有価証券届出書(新規公開時)
事業内容
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、ノーリツ鋼機株式会社を親会社とする企業集団に属し、当社及び子会社8社により構成されております。
当社グループは企業理念として、「健康で豊かな人生をすべての人に」を掲げております。現在日本において取りざたされている「医療費の増大(2025年問題(※1))」「医療の地域格差」「生活習慣病の増大」「労働力不足」といった社会課題に対しデータとICT(※2)の力で解決に取り組むことで、持続可能な国民医療制度の実現を目指してまいります。こういった社会課題は、超高齢化が早く進む日本が課題先進国として直面している問題であり、その中で培った解決ノウハウを用いて、将来同じ課題を抱えるであろうアジア諸国などにおいて国境を超えた解決に取り組んでいくことを目指しております。
この企業理念の実現、すなわち、個人の健康な生活のため、その結果としての持続可能な国民医療制度の実現のため、人材やテクノロジーに積極的に投資し、医療ビッグデータを活用した新しい取組みやサービス開発にチャレンジし続けます。特に、現在は下記をテーマにした開発を進めております。
・超重症化予防 :生活習慣病等の重症化予防のための個別介入サービス
・ポリファーマシー対策 :安全性、効率性に問題のある多剤併用の抑制
・Big Data for Children :難病を含めた小児医療の発展に対するデータを活用した支援
・健康経営 :企業における従業員の健康管理や健康への投資の支援
当社グループは上記の企業理念を達成するため、ヘルスビッグデータ事業、遠隔医療事業、調剤薬局支援事業の3つの事業を営んでおります。各事業の概要は、次のとおりであります。なお、以下に示す区分は、報告セグメントと同一の区分であります。
《用語説明》
※1 2025年問題
日本国内における団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達することにより、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている問題の通称をいう。
※2 ICT
Information and Communication Technologyの略であり、情報・通信に関する技術の総称をいう。
※3 保険者
健康保険事業の運営主体のことをいう。健康保険の保険者には、全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合の2種類が存在する。
※4 レセプト
患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者に請求する医療報酬の明細書をいう。
※5 PHR
Personal Health Recordの略。生涯型電子カルテとも言われ、複数の医療機関や薬局などに散らばる健康関連の情報を一元的に集約・管理する仕組みをいう。
※6 DPC
Diagnosis Procedure Combinationの略であり、診療群分類包括評価とも言われる。医療費の計算において、従来の診療行為ごとの点数をもとに計算する「出来高払い方式」と異なり、疾患に応じた計算を基本として医療費の計算が行われる。
※7 薬剤DB
医薬品の添付文書その他薬剤関連情報をもとに薬学的見解を加味して開発したデータベースをいう。
※8 遠隔画像診断
医用画像について、ICTを活用することで検査が行われた施設とは異なる場所から実施する診断をいう。
※9 レセコン
レセプトコンピュータの略。レセプトを作成するコンピュータ若しくはソフトウエアを指す。本書において、特段の記載がない限りは、調剤薬局で使用する医師の処方箋に基づくレセプト処理システムを指す。
※10 電子薬歴
医師から発行された処方箋に基づき、調剤・指導歴を電子化したものをいう。本書において、特段の記載がない限りは、調剤薬局で使用する電子薬歴システムを指す。
これら3つの事業の関係を、データの流れから整理すると、データにアクセスするための製品/サービス提供を行っているのが、ヘルスビッグデータ事業の中の保険者支援、PHR及び薬剤DBとなります。医療ビッグデータでは、ここでアクセスしたデータを適切な手続きを経てデータベース化し、そのデータベース及び解析結果等を学術及び産業界に提供しております。また、遠隔医療事業及び調剤薬局支援事業では、医療機関や調剤薬局へのデジタルソリューションの提供を通して、日々データにアクセスしております。かかる各事業の関係を示すと次の図のようになります。
各事業の具体的な内容については、次のとおりであります。
〈ヘルスビッグデータ事業〉(当社・メディカルデータベース株式会社(以下「MDB」という。)
ヘルスビッグデータ事業の売上収益の推移を、保険者支援及びPHR、医療ビッグデータの提供、薬剤DB、その他(新規事業等)に分けると下記のとおりであります。
(ヘルスビッグデータ事業の売上構成)
