有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/03/22 15:00
【資料】
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【項目】
89項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」を理念として掲げております。この企業理念に基づき、「誰かがやらなければならないが、誰もが実現できていない社会的課題の解決を革新的なテクノロジーで実現する事」を事業展開方針の軸として、ITテクノロジーを活用した様々な事業の創出や展開に取り組むことで、企業としての持続的な成長を図ってまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社は持続的な成長に向けて、売上高、営業利益を重視しており、毎期その向上に努めることで、中長期的に成長させていくことを目指します。また、「迷惑情報フィルタ事業」に関しては、迷惑情報フィルタサービスの月間利用者数についても、中長期的に成長させていくことを重視しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
インターネットテクノロジーが急速に進化している現代社会において、インターネットテクノロジーはますます複雑化しており、これを逆手にとって悪用する犯罪や安心・安全な生活を脅かす脅威はますます大きくなっております。私たちは、スマートフォンを始めとするデジタルデバイスが普及していく中で、データベーステクノロジーを活用し、利用者が特段意識することなくこれらの脅威から守られるセキュリティ製品・サービスを提供しております。近年は特に「オレオレ詐欺」、「架空請求詐欺」、「還付金等詐欺」等に代表される特殊被害詐欺の認知件数が増加しており、2017年においては約390億円(警察庁発表)の被害が生じております。
特殊詐欺等の犯罪は時代と共に手法を変えるため、その根絶は困難であることや、高齢化社会がますます深刻化し、特殊詐欺の標的とされやすい高齢者が今後も増加していくことから、被害件数の拡大が懸念されております。
このような状況の中で、犯罪を含む迷惑な電話を防ぐサービスに関する社会的なニーズが高まると考え、迷惑電話を判定するための様々な情報を統合するデータベースについて研究開発を行ってまいりました。その結果、当社は迷惑電話を自動的に判定するスマートフォンアプリの開発に成功し、主要な携帯電話事業者を含む大手通信キャリアのオプション契約パックの一部として採用されたことで、利用者数が拡大しております。
当社は、今後においても「迷惑情報フィルタ事業」に注力するとともに、これまで培ってきたデータベーステクノロジーのノウハウを活かした新規事業へ投資することで、新たな収益基盤の確立に取り組み、企業価値の最大化を図ってまいります。
(4) 会社の対処すべき課題
当社は以下の点を対処すべき課題と認識しており、解決に向けて重点的に取り組んでまいります。
① アライアンスパートナー網の拡大及び協力関係の深耕
当社はこれまで、通信キャリアやIP電話に関する通信事業者、あるいは事務機器等商社の代理店との間で、当社の迷惑情報データベースを活用したサービスを提供するアライアンスパートナーの開拓に注力して参りました。その結果、一定程度のアライアンスパートナー網を構築することができております。
今後、当社が中長期的な成長を持続し、当社事業の更なる発展・拡大をしていくためには、①未開拓となっている通信キャリアや通信回線事業者等に対する提案活動を通じ、固定電話向けフィルタサービスの提供に係るアライアンスパートナー網の拡大を図ること、②既存のアライアンスパートナーへの販売活動支援等による協力関係の深耕により、ビジネスフォンの販売拡大を図ることが重要と考えております。
今後も、アライアンスパートナー網の拡大及び協力関係の深耕への注力を継続していくことで、より一層の事業拡大を図ってまいります。
② 利用者数の増加及び新機能の提供による収益拡大
当社は、主に通信キャリアやIP電話を提供する通信回線事業者のオプション契約を通じて、迷惑電話情報等のフィルタサービスを提供しております。このうち、利用者数の増加が当社収益の増加に直接的に寄与するのは主に固定電話向けフィルタサービスであり、モバイル向けフィルタサービスの収益は各通信キャリアとの契約条件によって異なるため、必ずしも利用者数の増減が直接的に収益に影響を与えるものにはなっておりません。その一方で、利用者数の増加により契約更新時等において有利な契約条件による更改交渉がしやすくなる影響もあると認識しております。
従って、当社が今後更なる収益拡大を目指す上では、当社サービスの利用者数の増加が極めて重要であると考えており、加えて、新機能の提供による収益獲得手段の拡充が重要であると考えております。
