有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/12/26 15:00
【資料】
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【項目】
106項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営方針
当社グループは、「全社一丸となり 顧客を創造し 社業発展、進歩を図り 社会に貢献する」ことを企業理念とし、「三方よしの精神」“売り手よし 買い手よし 世間よし”を経営理念としております。その上で「レンタル事業を核として、顧客のニーズにこたえ、環境負荷低減に努め 未来との共生を図る。」という環境理念のもと、FF&Eの総合レンタルサービスを軸に、社会から必要とされる企業グループとして循環型社会や持続可能な社会の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、成長力向上を図るため売上高営業利益率とEBITDAを目標指標として採用しており、「売上高営業利益率4.6%以上の達成と維持」、「EBITDA24億円以上の達成と維持」を目標値として設定しております。また、株主資本を効果的に運用するために自己資本当期純利益率(ROE)も目標指標として採用し、「ROE10%以上の確保」を目標値として設定しております。
(3) 経営環境
市場別の経営環境をみると、国内の建設市場においては東京オリンピック・パラリンピック競技大会関連施設及びそれらを起点とした建設需要の他、2020年以降も大都市圏での大規模再開発プロジェクトや、リニア中央新幹線等の国家プロジェクトが進んでおり、投資額は高い水準で推移すると見込まれております。一方で建設業就業者の55歳以上が占める割合は約34%と高齢化が進行し、今後約10年で169万人、技能労働者は112万人が引退すると予測されております。(出展:国土交通省「建設業を取り巻く情勢・変化 参考資料」)このような中、技術の平準化を図るため施工や施工管理におけるICT化を推進すると共に、就業者の確保のため、魅力ある建設業を目指し処遇改善や生産性向上を図るだけではなく、女性活用も積極的に推進されるなど人材確保に向けた取り組みが業界として行われております。
イベント市場においては2020年まで国際的スポーツ・イベント等の国内開催が予定されております。またインターネットで手軽にコミュニケーションが取れる反動から、実際に足を運ぶフェスティバルや興行イベントなど参加型イベントの重要性も見直されております。特にスポーツ分野においてはスポーツツーリズムなど参加型スポーツの推進を政府は計画しており、中でも近年ICTを軸とした新しいスポーツの形であるe-sports(イースポーツ)と呼ばれるコンピュータゲームの競技大会が日本でも数多く開催され、e-sports市場が大いに盛り上がりを見せており、今後も底堅い需要を見込んでおります。
マンション市場においては、マイナス金利政策の導入による住宅ローン金利の一段の低下や、住宅ローン減税等の措置はあったものの、建設用地や建設資材の高騰に起因した分譲価格は上昇傾向にあり、全国での新築マンション平均価格は3.7%上昇し4,759万円と1973年の調査開始以来の高値を更新いたしました。(出展:不動産研究所「全国マンション市場動向2018)これらの影響からか首都圏では契約率の低下もみられ、供給戸数について最近5年は低水準で推移しております。中古マンション市場では専業企業の台頭により中古マンションをリノベーションし活用するニーズが高まり、ここ数年での成約件数は上昇傾向にあります。長期的には人口減少と少子高齢化が着工戸数に影響を与えるものとして、今後の動向を注視する必要があります。 一方、市場を問わず政府の進める働き方改革、女性活躍推進に伴い、個人のライフスタイルに合わせた多様な働き方をバックアップする対応が企業に求められており、そのような中、コワーキング(注1)スペース、シェアオフィス、テレワークなどICT技術を活用した様々なサービスが提供されております。既存オフィススペースで働く従業員に対しても、生産性向上や健康促進をキーワードに、快適な職場環境を提供するべく様々な取り組みが実施されており、オフィス環境のあり方に企業マインドの変化がみられます。またインターネットを活用したシェアリングエコノミー(注2)の台頭を背景に、主にICT企業や製造・販売業等の異業種によるレンタル事業への参入やサブスクリプション方式(注3)による定額サービスなど、当社グループを取り巻く経営環境変化にもあわせて注視しております。
