有価証券届出書(新規公開時)
対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「信頼とともに」という経営理念の下、旧サイバートラスト㈱の認証技術と旧商号ミラクル・リナックス㈱のLinux/OSS技術を組み合わせ、ITインフラに関わる専門性・中立性の高い技術で、安心・安全な社会を実現します。
(2) 経営環境及び経営戦略
当社グループは、「ヒト」「モノ」「コト」の正しさを証明し、デジタル社会においてさまざまなサービスの安心・安全な利用を支援するトラストサービスプロバイダーとして、日本のみならずアジア・欧米に展開するグローバル企業を目指し、具体的には以下の施策を展開してまいります。
①SSL/TLS証明書:SureServer
当社グループは、国内のEV(Extended Validation)SSL/TLS証明書(以下、EV 証明書)市場において枚数シェアでNo.1(Netcraft Ltd.社の「SSL Survey」グローバルでの調査データをもとに算出)となっております。このSSL/TLS証明書市場規模については、株式会社富士キメラ総研「2018ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」では、堅調な拡大が見込まれる市場として位置付けられております。また当社グループでは、以下の要因により、今後は従来以上の成長が見込めると当社グループでは予測しております。
・Webサイト閲覧の安全性向上を目的に、Googleなどを中心に常時SSL化推進と警告表示強化
・通信プロトコルのバージョンアップ(HTTP/2)により、SSL化ページの表示速度高速化
・Webサイトの常時SSL化・HTTP/2の普及により、企業が導入するサーバー証明書数が増大
・証明書ライセンスと証明書管理のコストが上昇
このような中、当社グループはSureServerの基本戦略として、既存のDV(Domain Validation:ドメイン認証)/OV(Organization Validation:企業認証)が占めている市場に、SureServerを中心として最も信頼性の高いEV証明書を浸透させる施策を講じてまいります。
②デバイス証明書管理サービス:サイバートラスト デバイスID
デバイス認証市場で、当社グループは、競合先であった相手先のサービス縮小などにより、現在市場シェアをほぼ独占しているポジションを確立しています。またデバイス認証市場規模については、以下の要因により、今後は従来以上の成長が見込めると当社グループでは予測しております。
・企業でのクラウド型サービスの利用増加に伴い、クラウドアクセス時の認証ニーズ増加
・セキュリティ強化を目的に、パスワードなどの“知識情報”と物理トークンなどの“所持情報”、指紋などの“生体情報”から二つ以上の要素を必要とする多要素認証の導入増加
さらに電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2019年9月の国内パソコン出荷台数は、前年同月比71.8%増の115万3000台、出荷金額は72.4%増の1,024億円であり、台数・金額ともに12カ月連続で前年実績を上回りました。オフィスの外で働く「テレワーク」が普及していることなどを背景に、内訳ではノート型が61.0%増の82万8000台、うち薄型軽量で持ち運びのしやすいモバイルノートは39.4%増の18万2000台と大きく伸長しています。
当社グループは、このテレワークの普及などによるパソコン出荷台数が今後も引き続き増加していくと予想しており、これがデバイス認証市場の大幅な成長につながっていくと考えております。このような中、当社グループはデバイス証明書管理サービス「サイバートラスト デバイスID」の基本戦略として、ネットワーク機器ベンダーやセキュリティツールベンダーと技術協業し、主要市場の再販販売業者に対してさらなる優位性強化を図ります。
③本人確認・電子署名サービス:iTrust
「iTrust」は、当社グループが提供する本人確認・電子署名サービスのための認証基盤です。本人確認・電子署名サービスとは電子取引の信頼性を高めるための電子署名、eシール、タイムスタンプなどを含む包括的な電子認証サービスのことを指します。