(注)1.上記の売上は経営管理上の各社の個別数値であり、当社の数値には2018年11月に吸収合併したヘルスデータ・プラットフォーム株式会社及び2019年4月に吸収合併した株式会社クリンタルの数値が含まれております。また、MDBは2018年5月より連結財務諸表に取り込んでおりますが、上記はそれ以前からの数値も含めて記載しております。
2.MDBは決算期変更の影響から、2016年3月期は2015年3月~2016年2月の数値を記載しております。
3.2017年3月期から2018年3月期にかけての「保険者支援及びPHR」の売上の増加は、主にPHRサービスの立ち上げによるものであります。
(1)保険者支援(当社)
当社は、主に健康保険組合に対して、紙・画像レセプトを含めたレセプトデータ、健診データ、台帳(※11)データ等をデータベース化すること、及び、そのデータを保健事業におけるPDCAに活用することを支援する様々なサービスを提供しております。例えば、他の保険者との比較による医療費分析・ハイリスク者抽出等の実態把握型のデータ分析・将来医療費予測・詳細レポート作成等のコンサルティング業務の他、個人宛通知物の作成、データに基づく施策の効果検証等を提供しております。これらのサービスにおいては、健康保険組合員の個人情報を扱うため、当社の中でも物理的・技術的に厳格に隔離され、また、管理された環境で活動を実施しております。一方で、この保険者支援サービスの一環として、健康保険組合が保有するレセプトデータ及び健診データを匿名加工化したデータを、第三者提供許諾(二次利用許諾)を得た上で受領しております。この匿名加工データをもとに(3)の医療ビッグデータを構築しております。
《用語説明》
※11 台帳
健康保険組合において組合加入者の情報を登録したものをいい、加入者台帳ともいわれる。
以下の表のとおり、2019年4月末時点において、当社が継続契約を締結して取引をしている健康保険組合数は207組合となっており、その加入者数の合計は703万人となっております。また、当該加入者数のうち、二次利用許諾を受けているのは611万人となっております。なお、2016年3月末時点で全国の健康保険組合の加入者数は約2,900万人(出所:厚生労働省HP)とされております。継続契約顧客の解約がほとんど発生していない(下記グラフ「取引健保数の契約年度別推移」のとおり、2013年度以降、189の健康保険組合と新たに契約を締結し、そのうち解約は7組合のみ)ことが、当社の保険者支援サービスに対する顧客の評価を示しており、また、当社の事業に対する高い参入障壁となっているものと考えております。
(取引健保数と加入者数の推移)
(注)上記の取引健保数及び取引健保の加入者数は、各時点において当社と継続契約を締結している(単発取引を除く)健保のみを集計しております。また、前事業年度の営業活動の結果として4月1日に開始する契約が多数存在すること、及び、当社として加入者数を集計できるのが月末であることから、4月末を集計基準月としております。
(参考:契約健保の健診受診者数の推移)
(注)二次利用許諾を受けている健診データの対象となる受診者数のみを集計しております。各年度は、4月から3月における契約健保の健診受診者数であります。
(取引健保数の契約年度別推移)
(注)縦軸は取引健保数(件)を示しております。なお、取引健保数は、各時点において当社と継続契約を締結している(単発取引を除く)健保のみを集計しております。
(2)PHR(パーソナルヘルスレコード)(当社)
当社は、保険者支援サービスを提供している健康保険組合に対して、当社開発の健康情報プラットフォーム「PepUp」(ペップアップ)による個人向け健康ポータルサイトを運営しております。「PepUp」を契約いただいている健康保険組合の加入者に対して、健康年齢(健診結果をもとに算出された医療費予測からみた健康状態を年齢に置き換えて示す指標であり、実年齢や同世代と比較して自身の健康状態を把握することを可能にするサービス)、ポイントプログラム、医療費通知、ニュース等、健康に関するコンテンツを提供しております。また、この健康情報プラットフォームに当社開発の名医紹介サービス「clintal」(クリンタル)・重症化予防・保健指導等の健康増進サービスを追加することで、単なる健康情報の提供の場にとどまらず、健康管理や健康増進活動の場へと発展させ、医療費抑制に貢献することによる収益化を目指しております。
(現在の「PepUp」のサービスイメージ)
以下の表のとおり、2019年9月末時点において取引健康保険組合の加入者等の1,483千人に対してIDを付与しております。
(「PepUp」ID発行数推移)
(3)医療ビッグデータ(当社)
《用語説明》
※12 ポピュレーションヘルス
集団全体の健康向上を効率的に実現する政策をいう。
当社は、(1)の保険者支援の中で健康保険組合より二次利用許諾を得て受領したレセプトデータ及び健診データの匿名加工データから、600万人規模の医療ビッグデータを構築し、以下の表のとおり、そのうち約500万人規模のデータベースを提供しており、その量は月ごとに増大しております。当社は2005年まで遡ったデータベースを保有しており、その提供が可能であることが、新規参入者に対する高い参入障壁となっております。さらに、今後PHRサービスの中で取得する健康情報等、他のデータについても、適切な手続きを経て、医療ビッグデータとして活用していく予定であります。
