有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/05/25 15:02
【資料】
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【項目】
138項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社経営の基本方針
当社グループは、エレクトロニクス分野における頭脳、知力の集団となることを目標とし、最高のソリューションを提供することのできるブレインでありたいとの社名に込めた想いで、事業の拡大に取り組んでまいりました。
日本を代表する大手電子機器メーカー、機械メーカー等との取引を継続することができたのは、この経営目標を着実に実行してきた結果として当社グループの技術力が認められ、顧客の信頼を勝ち得てきたことによるものと認識しております。特にバックプレーンに関する新規格の発表を注視し、新規格に準拠したバックプレーンの商品化を早期に推進するとともに、自社製プレスフィットマシンを用いて高品質なバックプレーンを短納期で顧客に提供することにより評価を得ていると判断しております。
当社グループは、設立以来バックプレーンをベースにおいたビジネス展開を行ってまいりましたが、ボードコンピュータの開発設計を行うシステムソリューション事業部の機能や、中国蘇州市にある子会社の製造・販売及び部材調達拠点としての機能を最大限に活用し、従来以上に顧客の幅広いニーズにお応えしていく所存であります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、売上高及び経常利益を重視する経営指標としております。これらを実現するために、営業体制の強化に加え、技術的研究開発、生産体制再整備等への投資を行うとともに、目標を有効・効率的かつ適正に達成するための内部統制の強化を図り、業務に励んでまいります。
(3) 経営環境
当社グループが設計・製造する製品は、通信・医療・交通・半導体製造装置・FA機器・計測装置・セキュリティー等のシステムに組み込まれるコンピュータのほか、IoTやAI及びHPC分野の開発案件も増加してきております。
半導体関連について、一般社団法人日本半導体製造装置協会(SEAJ)「2020年1月発表 半導体・FPD製造装置 需要予測 (2019年度~2021年度)」によると、2019年度の日本製半導体製造装置販売高は前年度比-8.1%のマイナス成長、2020年度は8.0%のプラス成長、2021年度は12.0%増と予測しています。さらに、世界半導体市場統計(WSTS)「2019年秋季半導体市場予測について」(2019年12月3日発表)によると、世界の半導体市場動向は、2018年後半から米中貿易摩擦等の世界経済の先行き不透明感から市場は急激に悪化しており、2019年においても通年で前年比-12.8%のマイナス成長を予測しています。2020年は5Gやデータセンタ関連投資の回復等により前年比+5.9%のプラス成長に回帰すると予測しています。また、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)「通信機器中期需要予測[2019年度~2024年度]」(2019年12月11日発表)によると、通信機器市場における2019年度の需要総額は前年度比1.9%減になると予測していますが、2020年度以降は緩やかに拡大すると見込んでいます。
なお、当社グループの主な販売先や仕入先、外注先などは、比較的人との接触が少ない業種の為、現在発生している新型コロナウイルス(COVID-19)による当社グループ業績への影響は、軽微であると考えております。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
(a) ユニット供給の拡大
バックプレーンの開発、製造をコアとして事業を展開し、拡大していくという基本方針は今後とも不変でありますが、より一段の飛躍のためにはバックプレーンをコアにして、事業ドメインを拡大していくことが不可欠であると考えております。この観点から中期的な戦略目標として、「ユニット供給を中心に受託範囲を拡げることにより事業ドメインの拡大を目指す」ことを掲げております。
バックプレーンは産業用コンピュータを構成する基幹部品の一つでありますが、前述のとおりその全てではありません。産業用コンピュータはバックプレーンに電源やファン等の周辺デバイス、ボードコンピュータ等を接続し、シャーシに納めて初めて作動可能な状態となります。当社グループのユーザーである電子機器メーカーは、従来は設計・購買・生産・検査・出荷等の全てのプロセスを自社で完結していましたが、最近では人材など限られた経営資源の有効活用と製品開発期間の短縮及びコスト低減を目指し、ユーザー側で必要とされる構成レベルの部材を、ユニット製品として調達することが一般的となってきました。