当社グループは、世の中の大きな流れであるデジタルトランスフォーメーションの中でもビジネスプロセスのデジタル化において特に重要となる本人確認のデジタル完結、契約の電子化を含む電子文書の真正性確保を実現するためのトラストサービスを提供します。ターゲット市場として以下の3つのセクターを設定し、各々のセクターに強みを持つパートナー企業と提携して、サービスを提供します。
④組込みシステム向けソリューション:EM+PLS
日本国内の組込みソリューション市場は、ボードコンピューターや、それらを組み込んだコンポーネントを中心とするハードウェア関連市場と、ミドルウェアや開発ツールなどのソフトウエア関連市場及びアプリケーションや保守、コンサルティングなどのサービス関連市場で構成されていますが、当社グループは、どの市場も堅調に推移していると考えております。このような中、当社グループは、長期間使用できるIoT・組込み機器専用のLinuxと、ライフサイクルを通してIoT機器の真正性を担保するプラットフォーム、IoT機器の脆弱性を検査するツールをメニュー化し、IoT製品の継続的な開発と長期利用を支援するサービス「EM+PLS(イーエムプラス)」を提供しています。今後市場ではLinux採用がデファクトとなり、RTOSから移行する組込み機器の脆弱性対策の機運が高まるものと予測しており、フォーカスセグメントとして日本に競争力があり、出荷台数が多い車載/FA/MFP/デジタルカメラをターゲットに、EM+PLSを中心に組込み機器のセキュアなIoT化及び高機能化を支援してまいります。
⑤IoT機器のライフサイクル管理:セキュア IoT プラットフォーム
IoT機器を製造・販売するにあたって、以下のような法規制の動きに注意し対応する必要があります。
・ハードウェア(IoT機器)のチップに鍵を入れる指針(総務省、アメリカ国土安全保障省)
IoT機器、デバイスの保護と完全性を強化するためにハードウェアの設計段階でチップに鍵を埋め込みセキュリティ実装することを米国国土安全保障省(DHS)が「Strategic Principles for Securing the Internet of Things」で提唱しています。日本政府についても総務省が「IoTセキュリティ総合対策プログレスレポート 2018」で、IC チップ内に電子証明書を格納することに言及しています。
・契約不適合責任(瑕疵担保責任)の時効を5年に変更
民法改正により瑕疵担保、契約不適合責任の消滅時効期間が最長で引き渡しから5年に変更されました。これにより機器、デバイスのソフトウエアについても、引き渡しから5年間は適切なアップデートによって品質を担保する必要があります。
・法定リコール(道路運送車両法、消費生活用製品安全法など)
機器、デバイスの種類によっては法律によりリコールの義務を負います。
スマートホームやコネクテッドカーにスマート家電、そしてスマート工場、スマートインフラなど、IoT化は、わたしたちの暮らしや仕事に、新しい価値や豊かさをもたらします。その一方で、あらゆるモノがインターネットにつながる社会は、悪意のあるハッカーや犯罪組織などから、国境を越えて狙われる危険性もはらんでいます。こうした脅威を防ぎ、安全で信頼できるIoT機器やスマートデバイスを開発し、廃棄まで管理していくために、当社グループは高信頼の公開鍵基盤(PKI)技術を用いたセキュアIoTプラットフォーム(Secure IoT Platform)を提唱しています。
このセキュアIoTプラットフォームのターゲット市場については、当社グループは以下のとおり考えており、これらの市場に向けた施策を展開してまいります。
・1stターゲット:産業用途・コンシューマー
・2ndターゲット:自動車・医療・軍事/航空/宇宙
・3rdターゲット:通信・コンピューター
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、デジタル社会においてさまざまなサービスの安心・安全な利用を支援するトラストサービスプロバイダーを目指しています。認証・セキュリティサービス、OSSサービス、IoTサービスの3つの領域に注力し、トラストサービス事業の拡大を推進してまいります。
