有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/20 15:00
【資料】
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【項目】
55項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(経営方針)
当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。現在、スマートフォンやIoTの普及により、日々生み出されるデータは加速度的に増加して、働き方改革等による業務の効率化のニーズも高まっております。当社グループは、この様々なデータ(ビッグデータ)を「新しい資源」としてとらえており、この資源を活用して、企業や社会に様々な価値をもたらすソフトウェア及びサービスの提供を行っております。
(当社グループの強みと目標とする経営指標)
・独自のテクノロジー
当社グループは、創業以来、企業の情報活用に特化した独自の技術開発に取り組んできました。超高速集計、データの仮想統合、IoTデータのリアルタイム処理は特長的技術であり、当社グループの競争力の源泉となっています。それぞれ技術は高度で難解なものですが、「誰でも簡単」に利用することができ、素早く効果をあげられるようにシンプルで直観的に使用できるユーザーインターフェイス(UI)を備えたソフトウェア及びサービスとして提供しております。なお、研究開発活動及びソフトウェア開発のコア部分は、すべて自社グループ内で行っております。
・強力なビジネスチャネル
当社グループの販売モデルは、パートナーを介した間接販売が主となっております。大都市圏で大企業や官公庁の大型案件を得意とするSIerや地方を拠点とするSIer、特定領域に特化したコンサルティングファームやクラウドシステムの構築を専業とするクラウドSIer等多くのパートナー企業と契約しており、日本全国のシステム開発案件をカバーする販売網を構築しております。これにより、継続的な案件創出と営業コストの抑制が可能となり、効率的な販売活動が可能となっております。
-契約パートナー数推移(注) (社)
旧ウイングアーク1st株式会社ウイングアーク1st株式会社
決算年月2015年2月2016年2月2017年2月2018年2月2019年2月
契約パートナー数(累計)220279347439479

(注)当社パートナー向けプログラム「WingArc1st Relationship Platform(WARP)」において、各区分(インテグレーション、プロダクト、WARP-Associate等)での期末時点における解約パートナーを除いた契約パートナー数の合計。
・厚いリカーリングレベニュー
当社グループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引と、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。継続的な契約を前提とした取引は、導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、これらのビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、当社グループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。また、当社グループは契約継続率をリカーリングビジネスの最も重要なKPIの一つとしております。高い契約継続率を維持することによって、既存の契約は最大限維持しつつ、新規契約を積み上げ、持続的な成長を実現してまいります。
-リカーリングレベニュー (単位:百万円)
決算年月2017年2月(注)32018年2月2019年2月
ライセンス/サービス(注)16,2557,1627,652
リカーリング(注)27,0298,4039,634
売上収益合計13,28415,56617,287
リカーリング比率52.9%54.0%55.7%

(注)1.ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引に係る売上の合計。
2.保守、サブスクリプション(ソフトウェアの購入ではなく、利用期間に応じて料金を収受する契約形態)、クラウド等、継続契約を前提とした取引に係る売上の合計。
3.2017年2月期につきましては、当社の設立は2016年3月7日でありますが、2016年4月14日付で全株式を取得した旧ウイングアーク1st株式会社の事業年度開始の日は2016年3月1日であるため、旧ウイングアーク1st株式会社の2016年3月1日から同年4月13日までの期間の実績及び2016年4月14日から2017年2月28日までの期間の当社の実績を合算し、概算値を記載しております。なお、当該概算値は、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。
-契約継続率(注)1
決算年月2017年2月(注)22018年2月2019年2月
契約継続率93.1%93.4%94.4%

