有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/15 15:00
【資料】
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【項目】
80項目

対処すべき課題

下記の文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針
当社は、「チャレンジを生み出し、世の中を面白くする」をビジョンに掲げ、「世界中のあらゆるスペースをシェアできるプラットフォームを創る」をミッションとしております。
(2) 経営戦略等
今後の中長期的な方向性としては、以下のとおりです。その結果として、新たなスペース利用の可能性を創造し、スペースのシェアリングエコノミー(以下、「スペースシェアリング」とする)のモデルを確立・拡充していきます。
既存プラットフォームサービスの成長
当社は、スペースシェアリングの先行者の強みである、業界有数の掲載数と蓄積してきたノウハウの2つを最大限生かし、さらなるプラットフォームの成長を推進します。
特にホストに対してアプローチを強化し、「スペースマーケット」でなければならない付加価値を提供し、ファンになってもらうことで、競合が現れても使い続けてもらえるプラットフォームへと成長させていきます。
周辺ソリューションの提供を通じたスペースのバリュー拡充
当社は、プラットフォーム運営のほか、スペースのプロデュース、スペースの利用に紐づく付加サービスの提供、IoTの導入、内装工事サービスとの連携などといった付加価値を提供していきます。
また、今後は料飲・デリバリーをはじめとしたその他の付加サービスの提供も検討しております。
この付加価値の領域とスペースの利用用途を広げ、それぞれを有機的に組み合わせることによって新しい取り組みに挑戦し、さらなる価値を提供していきます。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
① 当社の収益構造
当社の売上高は、プラットフォームサービスに関する売上高と法人向けソリューションサービスに関する売上高により構成されております。プラットフォームサービスに関する売上高は、GMVの内ホスト手数料とゲスト手数料の合計であり、GMVは利用スペース数×利用スペースあたりのGMVにより算出されます。
GMV・・・・・Gross Merchandise Value(総流通額)を意味しております。
利用日を経過したゲストのご利用料金を集計したもの。
※スペース料金及びゲスト手数料の合計
※特に断りがない限り税抜
利用スペース数・・・・・ある月について予約が成立した状態で利用日を経過したスペース数
※通期及び四半期期間の数値は当該期間に係る月次の利用スペース数の合計(月間利用スペース数合計)
利用スペースあたりのGMV・・・・・ある期間の1利用スペースあたりの月間平均GMV
(GMV÷利用スペース数)

② 重要視する指標
当社は、プラットフォームとしての価値を計る指標としてGMVを重視した経営を行っております。また、GMVの構成要素である利用スペース数、利用スペースあたりのGMVのうち、利用スペース数の拡大に軸足を置いております。
③ 当社のプラットフォームの特徴
当社のプラットフォームの特徴として、ホストにより貸し出されるスペース数が蓄積する事により、ゲストの利用が増加し、ゲストの利用が増加する事で、集客力の高まったプラットフォームに更に新規のホストが登録し、貸し出されるスペース数が更に蓄積するというネットワーク外部性が働き、継続したスペースの利用が為される構造を有しております。当社は、今後も利用スペース数の継続的な拡大を目指したいと考えており、中期的に1年間で利用スペース数を約8万とする事を目指しております。
当社はネットワーク外部性を有するプラットフォームならではの事業成長サイクルを構築し、一定の開発・運営リソースでレバレッジの効いた収益獲得構造の構築を図る方針です。
当社は、ネットワーク外部性が働く事により利用スペース数が拡大し、GMVが拡大し、売上高が拡大する事業構造を有しております。また、売上高の拡大と共に広告効率・オペレーション効率が向上し、営業利益率が継続的に改善する収益構造を有しております。
上記における将来に関する事項は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載の要因及びその他の要因により大きく異なる可能性があります。
(4)経営環境
当社の事業に関連する国内シェアリングエコノミーサービス市場規模(資産・サービス提供者と利用者の間の取引金額ベース)は、2018年度は1兆8,874億円と推計されており、現状のペースで成長した場合は2030年度に5兆7,589億円に、成長に向けた課題が解決した場合には2030年度に2018年度の約6倍の11兆1,275億円に達すると予測されています。(注)
