有価証券報告書-第21期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 当社グループの経営理念及び経営方針
① グループ経営理念
郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。
② グループ経営方針
・ お客さまの生活を最優先し、創造性を発揮しお客さまの人生のあらゆるステージで必要とされる商品・サービスを全国ネットワークで提供します。
・ 企業としてのガバナンス、監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します。
・ 適切な情報開示、グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します。
・ グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
・ 働く人、事業を支えるパートナー、社会と地域の人々、みんながお互い協力し、社員一人ひとりが成長できる機会を創出します。
(2) 経営環境
当連結会計年度の経済情勢を顧みますと、世界経済は、米国の関税政策の影響を受けつつも、米国を中心に総じて底堅く推移しました。米国経済は、関税政策による物価上昇が限定的ななか、個人消費を中心に堅調に推移しましたが、FRB(連邦準備制度理事会)は、労働市場の急減速を受け、2025年9月以降、3会合連続で利下げを行いました。ユーロ圏経済は、ECB(欧州中央銀行)が2025年4月と6月に利下げを実施した後、政策金利は据え置かれたものの、内需を中心に底堅く推移しました。日本経済は、米国による関税政策の影響が見られましたが、内需の持ち直しもあり緩やかに回復しました。賃金と物価がともに上昇するなか、日本銀行は2025年12月に利上げを行いました。しかしながら、2026年2月末には米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始し、世界経済全体の先行き不透明感が急速に高まりました。
金融資本市場では、米国の長期市場金利は、関税政策により上下に振れた後、労働市場の弱さや景気減速懸念から低下に向かいました。その後、米国とイスラエルの軍事行動を契機とする原油価格の高騰を受け再び上昇傾向に転じました。また、日本の長期市場金利は、2025年4月に米国の関税引き上げ表明を受け一時1.1%台まで急低下しました。その後は物価高が続くなか、財政悪化懸念や原油価格高騰もあり、上昇基調に転じました。
ドル円相場は、米国の関税政策への懸念等から、2025年4月下旬に一時140円程度まで円高が進行しましたが、日本の財政悪化懸念等もあり、2026年1月には160円程度まで円安が進行しました。その後は為替介入への警戒等により円高に転ずる局面があったものの、イラン情勢の緊迫化等により再び円安基調に転じました。
日経平均株価は、米国同様に、2025年4月上旬に一時31,000円台まで急落しましたが、好調な米国株式市場や日本の新政権への政策期待等から上昇基調が続き、2026年2月末に最高値を記録しました。その後は原油価格高騰による景気減速懸念等を受け、下落しました。
物流業界においては、EC市場規模の拡大が続く一方で、業界内の激しい競争に加え、諸物価や人件費の上昇に伴うコストの増加等により、厳しい環境が続いています。また、働き方改革関連法等によるドライバー拘束時間に係る基準強化などから生じる、いわゆる物流の「2024年問題」への対策として、「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき業界・分野別に作成された自主行動計画に掲げられた取組みの実行のほか、改正物流総合効率化法及び改正貨物自動車運送事業法が施行され、物流業界を取り巻く事業環境に変化が生じています。
郵便事業においては、デジタル化の進展等に伴う郵便物数の減少が続いています。こうしたなか、経営環境の変化に応じて機動的に郵便に関する料金を変更することができるようにするため、定形郵便物の料金の上限の額を日本郵便の申請に基づき総務大臣が認可する制度に見直すことなどを内容とする郵便法の一部を改正する法律案が第221回国会(特別会)において成立しました。
銀行業界においては、当連結会計年度の全国銀行における預金は27年連続で増加し、貸出金も15年連続で増加しました。金融システムは、各国の経済政策運営や中東情勢を中心とする地政学的リスク、海外ノンバンク部門の動向等が、様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については引き続き丁寧に見ていく必要があるものの、全体として安定性を維持しています。
生命保険業界においては、超高齢社会の進展や人口減少等に加え、度重なる自然災害の発生、資源価格の高騰や為替の変動等、先行きが読めない不確実な状況が続くとともに、ライフスタイルの変化や、生成AIの急速な広まり等による社会のデジタル化の進展等、社会全体が大きく変化している現在、お客さまの人生に寄り添い、万が一に備えるお客さまの自助努力を支援し、安心を提供するという役割が、ますます大きくなってきていると考えております。
当社グループは、「郵便・物流」「貯金」「保険」の生活に必要な基礎的サービスや物販、提携金融サービス等を全国約2万4,000か所の郵便局ネットワークを通じて提供するほか、不動産事業など多数のサービスを展開しております。郵便・物流事業においては1日に約3,000万か所への郵便配達箇所数、銀行業においては約1億2,000万口座の通常貯金口座数、生命保険業においては約1,577万人のお客さま数(契約者さま及び被保険者さまを合わせた人数(個人保険及び個人年金保険を含み、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みます。))など、毎日の生活の中で多くのお客さまにご利用いただいており、お客さまとの接点の多さは当社グループの強みとなっております。
(3) 当社グループの経営戦略等
① 中期経営計画等について
当社グループは、2026年度~2028年度を対象とした新たな中期経営計画として「JP プラン 2028」(以下「JP プラン 2028」といいます。)を2026年5月に公表しました。
(a) JP プラン 2028の基本方針
当社を取り巻く10~15年後の長期的な環境変化を踏まえ、長期的に目指す姿として、前中期経営計画において掲げた共創プラットフォームを、総合物流プラットフォーム・総合金融プラットフォーム・生活サポートプラットフォームから構成される3つの機能に深化することに加え、不動産事業及び各グループ横断的サービスの提供を通じて、今まで以上の「日本郵政グループ」の魅力・価値の創出を目指します。
本中期経営計画期間においては、3つのプラットフォームを支える基盤である郵便及び郵便局ネットワークが、郵便物数の大幅減、窓口の来客数減少などにより持続可能なユニバーサルサービス提供に課題を抱える現況から、「目指す姿」に向けた第一歩として、ユニバーサルサービスの持続性確保と、新たな事業領域等での成長を同時に実現することを目指します。

(b) ユニバーサルサービスの持続性確保と、新たな事業領域等での成長に向けた3つの重点戦略
「JP プラン 2028」のもと、「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」、「成長領域での利益成長による企業価値向上」、「グループ経営基盤の強化」という3本柱を掲げて取り組みます。
「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」は、郵便物数の減少や人件費・物価高騰等により、現行の事業構造ではサービス維持が困難になりつつあるという課題に対応するものです。集配拠点の集約、生産性向上による要員配置の最適化、窓口営業時間の弾力化など、郵便・物流事業、郵便局窓口事業の抜本的な構造改革に取り組み、業務効率化や生産性向上を進めてまいります。
「成長領域での利益成長による企業価値向上」は、郵便物数や窓口来客数の減少といった収益課題に対し、金融・不動産・物流といった成長余地のある事業で利益拡大を図るものです。金融事業では、商品ラインアップを拡充し多様な年代のお客さまニーズに対応するとともに、郵便局のリアルチャネルに加え、デジタルチャネル・リモートチャネルを活用してお客さま接点の充実を図ります。不動産事業では、賃貸事業を基盤に分譲・回転型事業及びマネジメント事業を強化し、総合デベロッパーとしての事業拡大を目指します。物流事業では、日本郵便の強みであるラストワンマイルに加えて、国内外の企業間物流の強化として国際物流・国内物流の全てを運営できる物流網を構築し、また、ゆうパック・ゆうパケットの収益拡大に取組むことなどを通して、総合物流企業への転換を目指します。
