有価証券報告書-第17期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/07/31 11:32
【資料】
PDFをみる
【項目】
103項目

事業等のリスク

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資家の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
当社は、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
①創薬・医薬品開発事業全般に関する事項
当社は、医薬品開発における初期段階(探索研究~初期臨床試験)での研究開発を中心とした創薬・開発事業を主たる事業としております。本分野は、国際的な巨大企業を含む国内外の多数の企業や研究機関等が競い合っています。また、研究開発から製造販売のための承認・許可の取得、上市に至る過程において様々な薬事規制に従い、しかも長期間にわたって多額の資金を投入する必要があります。この創薬・開発事業は下記のとおり不確実性及びリスクを伴うものであります。
(イ)医薬品研究開発の不確実性について
1)新規パイプライン創出について
当社は、新規医薬品の候補アプタマーを自社あるいはアカデミアとの連携を通じて創出し、自社創薬品目あるいは共同研究品目の候補としていくことを基本戦略としております。
この戦略を確実に推進するため、製薬企業との情報交換による需要の発掘やアカデミアとの産学連携等により、Unmet Medical Needsを満たす新規パイプラインの選定・獲得・創出の可能性を高める努力を続けております。
また、国内外の製薬企業との情報ネットワーク等の情報ソースを活用して需要のある候補ターゲットを早期に探知し、新規パイプラインの可能性を追求してまいります。
しかしながら、現在既に開発途中にあるもの以外の医薬品候補となりうるアプタマーを、適宜、創出できる保証が100%あるとはいえず、そのような場合には、当社の事業計画の変更を余儀なくされる等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
2)開発候補品の選定について
一つの開発候補化合物が医薬品として承認され上市に至るまでには、ヒトでの臨床試験を含む様々な試験によって有効性・安全性の確認のみならず、製造・販売に至るまでに様々な関門があり、その全てをクリアする必要があります。
開発過程の各段階において、開発続行の可否を判断する際、中止の決定を行うことは稀なことではありません。このような成功の不確実性は、自社で開発した場合も、あるいは製薬企業にライセンス・アウトした場合においても、避けては通れないものです。このリスクを低減・分散するため、当社は以下の基本的な対応をとっております。
・一つのターゲット(ターゲットタンパク質)に結合するアプタマーについて、有力なものが得られても、必要に応じ、バック・アップ品を準備することによって、プロジェクトの持続を図る
・互いに独立した複数の開発パイプラインを保有する
これらによって、一つの開発候補化合物について開発途上で何らかの障害が発生した場合でも、それに伴う事業遂行上のリスクやロスを最小限に留めるよう努めております。
しかしながら、当社のような規模の創薬企業にとって、自社創薬、共同研究又はライセンス・アウトかを問わず、開発パイプラインから品目が脱落する影響は大きく、その場合には当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。例えば、第1相臨床試験における重篤な副作用の発現で開発中止を余儀なくされた場合、新規アプタマー探索から同段階までの開発には、約4~6年の期間と、数億円規模の追加費用とを要することになります。
(ロ)COVID-19感染(“パンデミック”)に関するリスク
当社は、パンデミックの状況に鑑みて在宅勤務や時差出勤を取り入れ、事業を遂行することにより感染防止と事業の遂行の両立を図っておりますが、社員に感染者が出た場合には、必要な業務を遂行することができず、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
また、広く社外にも専門的な意見を求め、さらに機動的な事業運営を図るため、当社はアプタマーの合成(前臨床試験用及び臨床試験用の各種アプタマー)や前臨床試験をはじめとした研究開発に関する業務の多くを外部に委託しております。そして、随時状況の把握を行い、且つ、代替先の確保も進めておりますが、万一、パンデミックの影響により外部委託先での作業が滞り、また、迅速に代替先が見つからない場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
さらに臨床試験において、当社は、パンデミックの状況や当局の指導を遵守し、治験に参加する被験者、医師、実施施設スタッフの安全性を最優先した上で、試験を実施いたしております。そして、パンデミックにより円滑な患者登録・治験実施に支障が出た場合には、各医師・実施施設と迅速に連携を取り対応策を実施してまいりますが、パンデミックの状況によっては、米国及び日本での患者登録が円滑に行われず、RBM-007の臨床開発の円滑な遂行ができなくなる可能性があります。例えば、米国で実施中の第2相臨床試験では、各被験者の試験期間が5か月間で主要評価項目の測定が4か月目に行われます。仮にパンデミックの影響で最後の10名の被験者全員が主要評価項目の測定直前で試験から脱落した場合、10名の被験者のリクルートを含め、試験全体の終了が5か月以上延び、かつ治験実施施設や外部業者への追加試験実施にかかる支払が発生いたします。
(ハ)治験の実施について