現時点におきましては、これら戦略の進捗として「3つの注力サービスの合計売上高」及び事業のサービス化の進捗として本業の収益性を図る「営業利益及び営業利益率」を経営の最重要指標と考えております。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは主に以下の3つを対処すべき課題と考えております。
・当社グループ事業を支える人材の獲得と育成
・合併会社と被合併会社の経営資源統合を通じたシナジー発揮
・事業機会をとらえた新規事業の立ち上げと育成
①当社グループ事業を支える人材の獲得と育成
わが国の経済は緩やかな景気回復が持続し、雇用や所得の改善が続いております。景気回復は当面持続するものとみておりますが、すでに当社グループの求める水準を満たす人材の確保が難しくなってきており、今後もこの傾向は続くものと考えています。
当社は、合併前より当社グループに多数在籍している独自性かつ高い技術力を有する技術者に加えて、合併により、新たな技術者も加わり、さまざまな分野で高い専門性を有する技術者を多数擁することとなりました。今後、それぞれの専門性を発揮しつつ相互に刺激を与えあう環境をさらに整えていくことで、技術者の成長を促し、必要な人材の確保に当たってまいります。一方で、当社グループが属する情報サービス業界は、常に革新的な技術・サービスが求められ、既存製品の機能向上はもとより、市場の技術革新に速やかに対応しながら、より先進的な技術を創出する必要があります。そのためには、高度かつ専門的な知識・技術を有した人材の育成及び定着を図ることが重要と認識しております。
今後も、新規事業領域への展開を含めて当該領域技術・業界動向に精通した専門知識及びスキルを有した優秀な人材の育成を進めてまいります。
②合併会社と被合併会社の経営資源統合を通じたシナジー発揮
合併により、組織文化・風土、経営資源、意思決定方式が異なる企業が統合されることになり、またその統合対象は、当社及び当社グループを構成するすべての要素になることから、内部統制システムの再構築が必要であると認識しています。再構築に当たって、合併初年度より、経営戦略、人事・評価制度、会計制度、予算・経営管理、意思決定及び決裁権限などの経営統合(マネジメントフレーム)に関する各種社内規程などの整備をするとともに、社内管理体制を強化してまいりました。合併初年度は物理的にオフィスが離れておりましたが、オフィス機能の集約などを目的として、本社移転し、オフィスを統合いたしました。このオフィス統合を契機に、今後は、経営資源(人材、技術、情報、業務インフラ、設備等)の有効活用、組織的一体感による組織基盤のさらなる強化等により、経営効率化及び財務体質の強化を目指すとともに、社内管理体制については、四半期決算を中心とする会計制度や体制の充実、内部監査体制の整備などにより、引き続き強化を図ってまいります。
③事業機会をとらえた新規事業の立ち上げと育成
IoT化は、わたしたちの暮らしや仕事に、新しい価値や豊かさをもたらします。センサーの小型軽量化、低廉化が進み、全てのモノがネットワークにつながるIoTの爆発的な普及が進んでおり、冷蔵庫やテレビといった家電、自動車、ロボット、スマートメーター等のモノの活用だけでなく、IoT機器で得られるデータを利活用した新たなビジネスやサービスが創出されつつあります。
2019年2月にIDC Japanは自社サイト内の公開記事で、2019年のIoTに対する世界の総支出額は7,450億ドルに達し、18年の支出額6,460億ドルを15.4%上回る見通しと発表しており、今後もIoT市場の成長が予測されています。他方、IoT機器が普及する一方で、IoT機器を狙ったサイバー攻撃は近年増加傾向にあります。センサーやウェブカメラなどのIoT機器は、機器の性能が限定されている、管理が行き届きにくい、ライフサイクルが長いなど、サイバー攻撃に狙われやすい特徴を持っています。こうした脅威を防ぎ、安全で信頼できる高品質のセキュリティソリューションの提供、組込みIoT機器の真正性を担保しセキュリティ脅威から守る共通プラットフォームの提供など、事業機会をとらえて当社の独自能力を発揮し、独自の価値を提供することで事業規模の拡大を図ってまいります。
(1) 経営方針
当社グループは、「信頼とともに」という経営理念の下、旧サイバートラスト㈱の認証技術と旧商号ミラクル・リナックス㈱のLinux/OSS技術を組み合わせ、ITインフラに関わる専門性・中立性の高い技術で、安心・安全な社会を実現します。
