有価証券報告書-第10期(令和1年10月1日-令和2年9月30日)

【提出】
2020/12/24 15:26
【資料】
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【項目】
102項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「食を通じて世界中の人々をHappyに。」をビジョンに掲げております。世界に誇る食文化を有する日本から生まれた実名型グルメプラットフォーム「Retty」を通じて、世界中の人々が最適な「食」と巡り合える機会を創出することで、日常の中にある「食」をより楽しめるものに、より豊かなものにしていきたいと考えております。
(2)経営環境と中長期的な経営戦略
国内における飲食店市場は、一般社団法人 日本フードサービス協会「平成30年外食産業市場規模推計について」によると19兆6,699億円(飲食店、宿泊施設、喫茶・居酒屋等、料亭の合計)の市場規模と推計されております。飲食店における販促費市場は、飲食市場全体の3%程度と言われており、6,000億円程度がFRMの市場規模と当社は見込んでおります。
一方、株式会社電通「2019年 日本の広告費(2020年3月11日)」において日本の総広告費は6兆9,381億円(前年比106.2%)に対して、インターネット広告費は2兆1,048億円(前年比119.7%)となっております。このうち、当社の対象となる業種に絞り込むと、7,500億円程度(インターネット広告市場 × 業種別構成比にて市場規模を試算(4マス媒体の業種別広告費率を引用))が広告コンテンツにおける市場規模と当社は見込んでおります。
今後、当社は、FRMを中核にしつつ、食データを活用したコンテンツソリューションの成長、飲食店との良好な関係を元に飲食店の課題を解決していく新たな事業領域の展開、更には海外展開についても加速していきたいと考えております。
もっともCOVID-19の拡大により、当社が属する外食産業は未曽有の事態に遭遇しております。飲食店では自粛要請による短縮営業を余儀なくされており、客足の鈍化から事業の継続が困難となる飲食店が増えております。このような環境下において、飲食店では常連客・固定客を拡大する仕組みや新たな事業領域の展開が急務となっており、当社が提供するソリューションの価値が高まっております。当社では、外食産業における特にオンラインを中心とした販促市場や新たな事業領域の拡大に向けたデジタルトランスフォーメーションに関連するニーズは今後も増大していくものと見込んでおり、外食産業における新常態を確立するため、具体的に以下の経営戦略に構築しております。
① 実名型グルメプラットフォーム「Retty」の更なる成長
各サービスの付加価値を生み出す基盤となっている当社の実名型グルメプラットフォーム「Retty」のサービス利用者数は、実名型による情報の信頼性の高さと信頼できる「ヒト」から個別最適化されたお店探しという特徴を活かして2019年5月に4,800万人を突破し、自粛要請後においても2020年8月末時点で4,393万人を維持するなど、順調に拡大しております。しかしながら、既存のグルメサービスと比較すると、まだまだ当社の利用者数は少なく、今後の成長余地は大きいと考えております。
今後は、当社が保有する「Retty」ユーザーの行動データを活用したレコメンド機能をアップデートするなど、テクノロジーを駆使してよりユーザーにとって利便性が高められるようユーザー体験の更なる向上を図ると同時に、戦略パートナーシップを構築しているヤフー株式会社及びそのグループ会社とのメディア連携などによって、より一層、利用者数を増やしていきたいと考えております。
② FRMにおける有料店舗数の増加とARPUの向上
現在、日本国内において飲食店は約70万店(経済産業省:飲食関連産業の動向(2016)における「飲食サービス業事業所(2014年時点)」)あり、その内、当社がターゲットとしている飲食店は少なくとも約6万店(飲食店向けオンライン集客を実施している各社の決算説明資料の有料店舗数をもとに当社が推計)となっております。オンライン集客媒体利用店舗の媒体併用率は70%(当社独自調査)と複数のオンライン集客媒体を併用する業界特性となっております。これは、飲食店にとって、満席にならない限りは店舗の稼働率を上げる為に費用対効果が見合うオンライン集客媒体を追加的に利用するためであると当社は考えております。現状のオンライン集客媒体は新規集客が中心であると捉えており、当社独自の集客基盤を活かすことで顧客管理やリピート集客まで確立出来た場合、ターゲットとなる飲食店は6万店より拡大する可能性があるものと当社は考えております。