「グループ経営基盤の強化」は、不祥事の発生や激しい外部環境変化等を踏まえ、ガバナンス・コンプライアンス・DX・人的資本経営・資本政策の取組みを進めることで、信頼回復と企業価値向上の基盤を強化することを目的としています。

② 経営者の問題意識と今後の方針
当社グループは、人口減少やデジタル化の進展など、今後10~15年にわたる社会・経済環境の大きな変化を見据えた上で、当社グループに大きな影響を与える課題の解決に向けて、今後3年間に取り組むべき主要戦略をまとめた「JP プラン 2028」を2026年5月に公表しました。
「JP プラン 2028」では、人口減少や高齢化の加速、地方での過疎化、そしてデジタル化やAIなどの技術革新による社会や経済の在り方そのものが大きく変わりつつあるなか、こうした長期的な変化を踏まえ、当社グループが長期的に目指す方向性を示しました。これまでの共創プラットフォームを「総合物流」「総合金融」「生活サポート」という3つのプラットフォーム機能に深化させることに加え、不動産事業及び各グループ横断的サービスの提供を通じて今まで以上の「日本郵政グループ」の魅力と価値を生み出すことを目指します。財務面では、新中期経営計画期間の重点戦略等に取り組むことにより、中長期的な目標として株主資本コストを上回るROEの継続的な創出を目指します。なお、「JP プラン 2028」については、2027年度に郵便料金改定が実施された場合を見据え、一定の幅をもって経営目標を設定しております。
「JP プラン 2028」の3年間は、長期的に目指す姿である「3つのプラットフォームの深化と不動産事業による価値創出」に向けたステップとして位置づけております。郵便物数や窓口来客数の減少等、グループの直面する課題に鑑み、「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」、「成長領域での利益成長による企業価値向上」及び「グループ経営基盤の強化」を重点戦略としております。
「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」については、郵便・物流事業において、郵便物数が減少するなかで、グループの使命である郵便サービスを持続的に提供するため、集配拠点の集約等による業務効率化や生産性向上・要員管理の高度化により戦略的な要員配置の最適化を進め、徹底したコスト削減と収益向上の取組みを通じて損益改善を図ります。そのうえで、ニーズやコスト等を踏まえて各種郵便サービスの料金の見直しを検討し、また、現在、法令で求められているサービス水準の見直しを要望してまいります。また、郵便局窓口事業において、人口減少や過疎化の進展により、地域事情は多様化し、郵便局窓口の社員数減少が予測されるなか、窓口営業時間の弾力化等を通じて地域事情に応じた柔軟な運営体制を構築することにより生産性向上を進めます。また、地域のインフラ維持機能やお客さまの暮らしを支えるサービスを提供することで、地域の生活を支える生活サポート拠点としての機能を発揮することを目指します。
「成長領域での利益成長による企業価値向上」については、金融、不動産、総合物流による利益拡大を進めます。金融事業においては、若年層~中高年層に向けた商品ラインアップ拡充や、当社グループが強みを持つリアルチャネルに加え、アプリ等のデジタルチャネルや、専門的な知識を持つ社員との応対ができるリモートチャネルを活用したお客さま接点の充実により、多様な年代のお客さまの潜在的ニーズに対応します。不動産事業においては、将来的に総合デベロッパーへの転換を目指します。そのステップとして、「JP プラン 2028」期間においては、グループ保有不動産の開発による賃貸事業等のストックビジネスを強化するとともに、継続的な分譲マンション事業や、用地仕入れ、開発、売却により利益を獲得する回転型事業等のフロービジネスへ取り組むとともに、不動産投資顧問会社の設立や私募ファンドの運用等によるフィービジネスなども取り組むことで事業領域を拡大させてまいります。物流事業においては、当社グループの強みであるラストワンマイルに加えて、M&Aや資本業務提携等を活用し、国際物流・国内物流の全てを一体で事業運営できる総合物流企業を目指し、あらゆるお客さまの要望に応えられる利便性の高い物流サービスを提供してまいります。
「グループ経営基盤の強化」については、AIやデジタル技術の活用を推進し、お客さまの体験価値や業務における社員の体験価値を高めるグループDXの取組みを推進してまいります。人的資本戦略については、「事業環境の変化や成長戦略に応じた人材ポートフォリオの構築」と「社員一人ひとりの可能性の最大限の引き出し」を推進してまいります。サステナビリティ経営の推進に関しては、「社会と地域の発展」と「ステークホルダーの幸せの実現」2つの社会的価値の創造を通じて、経営理念の実現を目指します。
ガバナンス体制を強化する取組みについては、各郵便局の実態を的確に把握し、法令等のルールの浸透を支援する新組織を設置することにより、ガバナンスを抜本的に強化するとともに、お客さまが郵便局を信頼・安心して利用していただける環境を構築してまいります。
そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。
なお、2025年6月27日付で、当社は連結子会社であるゆうちょ銀行の普通株式の一部につき、株式処分信託の設定により株式処分を実施しました。これにより、当社のゆうちょ銀行に対する議決権の保有割合は49.9%となりました。本株式処分により、ゆうちょ銀行に対する議決権保有割合は50%を下回りましたが、実質支配力基準により、ゆうちょ銀行が当社の連結子会社であることに変更はありません。
当社は、資本効率の向上、株主還元の強化を目的として、自己株式の取得を実施しており、2024年5月15日付の取締役会決議に基づき、2024年5月16日から2025年3月31日の間、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT‑3)及び立会市場における取引により当社普通株式233,305,400株を取得し、2025年3月28日付の取締役会決議に基づき、2025年4月11日付で保有自己株式のうち233,305,400株を消却いたしました。
その結果、2025年4月11日時点における発行済株式総数は2,972,934,900株となりました。
また、2025年5月15日付の取締役会に基づき、2025年8月28日から2026年3月31日の間、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT‑3)及び立会市場における取引により当社普通株式164,740,300株を取得し、2026年3月27日付の取締役会決議に基づき、2026年4月10日付で保有自己株式のうち164,740,300株を消却いたしました。
(4) 対処すべき課題
① 非公開金融情報の適切な取り扱いの確保に向けた取組等について
郵便局において、お客さまから事前に同意をいただかないまま、お客さまの貯金の非公開金融情報を、保険募集や投資信託等の販売を目的とした来局ご案内に利用した事例が2024年度に確認されたことを受け、発生原因を分析し再発防止策を策定するとともに、関係者の責任を明確化いたしました。当社グループは、総力をあげて再発防止策の実効性を不断に検証しながら改革を継続し、お客さま本位のサービス提供が図られるよう、全力で取り組んでまいります。また、同年度に受領したグループ主要4社に対する金融庁の報告徴求命令並びに当社及び日本郵便に対する総務省の報告徴求命令に基づき、再発防止策及びその実施状況等について定期的に報告を行ってまいります。

② 商品認可前の勧誘行為の再発防止について
2024年1月4日に販売を開始した一時払終身保険に関し、販売に係る保険業法上の認可を取得する前に日本郵便及びかんぽ生命の社員である生命保険募集人が勧誘行為を行った事案を受け、当社、日本郵便及びかんぽ生命は、実態を把握するための調査を実施し、調査結果等を踏まえた再発防止策を策定いたしました。再発防止策に掲げた各種施策等について、進捗管理を着実に実施しながらPDCAを回し、法令違反を再発させない態勢構築とお客さま本位のサービス提供に向けて、当社グループの全役職員が一丸となって取り組んでまいります。