(2) 経営環境及び経営戦略
当社グループは、「ヒト」「モノ」「コト」の正しさを証明し、デジタル社会においてさまざまなサービスの安心・安全な利用を支援するトラストサービスプロバイダーとして、日本のみならずアジア・欧米に展開するグローバル企業を目指し、具体的には以下の施策を展開してまいります。
①SSL/TLS証明書:SureServer
当社グループは、国内のEV(Extended Validation)SSL/TLS証明書(以下、EV 証明書)市場において枚数シェアでNo.1(Netcraft Ltd.社の「SSL Survey」グローバルでの調査データをもとに算出)となっております。このSSL/TLS証明書市場規模については、株式会社富士キメラ総研「2018ネットワークセキュリティビジネス調査総覧」では、堅調な拡大が見込まれる市場として位置付けられております。また当社グループでは、以下の要因により、今後は従来以上の成長が見込めると当社グループでは予測しております。
・Webサイト閲覧の安全性向上を目的に、Googleなどを中心に常時SSL化推進と警告表示強化
・通信プロトコルのバージョンアップ(HTTP/2)により、SSL化ページの表示速度高速化
・Webサイトの常時SSL化・HTTP/2の普及により、企業が導入するサーバー証明書数が増大
・証明書ライセンスと証明書管理のコストが上昇
このような中、当社グループはSureServerの基本戦略として、既存のDV(Domain Validation:ドメイン認証)/OV(Organization Validation:企業認証)が占めている市場に、SureServerを中心として最も信頼性の高いEV証明書を浸透させる施策を講じてまいります。
②デバイス証明書管理サービス:サイバートラスト デバイスID
デバイス認証市場で、当社グループは、競合先であった相手先のサービス縮小などにより、現在市場シェアをほぼ独占しているポジションを確立しています。またデバイス認証市場規模については、以下の要因により、今後は従来以上の成長が見込めると当社グループでは予測しております。
・企業でのクラウド型サービスの利用増加に伴い、クラウドアクセス時の認証ニーズ増加
・セキュリティ強化を目的に、パスワードなどの“知識情報”と物理トークンなどの“所持情報”、指紋などの“生体情報”から二つ以上の要素を必要とする多要素認証の導入増加
さらに電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した2019年9月の国内パソコン出荷台数は、前年同月比71.8%増の115万3000台、出荷金額は72.4%増の1,024億円であり、台数・金額ともに12カ月連続で前年実績を上回りました。オフィスの外で働く「テレワーク」が普及していることなどを背景に、内訳ではノート型が61.0%増の82万8000台、うち薄型軽量で持ち運びのしやすいモバイルノートは39.4%増の18万2000台と大きく伸長しています。
当社グループは、このテレワークの普及などによるパソコン出荷台数が今後も引き続き増加していくと予想しており、これがデバイス認証市場の大幅な成長につながっていくと考えております。このような中、当社グループはデバイス証明書管理サービス「サイバートラスト デバイスID」の基本戦略として、ネットワーク機器ベンダーやセキュリティツールベンダーと技術協業し、主要市場の再販販売業者に対してさらなる優位性強化を図ります。
③本人確認・電子署名サービス:iTrust
「iTrust」は、当社グループが提供する本人確認・電子署名サービスのための認証基盤です。本人確認・電子署名サービスとは電子取引の信頼性を高めるための電子署名、eシール、タイムスタンプなどを含む包括的な電子認証サービスのことを指します。
当社グループは、世の中の大きな流れであるデジタルトランスフォーメーションの中でもビジネスプロセスのデジタル化において特に重要となる本人確認のデジタル完結、契約の電子化を含む電子文書の真正性確保を実現するためのトラストサービスを提供します。ターゲット市場として以下の3つのセクターを設定し、各々のセクターに強みを持つパートナー企業と提携して、サービスを提供します。