当社は、2019年12月より、滲出型加齢黄斑変性症を適応疾患として、RBM-007の複数回投与による臨床POC確認を目的とした第2相臨床試験を米国で開始しています。また、日本国内においては、RBM-007について軟骨無形成症を対象とした第1相臨床試験を、2020年7月に開始いたしました。
しかしながら、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変化等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の臨床開発段階への進行が遅れる可能性や、臨床開発自体を終了・中止せざるを得ない状況になる可能性があります。
当社は、このような不確実性を低減するために、1)米国においては、米国子会社のCEOであり眼科医薬品の開発を専門とするYusuf Ali氏(Ph.D.)が中心となり、米国の眼科専門医からなる科学諮問委員会を設置し、さらに子会社従業員として眼科専門医を雇用の上、開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び治験薬の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)、並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき臨床試験を設計し、各治験実施施設の責任医師との緊密な連携下で試験を実施しております。また、日本においても、昨年、製薬大手で長年国内外の臨床試験実績のある臨床開発部長を採用し、多くの第1相臨床試験実績のある治験施設やCRO(Clinical Research Organization)、並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験を設計し実施してまいります。
しかしながら、上記のような最善の対応を実施しても、予めすべての要因を想定することは極めて困難であり、臨床開発の大幅な遅れや中止の可能性、規制当局から追加の試験を求められるなどの事態が発生する可能性があります。このような事象が発生した場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ニ)収益の不確実性について
通常、医薬品(開発途上の製品を含む)のライセンスにおいては、契約締結に伴う契約一時金、開発途上におけるマイルストーン収入及び製品上市後のロイヤルティーの受領を予定しています。
しかし、契約を成立させるためには、ライセンシー(ライセンスを受ける相手先)の評価をクリアする一定の条件(安全性・有効性等に関する信頼できる試験データ、独占的販売等を可能とする特許の存在、競合品との優位性の根拠資料等)を有した医薬候補品を創製・開発する必要があり、また、マイルストーン収入を獲得するためには、ライセンシーによって開発が順調に進み、一定の段階をクリアすることが必要であり、さらにロイヤルティーを得るには、許認可当局からの承認の取得、製造及び販売の全ての段階において成功を収めることが必要であります。
しかしながら、相手先企業の経営環境の極端な悪化や経営方針の変更など、当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に当該研究開発が終了する可能性及び当社の想定と異なる事態が生じる可能性があります。
また、当社及びライセンシーが前述の一連の活動において成功しない、あるいは、製品化(製品の承認取得、製造販売)に成功したとしても、薬価や市場性の問題等から、当該製品に関する事業活動を継続するために必要な採算性を確保するのに十分な収益を得ることができない可能性があります。
そのため、当社は、上記開発プロジェクトの適応疾患の選定及び共同研究やライセンス契約等の提携契約の締結に際して、競合品となる可能性のある既存の医薬品の市場規模等を基に当該プロジェクトの市場性や採算性、並びに当該提携先の開発力・事業化力等を種々の情報ソースを活用しながら検討して参ります。
しかしながら、万一この判断が誤っていた場合、あるいはこの判断の基礎となる状況に変化が発生した場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ホ)遵守すべき法的規制等及び医療保険制度等の不確実性について
当社が参画する医薬品業界は、各国における事業規制法及び医療保険制度、その他関係法令等により、様々な規制を受けております。すなわち新規医薬品を製造発売するに当たっては、対象となる全ての国で当該国が定める薬事関連法規に従って一定の基準の下で承認や許可を受ける必要があり、また臨床試験の開始などについても、多くの国で厳しい薬事規制が設けられています。
当社の事業計画は現行の医薬品に関する日本など先進国での承認基準や薬事規制を前提として策定されておりますが、これらの基準及び規制は科学技術の発展に伴って、適時、改定されています。
そのため、当社は、特に、臨床試験を実施中(又は予定)の日本及び米国の最新の承認基準や薬事規制を適時調査し、当社の研究開発計画に反映し、また、必要に応じて、適宜その他地域についても調査を進めております。
しかしながら、長期間を要する新薬開発においては、その間にこれらの基準や規制、制度、価格設定動向等が大きく変動する可能性がないとはいえず、特に、薬事に関する法的規制等及び医療保険制度等に変更等が生じた場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ヘ)アプタマー医薬に関する潜在的な競合について
当社の潜在的な競合相手は、国内外の大手製薬企業、バイオ関連企業、大学、その他の研究機関等多岐にわたります。