上記の市場環境の中、これまで当社は、利用者数の最大化に注力してきましたが、その規模に比較して未だ有料店舗数が少なく、これを拡大させていくことを基本戦略としております。そのために、販売代理店の陣容拡大や人材育成などの販売力の強化を継続的に行ってまいります。これまでの販売力強化の結果、月平均獲得店舗数は、前事業年度476件に対して、当事業年度はCOVID-19の影響を受けながらも596件を実現しております。
なお、COVID-19の影響により2020年5月から6月(2020年4月及び5月の営業活動結果)にかけては販売代理店の休業等により月平均獲得店舗数は300件程度に落ち込みましたが、足許の当事業年度第4四半期には平均520件以上に回復しており、COVID-19の影響が残る中でも販売力の強化を維持できております。
また、戦略的パートナーシップ関係にあるヤフー株式会社及びそのグループ会社との連携強化により、ユーザーの更なる利便性の向上と有料店舗に対する集客支援をさらに向上させてまいります。
ARPU(一店舗当たり売上高)については、直近において首都圏より相対的な安価プランを提供している地方を中心に営業活動を行っていることから、2019年9月期実績が約21,000円(※)から2020年9月期は平均で約20,000円(※)と減少しておりますが、有料店舗に対する送客数を増加させるなど当社商品価値を高めることに伴う値上げに加えて、より露出を増やし集客効果を高めるオプションプランを上乗せしていくことなどで向上をはかってまいります。
(※)トライアル店舗(大手飲食法人向けに多数の店舗を安価かつ一括でトライアルとして受注する形式)を除く、店舗請求ベースのARPU(主要商品プランのみならずオプション商品も含めたARPU)としております。
③ 広告コンテンツの売上拡大
広告ソリューションにおいては、「Retty」利用者数そのものの拡大に加えて、「Retty」に蓄積された実名によるユーザーの口コミ、ログデータ、アクションデータを分析・活用することによって広告枠を効果的且つ効率的に運用すると共に広告単価を上昇させてまいります。
コンテンツソリューションにおいては、主力商品である「Food Data Platform」が2019年10月から開始したばかりであることから売上規模は未だ小さいものの、月額収益で安定的である上、利益率も高く、対象市場が飲食店市場に限られないことから市場規模も大きいと捉えており、今後、更に拡大を図っていきたいと考えております。今後も、「Retty」を運営する中で蓄積されていくデータ並びに当社のプラットフォーム運営及びデータ活用のノウハウやテクノロジーを向上させていくと共に、これに伴う新たなソリューション商品を開発、対象業種の拡大によるクライアント数の増加及びクライアント当たり単価を向上してまいります。特に、既に開発された当社の主力サービスである「Food Data Platform」の営業に人員を投入して、当該売上を大きく増加してまいります。
また、戦略的パートナーシップを締結しているヤフー株式会社及びそのグループ会社とのアカウント連携等を通じて、双方のデータの組み合わせを図り、より有用性の高いデータとすることで、新たなビジネス機会を創出していきたいと考えております。
④ 新規事業創出及び海外展開の促進
蓄積された飲食に関する嗜好データや飲食店との良好な関係性という当社の強みを活かすことで、飲食店向け予約・決済といったEC事業や店舗オペレーション改善に向けた業務効率化支援事業などの新規事業を創出・推進していきたいと考えております。
足許では、COVID-19の拡大により飲食店側のニーズも変遷しており、①人気店・高級店向けの販促ツールである従量課金型サービス「プレミアム予約」を2020年6月で開始し、②テイクアウト・デリバリー情報を提供するテイクアウトプランを2020年5月に開始したほか、③ユーザーが利用するスマートフォンで注文・決済が可能となるモバイルオーダーのサービスを開始する予定です。
海外展開においては、現在タイ王国においてサービスの成長に注力している最中であり、本書提出日現在で約6万件の口コミが蓄積しており、これらのコンテンツの充実に伴い、月間利用者数も増加しており、2020年7月末には50万人を超えております。今後は、サービス規模を拡大した後に収益化を図ると同時に他の国(アジア、米国、EU)にも展開を図っていきたいと考えております。
⑤ 高い利益成長を可能とする財務・収益モデルの構築
