有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/11/16 15:00
【資料】
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【項目】
89項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「ドローンは、空の産業革命をもたらす」を企業ビジョンとして掲げ、3次元空間を利用した新しい無人化・IoTシステムの実現に寄与すべく、高性能かつ高品質のドローンを、自律制御を核とする自社保有技術をもとに、独立メーカーとして市場に提供することを自社の存在意義と考えております。
このような事業目的を実現するため、当社ではインダストリアル向けドローン・プラットフォームである「ACSL-PF1」を軸に、各分野のコアクライアント(一回の取引ではなく、継続的な取引関係構築が見込めるクライアント)となるパートナー企業とプロジェクトを通じ、各種用途向けのインダストリアル向けドローン・ソリューションを構築して、実際の経済効果を生み出すドローン用途を創出していくことを経営の基本方針としております。当社は大きな区分において製品を提供する製造業であるものの、ドローン産業の黎明期における発展を促進していくため、独自のドローン機体やシステムを用いた有償の概念検証(PoC)、顧客業務への実装を行うシステムインテグレーション及び代替プレッシャーの低い特注インダストリアル製品の量産を行うことで、高い水準の収益が持続的に得られ、開発投資の継続による技術革新を推進できるビジネスモデルの確立を目指します。
(2)目標とする経営指標(KPI:Key Performance Indicator)等
当社では、急速かつ持続的な利益成長を目指して成長性や効率性の向上に取り組んでおり、主な経営指標として、売上高、研究開発費を特に重視しております。また、当社事業モデルを勘案した上での成長ドライバーとしてのKPIは、コアクライアントに基づいたサブスクリプション型モデルを想定した上で、コアクライアント数、概念検証(PoC)から特注システム本格導入に到達した企業数(移管率)、特注システム導入数及びプロジェクト単価があげられます。現在のパイプライン積み上げによる事業計画においては、2021年3月期においては、コアクライアント数100社以上、特注ドローン500台程度到達をKPIとして目標設定しております。研究開発費においては、開発アイテムの優先順位付け、外部パートナーを有効活用することにより、研究開発とプラットフォーム強化を効率よく行うとともに、2021年3月期においては売上比率で15%~20%の投資を目標設定しております。
■ 当社が目標とする経営指標(KPI)等

(3)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社の製品提供が可能なインダストリアル向けドローン市場は、国内外において大きな成長が見込まれております。特に国内では、政府の規制整備への積極的な姿勢に加えて、インフラ点検、物流、防災・災害支援等の3つの用途において、民間企業がドローン活用を検討、導入を目指し、有償で概念検証(PoC)を開始しており、今後もインダストリアル向けドローン市場の創出及び拡大が続くものと考えております。
インフラ点検においては、国内の老朽化したインフラ設備(製造施設、倉庫、下水道、室内施設等)の維持管理のための点検ニーズの増加と、労働者人口の低下による業務効率化・無人化・IoT化の流れによって、ドローン導入投資が増加しております。複数年にわたる実証実験の継続と実証の深化に伴い、各企業から依頼案件の増加もみられています。
物流用途においては、2018年春にレベル3(無人地帯での目視外飛行)である目視外飛行許可申請のルールが明確化したことから、当事業年度より福島県での実証実験及びそれに続く複数個所での実証実験、商用化に向けて社会的に実装が進む見込みです。
防災・災害支援用途においても、目視外飛行の要件の整備とともに、頻発する自然災害時における救援等のニーズにおいて、有人ヘリコプターから無人ドローンへの置き換えが具体化しており、国及び自治体の入札案件も増加しております。
このような経営環境の中、当社では、特注機体、プラットフォーム機体の販売のみならず、システムインテグレーション、ソリューション構築を通じた販売の拡大により、売上高の拡大を企図しております。
今後、海外含め新規顧客獲得による「場の拡大」(クライアント数の増加)、概念検証(PoC)/カスタム開発フェーズにおける「ソリューション・システム構築の高度化」(プロジェクト単価の上昇)、一部社会実装レベルに到達した「特注ドローンの実運用開始」(出荷機体数の増加)の3点が成長を後押していくと考えております。案件継続と新規受注追加による案件パイプラインの積上げにより、売上高の拡大を企図しております。
(4)会社の対処すべき課題
① 開発戦略
次世代機体の開発、技術革新への投資を引き続き継続し、ドローンの性能の基盤となる自律制御性能の高度化、安全性能向上及び信頼性能等の品質向上を目指します。また、取得したデータ分析等を含めたドローン運用のIoT化を促すコネクティビティ機能の向上には、さらなる開発投資を行ってまいります。この際の開発項目については、下記図で示すように、実際の概念検証(PoC)による実証やクライアントとのプロジェクトを通じて技術要求を得ることで開発アイテムの優先順位付けを行うことを通じ、研究開発とプラットフォーム化を効率よく行い、さらに顧客ニーズを解決する技術を獲得することを可能とし、かつ、更なる市場開拓が可能と考えております。
■ 当社のビジネスモデルが効率的な開発を可能にするコンセプトのイメージ
② 生産体制
特注システム量産体制の構築については、サプライチェーンマネジメントに重点を置くファブレスモデルによる高収益体質を目指すことが当社の生産戦略の骨子と考えております。コスト削減を目的として生産、開発、評価試験の委託先の最適化を通じた効率化と品質向上の両立を目指し、さらなる生産体制の効率化を図ってまいります。
③ 営業戦略
販売においては機体の販売に加え、概念検証(PoC)型の新規のビジネスモデルの展開をさらに推進するため、B-to-B市場における経験を積んだ営業人材の採用を推進してまいります。特に、大手企業クライアント増加と案件高度化に伴い、ワンストップでソリューション提供を可能にするために、データ分析、システムインテグレーション、IoT分野において外部ベンダー・パートナーとの連携強化も図ります。加えて、シンガポールを中心とした海外市場での実証実験を推進してまいります。
④ 規制への対応
業界を取り巻く規制やガイドラインの対応として、関連する経済産業省、国土交通省などの行政機関への貢献を継続してまいります。特にドローンの目視外飛行について、関連行政及び企業と引続き密な連携を図ってまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社が、今後一層の事業拡大を進めるとともに、継続的な発展を実現させるためには、事業規模に合わせた内部管理体制の強化が必要と考えております。コーポレート・ガバナンス機能の強化は必須であり、内部統制システムの適切な構築、監査役、会計監査人との連携を図ることにより適切な運用を目指してまいります。