1)アプタマー創薬企業との競合:アプタマー創薬を行っている企業は、現時点では当社やドイツのBerlin Cures社が代表的な会社であり、この分野で公開されている各社の開発ターゲット(開発品目)を見る限り、競合はほとんどありません。
また、アプタマー創薬の基盤技術であるSELEX法に関する特許は、日本及びヨーロッパにおいて2011年6月、米国において2014年9月に失効しました。こうした状況下では大手製薬企業等によるアプタマー創薬への新規参入が想定されます。その場合には、わが国で先駆的にアプタマー創薬に着手してきた当社の研究者の引き抜きや流出に加えて、限られた原薬製造設備の争奪が生じる可能性もあります。
当社としては、将来のこうした状況に備えて、独自の「RiboARTシステム」の開発、知財の取得、ノウハウの蓄積に鋭意努力すると同時に、研究員のリテンションのための施策を講じ、また、アプタマー原薬の製造会社との良好な取引関係を推進するとともに、核酸科学やアプタマーの研究者・研究機関とのネットワークの維持等の対応を行っております。
しかしながら、アプタマー医薬のポテンシーや将来性が大手製薬企業等に認識され、新規参入企業が増加し競争が激化する場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
2)抗体医薬等との競合
アプタマー医薬は抗体医薬と類似した作用メカニズムや投与方法などから、ターゲット疾患によっては抗体医薬との開発競争や市場での競合が起こりえます。
上記に述べた競合相手の中には、マーケティング力、財務状況等について当社やその提携先より優位にある企業が多数あり、当社開発品と競合する製品(特に抗体医薬)を効率よく開発し、生産及び販売する可能性があります。
当社としては、当社開発品と競合する製品・開発品のプロファイル並びに開発状況等も考慮に入れながら、アプタマーの特徴を生かし、当該競合品を凌ぐことができる開発品を選定した上で、当社の優秀な資源と資金をその開発品に集中し、当該開発を推進し、これを他の競合先よりも優れた開発力・マーケティング力を保有する製薬会社にライセンス・アウトする所存です。
しかしながら、許認可当局によって当社の製品候補の販売承認が得られた場合であっても、これら競合相手との競争が生じた場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ト)賠償問題発生リスクについて
当社の創薬対象であるアプタマー医薬は、これまで医薬品として用いられてきた低分子医薬品、ワクチン、抗体医薬品に次ぐ新しいカテゴリーである核酸医薬品に属するものです。
核酸医薬品は開発の歴史が浅く、現在までに10数品目が上市されただけで、多くは開発途上にあります。このため、製品の効果や安全性、製造方法及び製造コストなどにつき十分な経験、実績が確立されているとはいえず、予期せぬ副作用や製造上の問題または課題が発生する可能性があり、このような場合には当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、十分な非臨床試験データの蓄積と、上記(ハ)で述べたように、各領域の専門家や医薬品製造会社の参画を得た上で、治験薬製造、臨床試験計画策定・実施をしています。
しかしながら、このような対策を講じても、予期せぬ副作用や製造上の問題または課題が発生する可能性があるため、臨床試験の実施に伴う健康被害に対する賠償問題が発生した場合に備えて、治験賠償責任保険などの保険への加入によって、こうした事態が発生した場合の財政的負担を最小限にする対応を図っておりますが、当該保険で、十分な賠償責任金額を填補できない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(チ)技術革新について
当社は「RiboARTシステム」というアプタマー創薬に関する基盤技術を保有しており、あらゆるターゲットに対応したアプタマー医薬の開発を可能にしているという点で優位性を有していると認識しております。
しかしながら、医薬品産業においては技術革新が活発であり、当社が認識している優位性を維持し続けるために、当社では、これまでに培った「RiboARTシステム」のさらなる発展、向上を図ることに加えて、新規技術の開発に鋭意取り組んでおります。
しかしながら、当社の計画どおりに研究開発が進捗しない場合や急激な技術革新等により新技術への対応に遅れが生じた場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(リ)海外での事業展開について
当社は、当社の開発するパイプラインが、国内のみならず、世界各国の罹患者の方々にとって需要のあるものであると考えております。このため、海外子会社の設立を含む形で海外展開に向けた取組みを進めております。
しかしながら、海外における特有の法的規制や取引慣行により、必要な業務提携や組織体制の構築に困難が伴うなど、当社の事業展開が何らかの制約を受ける可能性もあり、種々の情報ソースを活用し、最新情報に基づく対応を進めてまいりますが、その情報収集又は対応が不十分な場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ヌ)研究開発に関する外部委託について
当社は、広く社外にも専門的な意見を求め、さらに機動的な事業運営を図るため、主に以下に掲げる研究開発項目の一部について、外部機関に業務委託を行っております。
・原薬(前臨床試験用及び臨床試験用の各種アプタマー)並びに治験薬の製造業務
・前臨床試験の実施
・臨床試験の実施