近年、これまでの過剰生産、過剰消費が見直され、人々の消費スタイルは所有から共有へと変わってきたと当社では考えております。また、テクノロジーの進歩によって、シェアリングの取引(例えば、物のシェアリングとしてフリマアプリ、労働力のシェアリングとしてクラウドソーシング、移動のシェアリングとしてカーシェア等)が手軽かつ安全に実現できるようになってきたと当社では考えております。これらを背景に、世の中はシェアリングエコノミーの時代へと突入したと当社では考えており、当社は「場所のシェアリング」の代表的な事業者となる事を目指して事業を展開して参りました。海外にも類似サービスが複数存在しており、グローバルで時間貸しスペースの需要が確認できます。当社は日本で事業モデルを確立した後、海外展開も視野に入れております。
また、世の中の変化(シェアリングエコノミーの概念、多様性が認められる社会への変化等)により、ある程度決められた形式の中から選ぶのが一般的であった住まい方、働き方、余暇の過ごし方等について、多様性への対応が求められる時代になったと当社では考えております。当社は時間単位でスペースの貸し借りを出来るようにする事で、世の中の多様性に対応可能な選択肢を提供して参ります。
(注)一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所による共同調査より
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000022734.html
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
① サービス認知度の向上、新規顧客の獲得
当社が今後も高い成長率を持続していくためには、当社サービスの認知度を向上させ、新規顧客を獲得することが必要不可欠であると考えております。SEOやSNS・リファラル施策を始めとしたマーケティング施策により継続してサイトの認知度向上に努めてまいります。加えて、今後もROI分析を行いながら、Paid・Non-Paidの施策を戦略的に行い、ユーザ基盤の確立に努めてまいります。
② 法人顧客獲得、アライアンスの拡充
2018年12月期は、地方自治体を始め、鉄道会社、各地域の有力企業との利用事例の創出を行いましたが、更なるユニークベニュー(注)を活用した利用事例を作るべく新たなビジネスパートナーとのビジネス推進により収益基盤を確立して参ります。
また、安定した顧客基盤の拡大のため、当事業年度から開始した法人アカウントを積極的に活用し、また法人利用拡大のための専任チームを設置して、当社サービスを「場所探し・会議室探し」の社内ツールとして利用を進めるために引き続き反復・継続利用への対応を進めて参ります。
(注)歴史的建造物、文化施設や公的空間等で会議・レセプション等を開催することで特別感や地域特性を演出できる会場のことを指します。
③ スペース開拓
競合他社の成長もみられることから、ゲスト及びホストにとって価値のあるサービスを提供すべく、引き続き多種多様なスペースを多数取り揃えるため、組織の業務効率を図りながら積極的なスペース獲得に努めてまいります。
具体的には、以下のうち、成約数が多く、ホストにとっても収益性の高い「小~中規模のパーティー可能スペース」を注力セグメントのスペースと位置付け、当該スペースの獲得を推進する方針です。
(a)営業用の大型イベントスペース(音響、スクリーン、受付、予約管理システム等を備えた営業用の施設)
(b)ミーティング用の低価格スペース(ホワイトボードやプロジェクターを設置したシンプルなスペース)
(c)小~中規模のパーティー可能スペース(内装や調理器具等の付加価値を加えた40~60㎡前後のスペース)
(d)遊休資産、特殊施設(古民家や廃校、お城等のユニークなスペース)
また、注力セグメントのスペースの獲得により、ホストおよびゲストにとって以下の便益があると考えております。
(a)ホストにとっての便益
「小~中規模のパーティー可能スペース」として利用される例において、賃料を上回る収益を生み出すスペースが出現している事を当社では確認しております。遊休不動産に対して内装、調理器具、会議設備等を備え付ける事で、多額の予算、工数を要せずに収益化する事が可能であると当社では考えております。
(b)ゲストにとっての便益
ゲストにとっては、飲食店を利用するよりも低コストで利用できるメリットがあり、削減されたコストを内装や料理等のこだわりのポイントに利用すれば、飲食店利用時と同水準のコストで、よりオリジナリティあふれるイベントにする事も可能であると当社では考えております。
④ システムの安定性・サービスの安全性・健全性強化
当社は、インターネットを介したサービスを展開していることから、サービス提供に係るシステム稼働の安定性を確保することが経営上重要な課題であると認識しております。
そのため、突発的なアクセス増加にも耐えられるようなサーバー設備の強化や、そのための人員確保、教育・研修などを継続的に行ってまいります。