各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。
③ 郵便・物流事業
郵便・物流事業については、デジタル化の進展に伴う郵便物数の減少、荷物分野における競合他社との激しい競争、諸物価や人件費の上昇によるコスト増加などにより、一段と厳しさを増しており、将来にわたる事業の持続可能性を確保するため、徹底的なコスト削減と収益拡大に取り組んでまいります。
コスト削減に向けては、郵便物の減少に対応するため、柔軟な通集配体制の構築を行い、要員配置の適正化や荷物配達の内製化の推進に取り組むほか、集配拠点の集約により拠点配置の最適化を図ってまいります。また、運送料及び車両の削減のほか、機械処理の拡大・省人化の推進により生産性向上を図ってまいります。
収益拡大に向けては、他企業との連携強化を進めるほか、送達日数のスピードアップや差出条件の緩和等サービスレベルの改善を通じて、越境EC分野やフリマアプリ市場も含めたEC市場の荷物の確実な獲得に取り組み、荷物の収益拡大を図ってまいります。郵便物については、利用ニーズの喚起や利便性向上による利用拡大に向けた取組みを強化し、郵便物数の減少を可能な限り食い止めます。年賀郵便についても、魅力的な新商材の投入、デジタル関連サービスの展開のほか、年賀葉書の価値を感じていただけるようなプロモーションを展開する等、利用拡大に向けた取組みを強化してまいります。これに加え、toB・toCの物流を一体で運営できる総合物流企業へ成長すべく、子会社であるトナミHDや資本業務提携を結んだロジスティードホールディングス株式会社(以下「ロジスティードHD」といいます。)等と連携しながら、資産の相互利活用や業務の共同化等、ラストワンマイルを含めてシナジーを発揮し、国内外の物流サプライチェーン網の確立に取り組んでまいります。
こうした損益改善策に着実に取り組むとともに、更なるコスト削減・収益拡大の取組みについても検討するものの、今後の業績見通しは厳しい状況であることから、郵便料金全般の見直しについても検討を行う必要があると考えております。
また、郵便のサービス水準の見直し等についても総務省に要望することを検討するとともに、関係者間の調整に取り組んでまいります。
なお、過去5事業年度の郵便、ゆうパック、ゆうパケット及びゆうメールの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。
このほか、内閣官房及び公正取引委員会により示されている「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」にも沿った形で、協力会社の皆さまとのパートナーシップ構築に向けた取組みを継続し、価格転嫁・取引適正化を進めてまいります。
なお、点呼業務不備事案については、2026年度においても確実に点呼を行うとともに、ご利用いただいているお客さまにご迷惑をおかけすることがないよう、必要な手段を適切に講じ、物流サービスを確実かつ不断に提供してまいります。これまで、点呼適正化に向けて、再発防止策を策定し、①意識改革、②ガバナンスの強化、③点呼のデジタル化、④モニタリング等の取組みについて計画通り実施し、総務省及び国土交通省へ報告するとともに、報道発表を行いました。
④ 郵便局窓口事業
郵便局窓口事業については、送金決済件数や保有保険契約件数の減少に伴う銀行・保険受託業務手数料の減少に加え、諸物価や人件費の上昇によるコスト増加などにより、事業環境は厳しさを増しており、郵便・物流事業と同様に、徹底的なコスト削減と収益拡大に取り組みます。
コスト削減に向けては、物件費等の削減に取り組むほか、窓口営業時間の弾力化を進め、柔軟な運用体制のもとで、これまで以上にお客さまニーズや地域事情に応じた商品・サービスを提供することにより、生産性の向上を図ってまいります。
収益拡大に向けては、郵便局における金融商品のご案内・お手続きのためのお客さまへの来局ご案内を一部再開することを踏まえ、ゆうちょ業務における各顧客基盤強化の取組みやかんぽアフターフォローの着実な実施に取り組むほか、物販収益の拡大や、地域を支える生活サポート拠点として、自治体業務の受託の拡大等にも取り組んでまいります。
このほか、非公開金融情報の不適切な利用事案については、法令等の趣旨に立ち返ったルールの整備、当社グループの幅広い顧客接点でお客さまの非公開金融情報等の利用に係る同意をいただく取組みの促進と同意を得た非公開金融情報等を活用するシステム環境整備、お客さま本位の活動を実践する人材育成、リスク認識力の強化及びガバナンス強化を内容とする再発防止策を徹底してまいります。加えて、認可取得前勧誘事案については、法令等遵守の徹底及び業務品質の確保に向けた取組みを行うほか、それらの再発防止策の実効性確保のため、モニタリング・フォローアップの強化や2線による1線へのけん制機能の発揮など、リスク認識力の強化に向けた取組みやガバナンス強化に向けた取組みを行ってまいります。
⑤ 国際物流事業
トール社を通じて、新たな収益源の獲得やバランスの取れた顧客ポートフォリオの構築、全社的なコスト削減及び成長分野への経営資源の投入等により、ロジスティクス事業とフォワーディング事業の収益規模の拡大及び収益性の向上に、引き続き取り組んでまいります。
また、JPロジスティクス株式会社(以下「JPロジスティクス」といいます。)等、当社グループ内企業との連携強化にも、引き続き取り組んでまいります。
加えて、国際物流・国内物流の全てを一体で事業運営できる総合物流企業を目指す方針のもと、国際物流業務においても、更なる付加価値の向上に取り組んでまいります。
⑥ 不動産事業
日本郵便及び日本郵政不動産株式会社において、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう、引き続き、JPタワー等のオフィス、商業施設をはじめ、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を、住宅については分譲事業も行ってまいります。さらに、用地仕入れ、開発、売却により利益を獲得する回転型事業等のフロービジネスへ取り組むとともに、不動産投資顧問会社の設立や私募ファンドの運用等によるフィービジネスなども取り組むことで事業領域を拡大させてまいります。
具体的には、グループ保有不動産の有効活用や新たな収益機会の拡大の観点から、建築費や収益物件価格が高騰している状況下、適切なタイミングで開発や取得の計画を策定・実行してまいります。
また、稼働中の物件については、収益及び資産価値の維持向上に向けて、共同事業者等との連携や外部委託を適切に活用しながら、良質かつ効率的な運営に取り組んでまいります。
⑦ 銀行業
ゆうちょ銀行を取り巻く経営環境は、キャッシュレス技術や生成AI等に代表される社会のデジタル化進展、少子・超高齢化に代表される人口動態の変化や金利ある世界への転換等、目まぐるしい変化を続けており、その変化は今後も加速していくことが想定されます。一方で、前中期経営計画期間中における当社による2度のゆうちょ銀行株式の売出しにより、同行の民営化プロセスは大きく進展し、ビジネス展開の柔軟性を高めているところです。このような状況のなか、ゆうちょ銀行の企業価値を一層向上させるため、15年後にありたい姿として新たに「中長期ビジョン」を策定しました。そして、「中長期ビジョン」実現に向けた第一歩として、新中期経営計画を策定しました。新中期経営計画においては、4つの事業戦略の推進を通じ、2つのミッションの達成に向けて取り組んでまいります。
(新中期経営計画における4つの事業戦略等)
(a) デジタルペイメント事業戦略
リテールビジネスで推進してきた「安心・安全・便利」なサービス提供に、ポイント経済圏との連携等を通じた「お得さ」を加え、「ゆうちょ通帳アプリ」(以下、「通帳アプリ」といいます。)を起点に、お客さまによるゆうちょ銀行口座の日常使いを促進します。また、通帳アプリ等を通じて集積される金融取引データ等を基に、お客さま起点のデジタルマーケティング・広告配信を実施し、LTV※1とお客さまの体験価値を向上します。さらに、様々なパートナー企業との提携により、トークン化預金※2「ゆうちょDCJPY」を活用した安全・即時の資金決済の実現等、新たな金融サービスの創出に取り組んでまいります。
※1 LTVとは、Life Time Valueの略語であり、顧客が生涯に亘り企業にもたらす利益、価値のことです。