現在は、製薬企業、研究機関及び生損保企業等に対し、個別の要望事項に対して当該データベースから必要なデータを抽出・分析するサービス「アドホック販売」を行うとともに、汎用的なネットオンライン型のデータ検索・集計パッケージツール「JMDC Data Mart」の提供及び当社のデータベース自体の一部又は全部へのアクセス権を付与する「フルデータベース販売」を行っております。
(データ取得開始年(加入健保の契約年)別の提供用データベース規模)
医療ビッグデータに関しては、2019年3月期において製薬企業及び生損保企業88社との取引があり、その取引先数が増加しております。また、平均取引額も、上位5顧客の平均取引額は年間119百万円、全顧客の平均取引額は年間31百万円となっており、大きく伸長しております。
(医療ビッグデータの取引推移)
(注)上位5顧客の平均取引額は、各年度の取引額の上位5社の平均取引額であります。
上記(1)~(3)の当社(JMDC)が実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
(4)薬剤DB(MDB)
当社の連結子会社であるMDBは、医薬品添付文書をはじめとした医薬品の情報をもとに、MDBの薬剤師の薬学的見解を加味したデータベースを開発し、医療系システム会社へのデータベースの提供を行うとともに、大規模病院向け部門システムの開発・販売・保守を行っております。自社開発システムを通じて病院内のDPCデータや電子カルテ(※13)データなどの病院由来のデータと連携をしており、適切な手続きを経た上で、これらのデータベース化にも取り組んでおります。
《用語説明》
※13 電子カルテ
医師により患者の病名・症状・検査値データ・処方内容等が記載されたものをカルテといい、これを電子化したものを電子カルテという。
MDBが実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
〈遠隔医療事業〉(株式会社ドクターネット(以下「DN」という。)・有限会社エムアイ・コミュニケーションズ(以下「MIC」という。)・医解网(上海)科技有限公司(以下「DNC」という。)
遠隔医療事業の売上収益の推移を、遠隔読影マッチングサービス、遠隔読影インフラ、その他(新規事業等)に分けると下記のとおりであります。
(遠隔医療事業の売上構成)
(注)上記の売上は経営管理上のDN及びMICの単純合算数値であります。また、DNは2018年4月より連結財務諸表に取り込んでおりますが、上記はそれ以前からの数値も含めて記載しております。MICについては連結加入タイミングの2019年3月期より数値を取り込んでおります。なお、DNCは2019年4月に設立・連結子会社化したため、上記の売上には含まれておりません。
当社の連結子会社であるDN、MIC及びDNCは、「いつでもどこでも、高品質の画像診断を」をモットーに契約読影医群をデジタル環境でつなぎ、医療機関に対して遠隔画像診断サービスを提供しております。日本の医療施設は約11万施設(出所:厚生労働省「医療施設動態調査」平成30年10月末概数)存在するのに比して、放射線診断専門医は約5,500名(出所:公益社団法人日本医学放射線学会HPの専門医一覧、2017年11月時点)となっており、放射線診断専門医の過重労働や専門医の診断がつかず誤診につながる症例が問題となっております。そのような中で、当社グループの遠隔画像診断サービスの利用によりクライアントである医療機関は不足する放射線診断専門医の採用に苦慮することなく読影リソースとスキルを活用することができ、最適な医療判断を行うことができます。当社グループとして、2019年3月末時点で、契約読影医が650名、契約医療機関が700施設の規模にまで成長した中で、オペレーション改善によるコスト競争力強化、24時間365日対応、専門性の高い読影医のマッチング等のサービス品質向上といった規模を活かした差別化要因を構築しております。今後も、システム対応を含めたオペレーションを最適化し、契約読影医及び医療機関双方の満足度を向上していくことが責務だと考えております。
この遠隔読影マッチングサービスを通して、多くの画像診断データに日々アクセスしており、ディープラーニング(※14)を中心とするAIテクノロジー(※15)を用いた診断アシストエンジン(※16)を日々の読影の中で活用できるようにする診断アシストプラットフォーム「AI-RAD」の開発等にも取り組んでおります。さらには、読影ニーズが増加している中国・東南アジアにおける展開を推進しております。
《用語説明》
※14 ディープラーニング
コンピュータによる機械学習の手法であり、深層学習ともいわれる。
※15 AIテクノロジー
Artificial Intelligence(人工知能)を活用することで学習・推論・判断のはたらきを人工的に実現する技術をいう。
※16 診断アシストエンジン
コンピュータを使用した医療における診断支援を実行する機構をいう。
