有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/03/05 15:00
【資料】
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【項目】
123項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 治療効果が確認されないリスクや他に有効な治療法が出現するリスクについて
当社の顧客は、臨床研究が進められている「さい帯血」を用いた再生医療(例えば、低酸素性虚血性脳症、脳性麻痺などへの再生医療)において、将来「さい帯血」が治療に使用できることを想定して、「さい帯血」を保管しております。一方、「さい帯血」の再生医療分野での臨床研究は開始されたばかりであり、有効性や治療効果が十分に検証されておりません。臨床研究の過程では、臨床研究が長期化する等、想定通り進捗しない可能性、そして、その有効性が明確に確認されない可能性があります。臨床研究が想定通り進捗しない場合や臨床研究において有効性が検証されない場合の他、その他の新たな治療法が出現した場合には、当社にさい帯血を保管する保管者が減少するリスクがあり、当該リスクが顕在化した場合には当社の経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼし、事業継続が困難になる可能性があります。
(2) 法的規制等に関して
当社の主事業「細胞バンク事業(さい帯血保管)」は、厚生労働省への「臍帯血取扱事業の届出」を求められており、また、「再生医療等安全性確保法」、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」、「再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律」、「国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律」、「個人情報の保護に関する法律」の法規制を受けております。
当社は、これらの法的規制に対応した社内体制を構築しておりますが、これらの法規制の改正・強化、新たな法規制が制定された場合、あるいは、これらの法規制を遵守できない場合、追加的な対応や事業への何らかの制約が生じることにより、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 再生医療等安全性確保法について
当社の取り扱う「さい帯血」は、再生医療等安全性確保法において、第二種再生医療等に区分されており、その処理を行うにあたり、細胞培養加工施設における「特定細胞加工物製造許可」の取得が義務づけられ、当社はその許可を取得しております。当該許可は当社の主要な事業活動を継続する上で不可欠な許可であり、本書提出日までの間において、取消事由は発生しておりません。しかしながら、将来において、当該許可の取消等があった場合には、主要な事業活動に支障をきたすとともに業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主な許認可の状況)
許認可の名称有効期間規制法令主な許認可取消事由
特定細胞加工物製造許可
(施設番号:FA3150022)
2016年2月5日

2021年2月4日
再生医療等の安全性の確保等に関する法律・不正の手段により認定、変更の認定、有効期限の
更新をした場合
・細胞培養加工施設の構造設備が、厚生労働省で定
める基準に適合しなくなった場合
・移植に用いる造血肝細胞の適切な提供の推進に関
する法律若しくは医薬品医療機器等法その他薬事
に関する法令で定めるものまたはこれらに基づく
処分に違反した場合

(4) 風評被害に関して
近年、当社の事業分野である「さい帯血保管」及び「再生医療」に関する世の中の関心が高まって来ておりますが、さい帯血は、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」及び「再生医療等安全性確保法」の規制を受けております。当社以外の事業者がこれらの関連する法令に違反し、当該違反の事実がマスメディア等に取り上げられた場合、当社も風評被害を受ける可能性があります。また、SNS等でネガティブな情報が掲載された場合、当社も風評被害を受け、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 少子化に関して
当社の主事業である「細胞バンク事業」においては、現在、出産時に採取できる「さい帯血保管」を行っておりますが、厚生労働省の「人口動態統計」によると、2018年に生まれた子どもの数(出生数)は91万8,397人と3年連続で100万人を下回っております。また、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(平成29年推計)によると、我が国の出生数は今後も減少を続け、2030年には81万人まで減少すると推計されています。我が国の出生数と当社のさい帯血の保管数は必ずしも比例しませんが、出生数の想定を上回る減少が将来の当社の事業や業績に影響を与える可能性があります。
(6) 品質管理に関して
当社は、グローバル品質規格であるAABBやISO9001といった第三者の認証機関より査察を受け、品質や設備運用の維持向上に努めております。
しかしながら、細胞の分離・処理作業に必要な試薬や当社の心臓部分ともいえる長期保管用タンクの冷却用液体窒素の供給が滞ったり、必要な設備が正常に稼動しないなど細胞の輸送、分離、保管の品質維持に支障を来した場合には、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 個人情報の漏洩に関して
当社は、さい帯血の保管に際して秘匿性の高い個人情報を取得しているため、日本産業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」の中でもより厳格な、保健医療福祉分野のプライバシーマーク(MEDIS)制度に基づき、入手した個人情報の管理に努めておりますが、何らかの理由で個人情報の漏洩や不正使用等が発生した場合、社会的信頼の低下や賠償金の支払い等により、当社の事業や業績に影響を及ぼし、事業の継続が困難となる可能性があります。
(8) 自然災害等、不測の事態等に関するリスクについて
当社は顧客より受託を受け、分離した幹細胞を細胞保管センターで保管しております。同センターは、新耐震基準に基づいた設計で耐震性を有しており、先の東日本大震災においても保管設備の被害はありませんでしたが、想定を超える大規模な自然災害や事故が発生し、当社の保管業務・細胞処理業務に支障が生じた場合、その他不測の事態が発生した場合には、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 人為的なミスによるリスクについて
当社の主事業である細胞バンク事業は、細胞の輸送、分離、保管作業等において手作業によるものが多く、人為的なミスを防ぐ為、ISOやAABB、Pマーク等の外部認証制度を積極的に取り入れ、チェック体制の整備に取り組んでおりますが、何らかの人為的なミスにより、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 特定人物への依存
当社の代表取締役である清水崇文は、医療関連事業全般に関する豊富な知識と経験、ネットワークを有しており、経営方針や事業戦略の決定等、事業継続の上で重要な役割を果たしております。当社では、人材の確保・育成をすすめ、同氏に過度に依存しない経営体制の整備をすすめております。しかしながら、何らかの事情により、同氏が当社から離職した場合、または十分な業務執行が困難となった場合には、当社の事業や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(11) 親会社との関係について
① 資本的関係について
当社は、㈱日本トリム(東証一部上場)の企業グループに属しており、同社の100%子会社である㈱トリムメ
ディカルホールディングスが、当社の議決権の89.5%を保有する親会社であります。当社は親会社への事前承認
事項はなく、独自に経営方針・政策決定及び事業展開についての意思決定を行っております。しかしながら、上
場後も同社の株式保有比率は過半数を超える見込みであり、同社は、当社の筆頭株主として基本事項に関する決
定権又は拒否権を保有しているため、当社の意思決定に対して同社が影響を与える可能性があります。
② 競合について
㈱日本トリムを中心とする企業グループは、当社を含め国内子会社7社、海外子会社2社(2019年3月末現在)
により構成されており、当社を除く他のグループ企業は、家庭用電解水素水整水器の製造販売を主な事業領域と
しております。また、直接の親会社である㈱トリムメディカルホールディングスは、㈱日本トリム傘下の事業投
資会社であります。一方、当社は再生医療安全性等確保法に基づく、細胞バンク事業を主な事業領域としてお
り、㈱日本トリムとは異業種であり、㈱日本トリム及びそのグループ企業との競合関係はありません。
当社は、上場により独自の資金調達手段を確保し、事業拡大を加速させる予定であります。しかし、今後当社
の経営方針及び事業展開を変更した場合、又は、㈱日本トリム及びそのグループ企業が、経営方針及び事業展開
を変更した場合には、将来的に競合する可能性があり、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ ㈱日本トリム及びそのグループ会社との取引関係について
当社は、㈱日本トリム及びそのグループ会社と取引を行っており、最近事業年度における取引は、次のとおり
となっております。
(単位:千円)
会社等の名称取引の内容取引の金額取引条件の決定方法
㈱日本トリム出向者の受入6,657出向元の給与を基準に双方協議の上、決定しております。
事務所の賃貸契約300近隣オフィス賃貸価格を勘案の上、 決定しております。
㈱トリムメディカル
ホールディングス
親会社銀行取引に対する
担保の提供
-左記親会社における事業資金のための資金借入に対するものであります。
業務委託契約30,000当該委託業務にかかる役務提供の状況を勘案の上、決定しております。
事務所の賃貸契約768近隣オフィス賃貸価格を勘案の上、 決定しております。
㈱トリムライフサポート顧客紹介料125他の一般取引条件を基に決定しております。

