有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/09/13 15:00
【資料】
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【項目】
101項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、国内外の経済情勢等により影響を受ける可能性があり、その達成を保証するものではありません。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「シアワセを、自分から。」という企業理念の下、当社グループの直営店事業部門、プロデュース事業部門のお客様はもとより、当社グループの従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関等、ステークホルダーの皆様にシアワセを届けてまいります。当社グループでは、「元気と笑顔と〇〇で、シアワセを届ける。」というミッションを従業員に与え、それぞれの立場、役割に応じて「〇〇で」の部分を自ら考え、シアワセを届ける行動を促しております。
当社グループでは、直営店事業部門において、いつも美味いと言っていただける味の追求は勿論のこと、ご来店いただいたお客様に対して、エンターテイメント性や笑顔が溢れる店舗空間において、きめ細やかな気遣いを感じていただけるサービスを提供しております。また、プロデュース事業部門においては、当社グループに蓄積された繁盛店ノウハウをプロデュース店に惜しみなく注ぎ、常に美味しいラーメンが提供される地域で愛される店舗づくりに貢献しております。
当社グループにおける、このような取り組みを通して一人でも多くのお客様に数多く足を運んでいただき、お客様に満足していただくことで、当社グループとしての事業の拡大を図り、企業価値の向上につなげてまいりたいと考えております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、事業拡大、企業価値向上を目指し、売上高成長率、売上高経常利益率等を重要な経営指標と位置づけております。
・売上高成長率(対前期売上高) 平成29年10月期:123.7%
・売上高経常利益率 平成29年10月期: 11.4%
当社グループでは、これまでの成長性、収益性の高いビジネスモデルが継続できるよう注力してまいります。
(3) 経営環境
外食産業の市場規模は、高度経済成長期やバブル景気等により拡大を続け、平成9年は30兆円に迫りました(公益財団法人食の安全・安心財団「外食産業市場規模推移」による)。しかしながら昨今では、その後のバブル崩壊による不況の長期化、少子高齢化などの影響により減少傾向にあり、外食産業は厳しい経営環境に置かれるようになってまいりました。
外食産業の平成29年における市場規模は25兆6,561億円と推計され、前年に比べ0.8%増加しました(一般社団法人日本フードサービス協会「平成29年外食産業市場規模推計について」(平成30年7月)による)。増加要因といたしましては、1人当たり外食支出額の増加、訪日外国人の増加、法人交際費の増加などが挙げられます。
当社グループが属するラーメン業界においては、平成12年頃に起きたご当地ラーメンブームによって、縮小していた市場が再び回復することとなり、大手チェーン店が出店数を拡大させました。平成19年に4,010億円だった市場規模は、平成23年の東日本大震災時の需要冷え込みからいったん市場規模を縮小させたものの、その後市場拡大に転じ、平成33年には市場規模は4,497億円と予測されています(富士経済「2017外食産業マーケティング便覧」による)。
このような経営環境において経営を安定させるためには、嗜好性の高いラーメンを提供し、競合他社との明確な差別化を図り、独自性を確立した店舗やメニューの開発が必要であると考えております。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループでは、中長期的な出店戦略として国内直営店100店舗、国内プロデュース店400店舗、国内店舗合計500店舗を達成することを目指しております。また、海外においてもアメリカを中心として事業拡大を図り、海外直営店、海外プロデュース店の店舗合計で15店舗を目指してまいります。