当社では警察組織との連携により当社サービスの社会的信頼性を向上させるとともに、システムやデータベースの精度向上による利便性の向上等を図ることで、利用者数の増加を図ってまいりました。
具体的には、モバイル向けフィルタサービスについては、2019年1月末現在の月間利用者数は約205万人に留まっておりますが、総務省発表の「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成30年度第2四半期(9月末))」によると、2018年9月末時点における携帯電話契約数は、1億7,307万件とされております。通信キャリアにてオプション契約をした利用者様に対して、通信キャリアを通じて当社アプリの配信を行うことやその提供方式の改善により月間利用者数の増加が期待できるほか、当社アプリをインストールされたご利用者様が離反することなく継続的に活用頂けるようにアプリの改善を行うことで月間利用者数の更なる拡大を図っております。
また、固定電話向けフィルタサービスについては、2019年1月末現在の月間利用者数は約21万人に留まっておりますが、通信回線事業者のIP電話に関する通信契約のオプションとして、既に提携済みの通信回線事業者による販売活動を通じて引き続き月間利用者数の増加が期待できるほか、東日本電信電話株式会社(NTT東日本)及び西日本電信電話株式会社(NTT西日本)といった国内大手の通信回線事業者が提供するIP電話に関する通信契約のオプションサービスへ当社サービスを採用していただけるように努めることで、月間利用者数の更なる拡大を図っております。
なお、2025年頃にNTT東日本およびNTT西日本の固定電話用信号交換機が維持限界を迎えるとされていることから、固定電話回線からIP電話への移行がより一層進むことが想定されます。総務省発表の「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成30年度第2四半期(9月末))」によると、2018年9月末時点におけるIP電話の契約数は約3,400万件とされており、現固定電話回線契約数の約2,100万件がIP電話へ移行した場合には、IP電話の契約数は約5,500万件まで増加するものと当社では見込んでおります。当社の固定電話向けフィルタサービスは、通信回線事業者の提供するIP電話に関する通信契約のオプションとして採用されていることからも、NTT東日本及びNTT西日本によるこのIP網構築の流れを的確に捉え、当社サービスも拡大できるように努めてまいります。
また、モバイル向けフィルタサービスにて現状は一部の通信キャリアにのみ提供している新機能「迷惑メールフィルタ」を他の通信キャリアにも展開できるよう提案を進めることで収益獲得手段を拡充し、より一層の収益力の強化を図ってまいります。
③ 新規・周辺ビジネスの立上げ
当社の迷惑情報フィルタ事業は、通信キャリアのオプション契約に組み込まれるサービス運営を中心とするビジネスモデルに依存している状況にあります。
そのため、複数のビジネスモデルを持ち、より頑強な組織へと成長していくことが、今後の発展において重要であると考えております。今後は、迷惑情報フィルタ事業で培ったデータベースのノウハウを活用し、新たな事業領域への拡張のみならず、新しいビジネスモデルの展開も積極的に検討してまいります。具体的には、現在法人向けに提供している「トビラフォンBiz」の発展サービスとして、従業員の所有する携帯電話を会社の内線電話機として取り扱え、発信時において安価な通話料で通話できるシステムの開発による新たな課金サービスや、利用者が不要と感じるウェブ上の広告や危険なサイトへ誘導する広告をフィルタするアプリ「Netcomfy」の収益化などを検討し、業績の拡大を図ってまいります。
④ 優秀な人材の確保と組織体制の強化
優秀な人材の確保と適切な配置、育成システムの構築は、当社の成長にとって最も重要な経営課題と認識しております。そのため、当社は継続的に採用活動を行うとともに適正な人事評価を行い、当社の企業理念、組織風土にあった優秀な人材の確保に努めてまいります。また、社員の職位、職務に応じた適切な研修を行い、人材の教育・育成を進めていく方針であります。
⑤ 当社及び当社サービスの認知度向上
当社は、迷惑情報フィルタサービスを提供しており、今後のさらなる事業展開、拡大のためには、お客様に安心してサービスを利用して頂けるよう当社及び当社サービスに対する知名度や信頼を一層向上させることが重要であると認識しております。
当社は、デジタルマーケティング等の広告宣伝活動及びプロモーション活動の強化に努め、認知度向上を図ってまいります。なお、株式上場による、社会的認知度の向上も意図しております。
⑥ 内部管理体制の強化
当社は、企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置づけ、多様な施策を実施しております。業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する様、一層の体制整備、運用の強化を図ってまいります。