以下の表のとおり、遠隔読影サービス市場は拡大しております。その中で、当社グループが提供している遠隔読影マッチングサービスは、契約医療機関数と契約放射線診断専門医数が相乗的に増加する構造となっていることから同市場におけるシェアを上昇させております。また、過去の契約顧客からの売上が安定して推移していることが、当社グループの遠隔読影マッチングサービスに対する顧客の評価を示しているものと考えております。
(市場規模)
出所:矢野経済研究所「2018年版 医用画像システム(PACS)・関連機器市場の展望と戦略」
(遠隔読影マッチングサービスの顧客契約年度別売上推移)
(注)上記の売上は経営管理上のDN及びMICの単純合算数値であります。また、DNは2018年4月より連結財務諸表に取り込んでおりますが、上記はそれ以前からの数値も含めて記載しております。MICについては連結加入タイミングの2019年3月期より数値を取り込んでおります。なお、DNCは2019年4月に設立・連結子会社化したため、上記の売上には含まれておりません。
DN、MIC及びDNCが実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
〈調剤薬局支援事業〉(株式会社ユニケソフトウェアリサーチ(以下「USR」という。)・株式会社日本メディケートプラン(以下「JMP」という。)・有限会社神田登栄薬局(以下「KND」という。)・他1社)
当社の連結子会社であるUSR、JMP及びKNDは、調剤薬局向けの業務システム(レセコン、電子薬歴など)を提供し、薬剤を処方する薬剤師が必要な情報を適切に患者に提供できる環境「スマートファーマシー」(※17)の構築を目指しております。一方で、保険薬局市場は既に成熟市場に至っており、保険薬局数の伸び率はこの数年1%程度(出所:厚生労働省「衛生行政報告例」、平成30年度末現在)に留まっております。このため、USRのシステム販売事業においては、全体の約8割が既存顧客の買換え(リプレース)、約1割が既存顧客の新店開局、残る約1割が他社メーカーからのリプレース及び既存顧客以外の新店開局という構成比となっており、以下の表のとおり、顧客数は安定して推移しております。
現在は、調剤薬局向けの業務システムをクラウド化した新商品の開発に取り組んでおります。加えて、USRが業務システムを提供している調剤薬局では、日々レセプトデータや薬歴データが蓄積されており、今後適切な手続きを経て、当社グループの他のデータベースと組み合わせることで、より付加価値の高いデータベースの構築と調剤薬局向けソリューションの開発に取り組んでまいります。
《用語説明》
※17 スマートファーマシー
保険薬局や薬剤師が、服薬情報の把握や在宅での対応等の薬学的管理・指導などの機能を果たしつつ、セルフメディケーション(自分で自身の健康を管理すること)の拠点としての役割も担う近未来の薬局像としてユニケグループが掲げるビジョンをいう。
(システム導入調剤薬局数の推移)
USR、JMP及びKNDが実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
当社グループは企業理念として、「健康で豊かな人生をすべての人に」を掲げております。現在日本において取りざたされている「医療費の増大(2025年問題(※1))」「医療の地域格差」「生活習慣病の増大」「労働力不足」といった社会課題に対しデータとICT(※2)の力で解決に取り組むことで、持続可能な国民医療制度の実現を目指してまいります。こういった社会課題は、超高齢化が早く進む日本が課題先進国として直面している問題であり、その中で培った解決ノウハウを用いて、将来同じ課題を抱えるであろうアジア諸国などにおいて国境を超えた解決に取り組んでいくことを目指しております。
この企業理念の実現、すなわち、個人の健康な生活のため、その結果としての持続可能な国民医療制度の実現のため、人材やテクノロジーに積極的に投資し、医療ビッグデータを活用した新しい取組みやサービス開発にチャレンジし続けます。特に、現在は下記をテーマにした開発を進めております。
・超重症化予防 :生活習慣病等の重症化予防のための個別介入サービス
・ポリファーマシー対策 :安全性、効率性に問題のある多剤併用の抑制
・Big Data for Children :難病を含めた小児医療の発展に対するデータを活用した支援
・健康経営 :企業における従業員の健康管理や健康への投資の支援
当社グループは上記の企業理念を達成するため、ヘルスビッグデータ事業、遠隔医療事業、調剤薬局支援事業の3つの事業を営んでおります。各事業の概要は、次のとおりであります。なお、以下に示す区分は、報告セグメントと同一の区分であります。
ヘルスビッグデータ事業 | (セグメントに属する会社) 当社、メディカルデータベース株式会社 (事業の概要) ・保険者(※3)支援:レセプト(※4)データ分析、及び、データに基づく健康増進・医療費抑制ソリューションの提供 ・PHR(※5) :アプリやウェブによる個人向け健康情報プラットフォーム ・医療ビッグデータ :レセプトデータ、健診データ、DPC(※6)データなどの医療データベースの構築、管理及び解析とそれらの学術及び産業界への提供 ・薬剤DB(※7) :薬剤DBの構築・販売と医療機関向けの薬剤DBを活用したシステムの開発・提供 ・その他 :新規事業等 |