セクター | サービス対象業務 |
ファイナンシャルセクター | 銀行 口座開設・法人融資契約 保険 保険契約・控除証明書 証券 口座開設 クレジットカード申込み 銀行 住宅ローン契約 金融 金銭消費貸借契約 不動産 売買契約・賃貸契約 その他 民間企業間契約など |
パブリックセクター | 自治体 ワンストップサービス 自治体 行政サービス 自治体 情報連携サービス その他 本人確認 |
ニュービジネスセクター | シェアサービス 新規登録 フィンテック 新規登録 仮想通貨取引所 口座開設 その他 本人確認 |
④組込みシステム向けソリューション:EM+PLS
日本国内の組込みソリューション市場は、ボードコンピューターや、それらを組み込んだコンポーネントを中心とするハードウェア関連市場と、ミドルウェアや開発ツールなどのソフトウエア関連市場及びアプリケーションや保守、コンサルティングなどのサービス関連市場で構成されていますが、当社グループは、どの市場も堅調に推移していると考えております。このような中、当社グループは、長期間使用できるIoT・組込み機器専用のLinuxと、ライフサイクルを通してIoT機器の真正性を担保するプラットフォーム、IoT機器の脆弱性を検査するツールをメニュー化し、IoT製品の継続的な開発と長期利用を支援するサービス「EM+PLS(イーエムプラス)」を提供しています。今後市場ではLinux採用がデファクトとなり、RTOSから移行する組込み機器の脆弱性対策の機運が高まるものと予測しており、フォーカスセグメントとして日本に競争力があり、出荷台数が多い車載/FA/MFP/デジタルカメラをターゲットに、EM+PLSを中心に組込み機器のセキュアなIoT化及び高機能化を支援してまいります。
⑤IoT機器のライフサイクル管理:セキュア IoT プラットフォーム
IoT機器を製造・販売するにあたって、以下のような法規制の動きに注意し対応する必要があります。
・ハードウェア(IoT機器)のチップに鍵を入れる指針(総務省、アメリカ国土安全保障省)
IoT機器、デバイスの保護と完全性を強化するためにハードウェアの設計段階でチップに鍵を埋め込みセキュリティ実装することを米国国土安全保障省(DHS)が「Strategic Principles for Securing the Internet of Things」で提唱しています。日本政府についても総務省が「IoTセキュリティ総合対策プログレスレポート 2018」で、IC チップ内に電子証明書を格納することに言及しています。
・契約不適合責任(瑕疵担保責任)の時効を5年に変更
民法改正により瑕疵担保、契約不適合責任の消滅時効期間が最長で引き渡しから5年に変更されました。これにより機器、デバイスのソフトウエアについても、引き渡しから5年間は適切なアップデートによって品質を担保する必要があります。
・法定リコール(道路運送車両法、消費生活用製品安全法など)
機器、デバイスの種類によっては法律によりリコールの義務を負います。
スマートホームやコネクテッドカーにスマート家電、そしてスマート工場、スマートインフラなど、IoT化は、わたしたちの暮らしや仕事に、新しい価値や豊かさをもたらします。その一方で、あらゆるモノがインターネットにつながる社会は、悪意のあるハッカーや犯罪組織などから、国境を越えて狙われる危険性もはらんでいます。こうした脅威を防ぎ、安全で信頼できるIoT機器やスマートデバイスを開発し、廃棄まで管理していくために、当社グループは高信頼の公開鍵基盤(PKI)技術を用いたセキュアIoTプラットフォーム(Secure IoT Platform)を提唱しています。
このセキュアIoTプラットフォームのターゲット市場については、当社グループは以下のとおり考えており、これらの市場に向けた施策を展開してまいります。
・1stターゲット:産業用途・コンシューマー
・2ndターゲット:自動車・医療・軍事/航空/宇宙
・3rdターゲット:通信・コンピューター
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、デジタル社会においてさまざまなサービスの安心・安全な利用を支援するトラストサービスプロバイダーを目指しています。認証・セキュリティサービス、OSSサービス、IoTサービスの3つの領域に注力し、トラストサービス事業の拡大を推進してまいります。