また、Eコマースサービスやソーシャルメディア、シェアリングエコノミーに関連するプラットフォーム等の普及に伴い、インターネット上のサービスの安全性維持に対する社会的要請は一層高まっており、当社が展開する取引の場であるマーケットプレイスの提供に当たっては、プラットフォームの健全性確保が重要な課題であると認識しており、安全・安心な取引の場を提供するため、サービス内における禁止事項の明記だけでなく、監視・通報制度の整備等、サービスの安全性・健全性確保を最重要課題として取り組んでまいります。なお、その一環として、内閣官房IT総合戦略室が主宰したシェアリングエコノミー検討会議が策定した「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」に準拠した、一般社団法人シェアリングエコノミー協会による「シェアリングエコノミー認証制度」に賛同し、第1号認証を受けております。
⑤ テクノロジーを最大限に活用したサービスの成長
当社は、テクノロジーを最大限に活用し、サービスの成長に取り組んで参ります。
(a)サービス運営:IT技術力を活かしてより効率的に事業を成長
・プロダクトの継続的な改善
・オペレーションの効率化
(b)データの蓄積・分析:データの蓄積・分析によりサービスの付加価値を更に向上
・スペースに関するデータ
・利用に関するデータ
・その他のデータ
(c)AI・ディープラーニング等の活用で更なる成長へ
・マッチングの精度向上
・レコメンド機能の精度向上
・オペレーションの自動化
⑥ 情報管理体制の強化
当社は、ゲスト・ホストの個人情報を多く預かっており、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、個人情報保護方針及び社内規程に基づき管理を徹底しておりますが、2019年9月にはISMS認証を取得しておりますが、今後も、社内教育・研修の実施やシステムの整備等を継続して行ってまいります。
⑦ 組織体制の強化と内部統制及びコンプライアンス体制の強化
当社は、今後更なる事業拡大を推進するに当たって、従業員のモチベーションを引き出す目標管理制度や福利厚生等の人事制度構築に努めながら、業務遂行能力、人格、当社の企業文化及び経営方針への共感を兼ね備え、様々な分野で活躍出来る優秀な人材の採用に取り組んでまいります。組織設計においては少人数単位でのチーム制を採用すると同時に、チーム毎の自律性を促すよう権限の委譲を推し進めることで意思決定の質とスピードを維持するなど、従業員のパフォーマンスを最大化させる取り組みを引き続き継続していく方針であります。
当社は、持続的企業価値向上と透明性の高い健全な経営を実現することを経営の最重要課題の一つとして位置づけ、内部統制及びコンプライアンスの強化に取り組んでまいります。関係法令・規則の遵守、役職員一人ひとりの高い倫理観の醸成、社会的良識を持った責任ある行動を目指し、社内教育を行ってまいります。また、代表取締役を委員長とする「コンプライアンス委員会」を設置して、コンプライアンス上の重要な問題を審議し、対応策を検討する体制を採っており、これを適切に運用することによりコンプライアンスの徹底と社会的信用の向上を図っていく方針であります。
⑧ 利益及びキャッシュ・フローの定常的な創出
当社が運営する「スペースマーケット」は、利用スペース数等の継続的な増加によりGMV及び売上高が増加している一方で、事業拡大に伴い人件費等の経費も増加している事、認知度向上等を目指したマーケティング投資や新規顧客の開拓・深耕等を積極的に進めて来た事により、第5期事業年度までの各期の経営成績は営業損益以下の各段階損益において赤字となっており、また営業キャッシュ・フローもマイナスになっております。
第4期事業年度及び第5期事業年度における人件費、マーケティング費及び営業損益以下の各段階損益は、第4期事業年度の人件費が218,121千円(売上原価に含まれる人件費及び販売費及び一般管理費に含まれる人件費の合計)、広告宣伝費及び販売促進費の合計が54,937千円、営業損失が△147,645千円、経常損失が△148,188千円、純損失が△148,598千円、第5期事業年度の人件費が267,747千円(売上原価に含まれる人件費及び販売費及び一般管理費に含まれる人件費の合計)、広告宣伝費及び販売促進費の合計が275,672千円、営業損失が△268,659千円、経常損失が△271,923千円、純損失が△274,213千円であります。
なお、当社は第6期事業年度第3四半期累計期間において純利益3,485千円を計上し、各段階損益において黒字化を実現しており、利益及びキャッシュ・フローの定常的な創出能力について改善が進んでいるものと判断しております。
当社はプラットフォームとしての価値を計る指標としてGMVを重視した経営を行っておりますが、今後は各段階損益の黒字計上の継続を優先課題として、中期経営計画においてGMVの構成要素である利用スペース数等の継続的な増加を図る事により、利益及びキャッシュ・フローを定常的に創出できる体制の構築を目指す方針です。