遠隔医療事業 | (セグメントに属する会社) 株式会社ドクターネット、有限会社エムアイ・コミュニケーションズ、医解网(上海)科技有限公司 (事業の概要) ・医療機関に対する遠隔画像診断(※8)を含めた診断及び治療に関わる領域でのデジタルソリューションの提供 |
調剤薬局支援事業 | (セグメントに属する会社) 株式会社ユニケソフトウェアリサーチ、株式会社日本メディケートプラン、有限会社神田登栄薬局、他1社 (事業の概要) ・調剤薬局に対する業務システム(レセコン(※9)、電子薬歴(※10)など)の開発・提供 ・自社開発ソリューションの企画・開発・テストのための調剤薬局の運営 |
《用語説明》
※1 2025年問題
日本国内における団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達することにより、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されている問題の通称をいう。
※2 ICT
Information and Communication Technologyの略であり、情報・通信に関する技術の総称をいう。
※3 保険者
健康保険事業の運営主体のことをいう。健康保険の保険者には、全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合の2種類が存在する。
※4 レセプト
患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者に請求する医療報酬の明細書をいう。
※5 PHR
Personal Health Recordの略。生涯型電子カルテとも言われ、複数の医療機関や薬局などに散らばる健康関連の情報を一元的に集約・管理する仕組みをいう。
※6 DPC
Diagnosis Procedure Combinationの略であり、診療群分類包括評価とも言われる。医療費の計算において、従来の診療行為ごとの点数をもとに計算する「出来高払い方式」と異なり、疾患に応じた計算を基本として医療費の計算が行われる。
※7 薬剤DB
医薬品の添付文書その他薬剤関連情報をもとに薬学的見解を加味して開発したデータベースをいう。
※8 遠隔画像診断
医用画像について、ICTを活用することで検査が行われた施設とは異なる場所から実施する診断をいう。
※9 レセコン
レセプトコンピュータの略。レセプトを作成するコンピュータ若しくはソフトウエアを指す。本書において、特段の記載がない限りは、調剤薬局で使用する医師の処方箋に基づくレセプト処理システムを指す。
※10 電子薬歴
医師から発行された処方箋に基づき、調剤・指導歴を電子化したものをいう。本書において、特段の記載がない限りは、調剤薬局で使用する電子薬歴システムを指す。
これら3つの事業の関係を、データの流れから整理すると、データにアクセスするための製品/サービス提供を行っているのが、ヘルスビッグデータ事業の中の保険者支援、PHR及び薬剤DBとなります。医療ビッグデータでは、ここでアクセスしたデータを適切な手続きを経てデータベース化し、そのデータベース及び解析結果等を学術及び産業界に提供しております。また、遠隔医療事業及び調剤薬局支援事業では、医療機関や調剤薬局へのデジタルソリューションの提供を通して、日々データにアクセスしております。かかる各事業の関係を示すと次の図のようになります。
各事業の具体的な内容については、次のとおりであります。
〈ヘルスビッグデータ事業〉(当社・メディカルデータベース株式会社(以下「MDB」という。)
ヘルスビッグデータ事業の売上収益の推移を、保険者支援及びPHR、医療ビッグデータの提供、薬剤DB、その他(新規事業等)に分けると下記のとおりであります。
(ヘルスビッグデータ事業の売上構成)
会社 | 事業の概要 | 2016年 3月期 | 2017年 3月期 | 2018年 3月期 | 2019年 3月期 |
当社 | 保険者支援及びPHR(百万円) | 158 | 274 | 616 | 703 |
医療ビッグデータ(百万円) | 1,751 | 1,973 | 2,356 | 2,897 | |
その他(新規事業等)(百万円) | 99 | 28 | 69 | 120 | |
MDB | 薬剤DB(百万円) | 661 | 708 | 787 | 849 |
(注)1.上記の売上は経営管理上の各社の個別数値であり、当社の数値には2018年11月に吸収合併したヘルスデータ・プラットフォーム株式会社及び2019年4月に吸収合併した株式会社クリンタルの数値が含まれております。また、MDBは2018年5月より連結財務諸表に取り込んでおりますが、上記はそれ以前からの数値も含めて記載しております。
2.MDBは決算期変更の影響から、2016年3月期は2015年3月~2016年2月の数値を記載しております。