当社グループが事業対象としている産業用コンピュータを構成レベル順に分類すると以下の通りです。
① バックプレーン(回路基板を相互接続して電子回路全体を統合するユニット)
② サブラック又はシャーシ(コンピュータの構成部品を収納するためのユニット。使用される環境によって、ラック型のものと箱型のものがある)
③ バスラック(バックプレーンが組み込まれたラック・ユニット)
④ システムラック(バスラックに電源やファン等を組込んで結線されたユニット)
⑤ コンピュータ・プラットフォーム(コンピュータ本体内部にCPU回路を備え、ユーザー側の目的に応じて
I/Oボードやメモリーボード(注1)を実装して使用できるハードウェア・プラットフォーム。バックプ
レーンに代えてCPUを搭載したマザーボード(注2)又はキャリア・ボード(注3)を採用する製品もある)
当社グループではお客様のニーズに合わせて、バックプレーン単体を販売する場合もあれば、システムラック又はコンピュータ・プラットフォーム全体をご提供する場合もあります。当社グループはどのレベルであっても受託設計・受託生産が可能ですが、年々構成レベルの高い(完成品に近い)製品に対する需要が増加する傾向にあります。
この背景としては、ユーザー側の製品開発期間短縮ニーズや技術者不足によるものと考えられますが、当社グループではお客様が本来の研究開発活動にリソースを集中していただけるよう、受託設計・製造能力の向上に努め、お客様の多様なニーズに応えられる体制を拡充してまいります。
(注1) メモリ(記憶媒体)を増やすための基板
(注2) コンピュータの主機能を担う部品が装着された基板
(注3) CPU(中央演算処理装置)以外のコンピュータの主機能を担う部品が装着された基板
(b) コア事業の強化
当社グループは産業用コンピュータに使用されるバックプレーンの開発・製造をコアとして事業を拡大してきました。近年では事業拡大の一つとしてCPUの周辺回路設計を中心としたボードコンピュータの開発・製造も行っております。このコア事業に関しては以下のような施策をもってより一層の強化を図り、他社との差別化を進め、専業メーカーとしての当社グループの優位性を確固たるものにしていく計画であります。また、施策を実現していくために中期的な視野に立った人材補強と設備投資を積極的に実施します。
①新製品の開発とバリエーションの拡充
各種バックプレーン、ブリッジボード(ボードコンピュータを挿入する数を増やすためのボード)、標準シャーシ、FANアラームボード(ファンの停止を検知してアラーム信号を出すボード)等、新製品の開発とバリエーションの拡充を引き続き実施してまいります。また、IoTでの利用に適した組込み向けCPUを使用したボードコンピュータの開発等、ボードコンピュータのバリエーション拡充にも努めてまいります。
②コストダウン
ユーザーのコスト低減要求に応え、コストダウンを図っていくことはメーカーに共通する課題であります。
当社におきましても購買、生産管理、設計、製造、検査等の各プロセスにおいて効率向上、能力アップを図り、コスト削減に向けた努力を続けてまいります。また、中国子会社・蘇州惠普聯電子有限公司の活用もコスト削減に向けた方策の一つと位置付けております。
さらに、品質の向上、納期の厳守・短縮化にも努め、クオリティ、コスト、デリバリー全ての面での顧客満足度の向上に努めてまいります。
(c) デジタル化、5G、IoT等への対応
各種機器がインターネットを介して通信を行うIoTが急速に拡大しつつあります。ビッグデータとAIの活用に伴う膨大なデータを収容するクラウドサーバーの負荷を軽減するために、データの発生源に近いところで情報を収集し、クラウドへ送る前に情報処理を実行する考え方(エッジコンピューティング)も注目されています。モバイル通信は第5世代移動通信システム(5G)への移行が始まり、自動車等の自動運転や医療分野への応用が期待されています。さらに、5Gの通信技術を特定の対象やエリアに応用するローカル5Gが我々の生活に新たなソリューションを提供します。コンピュータと通信の技術の融合によって実現される新たな社会に向けたこの趨勢は、当社グループにとって絶好のチャンスであり、今後とも積極的に対応していく方針です。
(d) 放熱技術