① 直営店事業部門
直営店事業部門においては、ラーメンの嗜好性の多様化に対応すべく横浜家系ラーメン業態、九州釜焚きとんこつラーメン業態に加え、積極的に新業態を開発してまいります。一方で既存業態、とりわけ横浜家系ラーメン業態の進化を図るべく、美味しい味の追求(麺、タレ、スープの絶え間ない開発)を進めてまいります。
国内の店舗展開においては、駅近店ではラーメンファンにご満足いただけるよう、ラーメンの極上品質と店舗空間でのエンターテイメント性をご提供してまいります。ロードサイド店においては、お子様も含めたファミリーニーズを充足する豊富なメニュー数と老若男女が楽しめる店舗づくりを心掛けてまいります。ロードサイド店の展開においても当社グループの商品開発力が今後のポイントと認識し、商品開発部門の体制強化を図ります。
国内の麺製造においては、平成28年12月より月間150万玉以上を作り続けてきた自社製麺工場(四之宮商店)に蓄積した麺づくりのノウハウを生かし、横浜家系ラーメンの中太麺は勿論、九州釜焚きとんこつラーメンの極細麺、新業態ラーメン店に提供する新タイプの麺(玉子麺、太麺、極太麺)と次々と製麺ラインナップを拡張するとともに、直営店を中心としたフィードバック情報を生かして味の進化を図っております。また、タレ、スープに関しては、月2回程度実施している試食会を通じて、常に改良したスープを試飲するなど、絶え間ない味の見直しを図っております。
また、商品開発については、ロードサイド店に投入する季節限定のラーメンメニュー、唐揚げ、餃子他のサイドメニューの開発も試食会を通じて開発を進めており、多様化する食のニーズへの対応を図ることができる仕組みが整いつつあります。
一方、海外では、アメリカを中心とした事業拡大を図りつつ、展開するE.A.K. RAMENの認知度を高め、採算性の早期改善を図ります。具体的には、損益分岐点売上の確保に向け積極的なプロモーション活動を展開するとともに、出店地域のお客様の嗜好に即した美味しいラーメンのご提供が図れるよう、味の見直し、開発を進めてまいります。プロモーション活動においては、SNS上で他の消費者に影響力のあるインフルエンサーと呼ばれる方々を中心とした各種マーケティング活動を積極的に実施し、高評価いただけるような機会を創出してまいります。
② プロデュース事業部門
プロデュース事業部門においては、直営店事業部門で培ったノウハウを生かし、プロデュース店の店舗開発(出店地開発)支援、店舗設計支援、メニュー開発支援、店舗オペレーション支援、スタッフ教育支援等、各種サービスを提供し、オーナー様の繁盛店作りをお手伝いし、結果、当社グループの提供する麺、タレ、スープ、食材などの継続的取引を進めてまいります。
プロデュース事業部門は、国内のみならず海外での展開についてもオーナー様のニーズに合わせて対応してまいります。特に当社グループ直営店事業部門が当面、軸足を置く北米以外のヨーロッパ地区、アジア地区においては積極的に出店支援をしてまいります。
(5) 会社の事業上及び財務上対処すべき課題
外食産業を取り巻く環境は、人口減少社会と言われるわが国において、生活費節約意識の高まりによる外食機会の減少、食の安全性に対する消費者意識の高まり、低価格競争の激化等により、今後も厳しい状況が継続するものと想定されます。こうした状況を踏まえて当社グループでは、持続的な成長の実現と収益基盤強化のため、以下の課題について重点的に取り組んでまいります。
① 既存店売上の維持向上
外食産業は、個人消費の動向に影響を受けやすく、また参入が比較的に容易であることから、企業間競争は激化する傾向にあります。その中で当社グループは、地域密着型の展開を進め、地元のお客様に長く愛され、記憶に残る商品を提供し続けていくことが繁盛店維持の鍵であると考えております。横浜家系ラーメンは、主力とした自家製麺のラーメン店の展開、絶え間ないタレ、スープの味の見直しを徹底することにより、他社と差別化することで収益を確保してまいります。今後も味は勿論のこと、エンターテイメント性に富んだ空間をお客様に提供できるよう社員教育を徹底し、お客様満足度を高めていくことにより、既存店昨年対比売上高の維持向上を行えるようにマネジメントしてまいります。
② 新規出店の継続、出店エリアの拡大
