有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/06/17 15:00
【資料】
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【項目】
152項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「最新のテクノロジーを活用して不動産流通業を革新する世界No.1企業」という企業目標のもと、不動産の資産運用コンサルティングを行う総合不動産商社であります。不動産の売買・賃貸・リフォームに関し、「購入と売却」「再生と運用」という視点から様々なアイデアをご提案し、お客様のライフプランを豊かに実現することを企業理念として企業活動を行っております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、現時点では経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標及びその数値目標を定めておりませんが、企業価値を図る指標として、売上総利益及び経常利益の前年比較による成長性を重視しております。今後、業界動向及び当社グループにおける業績の推移等を勘案し、早期に経営指標及び数値目標を決定する予定であります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、「お客様のライフプランを実現する不動産運用顧問を目指す」を企業理念とした令和3年7月期を初年度とする3カ年の「中期経営計画」を策定し、これを実現するために、特に以下を重要事項として考え、経営を推進して行く予定であります。経営の基本方針、中期経営計画の達成のため当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。
(特に優先度の高い対処すべき事業上及び財務上の課題)
①社内システムの整備・再構築
当社グループでは、創業当初から蓄積された約752万件の不動産データ(令和3年4月末現在)を保有しておりますが、そのデータは各事業部が管理するサーバに保管されている状態にあります。今後の当社グループを飛躍的に成長させるためには、当社グループが保管している情報資産を最大限活用することが不可欠であると考えております。そのための施策として、各事業部のシステム統合及びデータ連携を行うための新システムをRCP(Real estate Cloud Platform:リアルエステート・クラウド・プラットフォーム)という名称に定め、現在構築に取り組んでおります。
RCPの第1次開発では、情報資産の有効活用による経営戦略及びマーケティング戦略策定を迅速に行う事ができると同時に、情報資産をクラウド上で複数所有することにより、事業継続計画(BCP)の強化が可能になります。さらに第2次開発では、AI(人工知能)導入、ビッグデータ利用を計画しており、当社グループが保有する膨大な情報資産を融合させ活用することで、一層の収益力の向上を目指してまいります。
RCP開発を進めていくことは、競争優位性の確保に大いに資するものと考えております。
②優秀な人材の確保
当社グループでは、企業理念である「お客様のライフプランを実現する不動産運用顧問」となる人材の獲得及び育成のため、並びに様々な経営課題を克服し事業を拡大していくために、優秀な人材を確保し育成していくことが重要な課題であると認識しております。そのために、当社グループでは新卒の定期的な採用や経験者の中途採用を積極的に実施しております。また従業員に対しては継続的に営業スキルの向上やコンプライアンス、情報セキュリティ対策等の研修を実施し、人材の育成と強化に取り組んでおります。社員一人一人の資質向上を図るとともに、今後も採用を継続し、優秀な人材の確保と育成に取り組んでいく方針であります。
③実需層、一般投資家への販売
現在は、不動産業者への販売が中心になっており、実需層や一般投資家への販売は十分とは言えません。当社グループでは多様な販売先を開拓することを対処すべき課題と捉えており、平成29年12月には、主に実需層や一般投資家向けに販売を行う組織として販売部を新たに発足致しました。販売部では定期的に不動産投資セミナーを開催しております。また、不動産特定共同事業(注)への参画や、各種ソーシャルメディア、雑誌等を通じて、実需層、一般投資家への販売活動や不動産投資の魅力を伝える活動を積極的に行っており、今後も一層強化してまいります。
(注)平成29年12月に施行された不動産特定共同事業法(平成29年改正不特法)に基づくエクイティ型のクラウドファンディング事業。中古区分マンションを小口化し、共有持分として複数の会員から出資を募り、その賃貸運用収益及び売却益を配当として会員に分配することを想定しております。
④仕入強化について
当社グループの主力事業である不動産売買事業は、首都圏1都3県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)及び関西圏2府1県(大阪府、京都府、兵庫県)を中心に展開しておりますが、買取販売については、一般的には競合が多く優良な不動産の仕入競争は熾烈な状況にあると言えます。