特に、原薬・治験薬製造委託取引については、自然災害や所在国における不測の事態、予期せぬ事情による契約終了した場合等により、当該製造元から安定的な原薬供給が受けられなくなり、当社の研究開発の推進に支障をきたし、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、当該製造元との良好な関係を維持・継続、また代替先の確保に努めてまいりますが、上記のような事態や速やかな代替先への製造移行が行われなかった場合、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、今後の事業の拡大に合わせて上記以外の業務についても、機動的な事業運営を図るため、外部機関に業務委託を行ってまいりますが、速やかに適切な業務委託先が確保出来なかった場合には、同様に、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ル)投資に関するリスク
当社では、常に最先端の技術開発に取り組み、周辺領域を含めアプタマー創薬に参入している企業や潜在的な競争相手に先んじるため、関連する技術や特許を保有する企業に対して投資やM&A等(買収、合併、事業譲渡・譲受)という形で提携を進める可能性があります。
しかしながら、提携先の選定やその投資価額の妥当性等においては、各事業・財務等の社外専門家の評価を得たうえで慎重に進める方針でありますが、提携先において、予期せぬ問題が生じた場合や、予想通りに研究開発が進まない場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
②会社組織に関する事項
(イ)小規模組織であることについて
当社の人員は、本書提出日現在、役員8名(取締役5名、監査役3名)、従業員21名と小規模であります。当社の研究開発活動については、比較的少人数による体制(代表取締役1名、従業員16名)を敷いておりますが、研究開発段階における提携関係と業務受託企業の積極活用により、既存パイプラインの開発並びに新規薬剤候補化合物の探索を推進しております。今後は、既存パイプラインの開発推進及び新規薬剤候補化合物のパイプライン化に伴い、さらなる研究開発人員の増加を計画しております。
また、管理部門(内部監査室を含む)の人員は本書提出日現在で6名(兼務取締役1名、従業員5名)であり、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。今後の事業拡大に伴い、管理部門につきましても増員を図る方針であります。
しかしながら、計画通りの人員の確保ができない場合、あるいは既存人員の流出が生じた場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ロ)特定人物への依存について
当社はこれまで、創業者で当社の競争力の源となっている「RiboARTシステム」の創出者であり、多くの社有特許の発明者でもある東京大学医科学研究所教授であった中村義一(現 当社代表取締役社長、東京大学名誉教授)を中心として、基礎研究・研究開発をはじめとする事業の全般を推進してまいりました。当社設立は、同氏の研究成果の事業化を目的とするものであり、また、現在の当社と東京大学との共同研究においても中心となっていることから、当社の研究開発活動において重要な位置付けを有しており、その依存度は極めて高いと考えられます。
当社は、今後においても代表取締役としての同氏の会社経営の執行が必要不可欠であると考えており、又、次の世代への大きな権限移譲等による後継者育成に努めておりますが、何らかの理由により、突然、同氏の会社経営の執行が困難となった場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ハ)自然災害について
当社は、事業活動の中心となる研究設備や人員が本社周辺に集中しており、地理的なリスク分散ができておりません。今後、地理的なリスク分散も検討して参りますが、この地域において地震等の大規模な災害が発生した場合には、設備等の損壊、事業活動の停滞等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ニ)大学等との共同研究について
当社は東京大学を含め、複数の大学等公的機関と共同研究を実施してまいりました。今後もこれらの共同研究を継続していく考えでおります。
東京大学医科学研究所には社会連携講座(「RNA医科学」社会連携研究部門)を設置し共同研究を実施しており、その下で同研究所の施設(実験区画、動物試験施設等)や各種のインフラの利用が可能となっており、当社の研究推進に大きく寄与しております。
しかしながら、今後も、他大学との新規共同研究先の探索・提携に努めて参りますが、法令改正等、何らかの事情により東京大学の社会連携講座が大学において継続されず、または共同研究契約が解消された場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
③大株主に関する事項
2020年3月31日時点で大塚製薬株式会社は当社発行済株式総数の22.78%(4,000,000株)を保有しております。なお、大塚製薬株式会社は大株主ではありますが、当社の経営的支配を目的として出資をしていないため、当社の経営判断等に関して影響力を行使するなどの制約を当社に与えておりません。
当社は、大塚製薬株式会社との友好関係を維持してまいりますが、将来において大塚製薬株式会社の経営方針やグループ戦略が変更され、関係が解消された場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(イ)大塚製薬株式会社との取引関係
大塚製薬株式会社との間において、2020年3月期における取引はありません。
(ロ)大塚製薬株式会社とのその他特別な関係
大塚製薬株式会社との間において特別な関係はありません。
