有価証券報告書-第18期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/08/28 9:01
【資料】
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【項目】
170項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当連結会計年度におけるわが国の経済は、米中間の貿易摩擦の長期化や中国経済の減速に加え、年度末にかけては新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大により経済環境が急速に悪化するなど、先行きが不透明な状況の中で、当社として財務体質の強化を図ることが課題として認識しています。
このような中、当社グループは、「今までにない発想と、限りない技術の追求をもって、人々が躍動する世界を創造し続ける。」を企業理念として、人と世界を結び、瞬時に多くの情報を伝えるインターフェースにはなくてはならない中小型ディスプレイのリーディングカンパニーとして、最先端製品の開発・設計・製造を行い、グローバル市場にお届けしています。
これまで日本が強みとしてきた、中小型ディスプレイの技術の蓄積を活かすとともに、今までにない発想と、限りない技術の追求をもって、世界に先駆けた技術開発を行っていきます。また、開発、生産技術、製造が一体になり、競合他社を凌駕する高品質なものづくりを実現していくとともに、これらの製品をグローバル市場にお届けし、快適な社会の実現に貢献してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、需要変動が大きく、収益性の低下したモバイル分野中心のビジネスポートフォリオからの変革を目指し、車載分野や、ウェアラブル・VR・産業機器等のノンモバイル分野の高付加価値技術開発を推進するとともに、精細度や生産性等に優れるOLEDディスプレイの競争優位性を更に向上させることで、早期の業績回復と黒字化への転換を経営目標としています。また、今後の成長の柱として、センサとそのソリューション事業の確立を図り、ヘルスケアやセキュリティ等の新規事業領域へ参入してまいります。この目標の実現に向け、コアテクノロジーである低温ポリシリコン(LTPS)技術に経営資源を投入し、競争優位性を向上させ、車載事業の安定的成長と収益基盤化、及び新規事業領域の高付加価値化と成長に向けた取り組みを行ってまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、スマートフォン向けを中心とするモバイル分野では財務体質の強化に向け、事業規模の適正化を進めてまいります。車載分野では、リーディングカンパニーとしてのポジションを維持するとともに、機能やデザイン性の向上等による高付加価値化やコストの低減等の施策を通じ収益性の強化を図ります。また、新たな成長が見込まれる新規事業領域を含むノンモバイル分野では、当社の得意とするLTPS技術を活用したセンサへの参入をはじめ、ヘルスケア分野などのディスプレイの分野を超えた新たなポジションの獲得を図るなどの施策を通じ、第三の柱へと育成を進めてまいります。加えて、当社の豊富な知的財産を活用する研究開発会社として、多数の技術をもとにした製品とサービスを提供してまいります。
(4) 会社の対処すべき課題
現在、当社の事業の中心であるスマートフォン市場では、これまで成長をけん引してきた中国市場の減速や買い替えサイクルの長期化等により、市場の世界的な成長が鈍化しております。当社ビジネスの中心である高価格帯スマートフォン市場においては、顧客であるスマートフォンメーカーのOLEDディスプレイ採用の拡大に加えて、韓国・中国メーカーの、OLEDディスプレイとLTPS液晶ディスプレイの廉価拡販による攻勢、また今般の新型コロナウイルス感染症の拡大影響により、市場における消費の冷え込みが影響し、市場環境が一層厳しくなっております。
中小型ディスプレイ市場という成長市場において、競争優位性を確保し、持続的な成長と収益の最大化を図るため、当社グループは以下の事項を最重点施策とし、優先的に取り組んでまいります。
① ポートフォリオの変革、バリューチェーンの拡大
当社グループでは現在、売上高の7割程度がスマートフォンを中心とするモバイル分野の製品となっておりますが、同分野においては競争環境の厳しさが増しております。車載を含むノンモバイル分野のディスプレイは、新型コロナウイルスの影響による世界的自動車生産の減少により、売上高が減少しております。
モバイル分野においては、当社の強みであるLTPSを始めとする技術力を活かした競争優位な製品や、両者の利益が一致する顧客に集中し、将来のビジネスに向けた技術開発の推進に取り組んでまいります。また、車載分野に関しては、シェアNo.1の実績と顧客の信頼をもとに、これまで培ったデザイン対応力を活かし、多様化する顧客のニーズに応え、競争力の強化に努めてまいります。加えて、ノンモバイル分野においては、独自の技術(高精細、低消費電力、FULL ACTIVE™等)を活かした製品展開・拡大を進めるとともに、これまでディスプレイで培った技術をセンサ等のデバイスに応用し、ヘルスケア分野などの新規分野への応用展開を加速してまいります。
また、当社グループのコアテクノロジーであるバックプレーン技術の進化や、知的財産を戦略的に活用することにより、研究開発会社として多数の技術とサービスを提供してまいります。
② 技術の深化・進化
中小型ディスプレイ業界においては、進化する市場のニーズに応え続けるため、技術力の一層の向上と継続的な技術革新の追求が不可欠となっております。
当連結会計年度においては、FULL ACTIVE™の改良や低消費電力技術のAdvanced-LTPSの完成度向上、当社独自技術の採用により精細度・生産性に優れたOLEDディスプレイの量産に向けた生産技術の完成度向上を進めてまいりました。2021年3月期は、液晶ディスプレイではFULL ACTIVE™の進化を始めとする、デザイン性の更なる向上と高品質化の実現等により、顧客が真に求めるディスプレイの性能を追求してまいります。OLEDディスプレイについては、茂原工場第6世代蒸着方式OLEDラインにおける事業の安定供給に向け、改良を進めてまいります。また、技術の展開として、インセルタッチパネル技術を応用した新しいセンサなどの新規事業の実現を進めてまいります。
③ 更なるコスト競争力の強化
当社グループは、確実に利益を確保できる事業体質への変革を目指し、一層の経営改革を進めてまいります。当連結会計年度は、構造改革による固定費削減に加えて、変動費の見直し改善を積み重ね、コスト競争力強化を進めました。2021年3月期においては、サプライチェーンの多様化と生産性・品質向上による変動費の削減や、更なるアセット適正化による一層のコスト構造の改善を検討してまいります。また、市場環境の変化に対応可能な効率性の高い生産体制の構築によるコスト競争力の強化に向けた全社活動を継続してまいります。
④ 新型コロナウイルスへの対応
当社グループでは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、お客様、お取引先様、従業員とその家族の安全確保・感染予防と感染拡大の防止、事業継続に向けた対応に取り組んでいます。海外を含む全拠点において、各国政府の指示に従い、リモートワークなどの対策を適宜進めております。またお取引先様に対しても、Web会議システムなどを活用したリモートでのサポートを実施しております。今後も、Web会議やITを活用した取り組みを推進し、感染予防及び感染拡大リスク低減に努めてまいります。
(5) 過年度の不適切な会計処理
当社グループは、上場前を含む過去6期にわたり、不適切な会計処理が発覚することなく継続し、その結果、それらの各期に係る過年度決算を訂正するとともに決算発表を遅延させたことで、株主・投資家をはじめ取引先および市場関係者の皆様に多大なるご迷惑、ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げるとともに、上場会社としての重大な責任があると深く反省しております。当社といたしましては、本件不適切会計処理を厳粛に受け止め、二度と同様の事態を発生させないため、ガバナンス向上委員会を設置し、改めて当社として原因分析を行うとともに、ガバナンスの向上および再発防止のための改善策を策定いたしました。今後、当該改善策を着実に実施し、最善のガバナンス体制を構築していくと同時に、全社を挙げてコンプライアンス意識を高めることで、信頼の回復に努めてまいります。