有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/03/01 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
105項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営理念及び経営方針
Creating Life of Your Dreams~半歩先の技術で人々の生活を豊かに~
当社は進化する技術を用いて、豊かな未来社会の創造に貢献したいと考えております。
当社の社名である“WITZ”とは、ドイツ語で“賢い”を意味する言葉です。私たちは、豊かで快適な社会を築くために必要な技術を世界に先駆けて習得・提供し、社名があらわす“賢い”企業としての活動を実現したいと考えております。
そのために、設立以来、「ヴィッツの“新しい”は、世の中の“新しい”」、「半歩先の技術で人々の生活を豊かにする」などのキャッチフレーズのもと、知識集積を試みてまいりました。
今後は、“Creating Life of Your Dreams”を新たなキャッチフレーズとして、来るべきIoT(Internet of Things)やCPS(Cyber-Physical System)の進展を支え、快適で便利な近未来社会の実現を支援することが私たちの使命であると信じております。
当社グループは着実に成長しており、今後も同様な成長を維持したいと考えております。また、平成28年8月期から利益改善の対策を行い、利益改善を実現しております。この期よりプロジェクトリーダが主体となるプロジェクト毎の売上総利益管理を導入し、製造原価の管理を適時に行うことにより、大幅な利益改善を実現いたしました。さらに、設立当初より“次の事業は研究から事業化を実現する”を当社の基本的な経営方針の一つとしており、平成29年からは“積雪環境下で実用可能な自動運転技術”と“人工知能の安全活用技術”の研究事業を開始しております。
当社が安定成長をするための要となる“利益管理”と“次世代事業の創生”を当社の経営方針としております。
(2)目標とする経営指標
当社は安定的な経営を実現するために、目標とする経営指標として自己資本比率、売上総利益率を重要な経営指標として位置づけ、付加価値が高く高収益が見込める、組込セキュリティ・機能安全コンサルティング、リアルタイムオペレーティングの販売及びインテグレーション、組込セキュリティ・機能安全開発支援、子会社によるソフトウェア開発受託などの事業比率を高め、更なる成長を実現したいと考えております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社の基本事業戦略は、近未来社会に必要なソフトウェア技術をいち早く導入し、多分野にわたる組込IoT分野の進化を支援し、当社事業の発展を進めるものであります。そのために、当社は多くの分野で活用できる基礎技術、具体的には、リアルタイムオペレーティングシステム、機能安全、組込セキュリティなどの技術を提供してまいりました。
また、現在注力している技術分野として、「自律化」に必要な人工知能を安全に活用できる技術を習得し、提供する計画です。その具体的な事例として、人工知能を活用した自動運転技術の研究に注力しております。これらの研究事業成果が当社の将来を支える事業基盤となると確信しております。さらに、その他の戦略活動として「農業機械の高度化」に関する研究事業も実施しており、トラクターなどをはじめとする農業機械の電子化、自動化、自律化を支援いたします。具体的には、
1.トラクターなどの農業機械の自動運転技術の導入
2.耕うん、播種などの作業計画作成技術(ガイダンスツールなど)の導入
3.ISOBUS(農業機械の通信バス)通信ソフトウェアの提供
4.非電子化の作業機器の電子化支援
などを通じて、次世代農業をソフトウェア技術で支えるとともに、当社の新たな技術分野として育成する計画です。
(4)経営環境及び対処すべき課題、経営改善施策
当社グループを取り巻く環境は、全世界規模で組込システムの大きな変革期を迎えており、人工知能、IoT、自動運転など当社が注力している技術が今まで以上に重要になると予見されます。その変革時期を追い風に当社技術を提供する市場は広がっております。これらの市場に的確なタイミングで的確な技術を提供することが重要であると考えております。そのための技術習得・調査・研究に注力するとともに、現在提供できる技術を適切なタイミング・質・価格で提供し、組込セキュリティ、モデルベース開発、仮想化技術、人工知能、オペレーティングシステム、自動車制御技術に関する事業拡大を実現いたします。具体的には以下の対策を行います。