※2 トークン化預金とは、銀行預金にブロックチェーンなどの技術を活用し、預金をデジタル上で取り扱えるようにしたものです。
(b) コンサルティング事業戦略
総合金融プラットフォーマーとして、全世代に伴走する金融コンサルティングを推進します。具体的には、パートナー企業との連携を通じてお客さまの多様な金融ニーズに応える商品・サービスのラインアップを拡充し、それらをリアル・デジタル・リモートと複線化したサービス提供チャネルの中から最適なチャネルを通じて全国・全世代のお客さまに提供します。特にデジタルチャネルにおいては、スマートフォン等でいつでも手軽に資産形成等の相談ができる対話型AIサービス「ゆうちょAIコンシェルジュ(仮称)」を導入し、お客さま一人ひとりのニーズ等を踏まえた提案を通じて、顧客体験価値の向上を目指します。
(c) 市場運用・アセットマネジメント事業戦略
国内金利上昇を捉え、日本国債等の円金利資産の再構築を進めるとともに、外国証券等のリスク性資産と合わせた運用ポートフォリオ全体の最適化により、リスク対比リターンのさらなる向上を追求します。また、ゆうちょアセットマネジメント株式会社を中核に、特色あるアセットマネジメントビジネスに挑戦するとともに、海外アセットマネジメント会社をはじめとする新たなパートナー企業との提携深化も目指します。
(d) 地域・企業ソリューション事業戦略
ゆうちょ銀行の子会社のゆうちょキャピタルパートナーズ株式会社を中核とする地域プライベートエクイティ投資基盤を構築し、パートナーとなるファンド運営会社との連携強化も通じ、地域活性化をサポートする投資実績を着実に積み上げます。また、地域金融法人等とのリレーションシップ・マネジメント強化や地域企業への決済ソリューション提供等を一層強化し、「Σ(シグマ)ビジネス(投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネス)」をレベルアップした地域・企業ソリューションビジネスを推進してまいります。
(e) 人的資本経営・企業風土改革
4つの事業戦略と連動した人材の採用、配置、育成及び自律的キャリア形成に資する機会の提供に加え、女性活躍に向けたキャリアサポート充実や社員の様々な知識・経験等の社内共有等を通じ、多種多様なバックグラウンドを有する人材が活躍できる環境整備を推進します。
また、お客さまと社員の「声」を直接経営に活かすサイクルとして、社員参画型の「みんなの声委員会 -ECHO-」を一層強化し、全社員が一丸となって企業価値向上に取り組む組織風土を醸成します。
(f) 経営基盤の高度化
テクノロジーの進展や今後の人口動態等の環境変化を踏まえ、生成AIの有効な活用に加え、ⅠT投資を積極化し、抜本的な業務効率化を推進します。また、非公開金融情報の不適切な利用事案等を受けた内部管理態勢の強化に加え、サイバーセキュリティ、マネー・ローンダリング対策、市場運用リスク管理等、銀行業務の根幹を支える取組みを一層強化します。
(新中期経営計画における財務目標・資本政策)
財務目標については、ゆうちょ銀行連結ベースの当期純利益、ROE(株主資本ベース)、OHR(金銭の信託運用損益等を含むベース)※3、CET1比率(平時目標レンジ)※4を設定しています。金融ユニバーサルサービスを提供する責務を果たしながら、新中期経営計画で定めた財務目標の達成に向けた取組みを推進し、資本コストや資本収益性を意識した経営に努めます。
資本政策は、株主還元、財務健全性、成長投資のベストバランスを追求してまいります。特に株主還元のうち配当については、基本的な考え方として、配当性向は50%程度とし、利益成長を通じた累進的な配当を実施してまいります。なお、ゆうちょ銀行の運用ポートフォリオの状況を踏まえ、現状では年1回の期末配当とする方針です。また、自己株式取得は、市場環境、成長投資の機会、当社の株式保有方針等を踏まえて随時検討してまいります。
そのほか、株主のみなさまからのご支援に感謝するとともに、より多くの方々にゆうちょ銀行株式を保有していただくことを目的として、株主優待制度を継続実施しております。なお、新たに2027年度から長期保有優遇を導入します。
※3 Over Head Ratioの略。銀行業務の効率性を示す指標の一つで、一般的には、経費の業務粗利益に対する比率のことです。ゆうちょ銀行は相応の規模で金銭の信託を活用した有価証券運用等を行っていることを踏まえ、金銭の信託に係る運用損益等も分母に含めたOHRを指標として設定しています。
経費÷(資金収支等+役務取引等利益)で算出します。資金収支等とは、資金運用に係る収益から資金調達に係る費用を除いたもの(売却損益等を含む。)をいいます。
※4 バーゼルⅢ最終化(完全適用)、その他有価証券評価益除くベース。2026~2028年度の目標。
⑧ 生命保険業
かんぽ生命保険では、「いつでもそばにいる。どこにいても支える。すべての人生を、守り続けたい。」という経営理念のもと、かんぽ生命保険がお客さまに届ける価値を明確にした上で、2026年5月、新中期経営計画を公表しました。新中期経営計画では、お客さまの人生や社会に必要不可欠な存在であり続けたいという想いを込めて、2040年に目指す姿として、「新たな価値を生み出し続け、安心を全国に届けるエッセンシャル・カンパニー」となることを掲げております。これに向け、新中期経営計画期間を「成長・挑戦フェーズ」と位置づけ、3つの重要戦略とそれを支える経営基盤の確立に取り組むことで、日本全国のお客さまとのつながりを拡大・深化させ、安心を届けてまいります。
(a) 「かんぽ価値提供モデル」の確立
当社グループと接点のあるお客さまは多数存在しており、大きな潜在的保険ニーズを抱えております。こうしたニーズに十分に応えるべく、かんぽ生命保険ではAI・デジタル、お客さまデータに基づくマーケティング手法を駆使し、質と量を伴った、お客さま本位の業務モデルである「かんぽ価値提供モデル」を確立してまいります。これにより、リモート、デジタルとの連携によりリアルチャネルの価値を向上し、お客さまに合った「分かりやすい商品」と「便利で手厚いサービス」を提供することで、かんぽ生命保険ならではの安心を届けてまいります。
(b) 運用環境の変化を捉えた資産運用と社会課題の解決
国内金利上昇等の運用環境の好転を捉え、運用関係損益の持続的な増加を目指し、ポートフォリオの再構築を推進してまいります。あわせて、インパクト投資の推進や産学連携により、資産運用を通じた社会課題の解決や次世代産業構造の柱となる企業の発掘にも貢献してまいります。
(c) みらいへの挑戦
経営基盤を強化しながら、既存の提携関係の強化等に取り組むとともに、かんぽ生命保険の事業と親和性がありシナジー効果と利益貢献が見込める新たな領域を探索することで、さらなる収益獲得に向けたインオーガニック成長等による提供価値拡大に挑戦してまいります。加えて、AI・デジタル等を駆使し、サービスの変革と業務の再構築に取り組むことで、事業変革に挑戦してまいります。
(d) 経営基盤の確立
3つの重要戦略を支えるため、「人的資本経営」、「ガバナンスの強化」、「ステークホルダーとの対話」、「財務・資本政策」といった経営基盤の確立に取り組んでまいります。「人的資本経営」では、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境を構築し、社員の成長と企業価値の向上につなげます。「ガバナンスの強化」では、保険業法等の改正や、社会環境等の変化を踏まえた各種課題に対応します。「ステークホルダーとの対話」では、幅広いステークホルダーと相互の信頼関係を深めながら、持続的な企業価値の向上と社会への貢献を実現します。「財務・資本政策」では、ERMに基づく資本管理と利益創出、株主還元の好循環の実現に取り組みます。
(参考)
過去の新契約、保有契約の件数の推移は下記のようになります。
(注) 2007年10月1日の民営化時の簡易生命保険契約は5,517万件でした。
(1) 当社グループの経営理念及び経営方針
① グループ経営理念
郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。
② グループ経営方針
・ お客さまの生活を最優先し、創造性を発揮しお客さまの人生のあらゆるステージで必要とされる商品・サービスを全国ネットワークで提供します。
・ 企業としてのガバナンス、監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します。
