有価証券報告書-第5期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/29 13:31
【資料】
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【項目】
133項目
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりです。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により世界規模で経済活動の大幅な制限を強いられるなど、極めて厳しい状況にありました。日本国内でも数度にわたる緊急事態宣言の発令がなされ、継続的な感染対策が採られているものの、変異ウイルスの拡大懸念もあり、事態の収束時期は未だ予測できず、先行きの不透明な状況が続いております。
このような環境の中、当社グループでは、従来の主要サービスの提供形態であった集合型研修を大幅に改め、オンラインによる研修の実施へとサービス提供形態の変更を急速に進めました。これにより感染リスクへの懸念は大幅に低減し、2021年1月に発令された緊急事態宣言下であっても案件のキャンセルや延期の発生は軽微な状態で、業績は堅調に推移しました。withコロナ時代においても、当社グループが確立したオンライン実施のスタイルは、顧客ニーズにも合致し、今後も継続・拡大していくものと想定されます。
また、当社グループはこれまで、経営開発、人材開発、組織開発領域において満たされないニーズを持つ顧客企業に向けて、外部の著名なプロフェッショナルタレントをはじめ、新しいテクノロジーを有する企業・法人等、最適なリソースとの協業によって、顧客企業ごとにカスタマイズした独自の価値を提供し続けてまいりました。その結果、大企業や業界の最大手がメインとなる確固な顧客基盤を築いております。長年培ってきた顧客基盤に加えて、オンライン実施という環境に合わせたサービス提供形態との相乗効果により、当社グループの成長可能性は高まっていると認識しております。
なお、販売費及び一般管理費については、人材派遣費の減少や採用活動関係の費用が減少したこと、ワークスタイルの変化に合わせ、営業活動に伴う旅費交通費や会議費の発生が著しく減ったこと等により、経費が抑制される結果となりました。
当連結会計年度における、セグメント別の概要は以下のとおりです。
[人材開発・組織開発事業]
ⅰ ㈱セルム、升励銘企業管理諮詢(上海)有限公司、CELM ASIA Pte. Ltd
当社を中心とした人材開発・組織開発事業においては、①顧客基盤の拡充、②ソーシャルイシューR&D、③新市場の創造を成長のサイクルとして定め、更なる成長を図ってまいりました。重要な顧客企業を中心に既存顧客の深耕を進めるとともに、セミナーやチャネル開発・連携から新規顧客の開拓も進めております。また、アセスメント・サーベイ、組織・人材開発コンサルティング、リテーナーモデル、障がい者向け雇用支援等の新たな収益モデルを開発し「顧客基盤」を軸とした持続的な成長を実現してまいりました。
当連結会計年度における上半期は、新型コロナウイルス感染症による案件のキャンセルや延期が発生し、前連結会計年度を下回る業績が続きました。しかしながら、集合型の案件の延期・キャンセルリスクを回避するための対策として、案件のオンライン化を急速に進め、下半期には全案件数の80%以上の案件がオンライン実施となりました。結果として、2020年11月以降の月次売上高は前連結会計年度を上回る実績で推移することとなりました。
中でもコアサービスである経営塾(経営トップがオーナーとなって経営リーダー育成をテーマに実施されるビジネススクール)においては、これまで受講生が教室に集まって実施される集合型研修が主な形態でしたが、他案件と同様に、殆どがオンライン実施になっております。新型コロナウイルス感染症が、案件実施に大きな影響を与えない状況になっていると言えます。
加えて、案件のオンライン化により新たな成長機会が生まれております。オンライン化の進展は移動の時間やコスト削減につながり、施策設計の自由度を高め、研修の活用領域を広げています。かつ、個別メンタリングなど、オンライン環境を活用した新たな領域案件が拡大しつつあります。個別メンタリングは、研修サービスから独立した形で実施されることが多く、受講者の対象層の拡大を後押しするものとなっています。
この結果、売上高は3,783,255千円(前連結会計年度比12.1%減)となりました。
ⅱ ㈱ファーストキャリア(一般社員層、大学生向け)
㈱ファーストキャリアは、これまで顧客企業における若手人材育成のあり方や変化のニーズを捉え、営業ターゲットの再定義、営業プロセスの可視化やサービスラインナップの充実に取り組んでまいりました。また、持続的成長に向けた当社の組織体制づくりと社員育成を行い、生産性の向上を図ってまいりました。
メインサービスである新卒採用向け教育研修は、2020年4月に発令された緊急事態宣言下においては案件の延期・キャンセルが相次ぎ発生しました。しかしながら、当社同様に案件のオンライン化をおこなったことで、下半期は前期と同水準の業績で推移しております。
この結果、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)は754,465千円(前連結会計年度比13.8%減)となりました。
[その他事業]