①経営基盤の強化
当社グループは、自動車向け制御ソフトウェアを中核とした組込ソフトウェア開発や自動運転の実用化を加速する仮想環境シミュレーションの提供並びに電子制御機器の安全を立証するための機能安全コンサルティングサービスを提供しております。今後、既存の組込ソフトウェアや基盤ソフトウェアの収益性を向上させるとともに、今後さらに成長が見込まれる人工知能の安全活用技術や自動運転技術から派生する各種センシング(センサーを用いて距離や画像などを認識することや認識技術を示します)、セマンティックセグメンテーション技術などの成長分野に経営資源を集中させることにより、中長期的な成長を目指しております。
イ.IoT/CPSに関する組込技術と自律化技術の強化について
組込システム事業では、サプライヤー、メーカ及び既存顧客企業と信頼関係を築くと同時に、当該顧客の課題解決を実現することにより、顧客企業からの信頼と安心に基づく事業展開を実現しております。同時に、当社の優位技術である組込セキュリティ技術、機能安全支援技術やAUTOSARに代表されるリアルタイムオペレーションシステム技術は技術的難易度が高く、かつ、新たな課題に対処する技術だけに、他社の参入が難しい事業分野です。当社はこれらの優位技術を融合させ、ワンストップで提供することにより安定的な規模拡大と収益を確保しております。
システムズエンジニアリング事業では、自動運転車両開発や電気自動車(EVカー)への顧客企業の活発な技術開発にともない、当該事業の柱である仮想環境シミュレーション、HIL-S/SIL-S/MIL-Sに代表される制御シミュレーション技術などの提供を拡大しております。さらに、自動車制御システム開発が従来型のソフトウェア開発からモデルベース開発へと移行が急速に進み、モデルベース開発技術も拡大しております。今後は当該技術の技術者育成に取り組み、さらなるサービスの向上、提供規模の拡大により、売上拡大を図ります。
機能安全開発事業では、自動車・建設機械をはじめとする装置の機能安全コンサルティングを実施しております。平成22年頃より開始した我が国における機能安全規格への対応に先駆けて、当社はそれより前の平成21年からコンサルティング事業を開始しております。初期は自動車メーカ、大手電装部品サプライヤーが機能安全対応の中心プレーヤでしたが、現在は徐々に対応の裾野が広がり中小企業の機能安全対応が進んでおります。当社は機能安全コンサルティングのサービスだけでなく、人材不足が深刻な顧客企業に対し、当社技術者による機能安全開発支援サービスを一気通貫で提供しております。対応の中心となる企業が大企業から中小企業に移行しているため、要望される件数は多くなるものの、1件あたりの事業規模おりますは小さくなる傾向にあります。そのため、機能安全開発事業の大規模な事業展開が難しくなりつつあります。そこで、セキュリティなどのコンサルティングサービスと合わせたサービスを進めるなどの対応により、売上規模の維持・拡大を図ってまいります。
また、中長期的な成長と制御製品の自律化(自動運転や自律ロボットなど)を見込み、自律化に必須となる技術の支援サービスの展開を目指しております。
具体的な取組みとして、自律化システムの中核となる人工知能の安全活用と自動運転技術に必要なセマンティックセグメンテーション技術に関する取組みがあります。
従来、人工知能は購買予測、嗜好品推測などに活用されておりますが、現在は自動運転や生活支援ロボットなどの自律化に活用されつつあります。一方で、人工知能への教育を誤ると、悪意のある結果をだす人工知能を作ることができます(事実、一部の人工知能の発言が問題となった事例もあります)。制御機器への活用は、前述のような人工知能の暴走により重篤なインシデントが発生する恐れがあり、人工知能の安全活用は大変重要な意味を持つことになります。残念ながら人工知能研究は、機能向上・性能向上が優先されるあまり、安全性の観点からの研究事例は少ないのが現状です。そのため、今後、人工知能の制御機器への活用においてはボトルネックとなることが予想されます。
セマンティックセグメンテーション技術は、人工知能技術と組み合わせて使用される、自動運転技術の実現に向けた環境認識技術であり、カメラなどから取得した情報から車や人、樹木、路面など物質の認識をつかさどります。当社では特に積雪環境におけるセマンティックセグメンテーション技術の高度化を進めており、雪道自動運転を実現するための技術提供を試みます。さらに、当該技術は多分野への応用(除雪車両、道路重機などの自律化など)も視野に入れております。