・ 適切な情報開示、グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します。
・ グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
・ 働く人、事業を支えるパートナー、社会と地域の人々、みんながお互い協力し、社員一人ひとりが成長できる機会を創出します。
(2) 経営環境
当連結会計年度の経済情勢を顧みますと、世界経済は、米国の関税政策の影響を受けつつも、米国を中心に総じて底堅く推移しました。米国経済は、関税政策による物価上昇が限定的ななか、個人消費を中心に堅調に推移しましたが、FRB(連邦準備制度理事会)は、労働市場の急減速を受け、2025年9月以降、3会合連続で利下げを行いました。ユーロ圏経済は、ECB(欧州中央銀行)が2025年4月と6月に利下げを実施した後、政策金利は据え置かれたものの、内需を中心に底堅く推移しました。日本経済は、米国による関税政策の影響が見られましたが、内需の持ち直しもあり緩やかに回復しました。賃金と物価がともに上昇するなか、日本銀行は2025年12月に利上げを行いました。しかしながら、2026年2月末には米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始し、世界経済全体の先行き不透明感が急速に高まりました。
金融資本市場では、米国の長期市場金利は、関税政策により上下に振れた後、労働市場の弱さや景気減速懸念から低下に向かいました。その後、米国とイスラエルの軍事行動を契機とする原油価格の高騰を受け再び上昇傾向に転じました。また、日本の長期市場金利は、2025年4月に米国の関税引き上げ表明を受け一時1.1%台まで急低下しました。その後は物価高が続くなか、財政悪化懸念や原油価格高騰もあり、上昇基調に転じました。
ドル円相場は、米国の関税政策への懸念等から、2025年4月下旬に一時140円程度まで円高が進行しましたが、日本の財政悪化懸念等もあり、2026年1月には160円程度まで円安が進行しました。その後は為替介入への警戒等により円高に転ずる局面があったものの、イラン情勢の緊迫化等により再び円安基調に転じました。
日経平均株価は、米国同様に、2025年4月上旬に一時31,000円台まで急落しましたが、好調な米国株式市場や日本の新政権への政策期待等から上昇基調が続き、2026年2月末に最高値を記録しました。その後は原油価格高騰による景気減速懸念等を受け、下落しました。
物流業界においては、EC市場規模の拡大が続く一方で、業界内の激しい競争に加え、諸物価や人件費の上昇に伴うコストの増加等により、厳しい環境が続いています。また、働き方改革関連法等によるドライバー拘束時間に係る基準強化などから生じる、いわゆる物流の「2024年問題」への対策として、「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づき業界・分野別に作成された自主行動計画に掲げられた取組みの実行のほか、改正物流総合効率化法及び改正貨物自動車運送事業法が施行され、物流業界を取り巻く事業環境に変化が生じています。
郵便事業においては、デジタル化の進展等に伴う郵便物数の減少が続いています。こうしたなか、経営環境の変化に応じて機動的に郵便に関する料金を変更することができるようにするため、定形郵便物の料金の上限の額を日本郵便の申請に基づき総務大臣が認可する制度に見直すことなどを内容とする郵便法の一部を改正する法律案が第221回国会(特別会)において成立しました。
銀行業界においては、当連結会計年度の全国銀行における預金は27年連続で増加し、貸出金も15年連続で増加しました。金融システムは、各国の経済政策運営や中東情勢を中心とする地政学的リスク、海外ノンバンク部門の動向等が、様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については引き続き丁寧に見ていく必要があるものの、全体として安定性を維持しています。
生命保険業界においては、超高齢社会の進展や人口減少等に加え、度重なる自然災害の発生、資源価格の高騰や為替の変動等、先行きが読めない不確実な状況が続くとともに、ライフスタイルの変化や、生成AIの急速な広まり等による社会のデジタル化の進展等、社会全体が大きく変化している現在、お客さまの人生に寄り添い、万が一に備えるお客さまの自助努力を支援し、安心を提供するという役割が、ますます大きくなってきていると考えております。
当社グループは、「郵便・物流」「貯金」「保険」の生活に必要な基礎的サービスや物販、提携金融サービス等を全国約2万4,000か所の郵便局ネットワークを通じて提供するほか、不動産事業など多数のサービスを展開しております。郵便・物流事業においては1日に約3,000万か所への郵便配達箇所数、銀行業においては約1億2,000万口座の通常貯金口座数、生命保険業においては約1,577万人のお客さま数(契約者さま及び被保険者さまを合わせた人数(個人保険及び個人年金保険を含み、かんぽ生命保険が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みます。))など、毎日の生活の中で多くのお客さまにご利用いただいており、お客さまとの接点の多さは当社グループの強みとなっております。
(3) 当社グループの経営戦略等
① 中期経営計画等について
当社グループは、2026年度~2028年度を対象とした新たな中期経営計画として「JP プラン 2028」(以下「JP プラン 2028」といいます。)を2026年5月に公表しました。
(a) JP プラン 2028の基本方針
当社を取り巻く10~15年後の長期的な環境変化を踏まえ、長期的に目指す姿として、前中期経営計画において掲げた共創プラットフォームを、総合物流プラットフォーム・総合金融プラットフォーム・生活サポートプラットフォームから構成される3つの機能に深化することに加え、不動産事業及び各グループ横断的サービスの提供を通じて、今まで以上の「日本郵政グループ」の魅力・価値の創出を目指します。
本中期経営計画期間においては、3つのプラットフォームを支える基盤である郵便及び郵便局ネットワークが、郵便物数の大幅減、窓口の来客数減少などにより持続可能なユニバーサルサービス提供に課題を抱える現況から、「目指す姿」に向けた第一歩として、ユニバーサルサービスの持続性確保と、新たな事業領域等での成長を同時に実現することを目指します。

(b) ユニバーサルサービスの持続性確保と、新たな事業領域等での成長に向けた3つの重点戦略
「JP プラン 2028」のもと、「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」、「成長領域での利益成長による企業価値向上」、「グループ経営基盤の強化」という3本柱を掲げて取り組みます。
「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」は、郵便物数の減少や人件費・物価高騰等により、現行の事業構造ではサービス維持が困難になりつつあるという課題に対応するものです。集配拠点の集約、生産性向上による要員配置の最適化、窓口営業時間の弾力化など、郵便・物流事業、郵便局窓口事業の抜本的な構造改革に取り組み、業務効率化や生産性向上を進めてまいります。
「成長領域での利益成長による企業価値向上」は、郵便物数や窓口来客数の減少といった収益課題に対し、金融・不動産・物流といった成長余地のある事業で利益拡大を図るものです。金融事業では、商品ラインアップを拡充し多様な年代のお客さまニーズに対応するとともに、郵便局のリアルチャネルに加え、デジタルチャネル・リモートチャネルを活用してお客さま接点の充実を図ります。不動産事業では、賃貸事業を基盤に分譲・回転型事業及びマネジメント事業を強化し、総合デベロッパーとしての事業拡大を目指します。物流事業では、日本郵便の強みであるラストワンマイルに加えて、国内外の企業間物流の強化として国際物流・国内物流の全てを運営できる物流網を構築し、また、ゆうパック・ゆうパケットの収益拡大に取組むことなどを通して、総合物流企業への転換を目指します。
「グループ経営基盤の強化」は、不祥事の発生や激しい外部環境変化等を踏まえ、ガバナンス・コンプライアンス・DX・人的資本経営・資本政策の取組みを進めることで、信頼回復と企業価値向上の基盤を強化することを目的としています。

② 経営者の問題意識と今後の方針
