
※当社は、平成25年4月1日に株式会社ジャパンディスプレイイースト(同日、株式会社ジャパンディスプレイに商号変更)を存続会社として、株式会社ジャパンディスプレイ、株式会社ジャパンディスプレイセントラル、株式会社ジャパンディスプレイウェスト、株式会社ジャパンディスプレイイーストプロダクツと合併を実施していることから、発足当時の統括会社を旧株式会社ジャパンディスプレイとして記載しております。
(2) 対処すべき課題とその取り組み
① 市場シェアの拡大
中小型ディスプレイ市場において、特にスマートフォン市場は急速な拡大を続けており、中でも高精細ディスプレイへのニーズが高まっています。当社グループはこのような市場において、更なる市場シェア拡大を図る方針です。シェアの拡大は、開発投資及び設備投資を早期に回収して再投資に回し、持続的な成長を実現するためには不可欠です。
当社グループは、IPSとLTPSを基盤とする先端技術を競合他社に先駆けて顧客に提案し、かつそれらの技術に対応した生産能力を先駆けて構築することにより、スマートフォン市場のシェア拡大を目指しています。WQHD(1,440×2,560画素)のような高精細製品やインセルタッチのPixel Eyes™、高コントラスト・高画質を実現するIPS-NEO™等を積極的に提案し、そのことがデザイン・インの拡大、顧客満足の充実に寄与しています。
スマートフォン以外では、自動車1台当たりのディスプレイ搭載数の増加が期待される車載市場に対して、インストルメントパネル向け異形状液晶モジュールの量産を開始した他、北米地区自動車メーカーへのサポート強化のため、平成26年6月にデトロイトに新規オフィスを開設する等ビジネスの強化を進めています。また、腕時計型ウエアラブルデバイス(スマートウォッチ等)向けやデジタルサイネージ向けに超低消費電力メモリーインピクセル反射型カラー液晶標準モジュールの販売を開始する等、新規市場の開拓にも取り組んでいきます。
② 先端生産設備への投資の実行
中小型ディスプレイ市場が拡大する中、顧客需要に対応し、かつ収益の維持・向上を図るためには、先端技術に対応し、高い生産効率を持つ生産ラインへの投資を行うことが必要です。
当社グループでは、平成24年6月に石川サイトの第5.5世代能美工場において、次いで平成25年6月には茂原工場の第6世代新ラインにおいて、それぞれ量産稼働を開始しました。平成27年3月期にはこれら生産ラインの生産能力を増強し、能美工場は量産開始当初の月産21,500シートに対し月産25,500シートに、茂原工場新ラインは量産開始当初の月産24,000シートに対し月産50,000シートの生産能力になりました。この結果、当社グループは、茂原工場新ライン稼働以降現時点まで世界最大規模のLTPS液晶ディスプレイの生産能力を確保しています。茂原工場の新ラインは、LTPS対応ラインとしては世界最大クラスの第6世代(ガラス基板サイズ1,500mm×1,850mm)のマザーガラスを使用し、高い生産効率を目指した生産ラインです。第6世代のマザーガラスは、例えば茂原工場の既存ラインの第4.5世代と比較して約4倍の面積を持っており、ガラス基板1シート当たりの液晶パネル取得数を大きく増加させるため、ガラス基板1シート当たりのコスト低減が可能となります。更に、新ラインにおける最先端の製造装置の導入により、歩留りの向上、サイクルタイムの短縮化等によるコスト低減にも寄与する他、進化する技術の具現化、製品の高品質化も実現可能となります。
更に、当社グループは、先端中小型ディスプレイの拡大する需要に対応するため、第6世代液晶ディスプレイ工場を石川県白山市に新設し、生産能力を拡大することを平成27年3月に発表いたしました。この新工場は、茂原工場新ラインと同じ第6世代のマザーガラスを使用、月産25,000シートの生産能力を有し、平成28年に稼働する予定です。当該新工場が稼働すると当社グループの液晶パネル生産能力は、全体で20%強拡大することとなります。なお、新工場の投資資金については、当社キャッシュフローと前受金にて充当する予定で、設備投資の過大な負担の削減に努めております。また、新工場の建設に対応した後工程生産能力の拡充についても、今後検討していきます。