これら技術の組み合わせにより、当社中長期事業の中核技術とするように積極的な投資と技術集積を行っております。
ロ.管理体制の強化
当社は設立以来、少人数の管理部門で運営しておりました。しかし今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。
当社は平成28年8月期より、管理体制の強化を行い、経理・人事部門を設立、内部監査室の設置を行いました。
更なる事業規模の拡大に備え、管理体制を今以上に強化してまいります。
ハ.情報システムの充実
今後、事業規模の拡大に伴い、業務処理量、管理コストが増加していくものと予想しております。当社グループは、そのような経営環境の変化に対応する情報システムの充実を図ることを重要な経営課題の一つとして、情報システムの拡充による業務処理の効率化を推進しております。
業容の拡大を支え成長戦略を推進するうえで、変化に強く柔軟な対応が可能となる情報システムの機能性を強化するとともに、業務効率の改善に努めてまいります。
ニ.セキュリティ対策の強化
顧客が要求する組織単位(部署)でのセキュリティ対策(セキュリティルーム、入退室管理、データへのアクセス制限など)を実施しております。しかしながら、当社独自のセキュリティ対策方針は確立できていないため、今後は当社グループ全体としてセキュリティ対策ポリシーを明確化したいと考えております。
社員教育を含めた、セキュリティインフラの対策を強化し、顧客及び一般社会に影響を及ぼすことのないセキュリティ対策強化を実施いたします。
②営業力強化と新規事業の開拓
当社グループは、1.営業組織を強化 2.顧客との関係強化 3.新たな事業分野への事業開拓 を積極的に推進し、強固な事業基盤の構築と拡大を図ることが当社グループの事業収益の改善・拡大につながるものと考えております。
当社の営業組織は、平成27年から営業グループとして活動を開始しております。それ以前は、営業組織は存在せず、当社グループの売上は、既存顧客からの継続的かつ安定的な注文と、当社Webサイトへの問い合わせをきっかけとした新規顧客からの依頼によるものでした。当社Webサイトへの主な問い合わせは、リアルタイムオペレーティングシステム技術や、機能安全開発、組込セキュリティ技術に関するものであり、同種のサービスを提供する国内企業が極端に少ない当社に優位性のあるサービスです。この営業スタイルにおいても成長を実現してまいりましたが、企業規模も大きくなり、かつ、不況時への備えとして営業を組織化しております。平成28年に新設した戦略営業室を中心に、半導体等の商社との連携、展示会への積極的な出展、新技術に関するプレスリリースや新聞及びテレビニュースなどを積極的に活用し、営業活動を強化しております。また、平成29年より営業支援ツールを導入し、全社で営業状況の確認ができる環境を整えております。
顧客が抱える課題を把握し、課題解決のための活動を強化する、また、将来顧客が直面するであろう技術課題を、当社が得意とする先行研究にて解決方法を模索し、研究成果を活用した支援を行うことにより、強固な信頼と信望を勝ち取ることができると考えております。
自動車分野は電動自動車、Connected Carと呼ばれるネットワーク連携自動車、自動運転技術などの製品化に向けて盛んな研究投資と製品化のためのコストダウンが進んでおります。また、自動車分野で利活用される技術は多くの分野で活用可能であり、これらの技術を一般モデル化して多分野に応用することは効果的です。当社は自動車で蓄積した技術を多分野へ適応する提案を積極的に行い、新たな事業分野に進出して当社グループの事業規模の拡大を狙ってまいります。

③コーポレート・ガバナンスの充実と内部管理体制の強化
当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上のためには、コーポレート・ガバナンスの充実が不可欠であると認識しております。また、子会社経営及び関連会社の管理、当社運営管理のためには体制強化が必要であり、人員増強とともに、教育研修を行ってまいります。当社社外役員には大手企業役員及び大学教授を選任しております。さらに、監査役は大手企業の経営担当者、金融機関、ソフトウェア開発企業経営等を経験し、専門的な知識と豊富な実務経験を持つ者を選任しており、独立した視点から経営の監査を行っております。今後も、内部管理体制の拡充を進め、健全で成長力のある経営を目指してまいります。