当社グループは、人口減少やデジタル化の進展など、今後10~15年にわたる社会・経済環境の大きな変化を見据えた上で、当社グループに大きな影響を与える課題の解決に向けて、今後3年間に取り組むべき主要戦略をまとめた「JP プラン 2028」を2026年5月に公表しました。
「JP プラン 2028」では、人口減少や高齢化の加速、地方での過疎化、そしてデジタル化やAIなどの技術革新による社会や経済の在り方そのものが大きく変わりつつあるなか、こうした長期的な変化を踏まえ、当社グループが長期的に目指す方向性を示しました。これまでの共創プラットフォームを「総合物流」「総合金融」「生活サポート」という3つのプラットフォーム機能に深化させることに加え、不動産事業及び各グループ横断的サービスの提供を通じて今まで以上の「日本郵政グループ」の魅力と価値を生み出すことを目指します。財務面では、新中期経営計画期間の重点戦略等に取り組むことにより、中長期的な目標として株主資本コストを上回るROEの継続的な創出を目指します。なお、「JP プラン 2028」については、2027年度に郵便料金改定が実施された場合を見据え、一定の幅をもって経営目標を設定しております。
「JP プラン 2028」の3年間は、長期的に目指す姿である「3つのプラットフォームの深化と不動産事業による価値創出」に向けたステップとして位置づけております。郵便物数や窓口来客数の減少等、グループの直面する課題に鑑み、「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」、「成長領域での利益成長による企業価値向上」及び「グループ経営基盤の強化」を重点戦略としております。
「ユニバーサルサービスの持続的な提供に向けた事業構造の見直し」については、郵便・物流事業において、郵便物数が減少するなかで、グループの使命である郵便サービスを持続的に提供するため、集配拠点の集約等による業務効率化や生産性向上・要員管理の高度化により戦略的な要員配置の最適化を進め、徹底したコスト削減と収益向上の取組みを通じて損益改善を図ります。そのうえで、ニーズやコスト等を踏まえて各種郵便サービスの料金の見直しを検討し、また、現在、法令で求められているサービス水準の見直しを要望してまいります。また、郵便局窓口事業において、人口減少や過疎化の進展により、地域事情は多様化し、郵便局窓口の社員数減少が予測されるなか、窓口営業時間の弾力化等を通じて地域事情に応じた柔軟な運営体制を構築することにより生産性向上を進めます。また、地域のインフラ維持機能やお客さまの暮らしを支えるサービスを提供することで、地域の生活を支える生活サポート拠点としての機能を発揮することを目指します。
「成長領域での利益成長による企業価値向上」については、金融、不動産、総合物流による利益拡大を進めます。金融事業においては、若年層~中高年層に向けた商品ラインアップ拡充や、当社グループが強みを持つリアルチャネルに加え、アプリ等のデジタルチャネルや、専門的な知識を持つ社員との応対ができるリモートチャネルを活用したお客さま接点の充実により、多様な年代のお客さまの潜在的ニーズに対応します。不動産事業においては、将来的に総合デベロッパーへの転換を目指します。そのステップとして、「JP プラン 2028」期間においては、グループ保有不動産の開発による賃貸事業等のストックビジネスを強化するとともに、継続的な分譲マンション事業や、用地仕入れ、開発、売却により利益を獲得する回転型事業等のフロービジネスへ取り組むとともに、不動産投資顧問会社の設立や私募ファンドの運用等によるフィービジネスなども取り組むことで事業領域を拡大させてまいります。物流事業においては、当社グループの強みであるラストワンマイルに加えて、M&Aや資本業務提携等を活用し、国際物流・国内物流の全てを一体で事業運営できる総合物流企業を目指し、あらゆるお客さまの要望に応えられる利便性の高い物流サービスを提供してまいります。
「グループ経営基盤の強化」については、AIやデジタル技術の活用を推進し、お客さまの体験価値や業務における社員の体験価値を高めるグループDXの取組みを推進してまいります。人的資本戦略については、「事業環境の変化や成長戦略に応じた人材ポートフォリオの構築」と「社員一人ひとりの可能性の最大限の引き出し」を推進してまいります。サステナビリティ経営の推進に関しては、「社会と地域の発展」と「ステークホルダーの幸せの実現」2つの社会的価値の創造を通じて、経営理念の実現を目指します。
ガバナンス体制を強化する取組みについては、各郵便局の実態を的確に把握し、法令等のルールの浸透を支援する新組織を設置することにより、ガバナンスを抜本的に強化するとともに、お客さまが郵便局を信頼・安心して利用していただける環境を構築してまいります。
そして、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保については、交付金・拠出金制度も活用しつつ、その責務を果たし、地域社会に貢献するとともに、郵便局ネットワークの一層の活用・維持による安定的なサービスの提供等を図るため、グループ各社の経営の基本方針を策定し、その実施に努めてまいります。
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとするという郵政民営化法の趣旨に沿って、所要の準備を行ってまいります。
なお、2025年6月27日付で、当社は連結子会社であるゆうちょ銀行の普通株式の一部につき、株式処分信託の設定により株式処分を実施しました。これにより、当社のゆうちょ銀行に対する議決権の保有割合は49.9%となりました。本株式処分により、ゆうちょ銀行に対する議決権保有割合は50%を下回りましたが、実質支配力基準により、ゆうちょ銀行が当社の連結子会社であることに変更はありません。
当社は、資本効率の向上、株主還元の強化を目的として、自己株式の取得を実施しており、2024年5月15日付の取締役会決議に基づき、2024年5月16日から2025年3月31日の間、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT‑3)及び立会市場における取引により当社普通株式233,305,400株を取得し、2025年3月28日付の取締役会決議に基づき、2025年4月11日付で保有自己株式のうち233,305,400株を消却いたしました。
その結果、2025年4月11日時点における発行済株式総数は2,972,934,900株となりました。
また、2025年5月15日付の取締役会に基づき、2025年8月28日から2026年3月31日の間、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT‑3)及び立会市場における取引により当社普通株式164,740,300株を取得し、2026年3月27日付の取締役会決議に基づき、2026年4月10日付で保有自己株式のうち164,740,300株を消却いたしました。
(4) 対処すべき課題
① 非公開金融情報の適切な取り扱いの確保に向けた取組等について
郵便局において、お客さまから事前に同意をいただかないまま、お客さまの貯金の非公開金融情報を、保険募集や投資信託等の販売を目的とした来局ご案内に利用した事例が2024年度に確認されたことを受け、発生原因を分析し再発防止策を策定するとともに、関係者の責任を明確化いたしました。当社グループは、総力をあげて再発防止策の実効性を不断に検証しながら改革を継続し、お客さま本位のサービス提供が図られるよう、全力で取り組んでまいります。また、同年度に受領したグループ主要4社に対する金融庁の報告徴求命令並びに当社及び日本郵便に対する総務省の報告徴求命令に基づき、再発防止策及びその実施状況等について定期的に報告を行ってまいります。

② 商品認可前の勧誘行為の再発防止について
2024年1月4日に販売を開始した一時払終身保険に関し、販売に係る保険業法上の認可を取得する前に日本郵便及びかんぽ生命の社員である生命保険募集人が勧誘行為を行った事案を受け、当社、日本郵便及びかんぽ生命は、実態を把握するための調査を実施し、調査結果等を踏まえた再発防止策を策定いたしました。再発防止策に掲げた各種施策等について、進捗管理を着実に実施しながらPDCAを回し、法令違反を再発させない態勢構築とお客さま本位のサービス提供に向けて、当社グループの全役職員が一丸となって取り組んでまいります。

各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。