(注)1.コワーキング・・・事務所スペース、会議室、打ち合わせスペースなどを共有しながら独立した仕事を行う共働ワークスタイル。
2.シェアリングエコノミー・・・十分に使われていないモノ、空間、知識・知恵、技能等の遊休資産をICTの活用によって共有する幅広いビジネス。
3.サブスクリプション方式・・・ビジネスモデルの1つ。利用者はモノを買い取るのではなく、モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式。
(4) 対処すべき課題
①提供サービス、商品ラインナップの拡充
当社グループが安定的な営業収益を確保するためには、変化する各マーケットにおけるニーズを捉えた商品やソリューションサービスを顧客に提供することが求められております。現在、多くのラインナップと商品点数を保有し顧客から一定の評価を頂いておりますが、生産性向上やICTを活用したソリューションなど業界を問わないマーケットニーズやスポーツ・ホスピタリティといったイベントマーケットにおける「おもてなし」需要、また今後マーケット規模拡大が予測されているe-sports向け需要など、個別業界におけるニーズを解決するために、より付加価値の高い商品やソリューションサービス提供が当社グループの課題となっております。これらを実現するために各メーカーや他業種企業など、業界を問わずコラボレーションし新規商品及びサービスを拡充してまいります。またニーズをいち早く捉え、自社サービスへとするべく情報共有可能な社内体制作りを推進してまいります。
②新たな収益源確保に向けたマーケットの開拓
当社グループは、建設市場、イベント市場、マンション市場、官公庁市場と比較的限られたマーケットの顧客を主として収益を確保しております。そのため想定案件の計画中止や当該市場そのものが縮小になった場合、当社グループの収益が市場と連動して影響を受ける可能性があると認識しております。現在、建設市場における顧客数や売上額は安定しているものの、これら想定される影響を出来る限り低減させるため、当社グループ全セグメントにおいて幅広いマーケットの顧客開拓を課題としております。保有するレンタル資産を最大限活用し、別業種へのレンタルサービス展開や、蓄積したデザイン力をいかした他市場でのサービス提供、またインターネットを活用した顧客の開拓など新たな収益源確保に向けた取り組みを推進してまいります。
③受注拡大に伴う労務体制の強化
2020年まで東京オリンピック・パラリンピック競技大会をはじめ多くの国内メガイベント開催が予定されております。これらイベント業務においては事前の設営作業から開催期間中の管理、事後の撤去作業まで、長期間にわたる拘束を要することから受注拡大に伴う労務体制の強化が求められます。当社グループでは当該案件に対応すべく専任プロジェクトを立ち上げると共に、社内人材リソースを順次プロジェクトへ配置転換してまいります。また協力会社とのアライアンス強化により、外部人材の活用も積極的に推進してまいります。
④物流分野におけるリソースの確保と生産性向上
インターネット通販の拡大及び生産年齢人口の減少に起因した運輸業界における車両及び労働力不足が顕在化する中、当社グループにおいても運搬車両及び人員の安定的な確保と倉庫内業務の生産性向上は重要な課題となっております。今後の更なる成長に向けて、既存協力会社との関係強化と新たな協力会社の確保を通じて車両及び人材の安定的な確保に努めてまいります。また倉庫作業の効率化に向けて、専門家へのコンサルティング委託によるノウハウの習得に努めると共に、立地及び倉庫内ロケーションの最適化や運営体制の強化にICT技術や設備投資を通じて実現してまいります。
⑤ビジネスモデルの更なる強化
レンタルサービスは自社で商品を保有し顧客へ貸し出すビジネスモデルのため、市場環境の悪化やマーケットニーズの変化により、保有する商品の稼働率が悪化した場合、その保管費用が増加するなど当社グループの収益に影響を与える可能性があると認識しております。これらの影響を出来る限り低減させるため、顧客ニーズを満たす商品ラインナップへの定期的なリプレイスやバージョンアップを実施すると共に、保有在庫が過剰にならないよう調整弁としての売却(リユース品販売)に向けた取り組みが課題となっております。リユース品販売のサービスはレンタルビジネスモデルにおける商品の出口戦略という一面をもっており、そのための販売力強化を推進してまいります。