・ 人的関係について
2019年10月迄、㈱日本トリムより2名、㈱トリムメディカルホールディングスより1名の従業員の出向を受け
入れておりましたが、出向者は当社の重要な意思決定に影響を与える職位ではなく、また、本書提出日現在に
おいては全ての出向契約を解消しており、当社と㈱日本トリム及びそのグループ会社との間で、役員の兼務、従業員の出向など人的な関係はありません。今後も親会社グループからの独立性を確保していくために、親会社グループとの間で役員の兼務、従業員の出向等は行わない方針であります。
なお、第21期第3四半期累計期間における㈱日本トリムより及び㈱トリムメディカルホールディングスからの
出向者受入れに関する取引合計金額は、6,392 千円となっております。
・ 事務所賃貸取引について
当社の地方事務所は、㈱日本トリムが入居する事務所の一部を使用しておりました。また、そのうち一部は、㈱トリムメディカルホールディングスを経由する形で貸室賃貸借契約書を締結しておりましたが、本書提出日
現在において、両社との全ての事務所賃貸契約を解消しております。
なお、第21期第3四半期累計期間における取引金額は、676千円となっております。
・ 親会社の銀行取引に対する担保提供について
当社は、親会社である㈱トリムメディカルホールディングスの事業資金として、銀行へ当社預金を担保提供し
ておりましたが、最近事業年度末時点において全ての担保契約を解消しており、第21期第3四半期累計期間に
おいても取引はありません。
・ 業務委託契約について
当社は、㈱トリムメディカルホールディングスと業務委託契約(役員の派遣等)を締結しておりましたが、
2019年3月に解消しており、第21期第3四半期累計期間においては取引はありません。
・ 販売協力契約について
当社は、㈱日本トリムの子会社であり、㈱日本トリムの顧客に対して製品の取付及びアフターサービスを行う
㈱トリムライフサポートとの間で販売協力契約を締結し、㈱日本トリムの顧客に対しさい帯血保管を案内し、契約となった場合、同社へ、他の一般条件と照らして妥当な金額を紹介料として支払っておりましたが、2019
年12月をもって、販売協力契約を解消しております。
なお、第21期第3四半期累計期間における取引金額は、199千円となっております。
・ 機器購入について
当社は、㈱トリムメディカルホールディングスの子会社であり研究用機器の製造販売を主な事業内容とする、ストレックス㈱より検体を緩慢凍結する機器を購入しておりますが、取引に当たっては他のメーカーと性能、価格優位性を慎重に考慮し取引を行っております。
なお、第21期第3四半期累計期間における取引金額は、1,500千円となっております。
(12) 配当政策について
当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としておりますが、最近事業年度まで事業規模の拡大及び経営基盤の強化を図る目的で、内部留保の充実を優先し配当を行っておりません。しかしながら、当社は株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つと位置付けており、配当の実施もその一つの手段として検討して参ります。配当の決定機関は、株主総会であります。なお、当社は「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる」旨を定款に定めております。