有価証券報告書-第51期(令和1年9月1日-令和2年8月31日)

【提出】
2020/11/26 14:39
【資料】
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【項目】
152項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループを取り巻く国内の建設業界における状況は、昨年までは、少子高齢化や労働人口の減少等課題はあるものの、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた投資、特に社会インフラの整備等の投資を中心とした設備投資の回復を受け緩やかに成長しておりました。しかしながら、米中貿易摩擦に伴う通商問題の長期化の中、年初からの新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大により、世界経済に甚大な影響を与えています。国内においても、6月以降持ち直しの動きがありましたが、先行きが見通せない状況となっています。
このような中にあって、5Gに関するインフラ整備工事や情報通信技術ICT(Information and Communication Technology)を活用した様々なシステム化工事及び太陽光発電を含めた再生可能エネルギー関連設備工事、さらには、老朽化した社会インフラ設備更新需要や保守メンテナンス需要等の基盤事業は今後とも安定した成長が期待されます。また、日本の国土交通省は、アジアのインフラ投資と先進諸国のインフラメンテナンス需要の高まりにより、大きな成長が見込まれるため、政府主導による国内建設会社の海外市場への進出を後押しする動きが活発化しております。
こうした事業環境下、当社グループでは、国内では、長年培ってきた技術力と顧客からの信用力を活かし、防災行政無線設備、通信基地局設置やETC設備工事等の受注拡大に取り組んでおります。また、海外市場においては、ベトナムにおける設計積算事業に加え、建設投資需要の取り込みや今後成長が期待される太陽光発電設備やアジア諸国での空港電気設備等のODA案件など受注拡大に努めてまいります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、総合設備工事会社として、提案、調査、コンサル、設計、施工、保守メンテナンス等、工事に関する各種の課題に対し、一気通貫して高度なサービスを提供する体制を構築し、SDGs(持続的成長)企業を目指し、安心して暮らせる豊かな社会づくりに貢献してまいります。 あわせて、ニューノーマル時代に適応したDX化によるビジネスプロセスの変革に取り組み、企業価値の向上に努め、各ステークホルダーから信頼・評価される会社を目指します。 また、安全確保と品質向上、コーポレートガバナンスの強化、コンプライアンスの徹底、リスク管理の強化及びJESCOグループ行動指針の徹底を図るとともに、金融商品取引法に基づく内部統制につきましても定着化を図ってまいります。
(2) 中長期的な目標
当社グループは、国内での電気設備、電気通信設備施工事業の持続的成長を梃に、ベトナムを中心とするアセアンにおける設計積算事業に加え、空港インフラ設計施工及び民間高層コンドミニアム施工等の建設事業の成長を加速させ、海外売上高比率50%を目指してまいります。こうした施策に加え、新規受注の拡大、業務提携、M&A等の施策により、グループ全体の中長期的な売上目標を200億円としております。
(3) 会社の対処すべき課題
当社グループは、グループ全体の事業基盤を強化し拡大するため、以下の項目を課題と認識しております。
① 国内事業における課題
国内経済は、年初からの新型コロナウイルス感染症の拡大により甚大な影響を受けており、先行きは予断を許さない状況となっています。国内建設業においても、新型コロナウイルス感染症の影響で厳しい状況が続くと想定されますが、東京オリンピック・パラリンピックが1年延期で開催される可能性もあり、延期されていた案件の再開が期待されます。一方、当社を取り巻く環境においては、競争激化による元請会社からの価格圧力、技能人材不足による下請会社からの単価アップ要請等により、厳しい状況が予想されます。こうした中、当社グループは、長年に渡り積み上げてきた技術力と顧客からの信用力を活かし、今後も既存事業領域における受注拡大を図るとともに、5Gインフラへの対応や再生可能エネルギー関連電気設備の受注拡大を目指してまいります。
また、社会インフラや公共施設等のメンテナンス業務の需要拡大が見込まれていることから、メンテナンス事業領域での受注拡大も目指してまいります。
さらにJESCO SUGAYA株式会社を中心とした北関東地域事業の拡大、大阪支店・名古屋事業所に加え、更なる国内ネットワークの構築による事業の拡充を進めてまいります。
② ベトナム及びアセアン地域の事業における課題
ベトナムを中心とするアセアン地域においても新型コロナウイルス感染症の影響で引き続き予断が許せない状況が続くと想定されますが、当社の強みであるオフショアでの設計積算では、更なる人員拡充やメコンデルタ地区への進出など積極的なチャレンジを進めてまいります。また、空港設備設計施工の実績を活かし空港・道路等のアセアン諸国のインフラ建設工事の受注拡大を図ってまいります。さらに、アセアン各国への拠点進出のために、国内既存人員の戦略的配置、M&Aや業務提携・アライアンスの構築等を通じたグループシナジーの最適化を図ってまいります。
③ 経営資源の最適配分
当社の重要な経営資源は、人的資源であります。
国内の建設業界では、生産人口の減少等による労働人材や専門エキスパート人材の不足が生じており、当社グループにおいても、業績に影響を与えております。また、ベトナムにおいても同様に、人材不足による労働コストの上昇が当社グループの業績に影響を与えております。
このような課題にたいして、当社ではDXによるビジネスプロセスの変革に取り組んでいます。
a JESCO DX(デジタルトランスフォーメーション)の強化
当社では、すでに20年前から設計積算業務をベトナムで行う、設計情報のデジタル化に取り組んでまいりましたが、今般、国内とベトナムの設計部門をWEBコミュニケーションツールで結合し仮想空間での一体化を図りました。このようなDX化をベースに、現状160人を300人に倍増するとともに、メコンデルタ地域への拡大、BIMソフトの導入など体制をさらに強化してまいります。
また、当社グループでは、日本及びベトナムでの人材開発のDX化を進めるべく、インターネットを活用した「JESCOアカデミー」を本年10月に開講しました。クラウドを利活用したオンデマンド配信による技術者教育で、いつでもどこでも好きな時に受講することができます。将来的には国内外のパートナー会社に拡大し「グローバルアカデミー」を構築してまいります。
また、建設業におけるDXソリューションの一環として、ICTを活用したBIM技術者の育成にも取り組んでいます。学校法人工学院大学、㈱SOBAプロジェクトとの産学連携による企画「ベトナム国BIM理論を活用した産学連携教育事業による電気設備技術者育成のための案件化調査」が、本年9月、独立行政法人国際協力機構(JICA)の「2020年度第一回中小企業・SDGsビジネス支援事業-案件化調査-」に採択されました。今後、ベトナム国のダナン工科大学との連携により、国内外で活躍する高度技術者の育成に努めてまいります。
b 資金面での取り組み
資金につきましては、保有不動産の適切な運用により流動性の確保を図りつつ、アセアンにおける事業拡大、国内外でのM&A資金等に活用する方針であります。また、金融機関や証券市場を通じた資金確保も可能であります。
こうした人材資源開発及び資金資源の最適配分を進め、業績拡大を目指してまいります。
*DX(デジタルトランスフォーメーション): 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル
技術を活用し、顧客や社会のニーズを基に、ビジネスプロセスなどを変革することにより、競争上の優位性
を確立すること。
*BIM:Building Information Modeling ICTを活用し、3次元の建設デジタルモデルに建築物のデーターベース
を含めた建築の新しいワークフローを提供するモデル(ソフトウェアを含む)。
*SDGs:Sustainable Development Goals 2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」であり、2030年ま
でに達成を目指す17のグローバル目標と169のターゲットから構成される。