現時点におきましては、これら戦略の進捗として「3つの注力サービスの合計売上高」及び事業のサービス化の進捗として本業の収益性を図る「営業利益及び営業利益率」を経営の最重要指標と考えております。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは主に以下の3つを対処すべき課題と考えております。
・当社グループ事業を支える人材の獲得と育成
・合併会社と被合併会社の経営資源統合を通じたシナジー発揮
・事業機会をとらえた新規事業の立ち上げと育成
①当社グループ事業を支える人材の獲得と育成
わが国の経済は緩やかな景気回復が持続し、雇用や所得の改善が続いております。景気回復は当面持続するものとみておりますが、すでに当社グループの求める水準を満たす人材の確保が難しくなってきており、今後もこの傾向は続くものと考えています。
当社は、合併前より当社グループに多数在籍している独自性かつ高い技術力を有する技術者に加えて、合併により、新たな技術者も加わり、さまざまな分野で高い専門性を有する技術者を多数擁することとなりました。今後、それぞれの専門性を発揮しつつ相互に刺激を与えあう環境をさらに整えていくことで、技術者の成長を促し、必要な人材の確保に当たってまいります。一方で、当社グループが属する情報サービス業界は、常に革新的な技術・サービスが求められ、既存製品の機能向上はもとより、市場の技術革新に速やかに対応しながら、より先進的な技術を創出する必要があります。そのためには、高度かつ専門的な知識・技術を有した人材の育成及び定着を図ることが重要と認識しております。
今後も、新規事業領域への展開を含めて当該領域技術・業界動向に精通した専門知識及びスキルを有した優秀な人材の育成を進めてまいります。
②合併会社と被合併会社の経営資源統合を通じたシナジー発揮
合併により、組織文化・風土、経営資源、意思決定方式が異なる企業が統合されることになり、またその統合対象は、当社及び当社グループを構成するすべての要素になることから、内部統制システムの再構築が必要であると認識しています。再構築に当たって、合併初年度より、経営戦略、人事・評価制度、会計制度、予算・経営管理、意思決定及び決裁権限などの経営統合(マネジメントフレーム)に関する各種社内規程などの整備をするとともに、社内管理体制を強化してまいりました。合併初年度は物理的にオフィスが離れておりましたが、オフィス機能の集約などを目的として、本社移転し、オフィスを統合いたしました。このオフィス統合を契機に、今後は、経営資源(人材、技術、情報、業務インフラ、設備等)の有効活用、組織的一体感による組織基盤のさらなる強化等により、経営効率化及び財務体質の強化を目指すとともに、社内管理体制については、四半期決算を中心とする会計制度や体制の充実、内部監査体制の整備などにより、引き続き強化を図ってまいります。
③事業機会をとらえた新規事業の立ち上げと育成
IoT化は、わたしたちの暮らしや仕事に、新しい価値や豊かさをもたらします。センサーの小型軽量化、低廉化が進み、全てのモノがネットワークにつながるIoTの爆発的な普及が進んでおり、冷蔵庫やテレビといった家電、自動車、ロボット、スマートメーター等のモノの活用だけでなく、IoT機器で得られるデータを利活用した新たなビジネスやサービスが創出されつつあります。
2019年2月にIDC Japanは自社サイト内の公開記事で、2019年のIoTに対する世界の総支出額は7,450億ドルに達し、18年の支出額6,460億ドルを15.4%上回る見通しと発表しており、今後もIoT市場の成長が予測されています。他方、IoT機器が普及する一方で、IoT機器を狙ったサイバー攻撃は近年増加傾向にあります。センサーやウェブカメラなどのIoT機器は、機器の性能が限定されている、管理が行き届きにくい、ライフサイクルが長いなど、サイバー攻撃に狙われやすい特徴を持っています。こうした脅威を防ぎ、安全で信頼できる高品質のセキュリティソリューションの提供、組込みIoT機器の真正性を担保しセキュリティ脅威から守る共通プラットフォームの提供など、事業機会をとらえて当社の独自能力を発揮し、独自の価値を提供することで事業規模の拡大を図ってまいります。