有価証券報告書-第23期(令和2年5月1日-令和3年4月30日)

【提出】
2021/07/30 14:13
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144項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済およびわが国経済は、昨年度以降引き続き継続する新型コロナウイルスの感染症拡大により経済活動が大きく制限され、消費需要の低下、生産活動の停滞という未曾有の事態が長期化いたしました。また、緊急事態宣言が再発令されるなど、依然として先行きは不透明な状況にあります。
当社グループとしては、同感染症への対応として、従業員の安全確保および事業を継続させるべく在宅勤務制度導入等、ニューノーマルの働き方に沿った取り組みを早期より実施してきました。在宅勤務制度導入後も滞りなく業務が遂行され、同感染症拡大前と同程度以上の業績を出せることが確認できましたが、一方、新規事業を生み出すスピードにおいては課題があったと認識しています。同感染症の影響は長期化する可能性も考えられることから、この課題に対応するべく大規模なオフィスリノベーションを実施しました。これからのテレワーク時代、オフィスの役割は「職場」ではなく、社員が集まるための「集場」へと変化していくと考えています。当社はそこでしか生まれないリアルなコミュニケーションが、より一体感のある組織づくりに必要な要素であると同時に、新規事業の創出に必要な要素でもあると考えています。今後も継続的な事業成長を実現する上で、在宅勤務とリアルなコミュニケーションを融合させることで、既存業務を推進しつつ、積極的に新規事業に挑戦し、更なる成長を目指していきたいと思います。
さらに、事業展開のスピードを加速させ、企業価値の最大化を目指すべく、これまで代表取締役社長であった樋口敦士が代表取締役会長に、取締役であった水島育大が代表取締役社長に就任する、経営体制の変更を行いました。今後、新しい時代に合わせたCX(Corporate Transformation)を進め、経営者を多数輩出していくことで、Missionである“クリエイティブ魂に火をつける”を追求していきます。
セグメントごとの状況は次のとおりであります。
a.コマース事業
(a) 国内事業
卸売においては、1年を振り返ると同感染症の影響を絶えず受け、地合いが弱い年度となりました。当期首における通期業績予想の前提として、2021年4月期夏に同感染症が収束され、その後は回復へ向かうと仮定していましたが、実際は繰り返される緊急事態宣言の発令と解除により実店舗の消費は想定した以上に回復せず、卸売先への出荷は前連結会計年度比13.6%減と、通期業績予想をも下回る結果となりました。一方、小売においては、同感染症の拡大による消費者の購入経路の変化を上手く捉えることができた結果、前連結会計年度比19.9%増と大幅増収となりました。
商品面では、「独特な曲線美や豊富なカラーバリュエーションなど個性を表現することも考慮した特徴的なデザイン」「モバイルアクセサリー専門ブランドとしての高い認知度」「若年層顧客からの強い支持」を強みとしている“iFace”が引き続き堅調に推移しました。ロングヒットを続けている「iFace First Class」に加え、2019年に導入した「iFace Reflection」が順調に成長し、“iFace”における新たな象徴となりました。また、2020年10、11月に発売されました新型iPhone関連商品も堅調に売上を積み上げることができました。これらの取り組みの結果、「2020楽天年間ランキング」のスマートフォン・タブレットジャンル部門で第1位、「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2020」スマートフォン・タブレット・周辺機器ジャンル大賞ダブルイヤー賞を受賞、オンラインモール「au PAY マーケット」において、約2万店の店舗からベストショップを決定する「BEST SHOP AWARD 2020」のスマホ・タブレット・モバイル通信カテゴリ賞を受賞する等、スマートフォンケースブランドとして大きな成長を遂げました。さらに、ユーザーとの継続的な接点確保、顧客満足度向上等を目指し、iFace公式アプリをリリースする等、積極的にコマース事業のDXに挑戦しました。
(b) 海外事業
最大の市場である米国においては同感染症の影響により、国内同様に引き続き小売が好調に推移し、前年を大きく上回る結果となりました。一方海外輸出につきましては回復途上であり、現在業績回復に向けて取り組んでいます。また、Hamee Global Inc.を中心に自社生産比率の向上、ソーシング機能強化等、サプライチェーンの改善に取り組み、コマース事業全体の基盤を強化し、収益向上に貢献しました。
これらの結果、コマース事業の売上高は9,726,740千円(前連結会計年度比5.6%増)、営業利益は2,498,624千円(同13.7%増)となりました。
b. プラットフォーム事業
(a) ネクストエンジン
自社開発のクラウド(SaaS)型EC Attractions「ネクストエンジン」については、同感染症拡大による消費行動の変容からEC市場が大きく伸び、ネクストエンジン顧客企業の受注処理件数も増加し、当該トランザクションに紐づく従量課金制としているネクストエンジンの売上も大きく伸長しました。また販路としてECの重要性が高まったこともあり、この流れを最大限取り込むべく「新型コロナウイルス支援策とりまとめ」等、EC事業を始める事業者のサポートを強化し、新規顧客獲得に繋げました。コールセンター業務の外部への移管完了に伴い、社内リソースがよりカスタマーサクセス活動へ注力できる体制を構築しました。また、「BtoB オーダーアプリ」「Facebook ショップとの連携」等、プラットフォーマーとしての付加価値向上を継続的に行いました。さらに、在庫管理・受発注管理等のECバックヤードの効率化機能に加え、「レコメンドメール自動配信アプリ」「manekine(マネキネ)」等による売上の自動化に取り組む等、サービスの拡張に努めました。これらの活動の結果、総契約数は4,739社(前連結会計年度末比742社増)、利用店舗数36,004店(同5,169店増、いずれも自社調べ)となりました。
(b) Hameeコンサルティング株式会社
EC事業者向け販売支援コンサルティングを提供するHameeコンサルティング株式会社について、組織改善が大きな効果を出し、新規顧客獲得が順調に伸びることにより収益が大きく改善しました。
これらの結果、プラットフォーム事業の売上高は2,308,050千円(前連結会計年度比24.4%増)、営業利益は954,876千円(同63.0%増)となりました。
c. その他
コマース事業、プラットフォーム事業のいずれにも明確に分類できない新たなサービスに係るものであり、「ふるさと納税支援サービス」や小学生向け見守りモバイル端末「Hamic POCKET(はみっくポケット)」、エシカルネットショップ「RUKAMO」等が含まれます。「ふるさと納税支援サービス」は、市場(寄付額)の拡大、パートナーとの連携強化等に取り組んだ結果、前年比16.7%の増収と継続的に成長する事ができました。また、「Hamic POCKET」においては、2021年2月にリリースされました。
当連結会計年度の売上高は329,577千円(前連結会計年度比22.9%増)、セグメント損益(営業損益)は「ふるさと納税支援サービス」以外、先行投資フェーズであるため営業損失は273,208千円(前連結会計年度は179,200千円の営業損失)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は12,363,688千円(前連結会計年度比9.2%増)、営業利益は2,179,708千円(同24.9%増)、経常利益は2,148,786千円(同22.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,556,327千円(同45.5%増)となりました。
d. 財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、前連結会計年度末に比べ197,985千円増加し、6,456,733千円(前年度比3.2%増)となりました。これは主に、売上高の増加等により受取手形及び売掛金が360,100千円増加したこと及び立替金の増加等によりその他流動資産が48,322千円増加した一方で、短期借入金の返済等により現金及び預金が98,680千円減少したこと等の結果によるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、前連結会計年度末に比べ44,242千円増加し、1,882,020千円(同2.4%増)となりました。これは主に、繰延税金資産が128,859千円増加した一方、のれんが174,289千円減少した等の結果によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、前連結会計年度末に比べ1,399,988千円減少し、1,746,062千円(同44.5%減)となりました。これは主に、未払金が69,074千円増加及び未払法人税等が25,487千円増加したこと及び賞与引当金が48,306千円増加した一方で、短期借入金が1,587,822千円減少しました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の対策として、経営の安定性を図るために一時的に手元流動性を厚くしていましたが、コロナ禍においても同感染症拡大前と同程度以上の業績を出せることが確認できたため、短期借入金を返済したことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、前連結会計年度末に比べ61,470千円減少し、64,638千円(同48.7%減)となりました。これは主に、長期借入金が48,036千円減少したこと等の結果によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ1,703,687千円増加し、6,528,052千円(同35.3%増)となりました。これは主に、利益剰余金が1,445,785千円増加及び為替換算調整勘定が215,202千円増加したこと等の結果によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ98,680千円減少し、3,354,616千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,941,111千円(前連結会計年度は1,934,338千円の収入)でありました。これは主に、税金等調整前当期純利益2,143,813千円、減価償却費316,546千円、のれん償却額197,554千円等の収入要因に対し、法人税等の支払い682,509千円等の支出要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は412,081千円(前連結会計年度は1,019,906千円の支出)でありました。これは主に、有形固定資産の取得181,581千円、無形固定資産の取得169,897千円等の支出要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,736,346千円(前連結会計年度は932,631千円の収入)でありました。これは主に、短期借入金の減少1,588,347千円、配当金の支払い110,541千円等の支出要因があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年5月1日 至 2021年4月30日)
生産高(千円)前年同期比(%)
コマース事業989,037367.2