しかし、当社グループでは約752万件の不動産データ(令和3年4月末現在)を有しており、当該データベースに登録された不動産所有者に直接働きかけることで当該不動産所有者との直接取引が実現しており、競合他社との優位性を獲得しております。その強化のために「不動産登記情報」「不動産情報」「取引情報」「顧客ニーズ情報」といった情報を絶えず収集していくと共に、既存の情報は定期的に更新し、量・質の両面でデータベースをより強化してまいります。
(その他優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
⑤3大都市圏中心の支店展開
人口の減少と少子高齢化が進行する中、今後3大都市圏や地方中核都市を中心とした生活圏や経済圏が一層構築されていることが予想されております。当社グループでは、池袋本社を軸に東京都全域、埼玉、千葉方面への営業活動を行っております。また、平成28年2月に横浜支店を開設し神奈川方面での営業展開が可能になりました。さらに平成30年2月には大阪支店を開設し、関西圏でも積極的に営業活動に取り組んでおります。
当社グループでは売買と建築と賃貸の三位一体での拠点展開を考えており、多店舗展開(小規模多数の拠点による展開)ではなく支店展開(大規模の限定された拠点による展開)を考えております。経済動向や人口動態を注視しながら将来的には、他の地方中核都市(名古屋市、福岡市、札幌市、仙台市)への支店展開も検討してまいります。また、首都圏での営業活動のより一層の強化のために、城東地区(注)での支店展開を検討してまいります。
(注)「城東地区」は東京都の台東区、江戸川区、葛飾区、江東区及び墨田区を指しております。
⑥幅広い商品の取り扱い
現在、当社グループではワンルームタイプ(当社グループでは登記簿面積30㎡未満のマンションをワンルームタイプと定義しております)の区分所有マンションを中心に事業を展開しておりますが、さらなる収益拡大のため、ファミリータイプ(当社グループでは登記簿面積30㎡以上のマンションをファミリータイプと定義しております)の区分所有マンションや1棟アパート、1棟賃貸マンション、戸建て、駐車場等、幅広い不動産を積極的に取り扱ってまいります。
⑦投資回収期間の短縮
仕入決済(売主から買主である当社への所有権移転)から売上決済(売主である当社から買主への所有権移転)までの投資回収期間の短縮を図るため、たな卸資産回転率の向上に努めております。また、同時に在庫滞留期間の長期化による商品評価損の計上等の在庫リスクの低減を図ってまいります。
⑧台湾・香港市場及び海外市場での営業活動
当社グループは、平成25年7月に台湾及び香港市場へ進出致しましたが、現在においては、台湾及び香港市場への他社参入が相次ぎ、競争が激化しております。また、香港の政治情勢により、投資家心理の冷え込みも懸念されます。しかしながら、中国本土の投資家の資金が新しい投資先を求め、日本の不動産へ向けられている現状もあります。
当社グループは、引き続き、台湾及び香港をアジアの重要拠点と位置付け、日本の不動産の営業活動を行ってまいります。また、経済成長著しいアジア圏の投資意欲に応えるべく、シンガポールなどのアジア主要都市での不動産投資セミナーの開催も検討してまいります。
⑨コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループの継続的な事業の発展及び信頼性の向上のためには、コーポレート・ガバナンスの充実に取り組むことが重要であると認識しております。
当社グループでは、監査役と内部監査室及び会計監査人との連携の強化、定期的な内部監査の実施、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針であります。
⑩リスク管理体制の強化
当社グループでは、主要なリスクとして、戦略リスク、災害リスク、オペレーショナルリスク、財務リスク、情報リスクの5つを認識し、これらのリスクを事前に回避すること及び万一リスクが顕在化した場合に被害の最小化を図ることが必要であると考えております。そのため、リスクマネジメント活動を推進するとともに、リスク管理体制を強化するために、リスクごとに想定される動機、原因及び背景を踏まえて、具体的なリスクの洗い出しを実施してまいります。近年対応が急務となっている情報リスクへの対応としては、体系的な情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)導入を目的としたISO/IEC27001を平成30年5月に認証取得しており、情報リスクの低減に全社一丸となって取り組んでおります。
また、必要に応じた社内教育を継続して実施するとともに、内部監査計画に基づく定期監査を実施し、リスク管理体制の継続的な強化を進めております。
⑪資金調達力の強化
借入金により不動産の買取資金を調達している当社グループは、市況の変化に左右されず、安定的な資金調達を行うために、経営基盤の充実と適切な情報発信を行う必要があります。そのために、常に様々な角度から当社グループの置かれている状況を分析した上で、適切な経営基盤の醸成を図り、その上で定期的に金融機関への業況説明を行い、金融機関との相互理解を深めて取引形態の強化を図っております。その結果として、大手3行(株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行)を含む各金融機関から当座貸越約定に基づき総額32億円の資金調達枠の確保をしております。今後につきましても、さらなる業務拡大のため、資金調達力強化を進めてまいります。