有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/05/16 15:00
【資料】
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【項目】
99項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「Sansanのカタチ」と称する企業理念において、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッション(注)を掲げております。このミッションの下、企業やビジネスパーソンが抱えるさまざまな課題の解決につながるサービスを生み出すことを目指し事業活動に取り組んでおり、これらの活動が株主価値及び企業価値の最大化につながると考えております。
(注)当社グループのミッションは、以下の通りであります。
「出会いからイノベーションを生み出す」
いつの時代も、世界を動かしてきたのは人と人の出会いです。
私たちは出会いが持つ可能性を再発見し、未来につなげることでビジネスを変えていきます。
イノベーションにつながる新しい出会いを生み出す。
出会いの力でビジネスの課題にイノベーションを起こす。
そして、名刺からはじまる出会い、そのもののあり方を変えていきます。
(2)目標とする経営指標
Sansan事業においては、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、契約件数や契約の継続率(解約率)等を重要指標としております。また、Eight事業においては、ユーザーネットワークの構築・拡充を目的として、ユーザー増加数等を重要指標として運営を行っております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループの事業や事業領域には次のような特徴があり、これらに基づいて中長期的な経営戦略を立案しております。
①名刺の持つユニークな価値と市場機会
名刺は、ビジネスの出会いのシーンで交換される慣習が根強く、そこには、氏名や所属する会社、組織、役職、連絡先等のビジネスパーソンを表す正確な情報が記載されております。また、名刺交換の履歴情報自体にもユニークな価値があるほか、現在でも紙のままで日常的に利用されていてデジタル化が進んでおらず、業務効率化や有効活用の余地が大きく残されていると考えております。
当社が2007年の創業当時から手掛ける、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」は、名刺管理サービス市場を自ら創り上げてきたことで、当該市場で81.9%(注1)のシェアを有しており、パイオニアとして市場をリードしております。
また、2012年に開始した名刺アプリ「Eight」のユーザー拡大とあわせて、当社及び当社サービスのブランド認知度は高まっているものと考えております。
しかしながら、日本国内に存在する企業数や従業者数でみた場合には、「Sansan」のカバー率は未だ低水準であります。例えば、国内における総従業者数に占める「Sansan」利用者数の割合は、約1%程度に留まっており、利用者数ベースでは潤沢な開拓余地が残されていると考えております(注2)。加えて、働き方改革やデジタル・トランスフォーメーション(注3)の加速によって、名刺に対するクラウド管理ニーズが後押しされる可能性も高いものと捉えております。
(注)1.株式会社シード・プランニング「名刺管理サービスの市場とSFA/CRM関連ビジネス」(2018年11月)より引用した、2017年の金額シェアベースの値であります。
2.2019年2月末における「Sansan」合計ID数を分子に算出しております。分母となる国内における総従業者数は、総務省統計局「2016年経済センサス活動調査」をもとに算出しております。
3.クラウドやモバイル等のテクノロジーを利用した新しい製品やサービス、更には経営の在り方やビジネスプロセス等により、企業をより良い方向に変化させるという概念のことであります。
②ビジネス・プラットフォームとしての価値
当社グループの提供する「Sansan」と「Eight」は、業界や職種を問わず数多くのビジネスパーソンがあらゆるシーンで活用するサービスとなっております。名刺管理という極めて基本的なビジネスニーズと、そこに自律的に蓄積されるデータや情報が土台となっていることから、他のサービスやデータベースとの連携性・拡張性が高く、エコシステム(注)の中心となることでビジネスにおけるプラットフォームになり得る要件を兼ね備えているものと捉えております。したがって、ビジネス・プラットフォームとしての価値を高めていくことで、さまざまなビジネス機会にアクセスしやすいという特徴を有していると考えております。
(注)複数の企業が連携し、それぞれの製品や技術、強みを活かしながら、業種・業界の垣根を越えて共存共栄する仕組みのことであります。
③名刺データ化精度99.9%を実現する仕組みとテクノロジー
名刺管理サービスにおける名刺データ化の精度は、サービスの本質的な品質・競争力に資するものであり、「Sansan」では99.9%の精度を、そして「Eight」でもそれに準ずる高い精度を有しており、事業共通の強みとしております。当社グループのサービスでは、機械学習等によって日々進化するテクノロジーと、人力の組み合わせによって名刺のデータ化を行っております。創業以来、人力による名刺データ入力を中心に、膨大な名刺をデータ化してきたことで、現在では、大量の名刺を正確かつ効率的にデータ化する独自システムの開発・運営が可能となりました。この技術力と独自の仕組みが競争力の源泉であり、継続的なサービス品質・競争力の向上に向けて、新技術の開発やオペレーションの改善を追求し続けております。