③ 郵便・物流事業
郵便・物流事業については、デジタル化の進展に伴う郵便物数の減少、荷物分野における競合他社との激しい競争、諸物価や人件費の上昇によるコスト増加などにより、一段と厳しさを増しており、将来にわたる事業の持続可能性を確保するため、徹底的なコスト削減と収益拡大に取り組んでまいります。
コスト削減に向けては、郵便物の減少に対応するため、柔軟な通集配体制の構築を行い、要員配置の適正化や荷物配達の内製化の推進に取り組むほか、集配拠点の集約により拠点配置の最適化を図ってまいります。また、運送料及び車両の削減のほか、機械処理の拡大・省人化の推進により生産性向上を図ってまいります。
収益拡大に向けては、他企業との連携強化を進めるほか、送達日数のスピードアップや差出条件の緩和等サービスレベルの改善を通じて、越境EC分野やフリマアプリ市場も含めたEC市場の荷物の確実な獲得に取り組み、荷物の収益拡大を図ってまいります。郵便物については、利用ニーズの喚起や利便性向上による利用拡大に向けた取組みを強化し、郵便物数の減少を可能な限り食い止めます。年賀郵便についても、魅力的な新商材の投入、デジタル関連サービスの展開のほか、年賀葉書の価値を感じていただけるようなプロモーションを展開する等、利用拡大に向けた取組みを強化してまいります。これに加え、toB・toCの物流を一体で運営できる総合物流企業へ成長すべく、子会社であるトナミHDや資本業務提携を結んだロジスティードホールディングス株式会社(以下「ロジスティードHD」といいます。)等と連携しながら、資産の相互利活用や業務の共同化等、ラストワンマイルを含めてシナジーを発揮し、国内外の物流サプライチェーン網の確立に取り組んでまいります。
こうした損益改善策に着実に取り組むとともに、更なるコスト削減・収益拡大の取組みについても検討するものの、今後の業績見通しは厳しい状況であることから、郵便料金全般の見直しについても検討を行う必要があると考えております。
また、郵便のサービス水準の見直し等についても総務省に要望することを検討するとともに、関係者間の調整に取り組んでまいります。
なお、過去5事業年度の郵便、ゆうパック、ゆうパケット及びゆうメールの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。
| (単位:百万通・百万個) | |||||
| 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | |
| 郵便 | 14,858 | 14,445 | 13,578 | 12,566 | 11,751 |
| ゆうパック | 568 | 554 | 547 | 558 | 565 |
| ゆうパケット | 420 | 426 | 463 | 537 | 563 |
| ゆうメール | 3,346 | 3,113 | 2,873 | 3,241 | 3,174 |
このほか、内閣官房及び公正取引委員会により示されている「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」にも沿った形で、協力会社の皆さまとのパートナーシップ構築に向けた取組みを継続し、価格転嫁・取引適正化を進めてまいります。
なお、点呼業務不備事案については、2026年度においても確実に点呼を行うとともに、ご利用いただいているお客さまにご迷惑をおかけすることがないよう、必要な手段を適切に講じ、物流サービスを確実かつ不断に提供してまいります。これまで、点呼適正化に向けて、再発防止策を策定し、①意識改革、②ガバナンスの強化、③点呼のデジタル化、④モニタリング等の取組みについて計画通り実施し、総務省及び国土交通省へ報告するとともに、報道発表を行いました。
④ 郵便局窓口事業
郵便局窓口事業については、送金決済件数や保有保険契約件数の減少に伴う銀行・保険受託業務手数料の減少に加え、諸物価や人件費の上昇によるコスト増加などにより、事業環境は厳しさを増しており、郵便・物流事業と同様に、徹底的なコスト削減と収益拡大に取り組みます。
コスト削減に向けては、物件費等の削減に取り組むほか、窓口営業時間の弾力化を進め、柔軟な運用体制のもとで、これまで以上にお客さまニーズや地域事情に応じた商品・サービスを提供することにより、生産性の向上を図ってまいります。
収益拡大に向けては、郵便局における金融商品のご案内・お手続きのためのお客さまへの来局ご案内を一部再開することを踏まえ、ゆうちょ業務における各顧客基盤強化の取組みやかんぽアフターフォローの着実な実施に取り組むほか、物販収益の拡大や、地域を支える生活サポート拠点として、自治体業務の受託の拡大等にも取り組んでまいります。
このほか、非公開金融情報の不適切な利用事案については、法令等の趣旨に立ち返ったルールの整備、当社グループの幅広い顧客接点でお客さまの非公開金融情報等の利用に係る同意をいただく取組みの促進と同意を得た非公開金融情報等を活用するシステム環境整備、お客さま本位の活動を実践する人材育成、リスク認識力の強化及びガバナンス強化を内容とする再発防止策を徹底してまいります。加えて、認可取得前勧誘事案については、法令等遵守の徹底及び業務品質の確保に向けた取組みを行うほか、それらの再発防止策の実効性確保のため、モニタリング・フォローアップの強化や2線による1線へのけん制機能の発揮など、リスク認識力の強化に向けた取組みやガバナンス強化に向けた取組みを行ってまいります。
⑤ 国際物流事業
トール社を通じて、新たな収益源の獲得やバランスの取れた顧客ポートフォリオの構築、全社的なコスト削減及び成長分野への経営資源の投入等により、ロジスティクス事業とフォワーディング事業の収益規模の拡大及び収益性の向上に、引き続き取り組んでまいります。
また、JPロジスティクス株式会社(以下「JPロジスティクス」といいます。)等、当社グループ内企業との連携強化にも、引き続き取り組んでまいります。
加えて、国際物流・国内物流の全てを一体で事業運営できる総合物流企業を目指す方針のもと、国際物流業務においても、更なる付加価値の向上に取り組んでまいります。
⑥ 不動産事業
日本郵便及び日本郵政不動産株式会社において、不動産事業が収益の柱の一つとなるよう、引き続き、JPタワー等のオフィス、商業施設をはじめ、住宅、保育所及び高齢者施設の賃貸事業を、住宅については分譲事業も行ってまいります。さらに、用地仕入れ、開発、売却により利益を獲得する回転型事業等のフロービジネスへ取り組むとともに、不動産投資顧問会社の設立や私募ファンドの運用等によるフィービジネスなども取り組むことで事業領域を拡大させてまいります。
具体的には、グループ保有不動産の有効活用や新たな収益機会の拡大の観点から、建築費や収益物件価格が高騰している状況下、適切なタイミングで開発や取得の計画を策定・実行してまいります。
また、稼働中の物件については、収益及び資産価値の維持向上に向けて、共同事業者等との連携や外部委託を適切に活用しながら、良質かつ効率的な運営に取り組んでまいります。
⑦ 銀行業
ゆうちょ銀行を取り巻く経営環境は、キャッシュレス技術や生成AI等に代表される社会のデジタル化進展、少子・超高齢化に代表される人口動態の変化や金利ある世界への転換等、目まぐるしい変化を続けており、その変化は今後も加速していくことが想定されます。一方で、前中期経営計画期間中における当社による2度のゆうちょ銀行株式の売出しにより、同行の民営化プロセスは大きく進展し、ビジネス展開の柔軟性を高めているところです。このような状況のなか、ゆうちょ銀行の企業価値を一層向上させるため、15年後にありたい姿として新たに「中長期ビジョン」を策定しました。そして、「中長期ビジョン」実現に向けた第一歩として、新中期経営計画を策定しました。新中期経営計画においては、4つの事業戦略の推進を通じ、2つのミッションの達成に向けて取り組んでまいります。
(新中期経営計画における4つの事業戦略等)
(a) デジタルペイメント事業戦略
リテールビジネスで推進してきた「安心・安全・便利」なサービス提供に、ポイント経済圏との連携等を通じた「お得さ」を加え、「ゆうちょ通帳アプリ」(以下、「通帳アプリ」といいます。)を起点に、お客さまによるゆうちょ銀行口座の日常使いを促進します。また、通帳アプリ等を通じて集積される金融取引データ等を基に、お客さま起点のデジタルマーケティング・広告配信を実施し、LTV※1とお客さまの体験価値を向上します。さらに、様々なパートナー企業との提携により、トークン化預金※2「ゆうちょDCJPY」を活用した安全・即時の資金決済の実現等、新たな金融サービスの創出に取り組んでまいります。