当社の財務・収益モデルは、売上高に応じて増減する変動費(注)の売上高比率が20%程度であることに加え、固定費についても、これまで広告宣伝費に依存しない形で利用者数の増加を実現するなどによって固定費対前年増加率が前事業年度は105.4%と安定的にコントロールしてきたことから、営業利益が売上の成長に応じた増加と営業利益率の上昇の掛け合わせで増加するモデルとなっております。当事業年度については、固定費対前年増加率が119.1%と相対的に高くなっておりますが、これはGo To Eatキャンペーンに合わせたプロモーション費用やCOVID-19の影響で影響のあった販売代理店に対しての営業体制支援費用計160百万円の一時的な費用が含まれていることによるものであり、今後についても、この財務・収益モデルを維持・向上させていくことで高い利益成長を図っていきたいと考えております。
(注)代理店に対する手数料である販売促進費と原価である広告コンテンツ制作費の合計
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では利用者の実名に基づく飲食店オススメ口コミ情報及び全国の飲食店情報等を蓄積した実名型グルメプラットフォーム「Retty」を運営しており、その価値を図る指標として、月間利用者数を重要指標としております。月間利用者数を維持・拡大することは、FRMにおける送客効果の維持・向上につながるとともに、広告コンテンツ売上の増加にもつながりますが、それだけではなく、「Retty」上の飲食店情報の精度や口コミの充実度を保ち、長期的な成長を可能とする観点からも重要であると考えております。
サービス別では、当社の主力サービスであるFRMにおいては「Retty」を通じたオンラインでの販促を提供することで、飲食店から毎月定額のサービス利用料収入を得ていることから、有料店舗数を重要指標として運営を行っております。有料店舗数は、営業人員数、一人当たり獲得件数、解約率に分解できますが、現時点ではこれらのうち、営業人員数を増加させることが有料店舗数の増加に対し最も効果的であると考えており、当該営業人員数を重視して運営を行っております。また、広告コンテンツにおいては、売上高を構成する要素である月間利用者数及び月間利用者当たり売上高のうち、先述の月間利用者数を増加させることを重視して運営を行っております。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
①利用者数・投稿数の増加、ユーザビリティの向上
当社が今後も高い成長率を維持していくためには、運営サービスである「Retty」の知名度を向上させ、新規ユーザーを獲得することが必要不可欠であると考えております。当事業年度においては、2020年5月には、COVID-19感染拡大による影響で月間利用者数が3,020万人と減少しておりますが、その後8月には4,393万人(前年同月比103.9%)まで回復しております。今後も利用者数の増加、口コミ投稿数増加及びユーザビリティの更なる向上を通じて、ユーザーから最も支持されるグルメプラットフォームとしてのポジションを確立すべく、各種施策を実行してまいります。
②販売代理店の営業体制の拡充
有料店舗及び無料店舗は、営業稼働人員数に応じて増加するものであり、販売代理店の営業体制の拡充が必要不可欠と考えております。COVID-19の影響による販売代理店の休業等の影響により、2020年5月から6月(2020年4月及び5月の営業活動結果)にかけては有料店舗の月平均獲得店舗数は300件程度に落ち込みましたが、足許の当事業年度第4四半期には平均520件以上に回復しております。当社はこれまで多くの販売代理店と契約を締結することによって営業稼働人員数を増加させ、それに伴って有料店舗及び無料店舗を拡大してまいりました。今後も、有料店舗を拡大させていくため、販売代理店の陣容拡大や教育などの更なる販売力の向上を図ってまいります。
③組織体制の整備
当社の継続的な成長には、事業拡大に応じて優秀な人材を採用し、組織体制を整備していくことが不可欠であると考えております。当社の「食を通じて世界中の人々をHappyに。」というビジョンに共感し、高い意識を持った優秀な人材を採用していくために積極的な採用活動を行ってまいります。また、人員の増加にあわせて、従業員の育成を強化することで、組織力の向上に取り組んでまいります。
④技術力の強化について
今後、更なるサービスの拡充・強化に向けてビックデータの分析・活用を加速させていく為には、その基盤となる技術力を継続的に強化していく必要があります。現時点において、開発者比率(「Retty」の開発及び改善を担当するプロダクト部門・エンジニアリング部門の人員数の合計を総従業員数で割り返した数値です)は、半数程度となっておりますが、今後は更に優秀な技術者の採用及び育成、先端技術への投資、技術志向な風土の維持等を通じて、技術力の向上に取り組んでまいります。