④高い安定性を誇る財務・収益モデル
当社グループの「Sansan」の課金モデルは、継続収入が見込めるサブスクリプションモデル(月額課金)が中心であることから、安定的かつ継続的な事業進捗が見込める収益モデルであります。また、サービスの月次解約率は、直近12か月平均で1.0%以下に留まっており、契約当たり売上高の拡大に努めることで、顧客LTV(ライフタイムバリュー)の最大化を推進しやすい魅力的なモデルであると捉えております。
具体的な当社グループの経営戦略は、以下の通りであります。
①Sansan事業の更なる成長
マーケティング活動から新規受注までの一連の業務プロセスが確立し、安定的な成長を続けておりますが、今後の更なる成長に向けて積極的な施策を実施してまいります。
大企業向け営業体制の確立や国内外の拠点を通じた広範な営業活動の展開等により、契約件数の拡大に取り組みます。同時に、ユーザー企業の全社員によるサービス利用(全社利用)を前提とした大型契約の獲得や既存顧客の利用拡大の促進、新たな付加価値を提供するサービスの推進等によって、契約当たり売上高の拡大にも取り組んでまいります。
また、正規情報として大量の名刺データを軸にすることで、「Sansan」は企業内のあらゆるサービスと連携し、ビジネス・プラットフォームの中心となることができると考えております。引き続き、プラットフォームとしての拡張性を強化し、さまざまなビジネス機会へのアクセスを図ります。具体的には、提供している機能を外部のアプリケーションから利用できるようにするOpen APIや社内の各データベースに散在する顧客データの名寄せを可能にする顧客データHub等を活用し、SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)、MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)、ERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)ツール等と「Sansan」の連携を強化、加速させてまいります。「Sansan」のアプリケーションにおいて、ニュースや業績等に関する企業情報や経歴・異動情報を含む人物情報等を提供していくことで、コンタクト情報だけではなく、あらゆるビジネス情報の窓口になることを目指してまいります。
②Eight事業のマネタイズ(収益化)
2015年より、一部利用機能を拡充した個人向け有料サービス「Eightプレミアム」を展開しておりますが、事業全体でのマネタイズを加速すべく、「Eight」のユーザーに対して広告配信が可能な「Eight Ads」をはじめとした企業向け有料サービスの開発・展開に注力してまいります。「Eight」における名刺共有を企業内で可能にするサービスである「Eight 企業向けプレミアム」では、従業員数名から20名程度の小規模企業をコア・ターゲットとして展開してまいります。転職潜在層のユーザーにアプローチが可能な採用関連サービス「Eight Career Design」では、採用市場におけるユニークなポジションの確立を目指して価値を提供してまいります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループの対処すべき主な課題は以下の通りであります。
①優秀な人材の採用と育成
当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を多数採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えております。当社グループのミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を進めるとともに、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築に取り組んでまいります。
②情報管理体制の継続的な強化
当社グループは多くの個人情報を扱っており、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要であると考えております。現在も個人情報保護に係る施策には万全の注意を払っておりますが、今後も社内体制や管理方法の強化・整備を行ってまいります。
③技術力の強化
名刺データ化等に係る技術力は当社グループの競争力の源泉であり、Sansan事業及びEight事業の成長を支える共通基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えております。優秀な技術者の採用や先端技術への投資・モニタリング等を通じて、技術力の向上に取り組んでまいります。
④Eight事業のマネタイズ(収益化)
上記「(3)中長期的な会社の経営戦略」で記載したように、2015年より、一部利用機能を拡充した個人向け有料サービス「Eightプレミアム」を展開しており、その他のサービスも開始しておりますが、事業全体でのマネタイズを加速すべく、有料サービスの開発・展開に更に取り組んでまいります。