当社グループは、主として横浜家系ラーメン業態にて日本各地に出店を続けてまいりました。今後も引き続き、新たな収益機会獲得を一層進めるべく、関東ではロードサイドを中心に「町田商店」での新規出店を図り、関東を除く東日本、西日本では駅近エリア、ロードサイドに新たな出店エリアを求めてまいります。
また、国内のラーメン市場がここ数年微増にとどまっていることから、事業拡大には海外進出は不可欠と考えております。新たな収益機会の獲得及びラーメン文化の海外への展開のため、事業パートナーの模索及び既設のロサンゼルス店、ニューヨーク店に続き、アメリカでの直営店の新規出店展開を図ってまいります。
③ プロデュース店の維持及び拡大
当社グループは、当社グループ直営店と同様の味、サービスをお客様に提供できるビジネスモデルとしてプロデュース事業部門を展開しております。当社グループの直営店事業部門にて展開する横浜家系ラーメン業態をプロデュースして欲しいというオーナー様のニーズを受け、今後も積極的に横浜家系ラーメン業態をプロデュースするとともに、それ以外のラーメン業態のプロデュースニーズにも対応してまいります。プロデュースされた店舗は当社グループから麺、タレ、スープ、食材などの安定供給を受け、店舗展開を図っております。当社グループは、全国に多くの出店余地を残す横浜家系ラーメンを中心に今後も積極的にプロデュース事業部門を拡大してまいります。
④ 内製化比率改善による採算性改善とBCP対応
当社グループのPB商品は、タレ、スープに関しては大手食品メーカーに生産委託するものの、麺については自社製麺工場(四之宮商店)にて大半を供給できる体制を有しております。麺の生産については、一部、外部委託しておりますが、さらなる内製化を図ることにより、一層のコストダウン(採算性改善)を実現できると考えております。しかしながら、麺の生産拠点を一極集中することは、BCP(事業継続計画)(※)の観点から見るとリスクが高いことから、中期的には災害リスク等を念頭に置き、多角的見地から生産体制を検討してまいりたいと考えております。
※ BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害等の緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
⑤ 衛生・品質管理の強化、徹底
外食産業においては、食中毒事故や異物混入事故の発生、偽装表示の問題等により、食品の安全性担保に対する社会的な要請が強くなっております。当社グループの直営店舗では、衛生管理マニュアルに基づく衛生・品質管理を徹底するとともに、定期的に商品開発部門、内部監査部門による店舗及び工場に対するチェックを実施しております。加えて、外部機関による店舗調査、衛生検査等を行っており、今後も法令改正等に対応しながら衛生・品質管理体制のさらなる強化を図ってまいります。
⑥ 人材の確保、社員教育の徹底
直近の人材採用環境は、バブル期並み水準まで有効求人倍率が好転する等、求職者側に有利な状況にあり、求人側の企業は、適正人員確保に苦戦を強いられております。とりわけ、外食産業においては人材確保に窮しており、当社グループでは事業拡大とともに人員不足が顕著になっております。こうした状況下、当社グループでは、当社ビジネスモデルの優位性、事業成長性、海外展開等のアピールポイントをしっかりと訴求して正社員の適正数確保を図るとともに、パート・アルバイトの戦力化を図るべく経営理念の共有、OJT教育を徹底的に実施し、人材の戦力化と離職率ダウンを図ることで事業拡大の体制を維持してまいります。
⑦ 新業態店の開発、立上げ
当社グループは、横浜家系ラーメンを関東、関東を除く東日本、西日本と広範に出店する一方、当該業態に次ぐ強力な新業態の開発を精力的に進めてきております。新業態の開発は、新商品開発同様に商品開発部門が主管し、消費者の反応を探るアンテナショップのような役割を果たす店舗を複数用意し、お客様の生の声、評判をしっかり見極める等、濃密なマーケティング活動を展開しております。そうした中、豚骨ベースの醤油スープに、にんにく、野菜、背脂などをお好みで調整し、チャーシューをダイナミックに載せることができるがっつり系のラーメン店「豚山」の開発に至り、第1号店をオープンいたしました。今後、当該業態による駅近エリアへの出店も視野に入れ、業態としての立上げを図ってまいります。また、絶え間ない商品開発、新業態開発活動を通じ横浜家系ラーメンとバッティングしないブランドによる事業展開を創出してまいります。