今後も、先端生産設備への投資を競合他社に先駆けて実施することにより、競争力のある製品をタイムリーに市場投入できる体制となるよう取り組みます。
③ 研究開発投資の推進
中小型ディスプレイ業界においては、電子機器の高度化に伴い、高精細かつ低消費電力で薄型、といった複合的で難易度の高い技術を要する製品の需要が増えており、かかる製品の開発を可能とする新しい材料や生産技術等における技術革新が現在も進行しています。このような環境下、進化する市場のニーズに応え続けるため、ディスプレイメーカーには高い技術力の向上と継続的な技術革新の追求が不可欠となっており、これらを実行するための研究開発投資がますます重要となっています。
当社グループは、強みとするLTPS液晶ディスプレイ技術の継続的な発展と、パラダイムシフトを起こしうる革新技術の追求を研究開発の基本方針とし、研究開発本部が中心軸となって開発活動を行っています。研究開発費は、直近の収益に直結する厳選した研究テーマと将来の利益確保に寄与する研究テーマに集中して投じ、適切な人員の配置も行っています。具体的には、LTPS液晶ディスプレイ技術の有する高精細化、低消費電力化、狭額縁化等における強みを追求し、他の技術との差異化を図るための開発に積極的な投資を継続してまいります。その一方で、有機ELディスプレイ技術や酸化物半導体ディスプレイ技術の進化の可能性に鑑み、当社グループにおいてもこれらの技術の研究開発投資を実施しています。特に有機ELディスプレイについては、薄くて軽いシートディスプレイへの展開を視野に入れた研究開発を行っています。
また当社は、株式会社産業革新機構、ソニー株式会社及びパナソニック株式会社と、有機ELディスプレイパネルの量産開発加速及び早期事業化を目的として、株式会社JOLED(以下「JOLED」)を設立し、JOLEDは平成27 年1月5日に事業を開始しました。有機ELに関わる世界最高水準の技術とリソースを結集するJOLEDと強い協力関係を築くことにより、更なる軽量化・薄型化が求められるノートPC向け等の中型ディスプレイアプリケーションへの将来的な展開可能性を検討していきます。また、従来から当社グループ内で取り組む有機ELに関わる研究開発についても、JOLEDとのシナジー効果により、更に加速させていくことを考えています。
④ 更なるコスト競争力の強化
中小型ディスプレイ業界では、各社の資金力や生産国の産業政策・為替動向等がグローバルな競争環境に影響を与えています。当社グループとしては、労働力やインフラ等のコストが低い国に拠点を有する企業に対してもコスト競争力を確保し、世界市場で競争優位性を維持することが重要な課題となっています。また、モバイル機器等、民生製品に搭載されるディスプレイは需要の変動が大きいため、工場における損益分岐稼働率の引き下げを図ることも重要な課題の一つです。
当社グループでは、全社的なコスト削減活動の取り組みを実施しています。この取り組みにおいては、製品モデル毎の部材コストと加工コストをモニタリングし、それらのコスト削減に寄与する重要テーマについて、経営陣自らが指揮をしてコスト削減を進めています。生産数量に関わらず固定的に発生するコストについても、効率化による削減に取り組んでいます。また、インセルタッチ技術のPixel Eyes™のように、従来、別部品として取り付けていたタッチパネルをディスプレイに機能内蔵した製品も、コスト削減に寄与していると言えます。
今後も引き続き、生産ラインの歩留り向上、生産性改善、部材の内製化や変更、部材点数の削減、後工程の自動化等に取り組み、更なる製造コストの競争力強化を推進してまいります。かかる製造コストの削減策の一環として、平成24年度に茂原工場のアモルファスシリコンラインを一部停止し、平成25年度に石川サイトのアモルファスシリコンラインを閉鎖した他、平成28年(予定)に第3世代(ガラス基板サイズ550mm×670mm)LTPSラインを有する深谷工場を閉鎖いたします。