(注) 1.金額は、当期総製造費用によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年5月1日 至 2021年4月30日)
仕入高(千円)前年同期比(%)
コマース事業3,644,13189.1
プラットフォーム事業--
その他55,493314.1
合計3,699,62490.0

(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 受注状況
当社グループのコマース事業においては受注から販売までの所要日数が短く、常に受注残高は僅少であります。またプラットフォーム事業においては、ユーザーのシステム内における受注件数に応じた従量課金制の手数料収入が主であるため、受注残高は発生しません。そのため、受注状況には重要性がなく、記載を省略しております。
d. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称当連結会計年度
(自 2020年5月1日 至 2021年4月30日)
販売高(千円)前年同期比(%)
コマース事業9,726,740105.6
プラットフォーム事業2,308,050124.4
その他329,577122.9
調整額△6809.2
合計12,363,688109.2

(注)上記の調整額にはセグメント間の内部売上収益が含まれております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 4、会計方針に関する事項」及び「第5経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
新型コロナウイルス感染症の拡大による会計上の見積り及び仮定への影響については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(追加情報)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等の状況
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
b. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要の主なものは、コマース事業における卸販売の拡大に伴い発生する商品仕入資金及び販売費及び一般管理費等の営業費用支払いに充当するための資金であります。設備投資資金の主なものは、プラットフォーム事業における主要なサービスであるネクストエンジンの機能向上に資するための開発、ソフトウエア等無形固定資産への投資資金、この他企業買収等、企業価値向上に資する投資に関する資金需要があります。
当該資金需要のうち運転資金につきましては、取引銀行6行との間で総額1,950,000千円の当座貸越枠を設定しており、必要に応じて機動的な資金調達が可能な体制を整えております。また、投資資金につきましては、案件ごとに、手持ち資金の状況を勘案しながら、長期借入金により資金調達を行っております。
なお、企業買収について、今後多額の買収資金が必要となるような案件が発生した場合、資本効率やコスト等のバランスと、株主利益への影響を十分に勘案したうえで、資本市場での調達、金融機関からの調達の双方を慎重に検討のうえ資金調達を実施してまいります。