3.2017年3月期から2018年3月期にかけての「保険者支援及びPHR」の売上の増加は、主にPHRサービスの立ち上げによるものであります。
(1)保険者支援(当社)
当社は、主に健康保険組合に対して、紙・画像レセプトを含めたレセプトデータ、健診データ、台帳(※11)データ等をデータベース化すること、及び、そのデータを保健事業におけるPDCAに活用することを支援する様々なサービスを提供しております。例えば、他の保険者との比較による医療費分析・ハイリスク者抽出等の実態把握型のデータ分析・将来医療費予測・詳細レポート作成等のコンサルティング業務の他、個人宛通知物の作成、データに基づく施策の効果検証等を提供しております。これらのサービスにおいては、健康保険組合員の個人情報を扱うため、当社の中でも物理的・技術的に厳格に隔離され、また、管理された環境で活動を実施しております。一方で、この保険者支援サービスの一環として、健康保険組合が保有するレセプトデータ及び健診データを匿名加工化したデータを、第三者提供許諾(二次利用許諾)を得た上で受領しております。この匿名加工データをもとに(3)の医療ビッグデータを構築しております。
《用語説明》
※11 台帳
健康保険組合において組合加入者の情報を登録したものをいい、加入者台帳ともいわれる。
以下の表のとおり、2019年4月末時点において、当社が継続契約を締結して取引をしている健康保険組合数は207組合となっており、その加入者数の合計は703万人となっております。また、当該加入者数のうち、二次利用許諾を受けているのは611万人となっております。なお、2016年3月末時点で全国の健康保険組合の加入者数は約2,900万人(出所:厚生労働省HP)とされております。継続契約顧客の解約がほとんど発生していない(下記グラフ「取引健保数の契約年度別推移」のとおり、2013年度以降、189の健康保険組合と新たに契約を締結し、そのうち解約は7組合のみ)ことが、当社の保険者支援サービスに対する顧客の評価を示しており、また、当社の事業に対する高い参入障壁となっているものと考えております。
(取引健保数と加入者数の推移)
2014年 4月末 | 2015年 4月末 | 2016年 4月末 | 2017年 4月末 | 2018年 4月末 | 2019年 4月末 | |
取引健保数(組合) | 48 | 85 | 97 | 116 | 172 | 207 |
取引健保の加入者数(万人) | 224 | 308 | 359 | 397 | 578 | 703 |
(注)上記の取引健保数及び取引健保の加入者数は、各時点において当社と継続契約を締結している(単発取引を除く)健保のみを集計しております。また、前事業年度の営業活動の結果として4月1日に開始する契約が多数存在すること、及び、当社として加入者数を集計できるのが月末であることから、4月末を集計基準月としております。
(参考:契約健保の健診受診者数の推移)
2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | |
契約健保の健診受診者数(万人) | 101 | 137 | 167 | 206 | 244 | 261 | 265 |
(注)二次利用許諾を受けている健診データの対象となる受診者数のみを集計しております。各年度は、4月から3月における契約健保の健診受診者数であります。
(取引健保数の契約年度別推移)
(注)縦軸は取引健保数(件)を示しております。なお、取引健保数は、各時点において当社と継続契約を締結している(単発取引を除く)健保のみを集計しております。
(2)PHR(パーソナルヘルスレコード)(当社)
当社は、保険者支援サービスを提供している健康保険組合に対して、当社開発の健康情報プラットフォーム「PepUp」(ペップアップ)による個人向け健康ポータルサイトを運営しております。「PepUp」を契約いただいている健康保険組合の加入者に対して、健康年齢(健診結果をもとに算出された医療費予測からみた健康状態を年齢に置き換えて示す指標であり、実年齢や同世代と比較して自身の健康状態を把握することを可能にするサービス)、ポイントプログラム、医療費通知、ニュース等、健康に関するコンテンツを提供しております。また、この健康情報プラットフォームに当社開発の名医紹介サービス「clintal」(クリンタル)・重症化予防・保健指導等の健康増進サービスを追加することで、単なる健康情報の提供の場にとどまらず、健康管理や健康増進活動の場へと発展させ、医療費抑制に貢献することによる収益化を目指しております。
(現在の「PepUp」のサービスイメージ)
以下の表のとおり、2019年9月末時点において取引健康保険組合の加入者等の1,483千人に対してIDを付与しております。
(「PepUp」ID発行数推移)
2016年12月末 | 2017年12月末 | 2018年12月末 | 2019年9月末 | |
ID付与数(千人) | 94 | 443 | 1,077 | 1,483 |
(3)医療ビッグデータ(当社)
《用語説明》