コンピュータの高速化に伴い、CPUやメモリ等の半導体集積回路部品の発熱をどのように食い止めるかが重要な技術的課題となっています。当社グループはこれまでの産業用コンピュータやHPCの熱制御技術、冷却構造の設計経験を踏まえ、今後電子回路の放熱技術が重要な課題になると判断し、放熱技術をテーマとして研究に取り組んでおります。
(e) コストダウンと中国子会社の活用
2002年に設立した中国子会社・蘇州惠普聯電子有限公司は、発展する中国市場や中国進出した日系電気・電子機器メーカーの製品需要を取り込むための拠点であり、現地生産によってコスト競争力のある製品供給を実現するための戦略的な位置付けにあります。また、技術力と価格競争力のある優良な現地部品メーカーを積極的に開拓して活用し、グループ全体としての価格競争力を高め、企業価値の最大化に向け注力していくことは重要な戦略の一つと考えております。そのため、同社との連携を強化しながら、積極的な活用を図っていく計画であります。また、同社においては、生産量の増加に合わせ現地での人員採用による生産体制の強化を図り、生産コストの低減を進めるとともに、中国及びアジア地域におけるビジネスを拡大したいと考えております。
(f) 既存販売先との関係強化と新規顧客の積極的開拓
当社グループは、大手電子機器メーカーを中心とする取引先との間で、安定的な取引関係を継続、拡大しております。これらの顧客と、引き続き良好な関係を維持、強化していくことが重要な戦略であると認識しております。そのためには「エブレンに任せた方が良い」、「エブレンを利用しなければ損である」という評価を定着させると共に、良好な信頼関係を実現していくことが必要であります。上述の「(a)ユニット供給の拡大」で多様化する得意先のニーズを捉え、「(b)コア事業の強化」はこの評価定着を実現し、応えていくための戦略でもあります。
一方で当社グループ製品は、電子機器全般にわたる産業用コンピュータに使用されているためターゲットとなる顧客は多岐にわたっておりますが、数多くの潜在顧客が存在すると認識しております。新規顧客の開拓に関しては、展示会への出展や各種専門誌を通じた広告宣伝活動を積極的に展開し、上場企業としてのIR活動なども認知度アップの好機と位置付けております。
(5) 会社の対処すべき課題
(a) 事業ドメインの拡大
前項で述べたとおり、当社グループの更なる発展のために事業ドメインの拡大を図ってまいります。そのためには、バックプレーンをコアに、ボードコンピュータや周辺デバイスを含めたシステム提案や組立・配線・システム調整等を含めた受託範囲の拡大、高付加価値化が不可欠と考えております。また、ボード開発・製造のノウハウ等を活用しつつ、従来以上に幅広いユーザーやメーカーとのパートナーシップを強化し、受注領域の拡大を進めてまいります。さらに、当社グループの中国子会社・蘇州惠普聯電子有限公司の強みを活かし、中国からの高品質・低価格な部材や製品の仕入、及び中国での製品販売を強化し、中国ビジネスの一層の拡大を推進してまいります。
(b) 罹災時の事業継続への取り組み推進
当社は自然災害等で罹災した際に早期に業務を復旧させるためのマニュアルとして、事業継続計画(BCP:Business Continuity Planning)を制定して運用を開始しております。この取り組みを更に強固なものにするため、当社の重要設備であるプレスフィットマシンを早期復旧させるための備えを充実させるとともに、サプライチェーンマネジメントの観点から仕入先や外注先への指導及び多角化を意識し、罹災時の対応方法の選択肢を増やす取り組みを推進してまいります。また、従来から当社グループでは八王子地区と大阪事業所、中国・蘇州と工場を分散化させる事により、災害等に対するリスク分散を行って来ました。当社グループが取り扱う製品群の重要性に鑑みて、今後の受注・生産・販売の状況次第では、更に生産地域の分散も検討いたします。
(c) 企業の社会的責任(CSR)の推進
当社グループは会社法等が求める内部統制体制の整備について、業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性及び関連法令の準拠性の確保のために積極的な取り組みを行い、今後とも業務の適正性の確保に注力いたします。ステークホルダーに対しては、迅速で公正・公平な情報公開やIR活動の一層の充実により経営の透明性を高めてまいります。
また、環境問題に対する対応も重要な課題と認識しております。当社グループにおいてもこの対応の一環として環境マネジメントプログラムISO14001の認証を取得し、このプログラムの維持を通して環境問題への取り組みを継続、強化し、環境保全に対応した製品づくりを推進してまいります。