幼児向け英語教育事業であるRISE Japan㈱は、新型コロナウイルス感染症に左右される事業運営環境下にて、大きな制限を受けながらスクールの運営をしてまいりました。代官山校では感染防止対策を大前提としたクラス作りはもちろん、スクールのマネジメントの体制刷新や、RISEオリジナルカリキュラムの構築を行うだけでなく、保護者向けセミナー、Summer School、イベントの多様化など、他スクールとの差別化に努めてまいりました。一方、「人が集まる事業」への風向きが厳しい状況は年間を通して継続しました。また予定していた世田谷校のオープンは、延期せざるを得ない状況となりました。
この結果、売上高は47,943千円(前連結会計年度比45.7%減)となりました。なお、新型コロナウイルス感染症に対する政府、自治体からの各種要請等を踏まえ、緊急事態宣言期間であった2020年4月8日~5月31日には、代官山校で臨時休業を行っております。店舗の臨時休業期間中に発生した固定費(人件費・賃借料・減価償却費等)11,515千円を店舗臨時休業による損失として、営業外費用に計上しております。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は4,603,441千円(前連結会計年度比13.1%減)となりました。
売上総利益は2,424,391千円(前連結会計年度比13.9%減)となりました。売上原価の大部分は外部のプロフェッショナルタレントへの支払金額となっており、また、案件のオンライン化による売上総利益率への影響は軽微なものとなっています。
販売費及び一般管理費は2,095,108千円(前連結会計年度比5.3%減)となりました。主な内訳は、給料手当、のれん及び固定資産の償却による減価償却費です。この結果、営業利益は329,283千円(前連結会計年度比45.4%減)となりました。
営業外収益は、54,530千円(前連結会計年度比450.5%増)となりました。主な内訳は、補助金収入と顧客都合により案件がキャンセルとなった場合等に発生する受取補償金です。営業外費用は、39,432千円(前連結会計年度比62.0%増)となりました。主な内訳は、金融機関への支払利息と、顧客都合により案件がキャンセルとなった場合等にプロフェッショナルタレントへ支払う支払補償費です。この結果、経常利益は344,380千円(前連結会計年度比41.4%減)となりました。
特別損失は、当社連結子会社が運営するHRテック投資事業有限責任組合において、保有する投資有価証券の減損を実施し、投資有価証券評価損20,000千円を計上しております。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は148,241千円(前連結会計年度比55.9%減)となりました。
②財政状態の状況
(ⅰ)資産の部
当連結会計年度末の総資産は3,944,494千円(前連結会計年度末比198,699千円増)となりました。
(流動資産)
流動資産は1,470,982千円(同407,479千円増)となりました。これは、主に現金及び預金が252,585千円、売掛金が170,458千円増加したためです。
(固定資産)
固定資産は2,473,512千円(同208,780千円減)となりました。これは、主に無形固定資産ののれんを188,227千円償却し減少したためです。
(ⅱ)負債の部
当連結会計年度末の負債合計は2,160,445千円(同54,416千円増)となりました。
(流動負債)
流動負債は1,563,919千円(同403,669千円増)となりました。これは、主に短期借入金が390,000千円増加したためです。
(固定負債)
固定負債は596,526千円(同349,252千円減)となりました。これは、主に長期借入金の流動負債への振替により348,861千円減少したためです。
(ⅲ)純資産の部
当連結会計年度末の純資産は1,784,049千円(同144,282千円増)となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益148,241千円により利益剰余金が増加したためです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ252,585千円増加し、927,618千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動により獲得した資金は360,339千円(前連結会計年度は381,920千円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が324,380千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動により使用した資金は30,395千円(前連結会計年度は201,685千円の使用)となりました。これは主に投資有価証券の取得による支出20,088千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動により使用した資金は75,332千円(前連結会計年度は374,005千円の使用)となりました。これは主に、短期借入による収入が2,030,000千円あったのに対して、短期借入金及び長期借入金の返済による支出が2,094,740千円あったことによるものです。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
②受注実績