④知的財産権に関する事項
(イ)特許について
当社の出願中の各特許については、特許出願時に特許事務所や専門家による特許性等に関する検討・調査を行った上で、最適な特許出願を実施しております。そして、本項に記載した事項については、現在、当社が開発中のプロジェクトに関して、その実施に支障若しくは支障の発生を懸念される事項は、調査した限りにおいて、存在しておりません。
しかしながら、開発品をカバーする特許出願が成立しなかったり、カバーする範囲が狭いためにライセンス・アウトが出来ず、または出来たとしても低額な対価しか得られず、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼすおそれがあります。また、成立した特許の権利維持費用が今後当社の負担になる可能性もあります。
さらに、医薬品業界においては、日々熾烈な新薬の開発競争が世界的に繰り広げられており、他社において優れた発明が行われる可能性は常に存在し、当社の特許が成立し、当社技術を保護できた場合においても、他社の特許や技術により、当社の特許が淘汰または無力化される可能性は否定できません。
(ロ)訴訟及びクレームについて
当社においては、その事業が第三者の特許権等に抵触することを未然に防止するため、事業の着手及びその過程において、特許事務所や専門家による特許調査を適宜実施しており、現時点において第三者特許への抵触の可能性は低いものと認識しております。
また、本書提出日現在において、当社の事業に関する特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟及びクレームが発生している事実はありません。
しかしながら、当社のような創薬を事業とする研究開発型の企業にとって、事業に対する差止請求、損害賠償請求、実施料請求等の知的財産権侵害問題の可能性を完全に排除することは困難であります。万が一、当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、案件によっては解決に時間及び多大の費用を要する可能性があります。特に第三者の特許権等を侵害して事業を行っていた場合、当該第三者から差止請求権や損害賠償請求権を行使されたり、高額な実施料の請求等により、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ハ)特許の確保について
当社は、事業に必要となる職務発明につき、その発明者である役員・従業員等から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は発明者に対して特許法第35条第3項に定める「金銭その他の経済上の利益(相当の利益)」を与えなければなりません。当社は社内に周知された規程に則り、発明者の認定及び金銭の支払を実施しているため、これまでに金銭の額等について発明者との間で問題が生じたことはありませんが、その可能性を将来にわたり完全に排除することはできません。紛争が生じた場合や、発明者に追加の対価を支払わなければならない場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
(ニ)情報管理について
当社の事業において、研究若しくは開発途上の知見、技術、ノウハウ等は非常に重要な機密情報であります。その流出リスクを低減するため、当社は、役職員、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。
しかしながら、役職員、取引先等によりこれが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
⑤経営成績に関する事項
当社は、医薬品の研究開発を事業とするベンチャー企業であり、製薬企業との共同研究や製薬企業への開発品のライセンス・アウトにより収益を得ることを事業の中核としておりますが、医薬品の研究開発では当初から多額の資金が必要になる反面、安定的な収益の計上にいたるまでには相当な期間を要し、当初は期間損益がマイナスになるのが一般的な傾向です。2015年3月期を除き、創業以来、2020年3月期まで当期純損失を計上してまいりました。当社は、既にライセンス・アウトしたパイプラインに続く、後続のパイプラインのライセンス・アウトや新規共同研究契約の獲得を推し進めてまいりますが、将来においてこれらの施策が計画通りに進展しない場合、予定した当期純利益を計上できず、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。
尚、過去5年間の当社の主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。
回次第13期第14期第15期第16期第17期
決算年月2016年3月2017年3月2018年3月2019年3月2020年3月
事業収益(千円)121,91193,77364,7277,949121,385
営業損失(△)(千円)△532,389△785,903△899,894△928,626△914,580
経常損失(△)(千円)△322,103△658,864△751,609△835,200△853,832
営業活動によるキャッシュ・フロー(千円)△324,703△706,894△694,797△830,464△902,288

上記に記載しましたように、安定的な収益の計上に至るまで、さらには、事業計画が計画通りに進展しない等の理由から資金不足が生じた場合には、提携内容の変更、更なる助成金の獲得、新株発行等の方法により資金需要に対応してまいります。しかし、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。