※1 LTVとは、Life Time Valueの略語であり、顧客が生涯に亘り企業にもたらす利益、価値のことです。
※2 トークン化預金とは、銀行預金にブロックチェーンなどの技術を活用し、預金をデジタル上で取り扱えるようにしたものです。
(b) コンサルティング事業戦略
総合金融プラットフォーマーとして、全世代に伴走する金融コンサルティングを推進します。具体的には、パートナー企業との連携を通じてお客さまの多様な金融ニーズに応える商品・サービスのラインアップを拡充し、それらをリアル・デジタル・リモートと複線化したサービス提供チャネルの中から最適なチャネルを通じて全国・全世代のお客さまに提供します。特にデジタルチャネルにおいては、スマートフォン等でいつでも手軽に資産形成等の相談ができる対話型AIサービス「ゆうちょAIコンシェルジュ(仮称)」を導入し、お客さま一人ひとりのニーズ等を踏まえた提案を通じて、顧客体験価値の向上を目指します。
(c) 市場運用・アセットマネジメント事業戦略
国内金利上昇を捉え、日本国債等の円金利資産の再構築を進めるとともに、外国証券等のリスク性資産と合わせた運用ポートフォリオ全体の最適化により、リスク対比リターンのさらなる向上を追求します。また、ゆうちょアセットマネジメント株式会社を中核に、特色あるアセットマネジメントビジネスに挑戦するとともに、海外アセットマネジメント会社をはじめとする新たなパートナー企業との提携深化も目指します。
(d) 地域・企業ソリューション事業戦略
ゆうちょ銀行の子会社のゆうちょキャピタルパートナーズ株式会社を中核とする地域プライベートエクイティ投資基盤を構築し、パートナーとなるファンド運営会社との連携強化も通じ、地域活性化をサポートする投資実績を着実に積み上げます。また、地域金融法人等とのリレーションシップ・マネジメント強化や地域企業への決済ソリューション提供等を一層強化し、「Σ(シグマ)ビジネス(投資を通じて社会と地域の未来を創る法人ビジネス)」をレベルアップした地域・企業ソリューションビジネスを推進してまいります。
(e) 人的資本経営・企業風土改革
4つの事業戦略と連動した人材の採用、配置、育成及び自律的キャリア形成に資する機会の提供に加え、女性活躍に向けたキャリアサポート充実や社員の様々な知識・経験等の社内共有等を通じ、多種多様なバックグラウンドを有する人材が活躍できる環境整備を推進します。
また、お客さまと社員の「声」を直接経営に活かすサイクルとして、社員参画型の「みんなの声委員会 -ECHO-」を一層強化し、全社員が一丸となって企業価値向上に取り組む組織風土を醸成します。
(f) 経営基盤の高度化
テクノロジーの進展や今後の人口動態等の環境変化を踏まえ、生成AIの有効な活用に加え、ⅠT投資を積極化し、抜本的な業務効率化を推進します。また、非公開金融情報の不適切な利用事案等を受けた内部管理態勢の強化に加え、サイバーセキュリティ、マネー・ローンダリング対策、市場運用リスク管理等、銀行業務の根幹を支える取組みを一層強化します。
(新中期経営計画における財務目標・資本政策)
財務目標については、ゆうちょ銀行連結ベースの当期純利益、ROE(株主資本ベース)、OHR(金銭の信託運用損益等を含むベース)※3、CET1比率(平時目標レンジ)※4を設定しています。金融ユニバーサルサービスを提供する責務を果たしながら、新中期経営計画で定めた財務目標の達成に向けた取組みを推進し、資本コストや資本収益性を意識した経営に努めます。
資本政策は、株主還元、財務健全性、成長投資のベストバランスを追求してまいります。特に株主還元のうち配当については、基本的な考え方として、配当性向は50%程度とし、利益成長を通じた累進的な配当を実施してまいります。なお、ゆうちょ銀行の運用ポートフォリオの状況を踏まえ、現状では年1回の期末配当とする方針です。また、自己株式取得は、市場環境、成長投資の機会、当社の株式保有方針等を踏まえて随時検討してまいります。
そのほか、株主のみなさまからのご支援に感謝するとともに、より多くの方々にゆうちょ銀行株式を保有していただくことを目的として、株主優待制度を継続実施しております。なお、新たに2027年度から長期保有優遇を導入します。
※3 Over Head Ratioの略。銀行業務の効率性を示す指標の一つで、一般的には、経費の業務粗利益に対する比率のことです。ゆうちょ銀行は相応の規模で金銭の信託を活用した有価証券運用等を行っていることを踏まえ、金銭の信託に係る運用損益等も分母に含めたOHRを指標として設定しています。
経費÷(資金収支等+役務取引等利益)で算出します。資金収支等とは、資金運用に係る収益から資金調達に係る費用を除いたもの(売却損益等を含む。)をいいます。
※4 バーゼルⅢ最終化(完全適用)、その他有価証券評価益除くベース。2026~2028年度の目標。
⑧ 生命保険業
かんぽ生命保険では、「いつでもそばにいる。どこにいても支える。すべての人生を、守り続けたい。」という経営理念のもと、かんぽ生命保険がお客さまに届ける価値を明確にした上で、2026年5月、新中期経営計画を公表しました。新中期経営計画では、お客さまの人生や社会に必要不可欠な存在であり続けたいという想いを込めて、2040年に目指す姿として、「新たな価値を生み出し続け、安心を全国に届けるエッセンシャル・カンパニー」となることを掲げております。これに向け、新中期経営計画期間を「成長・挑戦フェーズ」と位置づけ、3つの重要戦略とそれを支える経営基盤の確立に取り組むことで、日本全国のお客さまとのつながりを拡大・深化させ、安心を届けてまいります。
(a) 「かんぽ価値提供モデル」の確立
当社グループと接点のあるお客さまは多数存在しており、大きな潜在的保険ニーズを抱えております。こうしたニーズに十分に応えるべく、かんぽ生命保険ではAI・デジタル、お客さまデータに基づくマーケティング手法を駆使し、質と量を伴った、お客さま本位の業務モデルである「かんぽ価値提供モデル」を確立してまいります。これにより、リモート、デジタルとの連携によりリアルチャネルの価値を向上し、お客さまに合った「分かりやすい商品」と「便利で手厚いサービス」を提供することで、かんぽ生命保険ならではの安心を届けてまいります。
(b) 運用環境の変化を捉えた資産運用と社会課題の解決
国内金利上昇等の運用環境の好転を捉え、運用関係損益の持続的な増加を目指し、ポートフォリオの再構築を推進してまいります。あわせて、インパクト投資の推進や産学連携により、資産運用を通じた社会課題の解決や次世代産業構造の柱となる企業の発掘にも貢献してまいります。
(c) みらいへの挑戦
経営基盤を強化しながら、既存の提携関係の強化等に取り組むとともに、かんぽ生命保険の事業と親和性がありシナジー効果と利益貢献が見込める新たな領域を探索することで、さらなる収益獲得に向けたインオーガニック成長等による提供価値拡大に挑戦してまいります。加えて、AI・デジタル等を駆使し、サービスの変革と業務の再構築に取り組むことで、事業変革に挑戦してまいります。
(d) 経営基盤の確立
3つの重要戦略を支えるため、「人的資本経営」、「ガバナンスの強化」、「ステークホルダーとの対話」、「財務・資本政策」といった経営基盤の確立に取り組んでまいります。「人的資本経営」では、社員一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境を構築し、社員の成長と企業価値の向上につなげます。「ガバナンスの強化」では、保険業法等の改正や、社会環境等の変化を踏まえた各種課題に対応します。「ステークホルダーとの対話」では、幅広いステークホルダーと相互の信頼関係を深めながら、持続的な企業価値の向上と社会への貢献を実現します。「財務・資本政策」では、ERMに基づく資本管理と利益創出、株主還元の好循環の実現に取り組みます。
(参考)
過去の新契約、保有契約の件数の推移は下記のようになります。
| (単位:万件) | |||||
| 契約の種類 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
| 新契約(個人保険) | 17 | 31 | 62 | 79 | 42 |
| 簡易生命保険 | 806 | 726 | 660 | 602 | 557 |
| かんぽ生命保険 | 1,474 | 1,372 | 1,309 | 1,278 | 1,214 |
(注) 2007年10月1日の民営化時の簡易生命保険契約は5,517万件でした。