※12 ポピュレーションヘルス
集団全体の健康向上を効率的に実現する政策をいう。
当社は、(1)の保険者支援の中で健康保険組合より二次利用許諾を得て受領したレセプトデータ及び健診データの匿名加工データから、600万人規模の医療ビッグデータを構築し、以下の表のとおり、そのうち約500万人規模のデータベースを提供しており、その量は月ごとに増大しております。当社は2005年まで遡ったデータベースを保有しており、その提供が可能であることが、新規参入者に対する高い参入障壁となっております。さらに、今後PHRサービスの中で取得する健康情報等、他のデータについても、適切な手続きを経て、医療ビッグデータとして活用していく予定であります。
現在は、製薬企業、研究機関及び生損保企業等に対し、個別の要望事項に対して当該データベースから必要なデータを抽出・分析するサービス「アドホック販売」を行うとともに、汎用的なネットオンライン型のデータ検索・集計パッケージツール「JMDC Data Mart」の提供及び当社のデータベース自体の一部又は全部へのアクセス権を付与する「フルデータベース販売」を行っております。
(データ取得開始年(加入健保の契約年)別の提供用データベース規模)
医療ビッグデータに関しては、2019年3月期において製薬企業及び生損保企業88社との取引があり、その取引先数が増加しております。また、平均取引額も、上位5顧客の平均取引額は年間119百万円、全顧客の平均取引額は年間31百万円となっており、大きく伸長しております。
(医療ビッグデータの取引推移)
2015年3月期 | 2016年3月期 | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | |
取引先数(製薬企業及び生損保企業) | 48 | 70 | 75 | 86 | 88 |
上位5顧客の平均取引額(百万円) | 53 | 85 | 95 | 106 | 119 |
全顧客の平均取引額(百万円) | 16 | 21 | 24 | 26 | 31 |
(注)上位5顧客の平均取引額は、各年度の取引額の上位5社の平均取引額であります。
上記(1)~(3)の当社(JMDC)が実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
(4)薬剤DB(MDB)
当社の連結子会社であるMDBは、医薬品添付文書をはじめとした医薬品の情報をもとに、MDBの薬剤師の薬学的見解を加味したデータベースを開発し、医療系システム会社へのデータベースの提供を行うとともに、大規模病院向け部門システムの開発・販売・保守を行っております。自社開発システムを通じて病院内のDPCデータや電子カルテ(※13)データなどの病院由来のデータと連携をしており、適切な手続きを経た上で、これらのデータベース化にも取り組んでおります。
《用語説明》
※13 電子カルテ
医師により患者の病名・症状・検査値データ・処方内容等が記載されたものをカルテといい、これを電子化したものを電子カルテという。
MDBが実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
〈遠隔医療事業〉(株式会社ドクターネット(以下「DN」という。)・有限会社エムアイ・コミュニケーションズ(以下「MIC」という。)・医解网(上海)科技有限公司(以下「DNC」という。)
遠隔医療事業の売上収益の推移を、遠隔読影マッチングサービス、遠隔読影インフラ、その他(新規事業等)に分けると下記のとおりであります。
(遠隔医療事業の売上構成)
事業の概要 | 2015年 3月期 | 2016年 3月期 | 2017年 3月期 | 2018年 3月期 | 2019年 3月期 |
遠隔読影マッチングサービス(百万円) | 1,435 | 1,791 | 2,053 | 2,431 | 2,711 |
遠隔読影インフラ(百万円) | 205 | 234 | 276 | 320 | 353 |
その他(新規事業等)(百万円) | 457 | 495 | 308 | 398 | 418 |
(注)上記の売上は経営管理上のDN及びMICの単純合算数値であります。また、DNは2018年4月より連結財務諸表に取り込んでおりますが、上記はそれ以前からの数値も含めて記載しております。MICについては連結加入タイミングの2019年3月期より数値を取り込んでおります。なお、DNCは2019年4月に設立・連結子会社化したため、上記の売上には含まれておりません。