当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。
③販売実績
第5期連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前年同期比
(%)
人材開発・組織開発事業4,555,49887.4
㈱セルム、升励銘企業管理諮詢(上海)有限公司、CELM ASIA Pte. Ltd.3,783,25587.9
㈱ファーストキャリア754,46586.2
その他(㈱NANAIRO)17,77761.7
その他事業47,94354.3
合計4,603,44186.9

(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため、記載を省略しております。
3.㈱NANAIROは2020年9月30日付で㈱セルムに吸収合併されております。そのため、㈱NANAIROの実績は2020年4月1日から2020年9月30日までの実績となっております。
4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績の分析は、次のとおりであります。
(売上高)
売上高は、4,603,441千円と前年同期に比べて695,265千円の減少となりました。これは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、主に上半期において集合型研修に対してキャンセル・延期が多く発生したことによるものです。一方で下半期は、オンラインでの案件実施が拡大し、前連結会計年度の下半期を上回る売上高となり、急速な業績回復を果たしております。
(売上原価及び売上総利益)
売上原価は、2,179,050千円と前年同期に比べて304,922千円の減少となりました。売上原価の大部分は外部のプロフェッショナルタレントへの支払金額となっており、売上高の減少に伴い売上原価も減少しました。この結果、売上総利益は2,424,391千円となり、前年同期に比べて390,343千円減少しました。
(販売費及び一般管理費並びに営業利益)
販売費及び一般管理費は、2,095,108千円と前年同期に比べて117,052千円の減少となりました。人材派遣費の減少や採用活動関係の費用が減少したこと、ワークスタイルの変化に合わせ、営業活動に伴う旅費交通費や会議費の発生が著しく減ったこと等により、経費が抑制される結果となりました。この結果、営業利益は329,283千円となり、前年同期と比べて273,290千円の減少となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
営業外収益は、54,530千円と前年同期に比べて44,625千円増加となりました。主な内訳は、新型コロナウイルス感染症にかかわる補助金収入と、顧客都合により案件がキャンセルとなった場合等に発生する受取補償金です。営業外費用は、39,432千円と前年同期に比べて15,097千円増加となりました。主な内訳は、金融機関への支払利息と、顧客都合により案件がキャンセルとなった場合等にプロフェッショナルタレントへ支払う支払補償費です。また、新型コロナウイルス感染症に対する政府、自治体からの各種要請等を踏まえ、緊急事態宣言期間であった2020年4月8日~5月31日には、当社連結子会社であるRISE Japan㈱が運営する代官山校で臨時休業を行っております。店舗の臨時休業期間中に発生した固定費(人件費・賃借料・減価償却費等)11,515千円を店舗臨時休業による損失として、営業外費用に計上しております。この結果、経常利益は344,380千円となり、前年同期と比べて243,761千円の減少となりました。
(特別利益、特別損失及び親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損失は、当社連結子会社が運営するHRテック投資事業有限責任組合において、保有する投資有価証券の減損を実施し、投資有価証券評価損20,000千円を計上しております。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は148,241千円となり、前年同期と比べて188,286千円の減少となりました。
なお、当社グループは持続的な成長を図るためには、健全な収益水準を意識すべきと考えております。当該指標としているのれん償却前営業利益は517,511千円(前連結会計年度比34.6%減)となりました。適切な収益性を投資家と共有することで、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、借入金の返済、法人税の支払等であります。その資金の源泉といたしましては、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入等であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関しては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
④ 経営成績等に重要な影響を与える要因
経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご覧ください。
⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。