(注)1.「SVF」「SPA」「Dr.Sum」「MotionBoard」の保守契約において、当該期間の更新対象契約の総数に対して実際に契約が更新された金額ベースでの割合。
2.2017年2月期につきましては、当社の設立は2016年3月7日でありますが、2016年4月14日付で全株式を取得した旧ウイングアーク1st株式会社の事業年度開始の日は2016年3月1日であるため、旧ウイングアーク1st株式会社の2016年3月1日から同年4月13日までの期間の実績及び2016年4月14日から2017年2月28日までの期間の当社の実績を合算し、概算値を記載しております。なお、当該概算値は、EY新日本有限責任監査法人の監査を受けておりません。
また、当社グループは、日本国外に拠点を置く多くの外資系ソフトウェアベンダーと異なり、自社内に営業、開発、サポートすべての機能を有しております。これにより、営業部門やサポート部門が収集した様々な顧客ニーズを開発部門が素早く製品化するといったことが可能となり、当社グループの強みの一つとなっております。
(経営環境)
当社グループの主要な市場である国内ソフトウェア市場は、AI/IoT、ビッグデータ、クラウド等の技術的発展とITインフラの拡大を背景に、企業の働き方改革や競争力強化のためのデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資が進んでおり(注1)、2018年度から年平均6.9%と堅調に増加し、2023年度には1兆7,549億円となることが見込まれております(注2)。また、企業においても所有から利用の動きが進んでおり、ソフトウェアを一括で購入するのではなく、ソフトウェアの機能をサービスとして利用し、その対価を月々支払うサブスクリプション型のビジネスが大きく拡大しております(注3)。特にサブスクリプションビジネスの代表例であるクラウドサービスにつきましては、2018年度から年平均11.2%成長し、2023年度には8,173億円に達することが見込まれております(注4)。
(注)1.株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2019年版(はじめに)」
2.株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2019年版(ソフトウェア市場規模推移)」
3.IDC Japan株式会社「国内エンタープライズIT市場予測、2019~2023年」
4.株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2019年版(提供形態別動向)」
(成長戦略)
日本の企業や官公庁のITシステムは構築してから長年が経過したものが多く、処理性能の向上や機能追加、新技術への対応等が必要とされており、新しいシステムへの更新需要が高まっています。また、AIやIoTなどの先進技術を用いたデータ活用基盤の導入による経営改革(DX)に取り組む動きが増加しています。このような状況において、当社グループは、これまで様々な顧客へソフトウェア及びサービスを提供することで培った知見を活かし、製造、小売、運輸、医療、公共、金融といった「業種・業界」や営業活動のような「業務」に最適化したソリューションの提供を進めております。今後は、さらにより多くの顧客へ素早くサービスを提供出来るよう上述のソリューションをプラットフォーム型のクラウドサービスとして、広く展開していく方針です。
(対処すべき課題)
(1)業種・業務に特化したソリューションの推進
これまで当社グループの売上は、基幹システム開発における帳票ソフトウェアの提供を中心とした「帳票・文書管理ソリューション」が大半を占めておりました。しかし、現在では基幹システムへの投資が一巡し、IT投資の主体が、基幹システムを管理する比較的ニーズの画一的な情報システム部門から、業種や業務ごとに多種多様なニーズが存在する事業部門へ移りつつあります。この状況の変化に伴い、当社グループでは、ソフトウェアの提供だけではない、データの価値を最大化する最適なソリューション提案を目的とした「データエンパワーメントソリューション」に注力しております。2019年2月期における「データエンパワーメントソリューション」の売上全体に占める比率は35.9%であり、売上の拡大と共に当該比率の向上に努めてまいります。
①体制の強化
製造、金融、公共といった特定の業種や業務のノウハウ・知見を持った人材を積極的に採用しており、業種ごとにビジネスユニットとして組織しております。当該組織において、業種ごとのソリューション開発を行っており、現在は製造業向けのIoT工場可視化ソリューションや金融業向けの営業改革ソリューションを提供しております。今後は、他の業種につきましても随時ソリューション化を進めてまいります。
②アライアンスの推進
特定の業種での先進的な企業や多くの顧客を抱える企業、また特徴的な技術を持つ企業と共同でのソリューション開発や提供を推進してまいります。当社と共同で自社向けのソリューションを開発した企業が、当社のパートナーとして、当該ソリューションを同業他社向けに提供するといった従来と異なる例も出てきており、今後も積極的に進めてまいります。
(2)リカーリングビジネスの拡大
当社グループは、製品、サービスの一度限りの提供ではなく、継続的に顧客にサービス提供を行い、その対価をサービスの提供期間に応じて受け取る「リカーリングビジネス」を推進しております。「リカーリングビジネス」の利点は、業績の安定化、業績の予見性の向上、顧客とのリレーションシップの維持等ですが、一方で、顧客の維持管理コストの増加等のデメリットもあります。そのため、当社は「リカーリングビジネス」に特化した部署を組織し、上述したシステムによる効率的な顧客管理と専任チームによる離脱防止対策を行うとともに、顧客への追加商材の提案による売上の向上を目指しております。また、2019年2月期における「リカーリングビジネス」に係る売上である「リカーリングレベニュー」の売上全体に占める比率は55.7%であり、売上の拡大と共に当該比率の向上に努めてまいります。
①契約継続率の維持向上
「リカーリングビジネス」は一度契約して頂いた顧客に如何に継続的にご利用頂くかが最も重要となるため、当社グループでは、「契約継続率」をKPIとしております。専門部署にて顧客の利用状況や課題をヒアリングし、きめ細やかな対応を行うことにより、当該数値の維持向上に努めております。2019年2月期における「契約継続率」は94.4%となります。
②クラウドビジネスの拡大
現在のIT市場では、システムの開発やソフトウェアの購入を伴わない勤怠管理や経費精算と言った特定業務でのクラウドサービスの利用が主流となっております。当社グループも様々なクラウドサービスを展開しておりますが、契約ユーザー数及び契約企業数の拡大に努めるとともに、今後もクラウドベースでの展開を前提としたソリューション開発を進めてまいります。
(3)グループ経営基盤の強化
当社グループは2013年9月の非上場化以来、経営基盤の強化に取り組み、グループの再編(子会社の統合、非コア事業の売却)、社内基幹システムの再構築、経営管理システムの高度化、各種顧客管理業務のシステム化等を推し進めてまいりましたが、今後、成長を加速させるべく、業種・業務に特化した複数の新規事業を立ち上げていく予定となっており、さらなる精緻な業績管理が求められます。また、業容拡大を目的としてM&Aで獲得した海外を含む子会社についても、当社グループの経営方針のもと、一体となった管理体制が求められます。これに対応すべく、グループ各社と密に連携し、タイムリーに経営状況を把握でき、適切な対策を早期に打てる体制の強化に取り組んでまいります。