当社の連結子会社であるDN、MIC及びDNCは、「いつでもどこでも、高品質の画像診断を」をモットーに契約読影医群をデジタル環境でつなぎ、医療機関に対して遠隔画像診断サービスを提供しております。日本の医療施設は約11万施設(出所:厚生労働省「医療施設動態調査」平成30年10月末概数)存在するのに比して、放射線診断専門医は約5,500名(出所:公益社団法人日本医学放射線学会HPの専門医一覧、2017年11月時点)となっており、放射線診断専門医の過重労働や専門医の診断がつかず誤診につながる症例が問題となっております。そのような中で、当社グループの遠隔画像診断サービスの利用によりクライアントである医療機関は不足する放射線診断専門医の採用に苦慮することなく読影リソースとスキルを活用することができ、最適な医療判断を行うことができます。当社グループとして、2019年3月末時点で、契約読影医が650名、契約医療機関が700施設の規模にまで成長した中で、オペレーション改善によるコスト競争力強化、24時間365日対応、専門性の高い読影医のマッチング等のサービス品質向上といった規模を活かした差別化要因を構築しております。今後も、システム対応を含めたオペレーションを最適化し、契約読影医及び医療機関双方の満足度を向上していくことが責務だと考えております。
この遠隔読影マッチングサービスを通して、多くの画像診断データに日々アクセスしており、ディープラーニング(※14)を中心とするAIテクノロジー(※15)を用いた診断アシストエンジン(※16)を日々の読影の中で活用できるようにする診断アシストプラットフォーム「AI-RAD」の開発等にも取り組んでおります。さらには、読影ニーズが増加している中国・東南アジアにおける展開を推進しております。
《用語説明》
※14 ディープラーニング
コンピュータによる機械学習の手法であり、深層学習ともいわれる。
※15 AIテクノロジー
Artificial Intelligence(人工知能)を活用することで学習・推論・判断のはたらきを人工的に実現する技術をいう。
※16 診断アシストエンジン
コンピュータを使用した医療における診断支援を実行する機構をいう。
以下の表のとおり、遠隔読影サービス市場は拡大しております。その中で、当社グループが提供している遠隔読影マッチングサービスは、契約医療機関数と契約放射線診断専門医数が相乗的に増加する構造となっていることから同市場におけるシェアを上昇させております。また、過去の契約顧客からの売上が安定して推移していることが、当社グループの遠隔読影マッチングサービスに対する顧客の評価を示しているものと考えております。
(市場規模)
2015年 | 2016年 | 2017年 | ||
遠隔読影サービス | 販売金額(百万円) | 9,897 | 10,504 | 11,434 |
対前年比(%) | - | 106.1 | 108.9 |
出所:矢野経済研究所「2018年版 医用画像システム(PACS)・関連機器市場の展望と戦略」
(遠隔読影マッチングサービスの顧客契約年度別売上推移)
(注)上記の売上は経営管理上のDN及びMICの単純合算数値であります。また、DNは2018年4月より連結財務諸表に取り込んでおりますが、上記はそれ以前からの数値も含めて記載しております。MICについては連結加入タイミングの2019年3月期より数値を取り込んでおります。なお、DNCは2019年4月に設立・連結子会社化したため、上記の売上には含まれておりません。
DN、MIC及びDNCが実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
〈調剤薬局支援事業〉(株式会社ユニケソフトウェアリサーチ(以下「USR」という。)・株式会社日本メディケートプラン(以下「JMP」という。)・有限会社神田登栄薬局(以下「KND」という。)・他1社)
当社の連結子会社であるUSR、JMP及びKNDは、調剤薬局向けの業務システム(レセコン、電子薬歴など)を提供し、薬剤を処方する薬剤師が必要な情報を適切に患者に提供できる環境「スマートファーマシー」(※17)の構築を目指しております。一方で、保険薬局市場は既に成熟市場に至っており、保険薬局数の伸び率はこの数年1%程度(出所:厚生労働省「衛生行政報告例」、平成30年度末現在)に留まっております。このため、USRのシステム販売事業においては、全体の約8割が既存顧客の買換え(リプレース)、約1割が既存顧客の新店開局、残る約1割が他社メーカーからのリプレース及び既存顧客以外の新店開局という構成比となっており、以下の表のとおり、顧客数は安定して推移しております。
現在は、調剤薬局向けの業務システムをクラウド化した新商品の開発に取り組んでおります。加えて、USRが業務システムを提供している調剤薬局では、日々レセプトデータや薬歴データが蓄積されており、今後適切な手続きを経て、当社グループの他のデータベースと組み合わせることで、より付加価値の高いデータベースの構築と調剤薬局向けソリューションの開発に取り組んでまいります。
《用語説明》
※17 スマートファーマシー
保険薬局や薬剤師が、服薬情報の把握や在宅での対応等の薬学的管理・指導などの機能を果たしつつ、セルフメディケーション(自分で自身の健康を管理すること)の拠点としての役割も担う近未来の薬局像としてユニケグループが掲げるビジョンをいう。
(システム導入調剤薬局数の推移)
2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 | |
USRのシステム導入調剤薬局数 | 2,893 | 2,876 | 2,897 |
USR、JMP及びKNDが実施している事業を事業系統図によって示すと次のとおりであります。